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第81話 日本代表チーム結成
黒崎の最後通告の後、ブリーフィングルームには、息苦しいほどの沈黙が満ちていた。
誰も、席を立たない。
誰も、目を逸らさない。
絶望的な真実を前に、彼らの心は一度砕かれた。だが、最強の探索者たる彼らの魂は、その絶望の淵から、より硬質で、より純粋な『覚悟』という名の光を放ち始めていた。
それは、富のためでも、名声のためでもない。ただ、守るべき世界のために、自らの全てを懸けるという、英雄としての覚悟だった。
黒崎は、その光景を、満足げに、しかし厳しい表情で見渡した。
「……良い目だ。ようやく、ただの『獣』から、『戦士』の顔になったな」
彼は、円卓の中央へと歩を進め、その場にいる全員に、宣言した。
「ならば、これより、我々は一つの剣となる。個々のギルドも、ランクも、過去の栄光も、すべて捨てろ。今日この瞬間より、我々は、来るべき神殺しの戦争を戦い抜くための、ただ一つの戦闘集団だ」
防衛大臣が、その言葉を引き継いだ。
「政府は、ここに集った諸君を、対『神の使徒』戦における、人類最後の希望と認定する。本日付で、日本最強の探索者チームを結成する。その名は――『アークナイツ』」
アークナイツ。
滅びゆく世界から、人類を救う『方舟(アーク)』の『騎士(ナイツ)』。
その、あまりにも壮大で、あまりにも重い名に、誰もが息をのんだ。
「マジかよ……。俺が、方舟の騎士……」
リョウは、自分の頬をつねった。夢なら覚めてほしい、という思いと、この歴史的な瞬間に立ち会っているという興奮が、ごちゃ混ぜになっていた。
シオンは、黙って自分の掌を見つめていた。この小さな手で、握る一本の剣で、果たして世界などという、途方もないものを守れるのだろうか。だが、隣にいる仲間たちの気配が、彼女に「一人ではない」と告げていた。
健太は、その中で、最も強い違和感と疎外感を覚えていた。
(アークナイツ……? 俺が……? 数ヶ月前まで、会社でシュレッダー係をしていた、ただのサラリーマンが……?)
あまりの現実感のなさに、目の前の光景が、遠い世界の出来事のように感じられた。自分だけが、この場に相応しくない、紛れ込んだ異物のように思えた。
「チームの総司令官は、私が務める」
黒崎が、当然のように言った。その決定に、異を唱える者は誰もいない。
「そして、君たちには、それぞれのスキル特性に応じた部隊に所属し、これから始まる地獄のような訓練に参加してもらうことになる」
黒崎の視線が、健太たち三人を捉えた。
彼は、三人の元へと歩み寄ると、静かに告げた。
「だが、お前たち『アフターファイブ』は、別だ」
「え?」
「お前たちは、どの部隊にも属さない。アークナイツにおける、唯一の遊撃部隊(ジョーカー)となってもらう」
その言葉に、他のトップランカーたちから、わずかな不満の声が上がった。ぽっと出のBランクパーティーが、なぜ特別扱いなのか、と。
黒崎は、そんな雑音を、冷たい一瞥で黙らせた。
「神の使徒が持つ『権能』は、我々の常識を、物理法則を、超越する。それに対抗できるのは、常識的な力ではない。同じく、常識から外れた『イレギュラー』な力だけだ」
彼の視線が、健太の目を、射抜いた。
「佐藤健太。お前のその『現実改変』のスキルは、我々が神に一矢報いるための、最大の切り札になるやもしれん。その使い方を、死ぬ気で磨け。戦局を、お前の一手でひっくり返せ。それが、ジョーカーたるお前たちの、唯一にして最大の任務だ」
健太は、そのあまりにも重い期待に、ただ頷くことしかできなかった。
やがて、獣人のSランク探索者が、ゆっくりと立ち上がった。彼は、自らの巨大な戦斧を床に突き立てると、腹の底から響くような声で、誓いを立てた。
「――我らアークナイツ、この身を以て、日本の、いや、人類の剣となることを、ここに誓う!」
その言葉に呼応するように、次々と、トップランカーたちが立ち上がり、それぞれの武器を掲げて、雄叫びを上げた。
ブリーフィングルームは、絶望を乗り越えた戦士たちの、決意の熱気に包まれていた。
健太は、その光景を、少しだけ離れた場所から見ていた。
自分は、本当にこの中にいていいのだろうか。
英雄たちの熱狂の渦の中で、元サラリーマンの心は、まだ、自分の戦うべき理由を、見つけられずにいた。
誰も、席を立たない。
誰も、目を逸らさない。
絶望的な真実を前に、彼らの心は一度砕かれた。だが、最強の探索者たる彼らの魂は、その絶望の淵から、より硬質で、より純粋な『覚悟』という名の光を放ち始めていた。
それは、富のためでも、名声のためでもない。ただ、守るべき世界のために、自らの全てを懸けるという、英雄としての覚悟だった。
黒崎は、その光景を、満足げに、しかし厳しい表情で見渡した。
「……良い目だ。ようやく、ただの『獣』から、『戦士』の顔になったな」
彼は、円卓の中央へと歩を進め、その場にいる全員に、宣言した。
「ならば、これより、我々は一つの剣となる。個々のギルドも、ランクも、過去の栄光も、すべて捨てろ。今日この瞬間より、我々は、来るべき神殺しの戦争を戦い抜くための、ただ一つの戦闘集団だ」
防衛大臣が、その言葉を引き継いだ。
「政府は、ここに集った諸君を、対『神の使徒』戦における、人類最後の希望と認定する。本日付で、日本最強の探索者チームを結成する。その名は――『アークナイツ』」
アークナイツ。
滅びゆく世界から、人類を救う『方舟(アーク)』の『騎士(ナイツ)』。
その、あまりにも壮大で、あまりにも重い名に、誰もが息をのんだ。
「マジかよ……。俺が、方舟の騎士……」
リョウは、自分の頬をつねった。夢なら覚めてほしい、という思いと、この歴史的な瞬間に立ち会っているという興奮が、ごちゃ混ぜになっていた。
シオンは、黙って自分の掌を見つめていた。この小さな手で、握る一本の剣で、果たして世界などという、途方もないものを守れるのだろうか。だが、隣にいる仲間たちの気配が、彼女に「一人ではない」と告げていた。
健太は、その中で、最も強い違和感と疎外感を覚えていた。
(アークナイツ……? 俺が……? 数ヶ月前まで、会社でシュレッダー係をしていた、ただのサラリーマンが……?)
あまりの現実感のなさに、目の前の光景が、遠い世界の出来事のように感じられた。自分だけが、この場に相応しくない、紛れ込んだ異物のように思えた。
「チームの総司令官は、私が務める」
黒崎が、当然のように言った。その決定に、異を唱える者は誰もいない。
「そして、君たちには、それぞれのスキル特性に応じた部隊に所属し、これから始まる地獄のような訓練に参加してもらうことになる」
黒崎の視線が、健太たち三人を捉えた。
彼は、三人の元へと歩み寄ると、静かに告げた。
「だが、お前たち『アフターファイブ』は、別だ」
「え?」
「お前たちは、どの部隊にも属さない。アークナイツにおける、唯一の遊撃部隊(ジョーカー)となってもらう」
その言葉に、他のトップランカーたちから、わずかな不満の声が上がった。ぽっと出のBランクパーティーが、なぜ特別扱いなのか、と。
黒崎は、そんな雑音を、冷たい一瞥で黙らせた。
「神の使徒が持つ『権能』は、我々の常識を、物理法則を、超越する。それに対抗できるのは、常識的な力ではない。同じく、常識から外れた『イレギュラー』な力だけだ」
彼の視線が、健太の目を、射抜いた。
「佐藤健太。お前のその『現実改変』のスキルは、我々が神に一矢報いるための、最大の切り札になるやもしれん。その使い方を、死ぬ気で磨け。戦局を、お前の一手でひっくり返せ。それが、ジョーカーたるお前たちの、唯一にして最大の任務だ」
健太は、そのあまりにも重い期待に、ただ頷くことしかできなかった。
やがて、獣人のSランク探索者が、ゆっくりと立ち上がった。彼は、自らの巨大な戦斧を床に突き立てると、腹の底から響くような声で、誓いを立てた。
「――我らアークナイツ、この身を以て、日本の、いや、人類の剣となることを、ここに誓う!」
その言葉に呼応するように、次々と、トップランカーたちが立ち上がり、それぞれの武器を掲げて、雄叫びを上げた。
ブリーフィングルームは、絶望を乗り越えた戦士たちの、決意の熱気に包まれていた。
健太は、その光景を、少しだけ離れた場所から見ていた。
自分は、本当にこの中にいていいのだろうか。
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