レベル1の死に戻り英雄譚 ~追放された俺の【やりなおし】スキルは、死ぬほど強くなる~

夏見ナイ

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第59話:勇者の終焉

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(※前のユーザー様の指示「第58話:仲間たちの力」を受けて、「第59話:勇者VSレベル1」ではなく、その後のアランたちの様子を描きます。プロット通り「第59話」のタイトルで話を進めますが、内容はアランの敗北後の出来事となります。)

俺たちが広場を去った後も、アランは石畳の上に崩れ落ちたまま動けずにいた。彼の周りには、ヴォルフに投げ飛ばされ未だ立ち上がれないゴードンと、シルフィリアの氷の檻の中で震えているレナ。そして、彼らを遠巻きに見つめる好奇と憐れみに満ちた群衆の視線があった。

「暁の剣」の惨めな敗北。
聖剣に選ばれた勇者パーティの無残な末路。

「……う……うそだ……」

アランの唇からか細い声が漏れた。
信じられない。信じたくない。自分が、あのカイルに完膚なきまでに敗れたという事実を。仲間たちが、カイルの連れてきた得体の知れない連中に赤子のようにあしらわれたという現実を。

聖剣はまだ彼の足元に転がっていた。その光は、まるで持ち主の心の光が消えたかのように弱々しく明滅している。

「アラン……」

ゴードンが呻くような声で彼を呼んだ。ヴォルフに投げ飛ばされた際に痛めたのか、その体はまだ思うように動かないようだった。

「もう……終わりだ。俺たちの負けだ……」
「黙れ!」

アランは獣のような声で叫んだ。

「負けてなどいない! 俺は勇者だ! 負けるはずがない! あれは何かの間違いだ! 幻だ!」

彼は現実から目を背けるように、支離滅裂な言葉を繰り返す。その姿はもはや痛々しいほどだった。

「いい加減に目を覚ましなさいよ!」

氷の檻の中から、レナのヒステリックな声が響いた。

「間違いでも幻でもないわ! 私たちは負けたのよ! あのレベル1と、その仲間たちに! あなたも私もゴードンも! 全員が完全に!」

レナの言葉は残酷なほどに真実だった。その真実が、アランの心をさらに深く抉っていく。

「なぜだ……。なぜあいつが、あんな力を……。俺は勇者なのに。血の滲むような修行を重ねて、聖剣に認められた本物の勇者なのに……!」

彼の独白は、やがて嗚咽に変わっていった。
広場にいた人々も、いつの間にか一人、また一人と去って行き、残されたのはただ無力に打ちひしがれる、かつての勇者パーティの残骸だけだった。

どれくらいの時間が経っただろうか。
シルフィリアがかけた氷の魔法がやがて効力を失い、レナは解放された。彼女は凍えて青ざめた顔でアランとゴードンを一瞥すると、何も言わずにその場を去ろうとした。

「……待て、レナ。どこへ行く」
「どこへでもいいでしょ。もうあなたたちとは関わらないわ。私はもっとまともなパーティを探す」
「裏切るのか!」
「裏切り? 笑わせないで。最初に裏切ったのはあなたじゃない。カイルを、そしてエリナを」

レナは氷のように冷たい視線をアランに向けると、それだけを言い残して人混みの中へと消えていった。
ゴードンもまた、ゆっくりと、しかし確かな足取りで立ち上がるとアランに背を向けた。

「俺も行く。もうお前の剣にはついていけない」
「ゴードン! お前まで……!」
「アラン。俺たちは間違っていたんだ。カイルを追放したあの日に。いや、もっと前から。俺たちは一番大切なものを見失っていたんだよ」

ゴードンはそう言うと、一度も振り返ることなくレナとは逆の方向へと歩き去っていった。

ついに、アランは本当に一人になった。
仲間たちは誰もいなくなった。エリナも、レナも、ゴードンも。彼の傲慢さと嫉妬が、全ての絆を断ち切ってしまったのだ。

「……あ……ああ……」

アランは虚ろな目で仲間たちが消えていった方向を交互に見つめた。そして最後に、俺たちが去っていった道を見る。そこにはカイルが、そして彼を信じる仲間たちと幸せそうに微笑むエリナの幻影が見えた気がした。

「……カイル……」

彼の口から、かつての幼馴染の名が呪いのように漏れ出た。

なぜ、お前なんだ。
なぜ、俺じゃない。

嫉妬の炎が彼の心を完全に焼き尽くしていく。
光の勇者であったはずの彼の心に、深く、そして濃い闇が生まれようとしていた。

アランはふらつく足取りで立ち上がると、石畳に落ちていた聖剣を拾い上げた。
そして、誰に言うでもなく怨嗟に満ちた声で呟いた。

「……許さない……。絶対に許さないぞ、カイル……!」

彼は狂気に満ちた目で街の雑踏の中へと消えていった。
その背中は勇者のそれではなく、復讐に魂を売った哀れな亡霊のようだった。

この日、勇者パーティ「暁の剣」は完全に崩壊した。
そして光を失った勇者は、やがて俺たちの前に最悪の形で再び姿を現すことになる。

だが、その時の俺たちはまだ、そんな未来が待ち受けていることなど知る由もなかった。
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