不人気職【地質学者】で始めたら、ダンジョン構造を改変できる唯一のプレイヤーになっていた件。~掘って埋めて、ダンジョンごとボスを圧殺します~

夏見ナイ

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第六十六話:要塞崩壊、カイザーの憤怒

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 『王権領域』が消滅し、僕たちの力が完全に解放されたことで、地上の戦況は、一瞬にして、決した。
 カイザー親衛隊は、もはや、統率も、戦意も、失っていた。彼らが信奉する王の、絶対的な力が破られたという事実は、彼らの心を、再起不能なまでに、打ち砕いたのだ。
 彼らは、武器を捨て、その場に崩れ落ちる者、静かに、ログアウトしていく者、様々だった。
 僕たち、反王権連合は、完全な勝利を、手にした。

 仲間たちの、歓声が、大地に響き渡る。
 だが、僕たちの戦いは、まだ、終わってはいなかった。
 僕の視線は、ゆっくりと、しかし、確実に、その高度を下げ、傾きを増していく、天空要塞《アヴァロン》へと、注がれていた。

 ゴゴゴゴゴゴ……!

 空から、不気味な、軋みと、破砕音が、鳴り響いてくる。
 傾いたアヴァロンは、自らの、巨大な質量に耐えきれず、その構造に、致命的な、ひずみを生じさせていた。
 城壁の、いたるところから、亀裂が走り、塔の尖塔が、砕け散り、巨大な、瓦礫となって、地上へと、降り注ぎ始める。
 もはや、それは、城ではなく、巨大な、墜落寸前の、飛行船だった。

「リク! どうする! あのままじゃ、この辺り一帯が、瓦礫の山になっちまうぞ!」
 ゴードンが、緊迫した声で叫ぶ。
 僕も、同じことを、考えていた。
 このまま、アヴァロンが、無秩序に墜落すれば、その被害は、計り知れない。
 僕が、やるべきことは、ただ一つ。

「……あの城を、安全に、『解体』します」
「か、解体!?」
「ええ。僕のスキルで、墜落の衝撃を、最小限に抑え、被害が出ない、安全な場所へと、誘導するんです」

 それは、もはや、戦闘ですらない。
 巨大な、建造物の、制御された、爆破解体。
 地質学者として、そして、地形編集者としての、僕の、最後の、大仕事だった。

 だが、その、僕の計画を、邪魔する、最後の、意思が、存在した。

 傾き、崩壊していく、アヴァロン。
 その、玉座の間で、カイザーは、一人、立ち尽くしていた。
 彼の周囲には、もはや、誰一人いない。側近たちも、皆、彼を見捨て、脱出していった。
 彼は、自らが、築き上げた、王国の、崩壊を、たった一人で、見つめていた。

 その、虚ろな、瞳。
 そこに、再び、暗く、そして、禍々しい、光が、宿った。
 絶望は、彼の、心を、完全に、破壊し、そして、最後に、ただ一つの、純粋な感情だけを、残した。

 ――憎悪。
 自らの、全てを、奪った、あの男への、殺意。

「……リク」

 彼の、口から、呪詛のように、僕の名前が、漏れた。
「貴様だけは……貴様だけは、この俺が、自らの、手で……!」

 もはや、彼の目には、理性など、宿っていなかった。
 そこにあるのは、僕への、狂気的な、執着だけ。
 彼は、玉座の間の、窓を、蹴破ると、崩壊していく、城の外壁を、凄まじい、身体能力で、駆け下り始めた。
 ただ、一人、僕を、葬るためだけに。
 王の、プライドも、ギルドの、威信も、全てを、捨て去った、一匹の、獣となって。

 僕は、その、異常なまでの、殺気を、地上から、確かに、感じ取っていた。
 僕の、鑑定の、視界が、崩壊する、アヴァロンの、壁面を、駆け下りてくる、一つの、赤い光点を、捉えた。
 カイザーだ。
 彼は、僕の元へ、単身で、向かってきている。

「ゴードンさん、ミモリさん」
 僕は、二人に、静かに、告げた。
「……最後の、戦いです。彼との、決着を、つけなければなりません」
「リク……」
「わかっているな。俺たちも、付き合うぜ。最後までな!」
「はい!」

 僕たちは、連合軍の仲間たちに、後退を、指示すると、三人だけで、その場に残った。
 そして、天から、堕ちてくる、最後の、王を、迎え撃つために。

 数秒後。
 凄まじい、衝撃音と、共に。
 カイザーが、僕たちの、目の前の、大地に、着地した。
 彼の、純白の鎧は、汚れ、傷つき、その、プラチナブロンドの髪は、乱れている。
 だが、その、蒼い瞳だけが、異常なまでの、輝きを、放っていた。
 それは、全てを、焼き尽くさんとする、憤怒の、炎の色だった。

「……見つけたぞ、リク」
 彼の、声は、もはや、王の、威厳など、欠片も、感じさせない、低く、そして、掠れた、獣の、唸り声だった。
「貴様を、殺す。そして、俺も、この城と、共に、果てる。それこそが、王たる、俺に、ふさわしい、最後の、舞台だ!」

 彼は、蒼炎の剣を、構えた。
 その、切っ先が、寸分の、狂いもなく、僕の、心臓を、捉えている。
 背後では、アヴァロンの、崩壊が、最終段階へと、移行し、巨大な、影が、僕たちの頭上を、覆い尽くしていく。

 崩壊していく、世界を、舞台にした、王との、最後の、一騎打ち。
 僕の、地質学者としての、知識が、今、全く、別の、意味で、試されようとしていた。
 この、絶望的な、状況下で、彼を、打ち破り、そして、僕たち自身が、生き残るための、最後の、パズル。

「……始めましょうか、カイザーさん」
 僕は、つるはし【ジオ・ブレイカー】を、静かに、構えた。
「あなたの、その、歪んだ、王国の、本当の、終わらせ方を、僕が、教えてあげます」
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