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第68話:籠城戦
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俺が獣将軍ガルムと対峙している間も、アイギスの砦では絶望的な籠城戦が続いていた。数万の魔物の軍勢に対し、砦の守備兵はわずか数千。しかも連日の戦闘でその半数近くが傷つき、疲労は限界に達していた。
「持ちこたえろ! 敵を一人たりとも通すな!」
城壁の上では老騎士団長が声を嗄らして檄を飛ばしていた。だが、兵士たちの顔にはもはや色濃い絶望の色が浮かんでいる。次から次へと城壁に取り付いてくる魔族兵。降り注ぐ投石機からの岩塊。そして空からはガーゴイルの群れが急降下し、兵士たちを一人、また一人と攫っていく。
「くそっ! 東側の城壁が手薄だ! 誰か援護に行け!」
「だめです! こちらも手一杯で……!」
砦はすでに崩壊寸前だった。
その絶望的な状況に一筋の光が差し込んだのは、エリナが野戦病院に到着してからだった。
「聖なる光よ、彼の者たちの傷を癒し、再び立ち上がる力を与えたまえ! エリア・ヒール!」
エリナが詠唱すると、野戦病院全体が温かい光に包まれた。その光は床に並べられていた重傷の兵士たちの体に降り注ぎ、奇跡を起こしていく。
抉られた傷口が塞がり、折れた骨が繋がり、失われた血が巡り始める。死の淵を彷徨っていた兵士たちが、次々と呻き声を上げ意識を取り戻していく。
「な……なんだ、この光は……」
「傷が……傷が治っていく……!」
衛生兵や軽傷の兵士たちが、目の前で起こる奇跡にただ呆然と立ち尽くしていた。
「さあ、立ってください! あなたたちの力を、まだ砦は必要としています!」
エリナは汗を滲ませながらも、毅然とした声で兵士たちを鼓舞する。その姿はまさしく戦場に舞い降りた聖女そのものだった。
彼女の奇跡の治癒魔法と献身的な姿は、絶望に沈んでいた兵士たちの心に、再び戦うための火を灯した。
「うおおおおおっ!」
「まだだ! まだ俺たちは戦える!」
回復した兵士たちは武器を手に取ると、次々と城壁の守りに戻っていく。エリナ一人の存在が、崩壊寸前だった砦の戦線を奇跡的に押し留めていた。
一方、シルフィリアとヴォルフもまた、それぞれの場所で獅子奮迅の働きを見せていた。
「魔術師部隊、詠唱用意! 狙いは敵の投石機! 私の合図で一斉に放ちなさい!」
シルフィリアは砦の魔術師たちをまとめ上げ、即席の砲撃部隊を組織していた。彼女の的確な指揮と古代語魔法による威力増幅(ブースト)によって、砦からの魔法攻撃はこれまでの数倍の破壊力と精度を持つようになっていた。
「放てっ!」
彼女の号令一下、数十発のファイアボールが放物線を描いて敵陣へと降り注ぐ。それは正確に魔王軍の投石機部隊に着弾し、巨大な爆発と共にその機能を完全に破壊した。
「やったぞ!」
「投石機を破壊した!」
砦の兵士たちから歓声が上がる。
城壁を揺るがしていた最大の脅威の一つが沈黙したのだ。
「次よ! 破城槌を狙いなさい! 敵の攻城兵器を一つ残らず叩き潰すわよ!」
シルフィリアの翠色の瞳は冷静に戦況を見据え、最も効果的な次の一手を導き出していた。
そして、最も苛烈な前線である城壁の上では、ヴォルフが文字通り鬼神の如き戦いぶりを見せていた。
「来るなら来やがれ、雑魚どもがぁ!」
彼はオリハルコン製の大剣をまるで風車のように振り回し、城壁をよじ登ってくる魔族兵を次々と薙ぎ払っていく。その一振りは数体の魔族をまとめて城壁の外へと吹き飛ばし、肉塊へと変えた。
「うおおおおおっ! あの獣人、一人で一隊を相手にしているぞ!」
「すげえ……! あれがBランク冒険者の実力か!」
ヴォルフの圧倒的な武力は、周囲の兵士たちの士気を極限まで高めていた。彼らはヴォルフという突破不可能な壁を信じ、必死でその脇を固める。
たった三人。
エリナの奇跡的な治癒、シルフィリアの天才的な指揮、そしてヴォルフの圧倒的な武力。
カイルが敵本陣に突撃している間に、彼らもまたこの絶望的な籠城戦の流れを少しずつ、しかし確実に変え始めていたのだ。
「……信じられん……」
騎士団長は、城壁の上から砦の各所で起こっている奇跡のような光景を、ただ呆然と見つめていた。
「たった四人の冒険者が……。いや、彼らは冒険者などという枠には収まらん。まるで伝説に謳われる英雄そのものではないか……!」
彼は震える手で剣を握りしめた。
その目に諦めの色はもうない。あるのは勝利への確かな希望の光だった。
「全軍に伝えろ! 我々には英雄がついている! 希望を捨てるな! アイギスは決して落ちん!」
騎士団長の檄が砦全体に響き渡る。
それに呼応するように、兵士たちの雄叫びが天を突くように轟いた。
「「「うおおおおおおおおおおっ!」」」
絶望の淵にあったアイギスの砦は、俺たち四人の参戦によって不死鳥の如く蘇ろうとしていた。
だが、本当の戦いはまだ始まったばかり。
砦の命運は今、敵陣のど真ん中で魔王軍四天王と対峙している、一人のレベル1の男の双肩にかかっていた。
「持ちこたえろ! 敵を一人たりとも通すな!」
城壁の上では老騎士団長が声を嗄らして檄を飛ばしていた。だが、兵士たちの顔にはもはや色濃い絶望の色が浮かんでいる。次から次へと城壁に取り付いてくる魔族兵。降り注ぐ投石機からの岩塊。そして空からはガーゴイルの群れが急降下し、兵士たちを一人、また一人と攫っていく。
「くそっ! 東側の城壁が手薄だ! 誰か援護に行け!」
「だめです! こちらも手一杯で……!」
砦はすでに崩壊寸前だった。
その絶望的な状況に一筋の光が差し込んだのは、エリナが野戦病院に到着してからだった。
「聖なる光よ、彼の者たちの傷を癒し、再び立ち上がる力を与えたまえ! エリア・ヒール!」
エリナが詠唱すると、野戦病院全体が温かい光に包まれた。その光は床に並べられていた重傷の兵士たちの体に降り注ぎ、奇跡を起こしていく。
抉られた傷口が塞がり、折れた骨が繋がり、失われた血が巡り始める。死の淵を彷徨っていた兵士たちが、次々と呻き声を上げ意識を取り戻していく。
「な……なんだ、この光は……」
「傷が……傷が治っていく……!」
衛生兵や軽傷の兵士たちが、目の前で起こる奇跡にただ呆然と立ち尽くしていた。
「さあ、立ってください! あなたたちの力を、まだ砦は必要としています!」
エリナは汗を滲ませながらも、毅然とした声で兵士たちを鼓舞する。その姿はまさしく戦場に舞い降りた聖女そのものだった。
彼女の奇跡の治癒魔法と献身的な姿は、絶望に沈んでいた兵士たちの心に、再び戦うための火を灯した。
「うおおおおおっ!」
「まだだ! まだ俺たちは戦える!」
回復した兵士たちは武器を手に取ると、次々と城壁の守りに戻っていく。エリナ一人の存在が、崩壊寸前だった砦の戦線を奇跡的に押し留めていた。
一方、シルフィリアとヴォルフもまた、それぞれの場所で獅子奮迅の働きを見せていた。
「魔術師部隊、詠唱用意! 狙いは敵の投石機! 私の合図で一斉に放ちなさい!」
シルフィリアは砦の魔術師たちをまとめ上げ、即席の砲撃部隊を組織していた。彼女の的確な指揮と古代語魔法による威力増幅(ブースト)によって、砦からの魔法攻撃はこれまでの数倍の破壊力と精度を持つようになっていた。
「放てっ!」
彼女の号令一下、数十発のファイアボールが放物線を描いて敵陣へと降り注ぐ。それは正確に魔王軍の投石機部隊に着弾し、巨大な爆発と共にその機能を完全に破壊した。
「やったぞ!」
「投石機を破壊した!」
砦の兵士たちから歓声が上がる。
城壁を揺るがしていた最大の脅威の一つが沈黙したのだ。
「次よ! 破城槌を狙いなさい! 敵の攻城兵器を一つ残らず叩き潰すわよ!」
シルフィリアの翠色の瞳は冷静に戦況を見据え、最も効果的な次の一手を導き出していた。
そして、最も苛烈な前線である城壁の上では、ヴォルフが文字通り鬼神の如き戦いぶりを見せていた。
「来るなら来やがれ、雑魚どもがぁ!」
彼はオリハルコン製の大剣をまるで風車のように振り回し、城壁をよじ登ってくる魔族兵を次々と薙ぎ払っていく。その一振りは数体の魔族をまとめて城壁の外へと吹き飛ばし、肉塊へと変えた。
「うおおおおおっ! あの獣人、一人で一隊を相手にしているぞ!」
「すげえ……! あれがBランク冒険者の実力か!」
ヴォルフの圧倒的な武力は、周囲の兵士たちの士気を極限まで高めていた。彼らはヴォルフという突破不可能な壁を信じ、必死でその脇を固める。
たった三人。
エリナの奇跡的な治癒、シルフィリアの天才的な指揮、そしてヴォルフの圧倒的な武力。
カイルが敵本陣に突撃している間に、彼らもまたこの絶望的な籠城戦の流れを少しずつ、しかし確実に変え始めていたのだ。
「……信じられん……」
騎士団長は、城壁の上から砦の各所で起こっている奇跡のような光景を、ただ呆然と見つめていた。
「たった四人の冒険者が……。いや、彼らは冒険者などという枠には収まらん。まるで伝説に謳われる英雄そのものではないか……!」
彼は震える手で剣を握りしめた。
その目に諦めの色はもうない。あるのは勝利への確かな希望の光だった。
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騎士団長の檄が砦全体に響き渡る。
それに呼応するように、兵士たちの雄叫びが天を突くように轟いた。
「「「うおおおおおおおおおおっ!」」」
絶望の淵にあったアイギスの砦は、俺たち四人の参戦によって不死鳥の如く蘇ろうとしていた。
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