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第6話 予期せぬ危機
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洞窟の探索は、その後も順調に進んでいるように見えた。健太はただ後方で荷物を出し入れするだけの機械と化し、田中たちは面白いようにゴブリンを狩っていく。彼らの間には、すでに慢心の空気が漂っていた。
「はっ、ゴブリンなんて何匹いようが雑魚は雑魚だな」
「まったくだ。それにしても、ポーターのスキルは当たりだったな。おかげでポーションも矢も気にせず使える」
彼らの会話は、健太の耳にも届いていた。自分のスキルが役に立っているのは事実だろう。だが、それは健太自身が評価されているわけではない。便利な道具として、その機能が評価されているに過ぎなかった。
やがて一行は、洞窟の深部にある広間のような空間にたどり着いた。天井は高く、中央には儀式でも行うかのような石の祭壇が鎮座している。魔石のドロップを期待してか、田中たちの顔に欲望の色が浮かんだ。
「よし、ここがお宝の場所だ。気を引き締めて――」
田中がそう言いかけた、その瞬間だった。
「ギギッ、ギシャアア!」
甲高い叫び声と共に、広間の四方に空いた横穴や岩陰から、無数のゴブリンが姿を現したのだ。その数は、これまでに遭遇した比ではない。ざっと数えても二十は超えている。完全に包囲されていた。
「くそっ、待ち伏せか!」
田中が悪態をつき、パーティーは即座に背中合わせの陣形を組む。しかし、四方八方から同時に襲いかかってくるゴブリンの波は、三人の連携をいともたやすく分断した。
「ぐあっ!」
前衛の一人が、背後から忍び寄ったゴブリンの棍棒を肩に受け、体勢を崩す。そこへ、別のゴブリンが汚れたナイフを突き出した。
「しまっ――!」
前衛の男が死を覚悟したその時、横から飛び込んできた田中が大剣でゴブリンを薙ぎ払う。だが、その代償は大きかった。田中の注意が逸れた一瞬を突き、別のゴブリンが前衛のもう一人の足に深々と棍棒を叩きつけたのだ。
「うおおっ!」
鈍い骨の音と共に、戦士が膝から崩れ落ちる。彼は激痛に顔を歪めながらも、迫りくるゴブリンに剣を振るおうとするが、動きが明らかに鈍い。
「鈴木! ポーションを早く!」
田中が叫ぶ。だが、負傷した鈴木と呼ばれた男は、痛みに呻きながら自分の腰のポーチを探るも、うまく掴むことができない。
「だめだ、手が……!」
焦りの色が、パーティー全体に伝染していく。
「貸せ! 俺のを!」
田中は自分の背中のリュックに手を伸ばし、がさごそと中を探り始めた。だが、焦れば焦るほど、目当ての赤い小瓶は見つからない。
「どこだ! ポーションはどこに入れた!? クソッ!」
彼の怒声が、ゴブリンたちの奇声に混じって虚しく響く。
その間も、ゴブリンの包囲網は着実に狭まっていた。
壁際で息を殺していた健太は、その光景をただ震えながら見つめていた。彼の【無限収納】の中には、赤い回復薬が何十本も入っている。思考一つで、一瞬で取り出せる場所に。
しかし、リーダーの命令は「前に出るな」。自分が動けば、陣形を乱し、さらに危険な状況を招くかもしれない。
助けたい。でも、怖い。
無力なサラリーマンである自分に、何ができるというのか。
健太の足は、まるで地面に縫い付けられたように動かなかった。
「はっ、ゴブリンなんて何匹いようが雑魚は雑魚だな」
「まったくだ。それにしても、ポーターのスキルは当たりだったな。おかげでポーションも矢も気にせず使える」
彼らの会話は、健太の耳にも届いていた。自分のスキルが役に立っているのは事実だろう。だが、それは健太自身が評価されているわけではない。便利な道具として、その機能が評価されているに過ぎなかった。
やがて一行は、洞窟の深部にある広間のような空間にたどり着いた。天井は高く、中央には儀式でも行うかのような石の祭壇が鎮座している。魔石のドロップを期待してか、田中たちの顔に欲望の色が浮かんだ。
「よし、ここがお宝の場所だ。気を引き締めて――」
田中がそう言いかけた、その瞬間だった。
「ギギッ、ギシャアア!」
甲高い叫び声と共に、広間の四方に空いた横穴や岩陰から、無数のゴブリンが姿を現したのだ。その数は、これまでに遭遇した比ではない。ざっと数えても二十は超えている。完全に包囲されていた。
「くそっ、待ち伏せか!」
田中が悪態をつき、パーティーは即座に背中合わせの陣形を組む。しかし、四方八方から同時に襲いかかってくるゴブリンの波は、三人の連携をいともたやすく分断した。
「ぐあっ!」
前衛の一人が、背後から忍び寄ったゴブリンの棍棒を肩に受け、体勢を崩す。そこへ、別のゴブリンが汚れたナイフを突き出した。
「しまっ――!」
前衛の男が死を覚悟したその時、横から飛び込んできた田中が大剣でゴブリンを薙ぎ払う。だが、その代償は大きかった。田中の注意が逸れた一瞬を突き、別のゴブリンが前衛のもう一人の足に深々と棍棒を叩きつけたのだ。
「うおおっ!」
鈍い骨の音と共に、戦士が膝から崩れ落ちる。彼は激痛に顔を歪めながらも、迫りくるゴブリンに剣を振るおうとするが、動きが明らかに鈍い。
「鈴木! ポーションを早く!」
田中が叫ぶ。だが、負傷した鈴木と呼ばれた男は、痛みに呻きながら自分の腰のポーチを探るも、うまく掴むことができない。
「だめだ、手が……!」
焦りの色が、パーティー全体に伝染していく。
「貸せ! 俺のを!」
田中は自分の背中のリュックに手を伸ばし、がさごそと中を探り始めた。だが、焦れば焦るほど、目当ての赤い小瓶は見つからない。
「どこだ! ポーションはどこに入れた!? クソッ!」
彼の怒声が、ゴブリンたちの奇声に混じって虚しく響く。
その間も、ゴブリンの包囲網は着実に狭まっていた。
壁際で息を殺していた健太は、その光景をただ震えながら見つめていた。彼の【無限収納】の中には、赤い回復薬が何十本も入っている。思考一つで、一瞬で取り出せる場所に。
しかし、リーダーの命令は「前に出るな」。自分が動けば、陣形を乱し、さらに危険な状況を招くかもしれない。
助けたい。でも、怖い。
無力なサラリーマンである自分に、何ができるというのか。
健太の足は、まるで地面に縫い付けられたように動かなかった。
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