不人気職【地質学者】で始めたら、ダンジョン構造を改変できる唯一のプレイヤーになっていた件。~掘って埋めて、ダンジョンごとボスを圧殺します~

夏見ナイ

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第六十三話:大地の遠隔操作

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 濁流に乗って、『王権領域』から脱出した僕たちは、息つく間もなく、南へと向かった。
 僕たちと共に、フィールドからの脱出に成功した反王権連合の仲間は、およそ三百名。当初の二千という数から見れば、あまりにも大きな犠牲だった。誰もが、仲間を失った悔しさと、カイザーへの怒りを、その胸に宿している。
 彼らの視線が、僕に集中していた。この絶望的な状況を、覆すことができるのは、もはや、僕しかいない。その、重い信頼が、僕の肩に、ずしりとのしかかる。

「急ぎましょう。カイザーが、次の手を打ってくる前に」
 僕たちは、馬を駆り、森を抜け、丘を越え、ひたすらに、目的地を目指した。
 《絶対王権》の追撃部隊が、何度か、僕たちの行く手を阻もうとした。翼を持つ魔獣に騎乗した、空からの追跡者たちだ。
 だが、その度に、僕は、スキルに頼らない、純粋な地質学の知識で、彼らを翻弄した。

「この先の、谷に、身を隠します! ここの地層は、磁鉄鉱を多く含んでいる。敵の、追跡魔法や、探知系のスキルを、大きく、阻害できるはずです!」
「あの、森林地帯は、避けてください! 地盤が、泥炭層で、極めて緩い。重量のある騎馬部隊では、足を取られて、身動きが取れなくなります!」

 僕の、的確な、ナビゲーション。
 ゴードンの、鉄壁の、殿(しんがり)。
 そして、ミモリさんの、献身的な、回復支援。
 僕たちは、完璧な連携で、全ての追撃を振り切り、そして、ついに、目的地へと、たどり着いた。

 僕たちの目の前に、その、異様な光景が、広がっていた。
 巨大な、カルデラ火山。その、中央には、エメラルドグリーンに輝く、広大な、湖が、静かに、水を湛えている。
 湖の周囲からは、絶えず、白い蒸気が噴き出し、空気は、硫黄の匂いと、そして、濃密な、魔力の気配に、満ちていた。

「ここが……《アヴァロン》を支える、エーテル源……」
 僕は、ゴクリと、喉を鳴らした。
 ここは、ただの、火山湖ではない。
 この湖の、地下深く。そこに、この大陸の、プレートの境界が、走っている。
 そして、その、プレートの亀裂から、地球の、核(コア)にも等しい、膨大な、魔力――エーテルが、間欠泉のように、湧き出し続けているのだ。
 その、湧き出したエーテルが、この湖に溜まり、そして、大気中へと、放出され、遥か上空の《アヴァロン》の、浮遊石と、共鳴している。

 僕の、仮説は、正しかった。
 ここが、カイザーの、王権の、心臓部。アキレス腱だ。
 僕たちは、ついに、その、喉元に、刃を、突きつける権利を、手に入れたのだ。

「よし! やってやろうぜ、リク!」
 ゴードンが、興奮に、声を震わせる。
 連合軍の仲間たちも、決戦の時が来たことを悟り、武器を構え直した。

「皆さん、聞いてください」
 僕は、彼らに、最後の、作戦を、伝えた。
「これから、僕は、この、エーテル源に、干渉し、超大規模な、地形変動を、引き起こします。ですが、それには、少し、時間がかかる。そして、カイザーも、僕たちの狙いに、必ず、気づくはずです」
 僕は、僕たちを、追ってきた、空を見上げた。
「彼が、最後の、戦力を、ここに、投入してくるでしょう。僕が、スキルを発動するまでの、数分間。何があっても、僕を、守り抜いてほしい」

「「「応!!」」」

 連合軍の、三百の魂が、一つの、雄叫びとなって、応えた。
 ゴードンを、中心に、彼らは、僕の周囲に、円陣を組んだ。
 どんな、攻撃も、通さない、人間の、盾となって。
 ミモリさんは、僕の隣に立ち、彼女の、全ての魔力を、僕に、注ぎ込む、準備を、整えた。

 僕は、湖の、ほとりに、立った。
 そして、つるはし【ジオ・ブレイカー】を、構える。
 スキル無効化フィールドの、効果範囲外である、この地。
 僕の力は、もはや、誰にも、縛られない。

「始めます」
 僕は、静かに、告げた。
 そして、僕の、持てる、全ての知識と、スキルを、この、一点に、集中させた。

 僕が、やろうとしていることは、もはや、単なる、地形編集ではなかった。
 それは、大地そのものを、遠隔操作する、神の領域にも等しい、所業。

 まず、僕は、湖の底にある、エーテルが湧き出す、巨大な亀裂の、構造を、《鑑定》した。
 その、亀裂を、塞いでいる、岩盤の、物理的な特性を、完全に、把握する。
 硬度、密度、そして、あの、黒鉄の岩盤で、使った、逆転の鍵。
 ――共振周波数を、特定する。

(……見つけた。この、超高密度の、マントル由来の、橄欖岩(かんらんがん)。その、共振周波数は……)

 僕は、ミモリさんからの、魔力支援を受けながら、ユニークスキルを、発動させた。
 それは、もはや、僕一人の力ではない。
 仲間たちの、思いを、乗せた、最後の一撃。

「【地形編集】――《破壊》!」

 僕は、あの時と、同じように、スキルを、最小出力で、そして、特定した、周波数に合わせて、断続的に、湖の底の、岩盤へと、撃ち込み始めた。
 トン……トン……トン……。
 静かな、しかし、確実な、大地の、鼓動。

 最初は、何も、起きなかった。
 だが、数秒後。
 僕たちの、足元が、カタカタと、微かに、震え始めた。
 湖の、水面が、さざ波を、立てる。
 湖の中央から、ごぽり、ごぽり、と、気泡が、湧き上がり始めた。

 地殻の、奥深く。
 僕の、小さな、一撃が、巨大な、共振の、うねりを、生み出していた。
 そして、それは、やがて、この、大地全体を、揺るがす、巨大な、胎動へと、繋がっていく。

 遥か、上空の、《アヴァロン》。
 その、玉座の間で、カイザーの視界に、初めて、赤い、警告メッセージが、表示された。

【警告:浮遊システムの、共鳴周波数に、微弱な、ノイズを、検知】
【警告:エーテル流の、供給量が、不安定になっています】

「……なんだ、これは?」
 カイザーが、眉をひそめた、その時。
 彼の、最後の、切り札である、親衛隊を乗せた、巨大な、飛空戦艦が、僕たちの、上空に、その、姿を、現した。

「リク! 来たぞ!」
 ゴードンが、叫ぶ。

「皆さん! お願いします!」
 僕は、スキルを、発動し続けながら、叫んだ。
「僕たちの、未来を、守ってください!」

 最後の、戦いが、始まった。
 地上では、僕を守る、連合軍と、《絶対王権》の、最終兵力との、死闘。
 そして、地下深くでは、僕の、知識と、大地の、法則との、静かな、しかし、壮絶な、戦いが。
 その、二つの戦いが、交錯する時。
 世界の、運命が、決まる。
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