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第5話 ゴブリンの洞窟へ
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翌朝、夜明け前の薄闇がまだ街を覆う中、健太は探索者ギルドの前に立っていた。手にはコンビニで買ったパンと水の入ったボトル。そして、空のリュックサック。これが彼の全装備だった。
やがて、リーダーの田中たちが欠伸をしながら現れる。健太の姿を認めると、田中は顎でくいと指図した。
「おう、ポーター。来たか。早速だが、これ全部しまってくれ」
彼らが地面に置いたのは、山のような荷物だった。予備の剣や防具、大量のポーション、食料、ロープ、ランタンの油。およそ、三人で背負うには無理がある量だ。
「これを、全部ですか?」
「当たり前だろ。そのための無限収納だろうが」
健太は黙って頷き、荷物に手を触れた。意識を集中させると、目の前のアイテムがふわりと光の粒子に包まれ、健太の掌に吸い込まれるように消えていく。ものの数分で、あれだけあった荷物の山は跡形もなくなった。
「おお、こりゃ便利だ。いくらでも持ってこれるな」
田中たちは満足げに頷くと、身軽になった体でさっさと歩き出した。健太はその後ろを、まるで従者のように小走りでついていくしかなかった。
目的地の「ゴブリンの洞窟」は、都市部から少し離れた森の中に、ぽっかりと口を開けていた。ひんやりとした湿った空気が、洞窟の入り口から漂ってくる。内部は薄暗く、壁には苔が生え、水滴がぽたぽたと落ちる音が不気味に響いていた。
「行くぞ。ポーターは俺たちの三歩後ろを付いてこい。邪魔だから前に出るなよ」
健太は頷き、言われた通りに距離を保つ。田中たちは手慣れた様子で松明に火を灯し、隊列を組んで洞窟の奥へと進んでいった。
しばらく進むと、前方の暗がりから、ギィ、と甲高い鳴き声が聞こえた。
「ゴブリンだ。二匹か」
田中が冷静に告げると、パーティーの前衛二人が剣を構える。暗闇から飛び出してきたのは、緑色の肌をした小柄な魔物、ゴブリンだった。汚れた棍棒を振り回し、奇声をあげて突進してくる。
しかし、練度の高いDランクパーティーにとって、ゴブリンは敵ではなかった。戦士の一人が盾で攻撃を受け止め、もう一人がその隙に剣を振るう。鈍い音と共にゴブリンの一匹が崩れ落ちた。残りの一匹も、田中の大剣の一振りで呆気なく沈黙した。
その間、健太はただ壁際に身を寄せ、固唾をのんで戦闘を見守ることしかできなかった。武器すら持っていない。そもそも、戦い方など知らない。自分にできるのは、彼らの邪魔にならないように息を潜めることだけ。
「おい、ポーター。喉が渇いた。水を出せ」
戦闘後、田中が乱暴に命令する。健太は急いで意識を集中し、【無限収納】から水の入ったボトルを取り出して差し出した。
「ちっ、ぬるいな。まあいい」
田中は文句を言いながら水を呷ると、空になったボトルを健太に投げ返す。
「しまっとけ」
ただ、言われるがままに。まるで、感情を持たない便利な道具のように。
健太は唇を噛み、再びボトルを収納した。サラリーマン時代に上司から理不尽な雑用を押し付けられた時と、何も変わらない。場所が会社からダンジョンに変わっただけだ。
情けなさが胸に込み上げるが、今は耐えるしかなかった。日当、銀貨五枚。そのために、彼はここにいるのだから。
パーティーは、洞窟のさらに奥深くへと歩を進めていった。
やがて、リーダーの田中たちが欠伸をしながら現れる。健太の姿を認めると、田中は顎でくいと指図した。
「おう、ポーター。来たか。早速だが、これ全部しまってくれ」
彼らが地面に置いたのは、山のような荷物だった。予備の剣や防具、大量のポーション、食料、ロープ、ランタンの油。およそ、三人で背負うには無理がある量だ。
「これを、全部ですか?」
「当たり前だろ。そのための無限収納だろうが」
健太は黙って頷き、荷物に手を触れた。意識を集中させると、目の前のアイテムがふわりと光の粒子に包まれ、健太の掌に吸い込まれるように消えていく。ものの数分で、あれだけあった荷物の山は跡形もなくなった。
「おお、こりゃ便利だ。いくらでも持ってこれるな」
田中たちは満足げに頷くと、身軽になった体でさっさと歩き出した。健太はその後ろを、まるで従者のように小走りでついていくしかなかった。
目的地の「ゴブリンの洞窟」は、都市部から少し離れた森の中に、ぽっかりと口を開けていた。ひんやりとした湿った空気が、洞窟の入り口から漂ってくる。内部は薄暗く、壁には苔が生え、水滴がぽたぽたと落ちる音が不気味に響いていた。
「行くぞ。ポーターは俺たちの三歩後ろを付いてこい。邪魔だから前に出るなよ」
健太は頷き、言われた通りに距離を保つ。田中たちは手慣れた様子で松明に火を灯し、隊列を組んで洞窟の奥へと進んでいった。
しばらく進むと、前方の暗がりから、ギィ、と甲高い鳴き声が聞こえた。
「ゴブリンだ。二匹か」
田中が冷静に告げると、パーティーの前衛二人が剣を構える。暗闇から飛び出してきたのは、緑色の肌をした小柄な魔物、ゴブリンだった。汚れた棍棒を振り回し、奇声をあげて突進してくる。
しかし、練度の高いDランクパーティーにとって、ゴブリンは敵ではなかった。戦士の一人が盾で攻撃を受け止め、もう一人がその隙に剣を振るう。鈍い音と共にゴブリンの一匹が崩れ落ちた。残りの一匹も、田中の大剣の一振りで呆気なく沈黙した。
その間、健太はただ壁際に身を寄せ、固唾をのんで戦闘を見守ることしかできなかった。武器すら持っていない。そもそも、戦い方など知らない。自分にできるのは、彼らの邪魔にならないように息を潜めることだけ。
「おい、ポーター。喉が渇いた。水を出せ」
戦闘後、田中が乱暴に命令する。健太は急いで意識を集中し、【無限収納】から水の入ったボトルを取り出して差し出した。
「ちっ、ぬるいな。まあいい」
田中は文句を言いながら水を呷ると、空になったボトルを健太に投げ返す。
「しまっとけ」
ただ、言われるがままに。まるで、感情を持たない便利な道具のように。
健太は唇を噛み、再びボトルを収納した。サラリーマン時代に上司から理不尽な雑用を押し付けられた時と、何も変わらない。場所が会社からダンジョンに変わっただけだ。
情けなさが胸に込み上げるが、今は耐えるしかなかった。日当、銀貨五枚。そのために、彼はここにいるのだから。
パーティーは、洞窟のさらに奥深くへと歩を進めていった。
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