不人気職【地質学者】で始めたら、ダンジョン構造を改変できる唯一のプレイヤーになっていた件。~掘って埋めて、ダンジョンごとボスを圧殺します~

夏見ナイ

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第六十七話:王との最終対決、リクの地形

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 僕たちの頭上で、天空要塞《アヴァロン》が、断末魔の叫びを上げている。
 ゴゴゴゴゴ……!
 巨大な城の一部が、次々と剥がれ落ち、燃え盛る流星となって、僕たちの周囲に降り注ぐ。大地は激しく揺れ、衝撃波が空気を震わせた。
 まさに、世界の終焉。
 そんな、地獄のような光景の中で、僕とカイザーは、静かに、対峙していた。

「リクゥゥゥ!」
 カイザーが、獣のような咆哮と共に、動いた。
 その速さは、もはや人間のそれを超えていた。憤怒と狂気が、彼の身体能力を、限界以上に引き出しているのだ。
 彼が振るう、蒼炎の剣が、僕の首筋めがけて、薙ぎ払われる。

「させるか!」
 その一撃を、僕の前に割り込んだゴードンの盾が、受け止めた。
 ガギィィィン!
 凄まじい金属音と衝撃。ゴードンの巨体が、数メートルも後方へと吹き飛ばされる。
「ぐっ……! なんて、パワーだ……!」
「邪魔だ、脳筋!」

 カイザーは、ゴードンを一蹴すると、再び、僕へと、その殺意を向けた。
 彼の動きには、もはや、かつてのような、王者の洗練された剣術はない。ただ、純粋な破壊衝動に任せた、荒々しい、力任せの攻撃。
 だが、それ故に、予測が、難しい。

 スキルが、使えない。
 僕のステータスでは、彼の一撃でも食らえば、即死は免れない。
 僕に残された武器は、ただ一つ。
 ――この、崩壊していく、戦場そのもの。

 僕は、カイザーの攻撃を、紙一重で、かわし続けた。
 僕の視界は、もはや、カイザーという、一点だけを見てはいなかった。
 僕の目は、この空間全体を、一つの、巨大な「現象」として、捉えていた。

 頭上から、降り注ぐ、瓦礫の、落下地点と、タイミング。
 僕たちの、足元で、走り続ける、地面の亀裂の、進行方向と、速度。
 アヴァロンの、崩壊によって、生まれる、突風の、向きと、強さ。
 その、全ての、データを、僕の頭脳は、地質学者として、リアルタイムで、解析し、そして、予測していた。

(――三秒後、右後方に、直径五メートルの、城壁の破片が、落下する)
 僕は、その予測に基づき、あえて、その、危険地帯へと、後退した。

「愚か者め! 逃げ場を、間違えたな!」
 カイザーが、好機と見て、僕を追う。
 僕が、落下予測地点を、通り過ぎた、その、コンマ数秒後。
 ドゴォォォン!
 僕の、すぐ背後、カイザーが、今まさに、踏み込もうとしていた場所に、巨大な瓦礫が、突き刺さった。

「なっ……!?」
 カイザーは、寸でのところで、急停止し、その衝撃波に、体勢を崩した。

「ゴードンさん! 今です!」
 その、一瞬の隙を、ゴードンが見逃すはずがない。
「シールド・バッシュ!」
 体勢を立て直したゴードンが、渾身の力で、カイザーの、がら空きになった、胴体に、盾を叩きつけた。
「ぐはっ!」

 カイザーの身体が、くの字に折れ曲がり、大きく、吹き飛ばされる。
「リクさん!」
 その、カイザーの、落下予測地点に、ミモリさんの、補助魔法が、先回りして、展開された。
「スリップ・フィールド!」
 地面が、凍りつき、カイザーは、受け身も取れずに、氷の上を、滑っていく。

 僕が、地形を、予測し。
 ゴードンが、隙を、作り。
 ミモリさんが、罠を、仕掛ける。

 それは、スキルに頼らない、僕たちの、新たな、連携戦術だった。
 僕が、この戦場の、「脳」となり、二人が、僕の、「手足」となる。

「……おのれ……おのれ、おのれぇ!」
 カイザーが、憎悪に、顔を歪ませながら、立ち上がった。
 彼は、もはや、僕たち三人を、個として、見てはいなかった。
 僕という、頭脳を、中心に、完璧に、機能する、一つの、生命体。
 それこそが、彼の、真の、敵だった。

「ならば、その、頭脳さえ、叩き潰せば、全て、終わる!」

 カイザーの、標的が、完全に、僕一人に、絞られた。
 彼は、ゴードンの、妨害も、ミモリさんの、補助魔法も、全て、無視し、ただ、ひたすらに、僕だけを、目指して、突進してくる。
 その、鬼気迫る、突撃は、ゴードンの盾ですら、もはや、止められない。

「リク! 危ねえ!」
 ゴードンの、悲痛な、叫びが、響く。

 だが、僕の心は、冷静だった。
 僕は、カイザーから、逃げるのを、やめた。
 そして、あえて、その場に、立ち止まる。

 僕が、立っていた場所。
 そこは、僕が、この、崩壊劇の、最初から、ずっと、見据えていた、最後の、舞台。
 僕の、鑑定の、視界が、捉えていた、この、戦場における、最も、危険な、一点。

 ――アヴァロンの、浮遊石が、格納されていた、中枢部(コア)。その、巨大な、残骸が、今まさに、僕たちの、頭上、数百メートルまで、迫ってきている。

 僕が、カイザーを、誘い込んでいたのは、この、巨大な、墓標の、真下だったのだ。

「終わりだ、リク!」
 カイザーの、蒼炎の剣が、僕の、目前まで、迫る。
 その、瞳には、勝利を確信した、狂気の、光が、宿っていた。

 僕は、彼を、静かに、見据え、そして、呟いた。
「……ええ。終わりです。あなたの、ね」
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