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第四十話:過去への回帰、未来への分岐
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研究工房の静寂の中で、俺は解析モニターの光に照らされていた。目の前には、『時空結晶』から抽出された複雑なエネルギーパターンと、『グラビティ・コード』の解読を進める中で見えてきた法則性の断片が映し出されている。模倣者の残骸から得られたデータも、少しずつだが解析が進み、敵の技術の一端が明らかになりつつあった。
(…模倣者の『法則干渉』は、俺のものとは根本的に異なるアプローチだ。俺が物理・化学法則の理解に基づいて既存の法則を『操作』するのに対し、奴らのは、より高次の、あるいは未知の法則体系を利用して、結果だけを『模倣』しているように見える。だが、その分、応用範囲は限定的で、エネルギー効率も悪いようだ。そして、特定の干渉パターンに対して脆弱性を持つ…)
それは、対抗策を練る上で重要な発見だった。俺は早速、その脆弱性を突くための新たな『法則操作』パターンの開発と、防御システムの改良に取り掛かった。
時空結晶の影響も、無視できないレベルになっていた。限定的な未来予知――というよりは、「可能性の観測」とでも言うべきか――の精度が僅かに上がり、戦闘シミュレーションでの反応速度も向上している。空間認識能力も研ぎ澄まされ、工房内の隠された配線や、壁の向こう側のセバスチャンの気配すら、以前より鮮明に感じ取れるようになっていた。
(…この力は、諸刃の剣だ。使い方を誤れば、現実と可能性の区別がつかなくなり、精神が崩壊しかねない。常に、冷静な分析と制御が必要だ)
俺は自身の変化を客観的に捉え、その制御方法についても研究を進めた。『状態保存』スキルを応用し、自身の精神状態や認識プロセスを安定化させるメンタル・プロテクションのような技術だ。
そんな中、セバスチャンが調査報告を持ってきた。
「神崎様、相沢様と『ノア』に関する調査ですが、依然として難航しております。彼らは極めて巧妙に痕跡を消しており、リンドバーグ家の情報網をもってしても、決定的な情報は得られておりません。ただ…」
「ただ?」
「アトラス・コーポレーションの内部情報の一部を入手しました。彼らが開発中と噂される新型の生体兵器…コードネーム『キメラ』ですが、その試作品の一つが、近々フロンティア近郊のダンジョンで実戦テストされる可能性がある、とのことです」
アトラス社の新型生体兵器『キメラ』。それが、物理法則に干渉する能力を持つという噂の個体だろうか?
「実戦テスト…どのダンジョンだ?」
「正確な場所までは特定できておりません。ですが、Bランク以上の、比較的環境が安定しており、データ収集に適した場所が選ばれる可能性が高いかと」
「…そうか」
敵の動きが具体化してきた。受動的に待つのではなく、こちらから動く必要性が、ますます高まっている。俺の研究成果を実証し、さらなる進化を促すためにも、新たな挑戦が必要だ。
「セバスチャン、次の目標を決めた」
俺は、工房の大型モニターに、いくつかのダンジョン候補のデータを表示させた。Cランク上位からBランクに分類される、特殊環境を持つ、あるいはプライマル・コードの存在が示唆されるダンジョンだ。
「ここだ。『クロノス遺跡』。Bランク上位指定。内部の時間流が不安定で、過去や未来の幻影、あるいは時間断層のようなものが観測されるという。プライマル・コードに酷似した古代文字の存在も報告されている」
時間流が不安定なダンジョン。時空結晶の影響を受け始めている俺にとって、これ以上ないほど興味深く、そして危険な場所だ。だが、時空に関する『法則』を理解するためには、避けては通れない道だろう。プライマル・コードに似た古代文字も、コード解読の大きな手がかりになるかもしれない。
「『クロノス遺跡』…またしても、極めて難易度の高い場所を選ばれましたな。時間異常は、重力異常以上に予測と対処が困難とされています。精神への負荷も計り知れませんぞ」
「承知の上だ。俺の今の能力なら、あるいは対応できるかもしれない。それに、アトラス社の『キメラ』がテストされるとしたら、ああいう特殊環境ダンジョンを選ぶ可能性もある」
俺は、半ばこじつけに近い理由を付け加えた。本音は、純粋な知的好奇心と、時空法則への挑戦欲だ。
セバスチャンは、俺の決意が固いことを見て取ると、静かに頷いた。
「…分かりました。エリーゼ様にご報告し、万全の準備を整えましょう」
再び、ギルドへ情報収集に向かう。Dランクになったとはいえ、Bランク上位ダンジョンの情報は限られている。過去の攻略記録や、生還者の証言などを、丹念に読み解いていく。
『クロノス遺跡』の資料を調べていると、隣のテーブルで他の探索者たちが交わしている会話が、ふと耳に入ってきた。
「おい、聞いたか? 橘の坊っちゃんのことだよ」
「橘…ああ、あの銀髪のエリート剣士か。確か、Aランクだったのに、何かやらかしてギルドから追われてるって…」
「それがよ、最近妙な噂が立ってるんだ。奴が、自分の家…あの名門の橘家と、完全に袂を分かったらしい。それも、家の秘匿してきた『何か』を持ち出して、な」
「なんだって!? 橘家といえば、代々強力な魔力剣のスキルを受け継ぐエリート一族だろ? そんな家の秘匿物って…とんでもない代物なんじゃ…」
「ああ。なんでも、古代文明の遺物か、あるいは失われたスキルに関わるものじゃないかって噂だ。それで、ギルドだけでなく、橘家自身も躍起になって奴を探してるらしい」
橘蓮(レン)。やはり、彼はあの指名手配の人物で間違いないようだ。そして、彼の家系と、古代文明や失われたスキル。何やら、きな臭い話だ。彼が持ち出した「何か」とは一体…?
(…橘蓮もまた、何らかの『法則』の渦中にいるのか)
俺は、僅かな興味と、それ以上の厄介事の予感を感じながら、資料に視線を戻した。今は、自分の課題に集中すべきだ。
『クロノス遺跡』に関する情報は、やはり断片的だった。時間流の異常、過去の幻影、時を操るかのようなモンスターの存在。そして、最深部には、時間を歪める力を持つ強力なガーディアンがいるという伝説。生還者のほとんどが、精神的なダメージを負っているという記述も多い。
「…これは、生半可な覚悟では挑めないな」
俺は工房に戻り、出発に向けた最終準備に取り掛かった。
対時間異常装備として、『状態保存』を応用した『クロノスタシス・フィールド発生装置(試作)』を開発。これは、ごく限定的な範囲だが、外部の時間流の影響を緩和し、内部の時間を一定に保つことを試みるデバイスだ。MP消費は膨大で、持続時間も短いが、緊急時には役立つかもしれない。
メンタル・プロテクション機能も強化し、幻覚や精神汚染への耐性を高める。装備も、これまでの集大成と言える、最新バージョンへとアップデートした。
セバスチャンも、時間異常に対応するための特殊装備を準備しているようだった。彼ほどの熟練者でも、『クロノス遺跡』は未知の領域なのだろう。
数日後、全ての準備が整った。俺とセバスチャンは、再び装甲車両に乗り込み、フロンティアを後にした。
目指すは、過去と未来が交錯するという、Bランク上位ダンジョン『クロノス遺跡』。
車窓を流れる景色を見ながら、俺は思考を巡らせる。時空結晶、相沢の影、謎の組織『ノア』、アトラス社の『キメラ』、そして橘蓮の動向…。様々な要素が絡み合い、物語は複雑さを増していく。
(俺が進む道は、どこへ繋がっているのだろうか? 過去への回帰か、それとも未来への分岐か…)
答えは、まだ見えない。だが、俺は進むしかない。自らの『法則』を信じ、未知なる方程式の解を求めて。
『クロノス遺跡』の入り口が、地平線の向こうに見え始めていた。それは、まるで巨大な砂時計のように、時の流れから取り残されたかのような、異様な雰囲気を漂わせていた。
(…模倣者の『法則干渉』は、俺のものとは根本的に異なるアプローチだ。俺が物理・化学法則の理解に基づいて既存の法則を『操作』するのに対し、奴らのは、より高次の、あるいは未知の法則体系を利用して、結果だけを『模倣』しているように見える。だが、その分、応用範囲は限定的で、エネルギー効率も悪いようだ。そして、特定の干渉パターンに対して脆弱性を持つ…)
それは、対抗策を練る上で重要な発見だった。俺は早速、その脆弱性を突くための新たな『法則操作』パターンの開発と、防御システムの改良に取り掛かった。
時空結晶の影響も、無視できないレベルになっていた。限定的な未来予知――というよりは、「可能性の観測」とでも言うべきか――の精度が僅かに上がり、戦闘シミュレーションでの反応速度も向上している。空間認識能力も研ぎ澄まされ、工房内の隠された配線や、壁の向こう側のセバスチャンの気配すら、以前より鮮明に感じ取れるようになっていた。
(…この力は、諸刃の剣だ。使い方を誤れば、現実と可能性の区別がつかなくなり、精神が崩壊しかねない。常に、冷静な分析と制御が必要だ)
俺は自身の変化を客観的に捉え、その制御方法についても研究を進めた。『状態保存』スキルを応用し、自身の精神状態や認識プロセスを安定化させるメンタル・プロテクションのような技術だ。
そんな中、セバスチャンが調査報告を持ってきた。
「神崎様、相沢様と『ノア』に関する調査ですが、依然として難航しております。彼らは極めて巧妙に痕跡を消しており、リンドバーグ家の情報網をもってしても、決定的な情報は得られておりません。ただ…」
「ただ?」
「アトラス・コーポレーションの内部情報の一部を入手しました。彼らが開発中と噂される新型の生体兵器…コードネーム『キメラ』ですが、その試作品の一つが、近々フロンティア近郊のダンジョンで実戦テストされる可能性がある、とのことです」
アトラス社の新型生体兵器『キメラ』。それが、物理法則に干渉する能力を持つという噂の個体だろうか?
「実戦テスト…どのダンジョンだ?」
「正確な場所までは特定できておりません。ですが、Bランク以上の、比較的環境が安定しており、データ収集に適した場所が選ばれる可能性が高いかと」
「…そうか」
敵の動きが具体化してきた。受動的に待つのではなく、こちらから動く必要性が、ますます高まっている。俺の研究成果を実証し、さらなる進化を促すためにも、新たな挑戦が必要だ。
「セバスチャン、次の目標を決めた」
俺は、工房の大型モニターに、いくつかのダンジョン候補のデータを表示させた。Cランク上位からBランクに分類される、特殊環境を持つ、あるいはプライマル・コードの存在が示唆されるダンジョンだ。
「ここだ。『クロノス遺跡』。Bランク上位指定。内部の時間流が不安定で、過去や未来の幻影、あるいは時間断層のようなものが観測されるという。プライマル・コードに酷似した古代文字の存在も報告されている」
時間流が不安定なダンジョン。時空結晶の影響を受け始めている俺にとって、これ以上ないほど興味深く、そして危険な場所だ。だが、時空に関する『法則』を理解するためには、避けては通れない道だろう。プライマル・コードに似た古代文字も、コード解読の大きな手がかりになるかもしれない。
「『クロノス遺跡』…またしても、極めて難易度の高い場所を選ばれましたな。時間異常は、重力異常以上に予測と対処が困難とされています。精神への負荷も計り知れませんぞ」
「承知の上だ。俺の今の能力なら、あるいは対応できるかもしれない。それに、アトラス社の『キメラ』がテストされるとしたら、ああいう特殊環境ダンジョンを選ぶ可能性もある」
俺は、半ばこじつけに近い理由を付け加えた。本音は、純粋な知的好奇心と、時空法則への挑戦欲だ。
セバスチャンは、俺の決意が固いことを見て取ると、静かに頷いた。
「…分かりました。エリーゼ様にご報告し、万全の準備を整えましょう」
再び、ギルドへ情報収集に向かう。Dランクになったとはいえ、Bランク上位ダンジョンの情報は限られている。過去の攻略記録や、生還者の証言などを、丹念に読み解いていく。
『クロノス遺跡』の資料を調べていると、隣のテーブルで他の探索者たちが交わしている会話が、ふと耳に入ってきた。
「おい、聞いたか? 橘の坊っちゃんのことだよ」
「橘…ああ、あの銀髪のエリート剣士か。確か、Aランクだったのに、何かやらかしてギルドから追われてるって…」
「それがよ、最近妙な噂が立ってるんだ。奴が、自分の家…あの名門の橘家と、完全に袂を分かったらしい。それも、家の秘匿してきた『何か』を持ち出して、な」
「なんだって!? 橘家といえば、代々強力な魔力剣のスキルを受け継ぐエリート一族だろ? そんな家の秘匿物って…とんでもない代物なんじゃ…」
「ああ。なんでも、古代文明の遺物か、あるいは失われたスキルに関わるものじゃないかって噂だ。それで、ギルドだけでなく、橘家自身も躍起になって奴を探してるらしい」
橘蓮(レン)。やはり、彼はあの指名手配の人物で間違いないようだ。そして、彼の家系と、古代文明や失われたスキル。何やら、きな臭い話だ。彼が持ち出した「何か」とは一体…?
(…橘蓮もまた、何らかの『法則』の渦中にいるのか)
俺は、僅かな興味と、それ以上の厄介事の予感を感じながら、資料に視線を戻した。今は、自分の課題に集中すべきだ。
『クロノス遺跡』に関する情報は、やはり断片的だった。時間流の異常、過去の幻影、時を操るかのようなモンスターの存在。そして、最深部には、時間を歪める力を持つ強力なガーディアンがいるという伝説。生還者のほとんどが、精神的なダメージを負っているという記述も多い。
「…これは、生半可な覚悟では挑めないな」
俺は工房に戻り、出発に向けた最終準備に取り掛かった。
対時間異常装備として、『状態保存』を応用した『クロノスタシス・フィールド発生装置(試作)』を開発。これは、ごく限定的な範囲だが、外部の時間流の影響を緩和し、内部の時間を一定に保つことを試みるデバイスだ。MP消費は膨大で、持続時間も短いが、緊急時には役立つかもしれない。
メンタル・プロテクション機能も強化し、幻覚や精神汚染への耐性を高める。装備も、これまでの集大成と言える、最新バージョンへとアップデートした。
セバスチャンも、時間異常に対応するための特殊装備を準備しているようだった。彼ほどの熟練者でも、『クロノス遺跡』は未知の領域なのだろう。
数日後、全ての準備が整った。俺とセバスチャンは、再び装甲車両に乗り込み、フロンティアを後にした。
目指すは、過去と未来が交錯するという、Bランク上位ダンジョン『クロノス遺跡』。
車窓を流れる景色を見ながら、俺は思考を巡らせる。時空結晶、相沢の影、謎の組織『ノア』、アトラス社の『キメラ』、そして橘蓮の動向…。様々な要素が絡み合い、物語は複雑さを増していく。
(俺が進む道は、どこへ繋がっているのだろうか? 過去への回帰か、それとも未来への分岐か…)
答えは、まだ見えない。だが、俺は進むしかない。自らの『法則』を信じ、未知なる方程式の解を求めて。
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