【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ

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第87話 全面戦争

健太たちの最後の仕事は、人類史上、最も過酷な業務となった。
眼下に広がる東京は、もはや都市の形を保っていない。異形の軍勢が津波となって押し寄せ、ビルは倒壊し、アスファルトはめくれ上がり、文明の灯りは次々と絶望の闇に飲み込まれていく。

『こちら赤チーム、ガイオン! 新宿方面、防衛線を維持! だが、敵の数が多すぎる! 押し切られるぞ!』
『青チーム、レイカです! 飛行型が厄介すぎるわ! 自衛隊の対空ミサイルが追いついていない!』
黒崎が持つ通信機から、各地で奮闘するアークナイツの悲鳴に近い報告が、ひっきりなしに飛び込んでくる。

黒崎は、都庁の屋上から、まるで巨大な将棋盤を見下ろす棋士のように、冷静に戦況を分析し、的確な指示を飛ばしていた。
「ガイオン、無理に押し返すな。戦線を維持し、敵の戦力を削ぐことに集中しろ。レイカ、一点集中の魔法は捨てろ。広範囲の遅延・妨害系魔法で、敵の足を止めろ。自衛隊の再編時間を作るんだ」

その指示に従い、アークナイツのメンバーは、人間離れした力で戦線を支えていた。
巨大な戦斧を振り回す獅子王ガイオンは、山のような巨人型モンスターと真っ向から殴り合い、その進撃を食い止めている。
氷の女王レイカが作り出した巨大な吹雪は、渋谷上空を覆い、無数の飛行型モンスターの翼を凍てつかせ、動きを鈍らせていた。
自衛隊の戦車部隊も、探索者たちと連携し、砲撃の雨を降らせていた。
だが、神の門から溢れ出す敵の物量は、無限とも思えるほどだった。倒しても、倒しても、次から次へと、後続が押し寄せてくる。防衛線は、ゆっくりと、しかし確実に、内陸部へと後退させられていた。

「黒崎さん! 銀座方面に、高エネルギー反応! 通常個体じゃない!」
オペレーターの切迫した声が響く。
スクリーンに、銀座の映像がズームアップされる。そこにいたのは、巨大な百足(ムカデ)のような形状をしたモンスターだった。その身体の節目節目から、周囲のビルや瓦礫を吸収し、それをエネルギー弾として、雨のように撃ち出している。天然の移動要塞と化したその魔物の前に、防衛線の一角が、いともたやすく崩壊していった。

「……ちっ、厄介なのが出たな」
黒崎は、忌々しげに舌打ちした。
「健太、シオン、リョウ。聞こえるな」
彼の視線が、これまで待機していた三人を捉えた。
「お前たちの、最初の仕事だ。あの百足を、速やかに、そしてスマートに処理しろ。これ以上、防衛線をかき乱されるのはごめんだ」

その言葉を、三人は待っていた。
「へいへい、お待ちどうさん!」
リョウが、短剣を抜き放つ。
「……了解」
シオンが、静かに頷く。

健太は、眼下の地獄を見据え、そして、二人の仲間に告げた。
「行きましょう。俺たちの、日常を取り戻しに」

次の瞬間、三人は、都庁の屋上から、眼下の戦場へと、その身を躍らせた。
落下していく三人の姿を、黒崎は、静かに、そして確かな期待を込めて見送っていた。
ジョーカーは、盤上に放たれた。
この一手が、膠着した戦況を、どう動かすのか。
世界の命運を懸けた、巨大なチェスは、まだ始まったばかりだ。
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