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050. リリアーナだけが見せる素顔
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アレクシスの心は、静かな嵐の中にあるようだった。リリアーナの存在が、彼の確立された世界観を揺るがし、封印していたはずの過去の傷を疼かせ、そして未知の感情を呼び覚ます。領主としての冷静な判断と、一人の男としての個人的な欲求や戸惑いが、彼の内で激しくせめぎ合っていた。
そんな心の乱れを振り払うかのように、彼は一人、馬を駆って砦を出た。明確な目的はない。ただ、執務室の重苦しい空気から逃れ、辺境の広大な自然の中に身を置きたかったのかもしれない。あるいは、無意識のうちに、彼の心を乱す元凶であるリリアーナの気配を求めていたのかもしれない。
馬は、彼の意を汲んだかのように、リリアーナが畑仕事をしている場所とは少し離れた、森の入り口に近い、静かな場所へと足を運んだ。アレクシスは馬から降り、木々の間に立ち、吹き抜ける風に目を閉じた。冷たく澄んだ空気が、彼の火照った思考をわずかに冷ましてくれるようだった。
その時、近くの開けた場所から、微かな声と、動物たちの気配が聞こえてきた。アレクシスは眉をひそめ、音のする方へと慎重に近づいていった。木の陰からそっと覗き込むと、そこには予想外の光景が広がっていた。
リリアーナがいた。しかし、それは砦や畑で見せる、きびきびと働く姿や、人々と接する際の少し緊張した面持ちとは違う、全く別の表情だった。彼女は、柔らかな日差しが降り注ぐ草の上に座り込み、傍らにはフェンとシーがくつろいでいる。そして、驚くべきことに、彼女の周りには、数匹の森の小動物――雪ウサギや、ふさふさした尻尾を持つリスのような生き物――が集まり、まるで警戒心などないかのように、彼女の手から何かを受け取って食べていたのだ。
リリアーナは、その小動物たちに、優しい声で話しかけていた。
「あらあら、あなたも食べるの? たくさんあるから、ゆっくりでいいのよ」
「まあ、そんなに慌てなくても大丈夫。喧嘩しないで、仲良くね」
その声は、普段アレクシスが聞く彼女の声よりも、数段柔らかく、穏やかで、慈愛に満ちていた。表情も、貴族令嬢としての仮面も、辺境での務めに伴う緊張感もなく、ただただ純粋な優しさと、心からの安らぎに満ちているように見えた。まるで、森の精霊が、その眷属たちと戯れているかのような、幻想的な光景だった。
アレクシスは、息を呑んで、その光景に見入ってしまった。これが、彼女の本当の姿なのかもしれない。誰に見せるためでもない、計算も飾りもない、ありのままのリリアーナ。それは、彼がこれまで想像もしなかったほどに、無垢で、温かく、そして……美しかった。
彼は、自分が今まで見てきた彼女の姿が、ほんの一部でしかなかったことを思い知らされた。彼女は、ただお人好しなだけではない。ただ不思議な力を持っているだけではない。その魂の根底には、生きとし生けるもの全てに対する、深い愛情と優しさがあるのかもしれない。そして、その純粋さが、動物たちをも惹きつけ、警戒心を解かせるのだろう。
その光景は、アレクシスの凍てついた心に、静かに、しかし深く沁み込んできた。彼が失った、あるいは持てなかった「優しさ」や「温もり」が、目の前に具現化しているかのようだった。それは、彼の孤独を際立たせると同時に、言いようのない憧憬のような感情を呼び起こした。
その時、鋭い感覚を持つフェンが、アレクシスの存在に気づいた。彼はすっと立ち上がり、アレクシスのいる木の陰を鋭い瞳で見据えた。その気配に、リリアーナもはっとして顔を上げた。小動物たちは、人間の気配に驚いて、さっと森の中へと姿を消した。
「……辺境伯様……?」
リリアーナは、驚きと、少しだけ気まずそうな表情で立ち上がった。自分の「素」の姿を見られてしまったことへの戸惑いが、その顔に浮かんでいる。
アレクシスもまた、彼女のプライベートな時間を邪魔してしまったことに、わずかな罪悪感を感じながら、木の陰から姿を現した。
「……邪魔をしたか」
彼の口から出たのは、彼らしくない、謝罪に近い言葉だった。
「い、いえ! そんなことは……! ただ、少し休憩を……」
リリアーナは慌てて取り繕おうとしたが、その頬はほんのりと赤く染まっていた。
二人の間に、ぎこちない沈黙が流れた。アレクシスは、何を言うべきか迷っていた。いつものように冷たく突き放すことも、事務的な言葉を並べることも、今の彼女に対してはできないような気がした。彼女が見せた、あの穏やかで優しい表情が、彼の心に深く刻み込まれていたからだ。
「……貴官は……なぜ、そこまでするのだ?」
不意に、アレクシスの口から、そんな問いが漏れた。それは、彼がずっと抱いていた疑問であり、同時に、今の彼女を見て、改めて強く感じた問いだった。
「え……?」
リリアーナは、彼の問いの意図を図りかねて、戸惑いの表情を浮かべた。
「なぜ、追放されたこの辺境の地で、見返りも求めずに、騎士や村人、そして……あのような小動物にまで、心を砕くのだ? それが、貴官にとって何の得になるというのだ?」
アレクシスは、自分でも抑えきれずに、心の奥底にあった疑問をぶつけてしまっていた。それは、彼の人間不信と、彼女への理解不能さが生んだ、不躾な問いだったかもしれない。
リリアーナは、アレクシスの真剣な眼差しに、少し驚いたようだったが、やがて、困ったように、しかし穏やかな笑みを浮かべて答えた。
「……得、ですか……。わたくしは、あまり難しいことは分かりませんけれど……」
彼女は、自分の足元に寄り添うフェンと、肩の上で丸くなるシーを優しく撫でた。
「でも、わたくしは、この辺境に来て、たくさんの方々に助けていただきました。最初は絶望しかありませんでしたが、フェンやシーに出会い、騎士の皆さんや村の方々の温かさに触れて……ここが、わたくしの、初めて自分で見つけた『居場所』なのだと感じられるようになったのです」
彼女の言葉は、飾り気なく、素直な響きを持っていた。
「だから、わたくしにできることがあるのなら、この大切な場所と、ここにいる皆さんのために、何かをしたいと思うのは……当たり前のことではないでしょうか? それが、わたくしにとっての喜びであり、幸せなのです。見返りなんて、考えたこともありませんわ」
その言葉は、アレクシスの心を、強く打った。
見返りを求めない、純粋な貢献。自分の居場所への感謝と愛情。それは、彼がこれまで生きてきた世界とは、全く異なる価値観だった。しかし、彼女の口から語られると、それは空虚な理想論ではなく、確かな真実味を持って響いた。彼女は、本当に、心からそう思っているのだ。
アレクシスは、何も言うことができなかった。彼女の純粋さと、その言葉の持つ力に、完全に圧倒されていた。彼女は、彼が失ったもの、あるいは最初から持っていなかったものを、あまりにも自然に持っている。そして、そのことが、彼には眩しく、同時に……少しだけ、羨ましく感じられた。
「……そうか」
長い沈黙の後、アレクシスは、ただそれだけを呟くのが精一杯だった。彼の声には、いつもの冷たさはなく、どこか遠くを見つめるような、複雑な響きがあった。
彼は、それ以上、リリアーナと話すことができなかった。自分の内面の動揺を、これ以上彼女に見せたくなかったのかもしれない。
「……邪魔をしたな」
彼は再びそう言うと、踵を返し、馬の元へと戻っていった。
リリアーナは、去っていくアレクシスの後ろ姿を、戸惑いながらも見送った。今日の彼は、いつもと何かが違った。冷たいけれど、どこか人間らしい揺らぎのようなものが感じられた気がする。そして、彼が自分に問いかけた言葉の意味を、彼女はまだ完全には理解できていなかったが、彼の心にもまた、何か深い葛藤があるのかもしれない、と感じ始めていた。
アレクシスは、砦への帰り道、ずっとリリアーナの言葉と、彼女が見せた素顔のことを考えていた。彼女の純粋さ、優しさ、そして強さ。それらは、彼の凍てついた心を、確実に溶かし始めている。そして、彼は認めざるを得なかった。自分が彼女に惹かれているという事実を。それは、領主としての計算や、単なる好奇心を超えた、もっと個人的で、深い感情なのだと。
リリアーナだけが見せる素顔。それは、氷の辺境伯の心に、新たな光と、そしてさらなる葛藤をもたらした。二人の関係は、この静かな邂逅をきっかけに、また一つ、新たな局面へと進もうとしていた。
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馬は、彼の意を汲んだかのように、リリアーナが畑仕事をしている場所とは少し離れた、森の入り口に近い、静かな場所へと足を運んだ。アレクシスは馬から降り、木々の間に立ち、吹き抜ける風に目を閉じた。冷たく澄んだ空気が、彼の火照った思考をわずかに冷ましてくれるようだった。
その時、近くの開けた場所から、微かな声と、動物たちの気配が聞こえてきた。アレクシスは眉をひそめ、音のする方へと慎重に近づいていった。木の陰からそっと覗き込むと、そこには予想外の光景が広がっていた。
リリアーナがいた。しかし、それは砦や畑で見せる、きびきびと働く姿や、人々と接する際の少し緊張した面持ちとは違う、全く別の表情だった。彼女は、柔らかな日差しが降り注ぐ草の上に座り込み、傍らにはフェンとシーがくつろいでいる。そして、驚くべきことに、彼女の周りには、数匹の森の小動物――雪ウサギや、ふさふさした尻尾を持つリスのような生き物――が集まり、まるで警戒心などないかのように、彼女の手から何かを受け取って食べていたのだ。
リリアーナは、その小動物たちに、優しい声で話しかけていた。
「あらあら、あなたも食べるの? たくさんあるから、ゆっくりでいいのよ」
「まあ、そんなに慌てなくても大丈夫。喧嘩しないで、仲良くね」
その声は、普段アレクシスが聞く彼女の声よりも、数段柔らかく、穏やかで、慈愛に満ちていた。表情も、貴族令嬢としての仮面も、辺境での務めに伴う緊張感もなく、ただただ純粋な優しさと、心からの安らぎに満ちているように見えた。まるで、森の精霊が、その眷属たちと戯れているかのような、幻想的な光景だった。
アレクシスは、息を呑んで、その光景に見入ってしまった。これが、彼女の本当の姿なのかもしれない。誰に見せるためでもない、計算も飾りもない、ありのままのリリアーナ。それは、彼がこれまで想像もしなかったほどに、無垢で、温かく、そして……美しかった。
彼は、自分が今まで見てきた彼女の姿が、ほんの一部でしかなかったことを思い知らされた。彼女は、ただお人好しなだけではない。ただ不思議な力を持っているだけではない。その魂の根底には、生きとし生けるもの全てに対する、深い愛情と優しさがあるのかもしれない。そして、その純粋さが、動物たちをも惹きつけ、警戒心を解かせるのだろう。
その光景は、アレクシスの凍てついた心に、静かに、しかし深く沁み込んできた。彼が失った、あるいは持てなかった「優しさ」や「温もり」が、目の前に具現化しているかのようだった。それは、彼の孤独を際立たせると同時に、言いようのない憧憬のような感情を呼び起こした。
その時、鋭い感覚を持つフェンが、アレクシスの存在に気づいた。彼はすっと立ち上がり、アレクシスのいる木の陰を鋭い瞳で見据えた。その気配に、リリアーナもはっとして顔を上げた。小動物たちは、人間の気配に驚いて、さっと森の中へと姿を消した。
「……辺境伯様……?」
リリアーナは、驚きと、少しだけ気まずそうな表情で立ち上がった。自分の「素」の姿を見られてしまったことへの戸惑いが、その顔に浮かんでいる。
アレクシスもまた、彼女のプライベートな時間を邪魔してしまったことに、わずかな罪悪感を感じながら、木の陰から姿を現した。
「……邪魔をしたか」
彼の口から出たのは、彼らしくない、謝罪に近い言葉だった。
「い、いえ! そんなことは……! ただ、少し休憩を……」
リリアーナは慌てて取り繕おうとしたが、その頬はほんのりと赤く染まっていた。
二人の間に、ぎこちない沈黙が流れた。アレクシスは、何を言うべきか迷っていた。いつものように冷たく突き放すことも、事務的な言葉を並べることも、今の彼女に対してはできないような気がした。彼女が見せた、あの穏やかで優しい表情が、彼の心に深く刻み込まれていたからだ。
「……貴官は……なぜ、そこまでするのだ?」
不意に、アレクシスの口から、そんな問いが漏れた。それは、彼がずっと抱いていた疑問であり、同時に、今の彼女を見て、改めて強く感じた問いだった。
「え……?」
リリアーナは、彼の問いの意図を図りかねて、戸惑いの表情を浮かべた。
「なぜ、追放されたこの辺境の地で、見返りも求めずに、騎士や村人、そして……あのような小動物にまで、心を砕くのだ? それが、貴官にとって何の得になるというのだ?」
アレクシスは、自分でも抑えきれずに、心の奥底にあった疑問をぶつけてしまっていた。それは、彼の人間不信と、彼女への理解不能さが生んだ、不躾な問いだったかもしれない。
リリアーナは、アレクシスの真剣な眼差しに、少し驚いたようだったが、やがて、困ったように、しかし穏やかな笑みを浮かべて答えた。
「……得、ですか……。わたくしは、あまり難しいことは分かりませんけれど……」
彼女は、自分の足元に寄り添うフェンと、肩の上で丸くなるシーを優しく撫でた。
「でも、わたくしは、この辺境に来て、たくさんの方々に助けていただきました。最初は絶望しかありませんでしたが、フェンやシーに出会い、騎士の皆さんや村の方々の温かさに触れて……ここが、わたくしの、初めて自分で見つけた『居場所』なのだと感じられるようになったのです」
彼女の言葉は、飾り気なく、素直な響きを持っていた。
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彼は、それ以上、リリアーナと話すことができなかった。自分の内面の動揺を、これ以上彼女に見せたくなかったのかもしれない。
「……邪魔をしたな」
彼は再びそう言うと、踵を返し、馬の元へと戻っていった。
リリアーナは、去っていくアレクシスの後ろ姿を、戸惑いながらも見送った。今日の彼は、いつもと何かが違った。冷たいけれど、どこか人間らしい揺らぎのようなものが感じられた気がする。そして、彼が自分に問いかけた言葉の意味を、彼女はまだ完全には理解できていなかったが、彼の心にもまた、何か深い葛藤があるのかもしれない、と感じ始めていた。
アレクシスは、砦への帰り道、ずっとリリアーナの言葉と、彼女が見せた素顔のことを考えていた。彼女の純粋さ、優しさ、そして強さ。それらは、彼の凍てついた心を、確実に溶かし始めている。そして、彼は認めざるを得なかった。自分が彼女に惹かれているという事実を。それは、領主としての計算や、単なる好奇心を超えた、もっと個人的で、深い感情なのだと。
リリアーナだけが見せる素顔。それは、氷の辺境伯の心に、新たな光と、そしてさらなる葛藤をもたらした。二人の関係は、この静かな邂逅をきっかけに、また一つ、新たな局面へと進もうとしていた。
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