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第56話 黒幕の目的
マーティン教授の研究室から戻った執務室の空気は、鉛のように重かった。
盗まれた禁書。失踪した内通者。そして、謎の組織を示す「ウロボロス」の紋章。一つ一つの事実は、より巨大でより悪質な陰謀の存在を私たちに突きつけていた。
レオナルドはすぐさま諜報部隊「影」の長を呼び出し、新たな指示を与えた。
「ウロボロスの紋章について、あらゆる手段を用いて調べ上げろ。どんな些細な情報も見逃すな」
だが、数時間後に返ってきた報告は芳しいものではなかった。
「……閣下。この紋章に関する記録は、王国のいかなる文献にも見当たりません。まるで、歴史から完全に消し去られたかのようです」
その報告は敵の不気味さをより一層際立たせた。彼らは国家の監視網すら掻い潜る、深い闇に潜む者たちなのだ。
「あなた。敵が見えないのなら、こちらからその姿をあぶり出すしかありませんわ」
私は壁に貼られた相関図の前に立ち、静かに口を開いた。
「彼らの目的を知るのです。目的が分かれば、次の一手も自ずと見えてくるはず」
「目的、か」
レオナルドは椅子に深く腰掛け、指を組んだ。
「マーティン教授の動機は復讐だろう。だが、組織の目的が同じとは思えん」
「ええ。復讐心に燃える人間は目的のためなら手段を選ばない、最高の駒になりますから。彼らは教授の個人的な絶望を利用したに過ぎませんわ」
私たちは、まるでチェスの盤面を挟むプレイヤーのように思考の応酬を始めた。
「まず、彼らが手に入れたものは何か。それは、『古代召喚儀式大全』という禁断の知識です」
私は事件の原点に立ち返った。
「なぜ今、古代の召喚魔法が必要だったのか。それは現代の魔法では成し得ない、何かを成し遂げるためのはず」
「……現体制の転覆、か。例えば王城を一夜にして破壊するほどの、強力な魔神でも呼び出すつもりか」
レオナルドの推論は最も現実的で、そして恐ろしいものだった。だが、私の胸にはまだ拭えない疑問があった。
「それならば、なぜこの学園が舞台なのでしょう。なぜわざわざ結界を破り、魔物を陽動に使うなどという回りくどい手を使ったのか。もっと直接的に王宮を狙うこともできたはずですわ」
私はマーティン教授が残した最後のメッセージを指さした。
「『祝祭の日に、裁きは下される』。学園祭。なぜ、あの日でなければならないのでしょう」
レオナルドはしばらく黙って考え込んでいた。その鋼色の瞳が記憶の奥底を探るように遠くを見つめる。やがて彼は一つの可能性に思い至ったようだった。
「……龍脈だ」
「龍脈?」
「ああ。この学園が建てられた土地は、古来より大地の魔力が龍のように流れる『龍脈』がいくつも交差する聖地であるという伝承がある。建国の英雄たちは、その膨大なエネルギーを国の守りとするため、この地に学園と、そして王都を築いたのだ」
彼の言葉に、私ははっと息を呑んだ。
「学園祭の日は、年に一度その龍脈の力が最も高まる日……。まさか!」
「そうだ。奴らの狙いはその龍脈のエネルギーそのものだ。それを吸い上げ儀式の動力源とすることで、通常では考えられないほどの強大な存在を召喚しようとしている」
全てのピースが恐ろしい一つの絵となって繋がっていく。
学園祭の日、王族が臨席し、多くの人々が集い、警備が手薄になる。そしてその足元では、世界を揺るがすほどの儀式が執り行われる。それは考えうる限り最も効率的で、そして最も悪魔的な計画だった。
「ですが……」
私はそれでも残る最後の疑問を口にした。前世で読み漁った数多のファンタジー物語の知識が、私の脳内で警鐘を鳴らしていた。
「物語の中では、そのような大掛かりな召喚儀式にはもう一つ、重要な要素が必要になるのが常ですわ」
「……何だ」
「強力な触媒。あるいは生贄です。膨大な魔力を受け止め、異界の存在をこの世に繋ぎ止めるための、器となる存在が」
私は恐ろしい予感を覚えながら言葉を続けた。
「例えば……それは純粋で、そして何よりも強大な魔力を持つ、若い乙女の魂、とか……」
その言葉を口にした瞬間、執務室の空気が凍りついた。レオナルドの顔から血の気が引いていくのが分かった。彼もまた私と同じ、最悪の結論にたどり着いたのだ。
なぜ、最初の事件でイザベラが標的にされたのか。盗難事件の犯人に仕立て上げられ、学園で孤立させられた、あの事件。その本当の目的は彼女の名誉を傷つけることではなかった。もしあの時、私たちの反撃がなければ彼女は学園内で完全に孤立し、誰にも助けを求められない状況に追い込まれていただろう。そしてその心の隙を突かれて、誰にも知られずにどこかへ連れ去られていたかもしれない。儀式の生贄として。
「……そういうことだったのか」
レオナルドの声は地獄の底から響いてくるかのように、低く、そして怒りに震えていた。
「あの事件は娘を社会的に抹殺し、捕らえやすくするためのただの布石だったのだ。そして我々がそれを阻止したからこそ、奴らは結界破壊というより直接的な手段に切り替えた……!」
全ては私たちの愛する娘、イザベラを手に入れるために。
彼女の持つ王国史上類を見ないほどの強大な魔力。それこそが、黒幕が求める最後の鍵だったのだ。
私たちは顔を見合わせた。その瞳には、もはや驚きも恐怖もなかった。あるのはただ、愛する者を奪おうとする見えない敵に対する絶対的な殺意だけだった。黒幕の目的は明確になった。
現体制の転覆。そしてそのための究極の兵器を召喚するための生贄として、私たちの娘を狙っている。なんという冒涜的な計画だろう。
「……あなた」
私は静かに夫の名を呼んだ。
「ええ。何があってもあの子は渡しません。この命に代えても」
「ああ。当然だ」
レオナルドは壁にかかっていた長剣を音もなく手に取った。
「奴らが誰であろうと関係ない。この国の王であろうと、異界の神であろうと、我が娘に指一本でも触れようとする者は、俺がこの手で地獄の底へと叩き落とす」
その声には、氷の公爵としての冷徹さと父親としての激情が、恐ろしいほどの純度で混じり合っていた。
見えない敵の輪郭は今やはっきりとその姿を現した。
彼らはこの国の秩序を破壊し、私たちの未来を奪おうとしている。そしてその計画の成否は、私たちの愛する一人娘の命にかかっている。もう迷っている時間はない。学園祭の日まで、残された時間はあとわずか。私たちはこの国の、そして娘の運命を賭けた最後の戦いに挑む覚悟を固めた。
執務室の窓の外では、嵐の前の不気味な静けさが夜の闇を支配していた。
盗まれた禁書。失踪した内通者。そして、謎の組織を示す「ウロボロス」の紋章。一つ一つの事実は、より巨大でより悪質な陰謀の存在を私たちに突きつけていた。
レオナルドはすぐさま諜報部隊「影」の長を呼び出し、新たな指示を与えた。
「ウロボロスの紋章について、あらゆる手段を用いて調べ上げろ。どんな些細な情報も見逃すな」
だが、数時間後に返ってきた報告は芳しいものではなかった。
「……閣下。この紋章に関する記録は、王国のいかなる文献にも見当たりません。まるで、歴史から完全に消し去られたかのようです」
その報告は敵の不気味さをより一層際立たせた。彼らは国家の監視網すら掻い潜る、深い闇に潜む者たちなのだ。
「あなた。敵が見えないのなら、こちらからその姿をあぶり出すしかありませんわ」
私は壁に貼られた相関図の前に立ち、静かに口を開いた。
「彼らの目的を知るのです。目的が分かれば、次の一手も自ずと見えてくるはず」
「目的、か」
レオナルドは椅子に深く腰掛け、指を組んだ。
「マーティン教授の動機は復讐だろう。だが、組織の目的が同じとは思えん」
「ええ。復讐心に燃える人間は目的のためなら手段を選ばない、最高の駒になりますから。彼らは教授の個人的な絶望を利用したに過ぎませんわ」
私たちは、まるでチェスの盤面を挟むプレイヤーのように思考の応酬を始めた。
「まず、彼らが手に入れたものは何か。それは、『古代召喚儀式大全』という禁断の知識です」
私は事件の原点に立ち返った。
「なぜ今、古代の召喚魔法が必要だったのか。それは現代の魔法では成し得ない、何かを成し遂げるためのはず」
「……現体制の転覆、か。例えば王城を一夜にして破壊するほどの、強力な魔神でも呼び出すつもりか」
レオナルドの推論は最も現実的で、そして恐ろしいものだった。だが、私の胸にはまだ拭えない疑問があった。
「それならば、なぜこの学園が舞台なのでしょう。なぜわざわざ結界を破り、魔物を陽動に使うなどという回りくどい手を使ったのか。もっと直接的に王宮を狙うこともできたはずですわ」
私はマーティン教授が残した最後のメッセージを指さした。
「『祝祭の日に、裁きは下される』。学園祭。なぜ、あの日でなければならないのでしょう」
レオナルドはしばらく黙って考え込んでいた。その鋼色の瞳が記憶の奥底を探るように遠くを見つめる。やがて彼は一つの可能性に思い至ったようだった。
「……龍脈だ」
「龍脈?」
「ああ。この学園が建てられた土地は、古来より大地の魔力が龍のように流れる『龍脈』がいくつも交差する聖地であるという伝承がある。建国の英雄たちは、その膨大なエネルギーを国の守りとするため、この地に学園と、そして王都を築いたのだ」
彼の言葉に、私ははっと息を呑んだ。
「学園祭の日は、年に一度その龍脈の力が最も高まる日……。まさか!」
「そうだ。奴らの狙いはその龍脈のエネルギーそのものだ。それを吸い上げ儀式の動力源とすることで、通常では考えられないほどの強大な存在を召喚しようとしている」
全てのピースが恐ろしい一つの絵となって繋がっていく。
学園祭の日、王族が臨席し、多くの人々が集い、警備が手薄になる。そしてその足元では、世界を揺るがすほどの儀式が執り行われる。それは考えうる限り最も効率的で、そして最も悪魔的な計画だった。
「ですが……」
私はそれでも残る最後の疑問を口にした。前世で読み漁った数多のファンタジー物語の知識が、私の脳内で警鐘を鳴らしていた。
「物語の中では、そのような大掛かりな召喚儀式にはもう一つ、重要な要素が必要になるのが常ですわ」
「……何だ」
「強力な触媒。あるいは生贄です。膨大な魔力を受け止め、異界の存在をこの世に繋ぎ止めるための、器となる存在が」
私は恐ろしい予感を覚えながら言葉を続けた。
「例えば……それは純粋で、そして何よりも強大な魔力を持つ、若い乙女の魂、とか……」
その言葉を口にした瞬間、執務室の空気が凍りついた。レオナルドの顔から血の気が引いていくのが分かった。彼もまた私と同じ、最悪の結論にたどり着いたのだ。
なぜ、最初の事件でイザベラが標的にされたのか。盗難事件の犯人に仕立て上げられ、学園で孤立させられた、あの事件。その本当の目的は彼女の名誉を傷つけることではなかった。もしあの時、私たちの反撃がなければ彼女は学園内で完全に孤立し、誰にも助けを求められない状況に追い込まれていただろう。そしてその心の隙を突かれて、誰にも知られずにどこかへ連れ去られていたかもしれない。儀式の生贄として。
「……そういうことだったのか」
レオナルドの声は地獄の底から響いてくるかのように、低く、そして怒りに震えていた。
「あの事件は娘を社会的に抹殺し、捕らえやすくするためのただの布石だったのだ。そして我々がそれを阻止したからこそ、奴らは結界破壊というより直接的な手段に切り替えた……!」
全ては私たちの愛する娘、イザベラを手に入れるために。
彼女の持つ王国史上類を見ないほどの強大な魔力。それこそが、黒幕が求める最後の鍵だったのだ。
私たちは顔を見合わせた。その瞳には、もはや驚きも恐怖もなかった。あるのはただ、愛する者を奪おうとする見えない敵に対する絶対的な殺意だけだった。黒幕の目的は明確になった。
現体制の転覆。そしてそのための究極の兵器を召喚するための生贄として、私たちの娘を狙っている。なんという冒涜的な計画だろう。
「……あなた」
私は静かに夫の名を呼んだ。
「ええ。何があってもあの子は渡しません。この命に代えても」
「ああ。当然だ」
レオナルドは壁にかかっていた長剣を音もなく手に取った。
「奴らが誰であろうと関係ない。この国の王であろうと、異界の神であろうと、我が娘に指一本でも触れようとする者は、俺がこの手で地獄の底へと叩き落とす」
その声には、氷の公爵としての冷徹さと父親としての激情が、恐ろしいほどの純度で混じり合っていた。
見えない敵の輪郭は今やはっきりとその姿を現した。
彼らはこの国の秩序を破壊し、私たちの未来を奪おうとしている。そしてその計画の成否は、私たちの愛する一人娘の命にかかっている。もう迷っている時間はない。学園祭の日まで、残された時間はあとわずか。私たちはこの国の、そして娘の運命を賭けた最後の戦いに挑む覚悟を固めた。
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