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第90話:アンデッドキラー
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不死将軍ネクロス。その無限の再生能力は、俺たちを絶望の淵へと追い詰めていた。物理攻撃も魔法攻撃も、エリナの聖なる光さえも、彼の体には決定的なダメージを与えられない。俺たちは、消耗していくだけだった。
「くそっ! キリがねえ!」
ヴォルフがネクロスの胴体を両断する。だが、切断面から黒い霧が噴き出し、二つになった体は瞬時に再結合してしまった。
「カイル! 何か手はないの!? あなたのその非常識なスキルで、どうにかできないの!?」
シルフィリアが必死の形相で叫ぶ。
俺もまた、思考をフル回転させていた。
不死身。だが、本当の意味で不死身の存在など、この世にはないはずだ。必ず、どこかに弱点が、核となる部分があるはず。
だが、それを見つける術がない。
(……いや)
俺の頭の中に、一つのあまりにも無謀で、狂気に満ちた考えが閃いた。
(術がないなら、作ればいい)
俺は仲間たちへと向き直った。
「……シルフィリア、ヴォルフ、エリナ。少しだけ時間を稼いでくれ」
「え?」「大将?」
「いいから頼む。あいつを俺に近づけるな」
三人は、俺の真剣な眼差しに戸惑いながらも頷いた。
彼らが決死の覚悟でネクロスの猛攻を食い止めている、その間に。
俺はインフィティを鞘に納め、その場に座り込んだ。
そして、目を閉じる。
俺がやろうとしているのは、これまでの戦いとは全く違う、新たな『やりなおし』の応用。
ネクロスの不死の力の源。それはおそらく、彼の魂にかけられた強力な『呪い』だ。
その呪いの構造、その理を、俺が『死』ぬことで解析する。
俺は、自らの心臓に、ゆっくりと魔力を込めた短剣を突き立てた。
「ぐっ……!」
激痛。仲間たちが「カイル!?」と叫ぶのが聞こえる。
俺は自ら命を絶った。
これが、一度目の『自殺』。
◇
目覚めたのは、第二階層、リリスを倒したホールだった。
俺は、すぐに第三階層へと駆け戻る。戦場では俺が消えてから、まだ数十秒しか経っていなかった。
「……カイル君! よかった……!」
「馬鹿な真似はよせ、大将!」
仲間たちの声援を背に、俺は再び自らの命を絶った。
二度目、三度目、十度目。
俺は、狂ったように自殺を繰り返した。
だが、それはただの自殺ではない。
死ぬたびに、俺は、この第三階層に満ちる『死の呪い』の空気に、その魂をわずかずつ、だが確実に触れさせていた。
ネクロスの不死の力の源である、呪いの本質。その断片を、俺の魂が死のたびに吸収し、学習していく。
死の回数が五十回を超えた頃。
俺のステータスウィンドウに変化が訪れた。
【カイル・アッシュフィールド】
レベル:1
(ステータス略)
各種耐性
**不死の呪い(解析率:35%)**
(……見えてきた)
まだ、ぼんやりとだが、呪いの構造が俺の頭の中に流れ込んでくる。それは、無数の術式が複雑に絡み合った、神代の魔法に近い高度なものだった。
だが、まだ足りない。
完全に解析するには、もっと多くの『死』が必要だ。
俺はさらに自殺を繰り返した。
仲間たちはもはや何も言わなかった。ただ、俺の狂気の挑戦を固唾を飲んで見守り、そのための時間を命がけで稼ぎ続けてくれていた。
そして、自殺の回数が百回に達した、その時。
【不死の呪い(解析率:100%)】
【スキル『アンデッドキラー』を獲得しました】
俺の脳内に奔流のような情報が流れ込んできた。
ネクロスの不死の呪いの、全ての構造。
その弱点。そして、それを打ち破るための唯一の方法。
俺は、ついにその答えにたどり着いた。
◇
百一回目の復活。
俺はもはや別人だった。
その瞳には、神の領域さえも覗き込んだかのような、深い叡智の光が宿っていた。
俺は戦場へと戻った。
仲間たちはすでに満身創痍だった。だが、彼らはまだ立っていた。
「……おかえリ、カイル」
シルフィリアが血を吐きながらも、不敵に笑った。
「遅かったじゃねえか、大将」
ヴォルフもまた折れた腕で、それでも大剣を支えていた。
「……信じて待っていました」
エリナも聖なる光を絶やすことなく、祈り続けていた。
「……ああ。待たせたな」
俺は仲間たちに静かに告げた。
「もう大丈夫だ」
俺はインフィニティを抜き放つと、ネクロスへと向き直った。
「……ほう。また蘇ったか。そして、何やら雰囲気が変わったな。だが、無駄だ。貴様に我を滅する術は……」
「ある。ここに」
俺はネクロスの言葉を遮った。
そして、隣に立つエリナへと視線を送る。
「エリナ。俺の言う通りに聖なる言葉を唱えてくれ」
「……うん」
彼女は力強く頷いた。
俺は、脳内に流れ込んできた、呪いを解くための古代の祝詞をエリナに伝える。
それは、神官である彼女にしか扱えない神聖な言霊だった。
エリナが清らかな声でその祝詞を唱え始めた。
彼女の体から、これまでで最も強く純粋な黄金の光が溢れ出す。
「な……! なんだ、その言葉は……!?」
ネクロスが初めて、動揺の声を上げた。
エリナの祝詞が、彼の不死の呪いのその根幹を直接揺さぶり始めていたのだ。
「やめろ……! やめろおおおおっ!」
ネクロスは、エリナの詠唱を阻止しようと大鎌を振りかぶる。
だが、その一撃は俺とヴォルフの剣によって完全に阻まれた。
「てめえの相手は俺たちだ!」
そして、エリナの詠唱がついに完了した。
彼女が最後の言霊を、高らかに紡ぐ。
「―――光よ!」
その瞬間、彼女の体から放たれた黄金の光が一本の槍となって、ネクロスの体を貫いた。
それは物理的なダメージを与えるものではない。
彼の魂を縛り付けていた『不死の呪い』そのものを浄化する、聖なる一撃だった。
「ぎ……ぎぎ……あああああああああああっ!」
ネクロスは断末魔の絶叫を上げた。
彼の体から黒い霧が急速に霧散していく。
無限の再生能力が失われていく。
彼は今、この瞬間、『不死』ではなくただの『死者』へと戻ったのだ。
「……今だ!」
俺は叫んだ。
これが最後の好機。
俺、シルフィリア、ヴォルフ。
俺たち三人は、残された全ての力を最後の一撃に込めた。
俺のインフィニティが閃光を放つ。
シルフィリアのエレメンタル・バーストが再び炸裂する。
ヴォルフのオリハルコンの大剣が大地を揺るがす。
三つの必殺の一撃が、再生能力を失ったネクロスの体に同時に叩き込まれた。
「……ああ……。これぞ、我が望んだ……安息……」
ネクロスは満足げな、安らかな声でそう呟いた。
そして、その体は内側からまばてい光を放ち、塵となって静かに崩れ落ちていった。
四天王、三人目。不死将V軍ネクロス、撃破。
後に残されたのは、血のように赤かった月がその色を失い、穏やかな銀色の光を取り戻した静かな夜空だけだった。
俺たちは、またしても勝利した。
俺の百回の自殺と。
仲間たちの揺るぎない絆が。
不死という絶対的な絶望さえも、打ち破ったのだ。
俺たちは満身創痍の体で互いに支え合いながら、静かにその勝利を噛みしめていた。
「くそっ! キリがねえ!」
ヴォルフがネクロスの胴体を両断する。だが、切断面から黒い霧が噴き出し、二つになった体は瞬時に再結合してしまった。
「カイル! 何か手はないの!? あなたのその非常識なスキルで、どうにかできないの!?」
シルフィリアが必死の形相で叫ぶ。
俺もまた、思考をフル回転させていた。
不死身。だが、本当の意味で不死身の存在など、この世にはないはずだ。必ず、どこかに弱点が、核となる部分があるはず。
だが、それを見つける術がない。
(……いや)
俺の頭の中に、一つのあまりにも無謀で、狂気に満ちた考えが閃いた。
(術がないなら、作ればいい)
俺は仲間たちへと向き直った。
「……シルフィリア、ヴォルフ、エリナ。少しだけ時間を稼いでくれ」
「え?」「大将?」
「いいから頼む。あいつを俺に近づけるな」
三人は、俺の真剣な眼差しに戸惑いながらも頷いた。
彼らが決死の覚悟でネクロスの猛攻を食い止めている、その間に。
俺はインフィティを鞘に納め、その場に座り込んだ。
そして、目を閉じる。
俺がやろうとしているのは、これまでの戦いとは全く違う、新たな『やりなおし』の応用。
ネクロスの不死の力の源。それはおそらく、彼の魂にかけられた強力な『呪い』だ。
その呪いの構造、その理を、俺が『死』ぬことで解析する。
俺は、自らの心臓に、ゆっくりと魔力を込めた短剣を突き立てた。
「ぐっ……!」
激痛。仲間たちが「カイル!?」と叫ぶのが聞こえる。
俺は自ら命を絶った。
これが、一度目の『自殺』。
◇
目覚めたのは、第二階層、リリスを倒したホールだった。
俺は、すぐに第三階層へと駆け戻る。戦場では俺が消えてから、まだ数十秒しか経っていなかった。
「……カイル君! よかった……!」
「馬鹿な真似はよせ、大将!」
仲間たちの声援を背に、俺は再び自らの命を絶った。
二度目、三度目、十度目。
俺は、狂ったように自殺を繰り返した。
だが、それはただの自殺ではない。
死ぬたびに、俺は、この第三階層に満ちる『死の呪い』の空気に、その魂をわずかずつ、だが確実に触れさせていた。
ネクロスの不死の力の源である、呪いの本質。その断片を、俺の魂が死のたびに吸収し、学習していく。
死の回数が五十回を超えた頃。
俺のステータスウィンドウに変化が訪れた。
【カイル・アッシュフィールド】
レベル:1
(ステータス略)
各種耐性
**不死の呪い(解析率:35%)**
(……見えてきた)
まだ、ぼんやりとだが、呪いの構造が俺の頭の中に流れ込んでくる。それは、無数の術式が複雑に絡み合った、神代の魔法に近い高度なものだった。
だが、まだ足りない。
完全に解析するには、もっと多くの『死』が必要だ。
俺はさらに自殺を繰り返した。
仲間たちはもはや何も言わなかった。ただ、俺の狂気の挑戦を固唾を飲んで見守り、そのための時間を命がけで稼ぎ続けてくれていた。
そして、自殺の回数が百回に達した、その時。
【不死の呪い(解析率:100%)】
【スキル『アンデッドキラー』を獲得しました】
俺の脳内に奔流のような情報が流れ込んできた。
ネクロスの不死の呪いの、全ての構造。
その弱点。そして、それを打ち破るための唯一の方法。
俺は、ついにその答えにたどり着いた。
◇
百一回目の復活。
俺はもはや別人だった。
その瞳には、神の領域さえも覗き込んだかのような、深い叡智の光が宿っていた。
俺は戦場へと戻った。
仲間たちはすでに満身創痍だった。だが、彼らはまだ立っていた。
「……おかえリ、カイル」
シルフィリアが血を吐きながらも、不敵に笑った。
「遅かったじゃねえか、大将」
ヴォルフもまた折れた腕で、それでも大剣を支えていた。
「……信じて待っていました」
エリナも聖なる光を絶やすことなく、祈り続けていた。
「……ああ。待たせたな」
俺は仲間たちに静かに告げた。
「もう大丈夫だ」
俺はインフィニティを抜き放つと、ネクロスへと向き直った。
「……ほう。また蘇ったか。そして、何やら雰囲気が変わったな。だが、無駄だ。貴様に我を滅する術は……」
「ある。ここに」
俺はネクロスの言葉を遮った。
そして、隣に立つエリナへと視線を送る。
「エリナ。俺の言う通りに聖なる言葉を唱えてくれ」
「……うん」
彼女は力強く頷いた。
俺は、脳内に流れ込んできた、呪いを解くための古代の祝詞をエリナに伝える。
それは、神官である彼女にしか扱えない神聖な言霊だった。
エリナが清らかな声でその祝詞を唱え始めた。
彼女の体から、これまでで最も強く純粋な黄金の光が溢れ出す。
「な……! なんだ、その言葉は……!?」
ネクロスが初めて、動揺の声を上げた。
エリナの祝詞が、彼の不死の呪いのその根幹を直接揺さぶり始めていたのだ。
「やめろ……! やめろおおおおっ!」
ネクロスは、エリナの詠唱を阻止しようと大鎌を振りかぶる。
だが、その一撃は俺とヴォルフの剣によって完全に阻まれた。
「てめえの相手は俺たちだ!」
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「―――光よ!」
その瞬間、彼女の体から放たれた黄金の光が一本の槍となって、ネクロスの体を貫いた。
それは物理的なダメージを与えるものではない。
彼の魂を縛り付けていた『不死の呪い』そのものを浄化する、聖なる一撃だった。
「ぎ……ぎぎ……あああああああああああっ!」
ネクロスは断末魔の絶叫を上げた。
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無限の再生能力が失われていく。
彼は今、この瞬間、『不死』ではなくただの『死者』へと戻ったのだ。
「……今だ!」
俺は叫んだ。
これが最後の好機。
俺、シルフィリア、ヴォルフ。
俺たち三人は、残された全ての力を最後の一撃に込めた。
俺のインフィニティが閃光を放つ。
シルフィリアのエレメンタル・バーストが再び炸裂する。
ヴォルフのオリハルコンの大剣が大地を揺るがす。
三つの必殺の一撃が、再生能力を失ったネクロスの体に同時に叩き込まれた。
「……ああ……。これぞ、我が望んだ……安息……」
ネクロスは満足げな、安らかな声でそう呟いた。
そして、その体は内側からまばてい光を放ち、塵となって静かに崩れ落ちていった。
四天王、三人目。不死将V軍ネクロス、撃破。
後に残されたのは、血のように赤かった月がその色を失い、穏やかな銀色の光を取り戻した静かな夜空だけだった。
俺たちは、またしても勝利した。
俺の百回の自殺と。
仲間たちの揺るぎない絆が。
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