5 / 80
第五話 つるはしは、壁を砕くために
しおりを挟む
始まりの洞窟、3階層。
僕は、地質学の教科書から抜け出してきたような「不整合面」を前に、静かに息を整えていた。腰に下げた、初期装備の「ボロボロのつるはし」。それは、他のプレイヤーから見れば何の価値もない、ただの鉄クズだろう。だが、今の僕にとっては、この世界の理をこじ開けるための、唯一の鍵だった。
「――ここだ」
鑑定で特定した、最も脆弱な一点。古い石灰岩と新しい砂岩が接する、わずか数センチの境界線。僕はそこに狙いを定め、つるはしを振り上げた。戦闘経験ゼロ、STR5の非力な一撃。しかし、そこには僕の持つ全ての地質学的知識と、確信が込められていた。
カンッ!
甲高い金属音ではない。ゴツッ、という鈍く、しかし確かな手応え。
振り下ろした先端が、確かに壁に食い込んでいる。衝撃で、パラパラと赤茶色の砂岩の欠片が足元にこぼれ落ちた。
「いける……!」
僕は歓喜した。硬い岩盤を叩いた時とは明らかに違う、確かな破壊の感触。僕はすぐさま、同じ場所にもう一撃、さらにもう一撃と、つるはしを打ち込んでいく。
ゴツッ。ゴツッ。ゴツッ。
洞窟内に、地味で単調な音だけが響き渡る。それは、他のプレイヤーが繰り広げるであろう、華やかな剣戟や派手な魔法の爆発音とはあまりにもかけ離れた、ひたすらに地道な作業だった。汗をかく感覚はないが、フルダイブシステムは疲労感を忠実に再現しており、何度もつるはしを振るううちに、腕が重くなっていくのを感じた。
だが、僕は止めなかった。目の前の壁に、わずかな亀裂が走り始めている。それは、僕の行いが無駄ではないという何よりの証拠だった。僕の脳裏には、地質学の知識が高速で駆け巡っていた。
(不整合面は、長い時間の断絶を示す境界だ。この接触面は、かつて地表だった場所。風雨に晒され、化学的風化も進んでいるはずだ。特に、この赤茶色は酸化鉄の色。水による変質が起きている証拠。だから脆い。理論は、間違っていない!)
一心不乱に、僕は壁を叩き続けた。どれくらいの時間が経っただろうか。五分か、十分か。レベル1の低いステータスでは、作業効率は劣悪だ。しかし、僕の集中力は途切れなかった。まるで、難解な論文を読み解く時のように、目の前の課題に没頭していた。
そして、その瞬間は唐突に訪れた。
ズボッ。
つるはしを振り下ろした腕が、不意に空を切った。手応えが、ない。壁の向こう側へと、つるはしの先端が突き抜けたのだ。
「……抜けた」
呟きは、自分でも驚くほどかすれていた。僕はすぐさま、つるはしで開けた小さな穴に顔を近づけ、向こう側を覗き込んだ。
穴の向こうに広がっていたのは、これまで僕が通ってきた狭い通路とは全く異なる、広大な空間だった。そして、ひんやりとした、それでいて何か強大な存在感を放つ空気が、穴から流れ込んでくる。
間違いない。この先だ。
僕は再びつるはしを手に取ると、今度は穴の周囲の脆い部分を狙い、慎重に、しかし力強く叩き始めた。一度突破口が開けば、あとは早い。バリバリと音を立てて亀裂が広がり、やがて、人が一人通れるくらいの大きさの穴が開いた。
僕は周囲にモンスターの気配がないことを確認し、ゆっくりと穴をくぐり抜けた。
そして、その先に広がる光景に、言葉を失った。
そこは、ドーム状の巨大な地下空間だった。天井は遥か高く、僕がいる場所は、そのドームの壁面中腹あたりに位置する、狭い足場だった。まるで、スタジアムの観客席からフィールドを見下ろしているような構図だ。
そして、そのフィールドの中央。巨大な石の玉座のような場所に、一体のモンスターが鎮座していた。
牛の頭を持つ、筋骨隆々の巨人。その身の丈は、五メートルはあろうか。手には、僕の身長ほどもある巨大な両刃斧を握り、その全身からは、黒く禍々しいオーラがゆらめいている。時折、フンス、と荒い鼻息が聞こえ、その音だけでも空気が震えるようだった。
「……ボスだ」
直感で理解した。これが、あのプレイヤーたちが噂していた、《始まりの洞窟》の最下層の主。本来であれば、険しい道のりを何階層も乗り越えた、屈強なパーティーだけが挑戦を許される存在。
そんな怪物の目の前に、僕はたった一人、レベル1の状態でたどり着いてしまったのだ。
幸いなことに、僕がいる場所はボスから見て死角になる高所であり、彼はまだ僕の存在に気づいていないようだった。
普通なら、ここで静かに踵を返し、来た道を引き返すのが賢明な判断だろう。万が一、気づかれでもしたら、瞬きする間に塵にされる。
だが、僕の思考は、恐怖よりも先に、別の方向へと働いていた。
僕の視線は、玉座に鎮座するボスではなく、その遥か真上に広がる、ドーム状の天井へと吸い寄せられていた。
(この巨大なドーム……どうやって形成された? 石灰岩の溶解だけでは、ここまで大規模な空洞はできにくい。あるいは、かつてここには巨大な地下水脈が流れていて、それが天井を支えていた地層を削り取ったのか? もしそうなら……)
僕は反射的に、スキルを発動した。
「《鑑定Lv.2》!」
対象は、ボスの真上に広がる天井の岩盤。すると、僕の網膜に、詳細な地質データが流れ込んできた。
【名称】:鍾乳洞ドーム天井(石灰岩)
【種別】:地質構造
【概要】:厚さ数十メートルに及ぶ巨大な石灰岩の岩盤。内部に無数の鍾乳洞がネットワーク状に発達している。
【詳細】:過去の活発な地下水脈の活動により、岩盤内部は多孔質化している。特に、ドーム中央部直上には、複数の洞窟が交差する脆弱なポイントが存在。その一点に大きな衝撃が加わった場合、ドーム全体の構造バランスが崩壊し、大規模な落盤を引き起こす危険性が極めて高い。
「……大規模な、落盤」
鑑定結果の最後の文字列が、僕の脳に焼き付いた。
僕は、天井の脆弱なポイントと、その真下で微動だにしないボスとを、交互に見比べた。
そして、僕の頭の中に、常識では考えられない、あまりにも突飛で、しかし地質学的には極めて合理的な一つの作戦が、雷のように閃いた。
ボスを倒すんじゃない。
ボスごと、この天井を、落とすんだ。
心臓が、早鐘のように鳴り響く。無謀か? いや、違う。これは、僕の知識とスキルだからこそ可能な、唯一無二の攻略法だ。
僕は、今しがた自分が開けた穴のすぐ横の壁に、再びつるはしを構えた。鑑定によれば、この壁の向こう側が、まさに天井の脆弱なポイントへと繋がっているはずだ。
狙うは、天井の構造を支える、キーストーン(要石)の役割を果たしている部分。
カン。カン。
今度は、先ほどよりもずっと静かに、慎重に、つるはしを打ち込む。大きな音を立てて、ボスに気づかれてはならない。
僕の額から、現実ではありえないはずの、冷たい汗が伝うのを感じた。
一撃、また一撃と、的確に弱点を突いていく。すると、壁の向こうから、ミシミシ、と何かが軋むような不吉な音が聞こえ始めた。天井の岩盤が、悲鳴を上げている。
玉座のボスが、わずかに身じろぎした。異変に気づき始めたのかもしれない。時間がない。
「――これで、終わりだ!」
僕は最後の力を振り絞り、つるはしを深く、強く、壁の奥へと突き立てた。
ゴッ!
鈍い破壊音。そして、全てが始まった。
突き立てたつるはしの先から、巨大な亀裂が稲妻のように天井全体へと広がっていく。ミシミシという音は、やがてゴゴゴゴという地鳴りのような轟音へと変わり、ドーム全体が激しく揺れ始めた。
玉座のボスが、ついに異変の根源である僕に気づき、天を仰いで咆哮した。
「グオオォ!」
空気を震わせる怒りの声。しかし、もう遅い。
僕の頭上から、パラパラと石屑が降り注ぐ。そして、次の瞬間。
轟音と共に、ドームの天井が、巨大な一つの塊となって剥がれ落ちた。
それは、もはや落盤という生易しいものではなかった。何十、何百トンという岩盤が、重力に従って、真下の玉座めがけて降り注ぐ。天罰、とでも言うべき、圧倒的な破壊の光景。
ボスの巨体が、なすすべもなく岩の津波に飲み込まれていく。断末魔の叫びすら、岩盤が激突する凄まじい破壊音にかき消された。
僕がいた足場も激しく揺れたが、幸いにも崩落は免れた。凄まじい地響きと、視界を完全に覆い尽くす砂煙。やがて、全てが静寂に帰した時、そこにあったのは、もはやボス部屋の原型を留めない、巨大な岩山だった。玉座も、ボスの姿も、完全にその下に埋没している。
僕は、自らが引き起こした光景に、呆然と立ち尽くしていた。
その、静寂の中で。僕の視界に、信じられないほどの量のシステムメッセージが、滝のように流れ込み始めた。
【《始まりの洞窟》の主、ミノタウロス・ロードの討伐を確認しました】
【サーバー初討伐(ファーストキル)ボーナスを獲得しました!】
【経験値2,500,000を獲得しました】
【レベルが1から25に上昇しました!】
【称号:『ダンジョンブレイカー』を獲得しました】
【称号:『大地を穿つ者』を獲得しました】
【称号:『常識の破壊者』を獲得しました】
【偉業達成により、ユニークスキル【地形編集】に覚醒しました!】
レベルが、24も上がった?
サーバー初討伐?
そして……ユニークスキル、【地形編集】?
僕は、岩山と化したボス部屋の跡地と、自らのステータスウィンドウに表示された信じられない情報を、ただただ交互に見つめることしかできなかった。
僕がやったことは、単なるショートカットの発見ではなかった。それは、この世界のルールそのものを根底から覆す、新たな時代の幕開けだったのかもしれない。
ただ、確かなことは一つ。僕のVRMMOライフは、もはや単なる地質調査では終わらないということだ。大地を識ることは、この世界において、大地を支配することと同義だったのだから。
僕は、地質学の教科書から抜け出してきたような「不整合面」を前に、静かに息を整えていた。腰に下げた、初期装備の「ボロボロのつるはし」。それは、他のプレイヤーから見れば何の価値もない、ただの鉄クズだろう。だが、今の僕にとっては、この世界の理をこじ開けるための、唯一の鍵だった。
「――ここだ」
鑑定で特定した、最も脆弱な一点。古い石灰岩と新しい砂岩が接する、わずか数センチの境界線。僕はそこに狙いを定め、つるはしを振り上げた。戦闘経験ゼロ、STR5の非力な一撃。しかし、そこには僕の持つ全ての地質学的知識と、確信が込められていた。
カンッ!
甲高い金属音ではない。ゴツッ、という鈍く、しかし確かな手応え。
振り下ろした先端が、確かに壁に食い込んでいる。衝撃で、パラパラと赤茶色の砂岩の欠片が足元にこぼれ落ちた。
「いける……!」
僕は歓喜した。硬い岩盤を叩いた時とは明らかに違う、確かな破壊の感触。僕はすぐさま、同じ場所にもう一撃、さらにもう一撃と、つるはしを打ち込んでいく。
ゴツッ。ゴツッ。ゴツッ。
洞窟内に、地味で単調な音だけが響き渡る。それは、他のプレイヤーが繰り広げるであろう、華やかな剣戟や派手な魔法の爆発音とはあまりにもかけ離れた、ひたすらに地道な作業だった。汗をかく感覚はないが、フルダイブシステムは疲労感を忠実に再現しており、何度もつるはしを振るううちに、腕が重くなっていくのを感じた。
だが、僕は止めなかった。目の前の壁に、わずかな亀裂が走り始めている。それは、僕の行いが無駄ではないという何よりの証拠だった。僕の脳裏には、地質学の知識が高速で駆け巡っていた。
(不整合面は、長い時間の断絶を示す境界だ。この接触面は、かつて地表だった場所。風雨に晒され、化学的風化も進んでいるはずだ。特に、この赤茶色は酸化鉄の色。水による変質が起きている証拠。だから脆い。理論は、間違っていない!)
一心不乱に、僕は壁を叩き続けた。どれくらいの時間が経っただろうか。五分か、十分か。レベル1の低いステータスでは、作業効率は劣悪だ。しかし、僕の集中力は途切れなかった。まるで、難解な論文を読み解く時のように、目の前の課題に没頭していた。
そして、その瞬間は唐突に訪れた。
ズボッ。
つるはしを振り下ろした腕が、不意に空を切った。手応えが、ない。壁の向こう側へと、つるはしの先端が突き抜けたのだ。
「……抜けた」
呟きは、自分でも驚くほどかすれていた。僕はすぐさま、つるはしで開けた小さな穴に顔を近づけ、向こう側を覗き込んだ。
穴の向こうに広がっていたのは、これまで僕が通ってきた狭い通路とは全く異なる、広大な空間だった。そして、ひんやりとした、それでいて何か強大な存在感を放つ空気が、穴から流れ込んでくる。
間違いない。この先だ。
僕は再びつるはしを手に取ると、今度は穴の周囲の脆い部分を狙い、慎重に、しかし力強く叩き始めた。一度突破口が開けば、あとは早い。バリバリと音を立てて亀裂が広がり、やがて、人が一人通れるくらいの大きさの穴が開いた。
僕は周囲にモンスターの気配がないことを確認し、ゆっくりと穴をくぐり抜けた。
そして、その先に広がる光景に、言葉を失った。
そこは、ドーム状の巨大な地下空間だった。天井は遥か高く、僕がいる場所は、そのドームの壁面中腹あたりに位置する、狭い足場だった。まるで、スタジアムの観客席からフィールドを見下ろしているような構図だ。
そして、そのフィールドの中央。巨大な石の玉座のような場所に、一体のモンスターが鎮座していた。
牛の頭を持つ、筋骨隆々の巨人。その身の丈は、五メートルはあろうか。手には、僕の身長ほどもある巨大な両刃斧を握り、その全身からは、黒く禍々しいオーラがゆらめいている。時折、フンス、と荒い鼻息が聞こえ、その音だけでも空気が震えるようだった。
「……ボスだ」
直感で理解した。これが、あのプレイヤーたちが噂していた、《始まりの洞窟》の最下層の主。本来であれば、険しい道のりを何階層も乗り越えた、屈強なパーティーだけが挑戦を許される存在。
そんな怪物の目の前に、僕はたった一人、レベル1の状態でたどり着いてしまったのだ。
幸いなことに、僕がいる場所はボスから見て死角になる高所であり、彼はまだ僕の存在に気づいていないようだった。
普通なら、ここで静かに踵を返し、来た道を引き返すのが賢明な判断だろう。万が一、気づかれでもしたら、瞬きする間に塵にされる。
だが、僕の思考は、恐怖よりも先に、別の方向へと働いていた。
僕の視線は、玉座に鎮座するボスではなく、その遥か真上に広がる、ドーム状の天井へと吸い寄せられていた。
(この巨大なドーム……どうやって形成された? 石灰岩の溶解だけでは、ここまで大規模な空洞はできにくい。あるいは、かつてここには巨大な地下水脈が流れていて、それが天井を支えていた地層を削り取ったのか? もしそうなら……)
僕は反射的に、スキルを発動した。
「《鑑定Lv.2》!」
対象は、ボスの真上に広がる天井の岩盤。すると、僕の網膜に、詳細な地質データが流れ込んできた。
【名称】:鍾乳洞ドーム天井(石灰岩)
【種別】:地質構造
【概要】:厚さ数十メートルに及ぶ巨大な石灰岩の岩盤。内部に無数の鍾乳洞がネットワーク状に発達している。
【詳細】:過去の活発な地下水脈の活動により、岩盤内部は多孔質化している。特に、ドーム中央部直上には、複数の洞窟が交差する脆弱なポイントが存在。その一点に大きな衝撃が加わった場合、ドーム全体の構造バランスが崩壊し、大規模な落盤を引き起こす危険性が極めて高い。
「……大規模な、落盤」
鑑定結果の最後の文字列が、僕の脳に焼き付いた。
僕は、天井の脆弱なポイントと、その真下で微動だにしないボスとを、交互に見比べた。
そして、僕の頭の中に、常識では考えられない、あまりにも突飛で、しかし地質学的には極めて合理的な一つの作戦が、雷のように閃いた。
ボスを倒すんじゃない。
ボスごと、この天井を、落とすんだ。
心臓が、早鐘のように鳴り響く。無謀か? いや、違う。これは、僕の知識とスキルだからこそ可能な、唯一無二の攻略法だ。
僕は、今しがた自分が開けた穴のすぐ横の壁に、再びつるはしを構えた。鑑定によれば、この壁の向こう側が、まさに天井の脆弱なポイントへと繋がっているはずだ。
狙うは、天井の構造を支える、キーストーン(要石)の役割を果たしている部分。
カン。カン。
今度は、先ほどよりもずっと静かに、慎重に、つるはしを打ち込む。大きな音を立てて、ボスに気づかれてはならない。
僕の額から、現実ではありえないはずの、冷たい汗が伝うのを感じた。
一撃、また一撃と、的確に弱点を突いていく。すると、壁の向こうから、ミシミシ、と何かが軋むような不吉な音が聞こえ始めた。天井の岩盤が、悲鳴を上げている。
玉座のボスが、わずかに身じろぎした。異変に気づき始めたのかもしれない。時間がない。
「――これで、終わりだ!」
僕は最後の力を振り絞り、つるはしを深く、強く、壁の奥へと突き立てた。
ゴッ!
鈍い破壊音。そして、全てが始まった。
突き立てたつるはしの先から、巨大な亀裂が稲妻のように天井全体へと広がっていく。ミシミシという音は、やがてゴゴゴゴという地鳴りのような轟音へと変わり、ドーム全体が激しく揺れ始めた。
玉座のボスが、ついに異変の根源である僕に気づき、天を仰いで咆哮した。
「グオオォ!」
空気を震わせる怒りの声。しかし、もう遅い。
僕の頭上から、パラパラと石屑が降り注ぐ。そして、次の瞬間。
轟音と共に、ドームの天井が、巨大な一つの塊となって剥がれ落ちた。
それは、もはや落盤という生易しいものではなかった。何十、何百トンという岩盤が、重力に従って、真下の玉座めがけて降り注ぐ。天罰、とでも言うべき、圧倒的な破壊の光景。
ボスの巨体が、なすすべもなく岩の津波に飲み込まれていく。断末魔の叫びすら、岩盤が激突する凄まじい破壊音にかき消された。
僕がいた足場も激しく揺れたが、幸いにも崩落は免れた。凄まじい地響きと、視界を完全に覆い尽くす砂煙。やがて、全てが静寂に帰した時、そこにあったのは、もはやボス部屋の原型を留めない、巨大な岩山だった。玉座も、ボスの姿も、完全にその下に埋没している。
僕は、自らが引き起こした光景に、呆然と立ち尽くしていた。
その、静寂の中で。僕の視界に、信じられないほどの量のシステムメッセージが、滝のように流れ込み始めた。
【《始まりの洞窟》の主、ミノタウロス・ロードの討伐を確認しました】
【サーバー初討伐(ファーストキル)ボーナスを獲得しました!】
【経験値2,500,000を獲得しました】
【レベルが1から25に上昇しました!】
【称号:『ダンジョンブレイカー』を獲得しました】
【称号:『大地を穿つ者』を獲得しました】
【称号:『常識の破壊者』を獲得しました】
【偉業達成により、ユニークスキル【地形編集】に覚醒しました!】
レベルが、24も上がった?
サーバー初討伐?
そして……ユニークスキル、【地形編集】?
僕は、岩山と化したボス部屋の跡地と、自らのステータスウィンドウに表示された信じられない情報を、ただただ交互に見つめることしかできなかった。
僕がやったことは、単なるショートカットの発見ではなかった。それは、この世界のルールそのものを根底から覆す、新たな時代の幕開けだったのかもしれない。
ただ、確かなことは一つ。僕のVRMMOライフは、もはや単なる地質調査では終わらないということだ。大地を識ることは、この世界において、大地を支配することと同義だったのだから。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる