【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ

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第24話 即席の連携

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「くっ…!」
シオンが小さく呻いた。
三発同時に放たれたファイアボール。一発目は刀で切り裂き、二発目は最小限の動きで回避した。だが、三発目が、わずかに体勢を崩した彼女の肩を掠めた。軽装鎧が赤熱し、焼け焦げた匂いが漂う。

オークジェネラルは、好機と見た。
杖を再び掲げ、さらに巨大な、先ほどとは比較にならないほどの魔力を込めた火球を生成し始める。あれを食らえば、いくらシオンでもただでは済まない。

茂みの中で見ていた健太は、唇を噛み締めていた。
卑怯者。そう言ったのは彼女だ。俺が手を貸す義理はない。これは俺の仕事じゃない。
だが、脳裏にちらつくのは、理不尽な要求を突き付けてくる上司と、それにただ頭を下げるしかできなかった過去の自分。そして、圧倒的な強敵を前に、たった一人で戦う少女の孤高な背中。

「……ああ、クソッ! 結局こうなるのか!」
健太は、忌々しげに呟いた。
「これは人助けじゃない。あくまで業務だ。目の前で発生した『パーティー全滅』という最悪のリスクを回避するための、緊急対応措置だ!」
彼は、自分自身にそう言い訳をすると、茂みから飛び出す代わりに、その場で深く屈み、意識を極限まで集中させた。

オークジェネラルの杖から、特大のファイアボールが撃ち放たれる。轟音と共に、それはシオンめがけて一直線に飛来した。
シオンは、全神経を集中させてそれを迎え撃とうと刀を構える。だが、その瞳には、わずかに覚悟の色が浮かんでいた。

その、シオンとファイアボールの間に。
何もないはずの空間が、直径二メートルほどの円形に、まるで陽炎のようにぐにゃりと歪んだ。
【無限収納】の入り口。健太が、スキルを最大出力で展開したのだ。

灼熱の火球は、その不可視の穴に、まるで吸い込まれるかのように何の抵抗もなく飲み込まれていった。音もなく、熱もなく、爆発すら起きない。あまりにも静かで、あまりにも異様な光景だった。

「な……!?」
オークジェネラルが、自らの魔法が消え去ったことに困惑の声を上げる。
シオンもまた、目の前で起きた現象を信じられないといった表情で見つめていた。先ほどの粘液。そして、今度の魔法消失。どちらも、この場にいるはずのない、「あの男」の仕業だと、彼女は即座に理解した。

オークジェネラルは、魔法が効かないと判断したのか、戦斧を握り直し、シオンに猛然と突進してきた。魔法という飛び道具を失った今、接近戦でねじ伏せるつもりだ。
シオンも即座に迎撃態勢に入る。だが、その時、オークジェネラルの巨体が巧みに死角を作り、戦斧とは逆の腕で、鎧の拳をシオンの脇腹めがけて突き出してきた。
あまりにも老獪な攻撃。シオンは反応したが、完全には避けきれない。

そう思った瞬間、彼女の脇腹のすぐ横に、再び空間の歪みが生じた。そこから現れたのは、分厚い鉄製のタワーシールド。健太がゴブリンキング戦の資材として購入し、そのまま収納していたものだった。
ゴッ、という鈍い音と共に、オークジェネラルの拳が盾に激突する。盾は衝撃で砕け散ったが、そのおかげでシオンは直撃を免れた。

「……!」
シオンは、声には出さなかったが、その意図を完全に理解した。
見えない支援者。彼がいる限り、自分は防御を考える必要がない。ただ、攻撃だけに集中すればいい。

彼女の剣が、それまでとは別次元の冴えを見せ始めた。
オークジェネラルの攻撃は、ことごとく健太の「置き盾」や、足元に出現する障害物によって妨害される。その度に生まれる、ほんの僅かな隙。シオンは、その一瞬の好機を、まるで予知していたかのように逃さず、的確に斬撃を叩き込んでいく。

言葉は、ない。視線すら交わさない。
だが、そこには、歴戦のパーティーですら到達できないほどの、完璧な連携が生まれていた。
一人が純粋な「矛」となり、もう一人が完璧な「盾」となる。
攻めあぐねたオークジェネラルが、最後の咆哮を上げた。だが、その時すでに、シオンの刃は鎧の最も脆い部分、喉元の関節の隙間へと、吸い込まれるように突き立てられていた。
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