【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ

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第78話 ダンジョンの真実

ブリーフィングルームの静寂を破ったのは、スクリーンの向こうから聞こえてきた、重々しい初老の男性の声だった。
『――本日、ご多忙の中、我が国のトップランカー諸君に集まってもらったこと、まずは感謝する』
スクリーンに映し出されたのは、厳格な顔つきをした、総理大臣その人だった。ビデオメッセージによる、極秘会談の始まりだった。

『君たちに集まってもらった理由は、ただ一つ。我が国、いや、この世界が、今、未曾有の危機に瀕しているという事実を、共有するためだ』
総理大臣の言葉は、集まったトップランカーたちの間に、さざ波のような動揺を広げた。

ビデオメッセージが終わると、照明が戻り、円卓の一角から、これまで黙っていた一人の男が立ち上がった。黒スーツの特務機関員たちとは違う、威厳と疲労が顔に刻まれた、壮年の男。防衛大臣だった。

「これより、我が国が十年に渡り極秘裏に進めてきた、『プロジェクト・ウロボロス』の概要を、諸君に開示する」
防衛大臣は、手元の端末を操作した。正面のスクリーンに、地球の衛星写真と、その表面に赤く点在する無数の光点が映し出される。
「十年前、世界各地に突如として出現した『ダンジョン』。諸君は、これを新たな資源やフロンティアと捉え、富と名声のためにその身を投じてきたことだろう。だが、それは、政府が意図的に流布した、欺瞞に満ちた情報だ」

大臣は、一度言葉を切った。その場の誰もが、固唾をのんで、次の言葉を待っている。

「ダンジョンの正体。それは、資源でも、フロンティアでもない。我々人類にとっての、明確な『敵』だ」

その言葉に、会場は大きくどよめいた。
「敵だと? 寝言は寝て言え!」
「ダンジョンのおかげで、どれだけ経済が潤ったと思ってる!」
何人かの探索者が、野次を飛ばす。だが、その声は、黒崎剛が向けた、冷たい一瞥によって、すぐに黙らされた。

「……君たちの気持ちも分かる」
防衛大臣は、静かに続けた。
「だが、事実だ。我々の世界は、今、異世界からの静かなる侵略を受けている。そして、ダンジョンとは――」

その言葉を、黒崎が引き継いだ。
彼は、ゆっくりと立ち上がると、集まったトップランカーたちを、一人一人見回すように言った。
「――ダンジョンとは、異世界からの侵略エネルギーが、この世界に直接溢れ出すのを防ぐための、巨大な『蓋』だ」

『蓋』。
その、あまりにも単純で、あまりにも衝撃的な言葉に、誰もが言葉を失った。
「ふ、蓋だと……? なら、俺たちが倒してきたモンスターは、集めてきた魔石は、一体何なんだ!」
一人のSランク探索者が、絞り出すように問うた。

黒崎は、まるで出来の悪い生徒に教えるかのように、淡々と答えた。
「モンスターは、漏れ出したエネルギーが、この世界の生態系を歪ませて生まれた『膿』だ。魔石は、そのエネルギーが凝縮された『毒』に過ぎん。我々は、これまで、ただ蓋の表面に湧いた膿を掃除し、毒を拾い集めて、喜んでいただけの、愚かな掃除屋だったというわけだ」

その絶望的な真実を裏付けるかのように、スクリーンには、これまで決して公にされてこなかった、衝撃的な映像が次々と映し出されていった。
ダンジョン深層で、空間そのものが悲鳴を上げて裂けていく様子。
その裂け目の向こう側に広がる、おぞましい異世界の風景。
そして、世界各地のダンジョンコアが、まるで一つの生命体のように、同時に脈動を始める、不気味な観測データ。

「……これが、俺たちの世界の、本当の姿だというのか」
リョウが、顔面蒼白で呟いた。
シオンも、握りしめた拳が、白くなるほどに震えていた。
健太は、黙ってスクリーンを見つめていた。頭の中で渦巻いていた古代の記憶が、目の前で語られる真実と、一つ一つ、恐ろしいほどに符合していく。

防衛大臣が、重い口調で、最後通告のように告げた。
「そして、これは、まだ序章に過ぎない。諸君には、さらに過酷な真実を知ってもらう必要がある」
スクリーンが、漆黒の宇宙空間を映し出す。そこに、一つの赤い警告灯が、急速に点滅し始めていた。
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