【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ

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第100話 そして光が

どれくらいの時間が経っただろうか。
永遠のようにも、一瞬のようにも感じられた、純白の静寂。
やがて、世界を覆い尽くしていた光は、まるで夜明けの霧が晴れるように、ゆっくりと、静かに収まっていった。

光が完全に引いた後。
そこに広がっていたのは、信じられない光景だった。
荒廃していたはずの東京の街並みは、まるで何事もなかったかのように、元の姿を取り戻していた。崩れ落ちたビルは再び天を突き、砕け散ったアスファルトは滑らかに道を形成している。
『神の門』も、異形の軍勢も、そして、侵略者の王も。
全てが、まるで悪夢だったかのように、跡形もなく消え去っていた。

「……あれ?」
「俺たち、ここで何を……?」
戦場にいた兵士たちや、アークナイツのメンバーたちは、きょとんとした顔で、周囲を見回していた。
彼らの記憶は、曖昧に書き換えられていた。
大規模なダンジョン災害が発生し、それを自分たちが命がけで食い止めた。ただ、それだけ。何と戦ったのか、どうやって勝ったのか、その肝心な部分が、濃い霧に覆われたように思い出せない。
ただ、胸の奥に、何かとても大切なものを、永遠に失ってしまったかのような、漠然とした、しかし耐え難いほどの喪失感だけが、冷たい染みのように残っていた。

その中で。
ただ二人だけが、全てを覚えていた。
シオンとリョウは、光が消えた後も、健太が最後に立っていた場所を、ただ呆然と見つめていた。
そこには、もう、何もない。
彼がいた痕跡も、彼が残した温もりも、何も。
まるで、最初から、佐藤健太という人間など、この世界に存在しなかったかのように。

「……うそ、だろ……」
リョウの膝が、がくりと折れた。涙が、堰を切ったように、その頬を伝う。
「旦那……! 健太さん……! どこ行ったんだよ……! 返事してくれよ……!」
その慟哭は、平和を取り戻したはずの世界に、あまりにも虚しく響いた。

シオンは、泣かなかった。
涙は、すでに涸れ果てていた。
彼女は、ただ、虚空に手を伸ばした。
健太が最後に浮かべた、あの不器用で、優しい笑顔を、もう一度、捕まえようとするかのように。
だが、その指先は、冷たい空を切るだけだった。

その時だった。
最後の光の粒子が、一つだけ、シオンの伸ばした手のひらに、ふわりと舞い降りた。
それは、ほんの一瞬だけ、温かい光を放つと、すぐに、はかなく消えていった。
だが、シオンには、確かに聞こえた気がした。

『ありがとう』

その、声にならない、最後の感謝の言葉。
彼女は、光が消えた手のひらを、そっと、自分の胸に抱きしめた。
そして、天を仰いだ。
青く、澄み渡った空。
絶望は去り、世界は救われた。
だが、その代償として、自分たちの世界から、太陽が一つ、消えてしまった。

「……おかえり、って、言わせてよ……」
シオンの唇から、初めて、弱々しい本音がこぼれ落ちた。
その願いは、しかし、もう二度と届くことはない。

世界は、救われた。
一人の、しがないサラリーマンだった男の、誰にも知られることのない、あまりにも大きな自己犠牲によって。
その英雄の名は、歴史には刻まれない。人々の記憶にも残らない。
ただ、二人の仲間の、胸の奥深くにだけ、永遠に、その存在を刻みつけて。
物語は、静かに、一つの終わりを告げた。
感想 5

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