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第95話 侵略者の王
戦場を支配していた勝利の歓声は、急速に静まっていった。
誰もが、感じていた。空から降り注ぐ、新たなプレッシャーを。
それは、「絶望」や「時間」といった、特定の権能によるものではなかった。ただ、そこに『在る』だけで、世界の理を、存在の法則を、根こそぎ捻じ曲げてしまうような、絶対的な『格』の違い。
それは、虫が竜を見るような、惑星が恒星の引力に引かれるような、抗うことすら許されない、根源的な恐怖だった。
『神の門』が、これまでで最も大きく、そして不気味に、その口を開いた。
門の奥、深淵の闇から、一体の存在が、ゆっくりと姿を現す。
それは、人型だった。
だが、その輪郭は、まるで宇宙そのものを切り取って作ったかのように、無数の星々が瞬き、銀河が渦巻いていた。その顔には、目も鼻も口もない。ただ、ブラックホールのような、全てを吸い込む絶対的な虚無があるだけ。
その存在が、一歩、空中に足を踏み出しただけで、周囲の空間が、ガラスのように砕け散った。
侵略者の王。
全ての元凶。
古代文明を滅ぼし、星々を喰らい尽くしてきた、絶対的な捕食者。
王は、地上で蠢く、ちっぽけなアリのような人間たちを、一瞥した。
その視線に、感情はない。ただ、自らがこれから蹂躙する、餌場を確認しているかのような、冷たい、無機質な認識があるだけ。
そして、王は、ただ、小さく息を吸い込んだ。
それだけで、世界が、悲鳴を上げた。
東京中の大気が、まるで巨大な掃除機に吸われるように、王の虚無の顔へと吸い込まれていく。
「ぐ……っ!」
「息が……できない!」
兵士たちが、次々と窒息し、その場に倒れ伏していく。
「馬鹿な……! 大気そのものを、支配しているのか!」
黒崎は、自らの闘気で身体の周囲に薄いバリアを張り、なんとか呼吸を確保しながら、信じられないといった表情で王を見上げた。
王は、次に、ゆっくりと指を一本、掲げた。
その指先に、小さな光が灯る。それは、まるで生まれたての星のように、美しく、そして恐ろしいほどのエネルギーを秘めていた。
そして、その光を、無造作に、地上へと弾いた。
光は、ゆっくりと、まるで雪が舞うかのように、地上へと降下していく。
誰もが、その美しさに、一瞬、見惚れた。
だが、光が、倒壊したビルの一つに触れた瞬間。
音も、衝撃も、何もなかった。
ただ、そのビルが、まるで最初から存在しなかったかのように、綺麗に、素粒子レベルで『消滅』したのだ。
物理的な破壊ではない。因果律への、直接的な干渉。
『そこにあった』という事実そのものを、歴史から抹消する、神の御業。
戦場に、絶対的な沈黙が訪れた。
もはや、誰も声を発しない。誰も、武器を構えない。
全ての抵抗が、全ての勇気が、全ての希望が、無意味であると、誰もが悟ってしまったからだ。
それは、もはや戦いですらない。神が、ただ気まぐれに、盤上の駒を一つ、消しただけ。
「……はは」
獅子王ガイオンが、乾いた笑いを漏らした。
「……勝てるかよ、あんなもんに……」
彼の巨大な戦斧が、力なく、手から滑り落ちた。
他のアークナイツたちも、同じだった。彼らの瞳から、戦士の光が、完全に消え失せていた。
シオンは、意識のない健太と、重傷のリョウを、自分の身体で庇うように、その場にうずくまることしかできなかった。
王は、そんな絶望の光景を、満足げに、しかし何の興味もなさそうに見下ろしている。
そして、次なる駒を消すために、再び、その指先に、星を生み出し始めた。
人類の歴史は、今、この瞬間、終わる。
誰もが、そう確信した。
その、絶対的な絶望の中で。
ただ一人、まだその瞳に、折れることのない闘志の炎を宿した男が、ゆっくりと立ち上がった。
血を流し、深手を負った、日本最強の男――黒崎剛だった。
誰もが、感じていた。空から降り注ぐ、新たなプレッシャーを。
それは、「絶望」や「時間」といった、特定の権能によるものではなかった。ただ、そこに『在る』だけで、世界の理を、存在の法則を、根こそぎ捻じ曲げてしまうような、絶対的な『格』の違い。
それは、虫が竜を見るような、惑星が恒星の引力に引かれるような、抗うことすら許されない、根源的な恐怖だった。
『神の門』が、これまでで最も大きく、そして不気味に、その口を開いた。
門の奥、深淵の闇から、一体の存在が、ゆっくりと姿を現す。
それは、人型だった。
だが、その輪郭は、まるで宇宙そのものを切り取って作ったかのように、無数の星々が瞬き、銀河が渦巻いていた。その顔には、目も鼻も口もない。ただ、ブラックホールのような、全てを吸い込む絶対的な虚無があるだけ。
その存在が、一歩、空中に足を踏み出しただけで、周囲の空間が、ガラスのように砕け散った。
侵略者の王。
全ての元凶。
古代文明を滅ぼし、星々を喰らい尽くしてきた、絶対的な捕食者。
王は、地上で蠢く、ちっぽけなアリのような人間たちを、一瞥した。
その視線に、感情はない。ただ、自らがこれから蹂躙する、餌場を確認しているかのような、冷たい、無機質な認識があるだけ。
そして、王は、ただ、小さく息を吸い込んだ。
それだけで、世界が、悲鳴を上げた。
東京中の大気が、まるで巨大な掃除機に吸われるように、王の虚無の顔へと吸い込まれていく。
「ぐ……っ!」
「息が……できない!」
兵士たちが、次々と窒息し、その場に倒れ伏していく。
「馬鹿な……! 大気そのものを、支配しているのか!」
黒崎は、自らの闘気で身体の周囲に薄いバリアを張り、なんとか呼吸を確保しながら、信じられないといった表情で王を見上げた。
王は、次に、ゆっくりと指を一本、掲げた。
その指先に、小さな光が灯る。それは、まるで生まれたての星のように、美しく、そして恐ろしいほどのエネルギーを秘めていた。
そして、その光を、無造作に、地上へと弾いた。
光は、ゆっくりと、まるで雪が舞うかのように、地上へと降下していく。
誰もが、その美しさに、一瞬、見惚れた。
だが、光が、倒壊したビルの一つに触れた瞬間。
音も、衝撃も、何もなかった。
ただ、そのビルが、まるで最初から存在しなかったかのように、綺麗に、素粒子レベルで『消滅』したのだ。
物理的な破壊ではない。因果律への、直接的な干渉。
『そこにあった』という事実そのものを、歴史から抹消する、神の御業。
戦場に、絶対的な沈黙が訪れた。
もはや、誰も声を発しない。誰も、武器を構えない。
全ての抵抗が、全ての勇気が、全ての希望が、無意味であると、誰もが悟ってしまったからだ。
それは、もはや戦いですらない。神が、ただ気まぐれに、盤上の駒を一つ、消しただけ。
「……はは」
獅子王ガイオンが、乾いた笑いを漏らした。
「……勝てるかよ、あんなもんに……」
彼の巨大な戦斧が、力なく、手から滑り落ちた。
他のアークナイツたちも、同じだった。彼らの瞳から、戦士の光が、完全に消え失せていた。
シオンは、意識のない健太と、重傷のリョウを、自分の身体で庇うように、その場にうずくまることしかできなかった。
王は、そんな絶望の光景を、満足げに、しかし何の興味もなさそうに見下ろしている。
そして、次なる駒を消すために、再び、その指先に、星を生み出し始めた。
人類の歴史は、今、この瞬間、終わる。
誰もが、そう確信した。
その、絶対的な絶望の中で。
ただ一人、まだその瞳に、折れることのない闘志の炎を宿した男が、ゆっくりと立ち上がった。
血を流し、深手を負った、日本最強の男――黒崎剛だった。
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