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第57話 ギルド・ウォー・フェスタ開幕
『ギルド・ウォー・フェスタ』当日。
会場である特設ドームは、熱狂的な観客と、これから始まるレースへの期待で、まるで沸騰しているかのように熱気に満ちていた。巨大なスクリーンには、参加する各ギルドのフラッグと、エースパーティーの勇ましい姿が次々と映し出されていく。
その中で、『アフターファイブ』の紹介映像が流れた瞬間、会場は一瞬、奇妙な静寂に包まれた。
スクリーンに映し出されたのは、リーダーの健太と、斥候のリョウ、たった二人の姿。そこに、パーティー最強の剣士であるはずの、水無月シオンの姿はなかった。
「おい、どういうことだ?」
「『黒髪の死神』はどこに行った?」
「まさか、直前で仲間割れか? それとも、怖気づいて逃げたのか?」
観客席から、容赦ない囁き声が飛ぶ。それは、スタートラインに立つ健太とリョウの耳にも、はっきりと届いていた。
「……ちっ、好き勝手言いやがって」
リョウは、周囲の嘲笑を睨みつけ、忌々しげに吐き捨てた。
「気にするな、リョウ君」
健太は、いつものように冷静だった。
「雑音は、いつだって結果を出せば黙る。我々は、我々の仕事をするだけです」
彼らのすぐ前には、純白の騎士服を身に纏った、ジン率いる『グリフォン』の精鋭パーティーが陣取っていた。ジンは、勝ち誇ったように振り返ると、哀れむような視線を二人に向けた。
「無様だね。見捨てられた飼い主と、役立たずの道化が、二人きりで何ができるというんだい?」
その言葉は、リョウの怒りに火をつけたが、健太はただ静かに、ジンの目を見返しただけだった。
パンッ!
けたたましい号砲と共に、レースがスタートした。
各パーティーが一斉に、ダンジョンの入り口へと殺到する。
レース用に作られたダンジョンは、悪辣なまでに巧妙だった。
最初のエリアは、壁や天井から無数の毒矢が飛び出してくる、物理トラップの回廊。
「右だ! いや左! 上からも来るぞ!」
リョウが、斥候としての能力をフルに発揮し、矢の射線を見切って叫ぶ。
健太は、その声に合わせて【空間固定】で見えない盾を瞬時に展開し、矢を防いでいく。だが、二人だけでは、どうしても対処しきれない攻撃がすり抜けてくる。
「ぐっ!」
リョウの肩を、一本の矢が掠めた。シオンがいれば、その圧倒的な速度で、全ての矢を叩き落とせていただろう。戦力不足は、明らかだった。
その頃、アジトの一室。
シオンは、ギルドから貸与された中継用水晶の前に、膝を抱えて座っていた。
スクリーンには、泥臭く、必死にトラップを切り抜けようとする、健太とリョウの姿が映し出されている。
リョウが傷を負うたびに、健太が危険な盾役になるたびに、シオンの胸はナイフで抉られるように痛んだ。
私のせいだ。私が、あそこにいないから。
彼女は、自分の傍らに置かれた刀を、ただ震える手で見つめることしかできなかった。
一方、レースでは、ジン率いるグリフォンが、圧倒的な力で他を寄せ付けず、独走態勢に入っていた。彼らは、まるでダンジョンの構造をあらかじめ知っているかのように、最短ルートを、最小限の損耗で駆け抜けていく。
時折、他のパーティーの進路上に、わざと罠を作動させるような、卑劣な妨害を行いながら。
健太とリョウは、なんとか最初のトラップエリアを突破した。しかし、彼らの目の前に現れたのは、新たな絶望だった。
広間の中央で、十数体のミノタウロスが、まるで門番のように待ち構えていたのだ。戦闘能力がなければ、決して突破できないエリア。
「……おいおい、マジかよ」
リョウの顔が、青ざめる。
「お嬢さんがいなきゃ、俺たちじゃ、一体倒すのがやっとだぜ……」
先行するパーティーは、強力な魔法や連携攻撃で、ミノタウロスの群れを蹴散らしていく。だが、健太とリョウには、その決定的な火力がない。
ジンが、遠くで勝ち誇ったように笑うのが見えた。
万策尽きた。
誰もが、そう思った。
だが、健太だけは、諦めていなかった。彼は、ミノタウロスたちが守る門ではなく、その横にある、ただの頑丈な『壁』を、じっと見つめていた。
「リョウ君」
健太の声は、不思議なほど落ち着いていた。
「道がなければ、作ればいい。これも、ビジネスの基本ですよ」
会場である特設ドームは、熱狂的な観客と、これから始まるレースへの期待で、まるで沸騰しているかのように熱気に満ちていた。巨大なスクリーンには、参加する各ギルドのフラッグと、エースパーティーの勇ましい姿が次々と映し出されていく。
その中で、『アフターファイブ』の紹介映像が流れた瞬間、会場は一瞬、奇妙な静寂に包まれた。
スクリーンに映し出されたのは、リーダーの健太と、斥候のリョウ、たった二人の姿。そこに、パーティー最強の剣士であるはずの、水無月シオンの姿はなかった。
「おい、どういうことだ?」
「『黒髪の死神』はどこに行った?」
「まさか、直前で仲間割れか? それとも、怖気づいて逃げたのか?」
観客席から、容赦ない囁き声が飛ぶ。それは、スタートラインに立つ健太とリョウの耳にも、はっきりと届いていた。
「……ちっ、好き勝手言いやがって」
リョウは、周囲の嘲笑を睨みつけ、忌々しげに吐き捨てた。
「気にするな、リョウ君」
健太は、いつものように冷静だった。
「雑音は、いつだって結果を出せば黙る。我々は、我々の仕事をするだけです」
彼らのすぐ前には、純白の騎士服を身に纏った、ジン率いる『グリフォン』の精鋭パーティーが陣取っていた。ジンは、勝ち誇ったように振り返ると、哀れむような視線を二人に向けた。
「無様だね。見捨てられた飼い主と、役立たずの道化が、二人きりで何ができるというんだい?」
その言葉は、リョウの怒りに火をつけたが、健太はただ静かに、ジンの目を見返しただけだった。
パンッ!
けたたましい号砲と共に、レースがスタートした。
各パーティーが一斉に、ダンジョンの入り口へと殺到する。
レース用に作られたダンジョンは、悪辣なまでに巧妙だった。
最初のエリアは、壁や天井から無数の毒矢が飛び出してくる、物理トラップの回廊。
「右だ! いや左! 上からも来るぞ!」
リョウが、斥候としての能力をフルに発揮し、矢の射線を見切って叫ぶ。
健太は、その声に合わせて【空間固定】で見えない盾を瞬時に展開し、矢を防いでいく。だが、二人だけでは、どうしても対処しきれない攻撃がすり抜けてくる。
「ぐっ!」
リョウの肩を、一本の矢が掠めた。シオンがいれば、その圧倒的な速度で、全ての矢を叩き落とせていただろう。戦力不足は、明らかだった。
その頃、アジトの一室。
シオンは、ギルドから貸与された中継用水晶の前に、膝を抱えて座っていた。
スクリーンには、泥臭く、必死にトラップを切り抜けようとする、健太とリョウの姿が映し出されている。
リョウが傷を負うたびに、健太が危険な盾役になるたびに、シオンの胸はナイフで抉られるように痛んだ。
私のせいだ。私が、あそこにいないから。
彼女は、自分の傍らに置かれた刀を、ただ震える手で見つめることしかできなかった。
一方、レースでは、ジン率いるグリフォンが、圧倒的な力で他を寄せ付けず、独走態勢に入っていた。彼らは、まるでダンジョンの構造をあらかじめ知っているかのように、最短ルートを、最小限の損耗で駆け抜けていく。
時折、他のパーティーの進路上に、わざと罠を作動させるような、卑劣な妨害を行いながら。
健太とリョウは、なんとか最初のトラップエリアを突破した。しかし、彼らの目の前に現れたのは、新たな絶望だった。
広間の中央で、十数体のミノタウロスが、まるで門番のように待ち構えていたのだ。戦闘能力がなければ、決して突破できないエリア。
「……おいおい、マジかよ」
リョウの顔が、青ざめる。
「お嬢さんがいなきゃ、俺たちじゃ、一体倒すのがやっとだぜ……」
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ジンが、遠くで勝ち誇ったように笑うのが見えた。
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