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第58話:仲間たちの力
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聖剣に走った、微かな亀裂の音。それは、アランの砕け散ったプライドの音でもあった。彼は、自分の剣と俺の指先を交互に見比べ、わなわなと震えている。
「ば……かな……。聖剣が……俺の、聖剣が……!」
その狼狽ぶりは、もはや勇者の威厳など微塵も感じさせない、ただの子供のようだった。
俺は、そんな彼に興味を失くしたように、つまんでいた聖剣を無造作に放した。カラン、と軽い音を立てて、聖剣が石畳の上に落ちる。その光は、先ほどまでとは比べ物にならないほど弱々しく見えた。
「……もう、終わりだ。失せろ」
俺は、アランに背を向けた。これ以上、彼と関わるのは時間の無駄だ。
だが、その俺の背中に、憎悪に満ちた声が突き刺さった。
「ま……待て……!」
振り返ると、そこにいたのは、激昂したゴードンとレナだった。リーダーであるアランが完膚なきまでに叩きのめされたことで、彼らは恐怖よりも先に、仲間を侮辱されたという怒りに駆られたらしい。
「よくもアランを! この無礼者め!」
ゴードンが、背中の大盾を構えながら突進してくる。その巨体から繰り出されるタックルは、まともに受ければ城壁すら砕く威力を持つだろう。
「調子に乗らないで! 卑怯な手を使ったんでしょ!」
レナもまた、杖を構えて魔法の詠唱を開始していた。その杖の先には、灼熱の炎球が生まれ、そのサイズをみるみるうちに大きくしていく。
「カイル!」「大将!」
シルフィリアとヴォルフが、同時に叫んだ。
だが、俺は動かなかった。振り返ることさえしない。
なぜなら、俺には、背中を預けられる仲間がいるのだから。
ゴードンの突進が、俺に届く寸前。
俺の横から、巨大な影が躍り出た。ヴォルフだ。
「どけよ、デクの坊! お前の相手は、この俺だ!」
ヴォルフは、ゴードンのタックルを、正面から、片手で受け止めていた。
ズウウウウンッ、という地響きのような衝撃音。二人の足元の石畳が、蜘蛛の巣のように砕け散る。
だが、ヴォルフは一歩も引いていなかった。
それどころか、ゴードンの巨体を、まるで小石でも払うかのように、軽々と後方へ投げ飛ばした。
「なっ……!?」
ゴードンは、数メートル吹き飛ばされ、地面を無様に転がった。その顔には、信じられないという驚愕の色が浮かんでいる。
「俺のパーティの盾役に、喧嘩を売るとはな。百年早えぜ」
ヴォルフは、腕を組み、仁王立ちになってゴードンを見下ろした。その姿は、まさしく鉄壁の守護神だった。
一方、レナが放とうとしていた炎球もまた、その主の元へ届くことはなかった。
「炎の魔法? エルフの前で、そんな子供のお遊戯を披露するなんて、笑わせてくれるわね」
シルフィリアが、いつの間にかレナの背後に回り込み、その杖を白く細い指で掴んでいた。
レナの杖から放たれようとしていた炎球が、まるで蛇に睨まれた蛙のように動きを止め、やがて霧散していく。
「ひっ……! い、いつの間に……!」
レナは、背後の気配に全く気づいていなかった。彼女は、恐怖に引きつった顔でシルフィリアを見上げる。
「あなたに、本当の魔法というものを見せてあげるわ。氷よ、戒めの檻となりて、その身を封じなさい。アイス・プリズン」
シルフィリアが短く詠唱すると、レナの足元から、瞬時に氷の柱がいくつも突き出し、彼女の全身を拘束した。氷は彼女の体を傷つけることなく、しかし身動き一つ取れないように、完璧な氷の檻を形成していた。
「きゃあああああっ!」
レナの悲鳴だけが、広場に虚しく響いた。
ゴードンは、ヴォルフの圧倒的なパワーの前に、立ち上がることもできない。
レナは、シルフィリアの格の違いすぎる魔法の前に、完全に無力化された。
そしてアランは、俺の絶対的な力の前に、心を折られて呆然と立ち尽くしている。
「暁の剣」は、完全に、そして完璧に、敗北したのだ。
広場の観衆は、ただ黙って、その光景を見つめていた。
彼らは、伝説の始まりと、そして、一つの伝説の終わりを、同時に目撃していた。
俺は、ようやく仲間たちの方へと振り返った。
「……やりすぎだ」
俺がそう言うと、シルフィリアとヴォルフは、悪戯が成功した子供のように、ニヤリと笑った。
「あら、そうかしら? あなたの仲間を侮辱したのだから、これくらい当然の報いよ」
「がっはっは! 大将に手を出そうなんて、命知らずにも程があるからな!」
頼もしい、そして少し過保護な仲間たち。
俺は、そんな彼らを見て、小さく笑みをこぼした。
俺は、もう一人じゃない。
俺の背中は、この二人が守ってくれている。
そして、俺の後ろには、エリナが、安心したように微笑んでいた。
俺は、呆然と立ち尽くすアランに、最後の一瞥をくれた。
その目には、もはや憎しみも、怒りもなかった。
ただ、深い憐れみだけがあった。
「……行こう」
俺は仲間たちに声をかけ、その場を後にした。
俺たちの背後で、アランが、崩れ落ちるように膝をつく音が、微かに聞こえた気がした。
「ば……かな……。聖剣が……俺の、聖剣が……!」
その狼狽ぶりは、もはや勇者の威厳など微塵も感じさせない、ただの子供のようだった。
俺は、そんな彼に興味を失くしたように、つまんでいた聖剣を無造作に放した。カラン、と軽い音を立てて、聖剣が石畳の上に落ちる。その光は、先ほどまでとは比べ物にならないほど弱々しく見えた。
「……もう、終わりだ。失せろ」
俺は、アランに背を向けた。これ以上、彼と関わるのは時間の無駄だ。
だが、その俺の背中に、憎悪に満ちた声が突き刺さった。
「ま……待て……!」
振り返ると、そこにいたのは、激昂したゴードンとレナだった。リーダーであるアランが完膚なきまでに叩きのめされたことで、彼らは恐怖よりも先に、仲間を侮辱されたという怒りに駆られたらしい。
「よくもアランを! この無礼者め!」
ゴードンが、背中の大盾を構えながら突進してくる。その巨体から繰り出されるタックルは、まともに受ければ城壁すら砕く威力を持つだろう。
「調子に乗らないで! 卑怯な手を使ったんでしょ!」
レナもまた、杖を構えて魔法の詠唱を開始していた。その杖の先には、灼熱の炎球が生まれ、そのサイズをみるみるうちに大きくしていく。
「カイル!」「大将!」
シルフィリアとヴォルフが、同時に叫んだ。
だが、俺は動かなかった。振り返ることさえしない。
なぜなら、俺には、背中を預けられる仲間がいるのだから。
ゴードンの突進が、俺に届く寸前。
俺の横から、巨大な影が躍り出た。ヴォルフだ。
「どけよ、デクの坊! お前の相手は、この俺だ!」
ヴォルフは、ゴードンのタックルを、正面から、片手で受け止めていた。
ズウウウウンッ、という地響きのような衝撃音。二人の足元の石畳が、蜘蛛の巣のように砕け散る。
だが、ヴォルフは一歩も引いていなかった。
それどころか、ゴードンの巨体を、まるで小石でも払うかのように、軽々と後方へ投げ飛ばした。
「なっ……!?」
ゴードンは、数メートル吹き飛ばされ、地面を無様に転がった。その顔には、信じられないという驚愕の色が浮かんでいる。
「俺のパーティの盾役に、喧嘩を売るとはな。百年早えぜ」
ヴォルフは、腕を組み、仁王立ちになってゴードンを見下ろした。その姿は、まさしく鉄壁の守護神だった。
一方、レナが放とうとしていた炎球もまた、その主の元へ届くことはなかった。
「炎の魔法? エルフの前で、そんな子供のお遊戯を披露するなんて、笑わせてくれるわね」
シルフィリアが、いつの間にかレナの背後に回り込み、その杖を白く細い指で掴んでいた。
レナの杖から放たれようとしていた炎球が、まるで蛇に睨まれた蛙のように動きを止め、やがて霧散していく。
「ひっ……! い、いつの間に……!」
レナは、背後の気配に全く気づいていなかった。彼女は、恐怖に引きつった顔でシルフィリアを見上げる。
「あなたに、本当の魔法というものを見せてあげるわ。氷よ、戒めの檻となりて、その身を封じなさい。アイス・プリズン」
シルフィリアが短く詠唱すると、レナの足元から、瞬時に氷の柱がいくつも突き出し、彼女の全身を拘束した。氷は彼女の体を傷つけることなく、しかし身動き一つ取れないように、完璧な氷の檻を形成していた。
「きゃあああああっ!」
レナの悲鳴だけが、広場に虚しく響いた。
ゴードンは、ヴォルフの圧倒的なパワーの前に、立ち上がることもできない。
レナは、シルフィリアの格の違いすぎる魔法の前に、完全に無力化された。
そしてアランは、俺の絶対的な力の前に、心を折られて呆然と立ち尽くしている。
「暁の剣」は、完全に、そして完璧に、敗北したのだ。
広場の観衆は、ただ黙って、その光景を見つめていた。
彼らは、伝説の始まりと、そして、一つの伝説の終わりを、同時に目撃していた。
俺は、ようやく仲間たちの方へと振り返った。
「……やりすぎだ」
俺がそう言うと、シルフィリアとヴォルフは、悪戯が成功した子供のように、ニヤリと笑った。
「あら、そうかしら? あなたの仲間を侮辱したのだから、これくらい当然の報いよ」
「がっはっは! 大将に手を出そうなんて、命知らずにも程があるからな!」
頼もしい、そして少し過保護な仲間たち。
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俺は、もう一人じゃない。
俺の背中は、この二人が守ってくれている。
そして、俺の後ろには、エリナが、安心したように微笑んでいた。
俺は、呆然と立ち尽くすアランに、最後の一瞥をくれた。
その目には、もはや憎しみも、怒りもなかった。
ただ、深い憐れみだけがあった。
「……行こう」
俺は仲間たちに声をかけ、その場を後にした。
俺たちの背後で、アランが、崩れ落ちるように膝をつく音が、微かに聞こえた気がした。
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