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第七十話:勝利、そして絶対王権の崩壊
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カイザーの消滅を示す、無機質なシステムメッセージが、僕たちの視界の隅で、静かに、消えていった。
後に残されたのは、アヴァロンの巨大な残骸が突き刺さる、広大なクレーターと、僕たち三人の、荒い息遣いだけ。
風が、瓦礫の山を吹き抜け、ひゅう、と、物悲しい音を立てた。まるで、一つの時代の終わりを、弔うかのような、挽歌だった。
「……終わったんだな。本当に」
ゴードンが、天を仰ぎ、ぽつりと呟いた。彼の巨体は、無数の傷で覆われ、満身創痍だったが、その表情には、戦いを終えた戦士だけが浮かべることのできる、深い安堵の色が浮かんでいた。
「はい……。終わりましたね」
ミモリさんの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。それは、恐怖から解放された安堵の涙であり、この壮絶な戦いで散っていった、多くの仲間たちへの、祈りの涙でもあった。
僕もまた、胸に、ぽっかりと、大きな穴が空いたような、奇妙な喪失感を、感じていた。
憎むべき、敵だった。だが、同時に、彼ほど、僕の知的好奇心を、刺激し、僕を、成長させてくれた存在も、いなかった。
カイザーという、絶対的な「壁」があったからこそ、僕は、仲間と出会い、自らの知識の、新たな可能性を、切り拓くことができたのだ。
――さらばだ、カイザー。
僕の、最初で、最後の、好敵手(ライバル)。
僕は、心の中で、静かに、彼に、別れを告げた。
その時だった。
僕たちの、視界の上部に、そして、おそらくは、このETOにログインしている、全てのプレイヤーの視界に、金色の縁取りが施された、巨大なテロップが、流れ始めた。
【サーバーアナウンス】
《絶対王権》のギルドマスター『カイザー』の死亡、及び、ギルド本拠地《アヴァロン》の完全崩壊を確認しました。
その、アナウンスが、引き金となった。
エリュシオン・テラの、各地で、戦いの趨勢を、固唾を飲んで見守っていた、全てのプレイヤーたちの間で、爆発的な、歓声が、巻き起こったのだ。
「うおおおおお! やった! 本当に、やりやがった!」
「絶対王権が、崩壊したぞ!」
「『反王権連合』の、勝利だ!」
僕たちがいた、クレーターの周囲にも、後方で待機していた、連合軍の仲間たちが、雄叫びを上げながら、駆け寄ってきた。
彼らは、僕たち三人を、見つけると、その場の勢いで、僕たちを、何度も、何度も、胴上げした。
「リク! お前が、俺たちの、英雄だ!」
「ゴードン! ミモリ! よく、やってくれた!」
バルカンも、その、皺だらけの顔を、くしゃくしゃにしながら、僕たちの肩を、力強く叩いた。
「見事じゃった、リク殿。あんたは、本当に、この世界を、変えてみせたわい」
勝利の、歓喜。
仲間たちの、笑顔。
僕の胸を、温かい、達成感が、満たしていく。
僕たちの、戦いは、確かに、報われたのだ。
この日を境に、《絶対王権》という、巨大なギルドは、その実体を、完全に、失った。
王を失い、本拠地を失った、残存メンバーたちは、完全に、戦意を喪失した。
ある者は、その場に崩れ落ち、ただ、呆然とし。
ある者は、静かに、このゲームから、ログアウトしていった。
かつて、このサーバーに、絶対的な恐怖と、支配を、もたらした、巨大な帝国は、あまりにも、あっけなく、砂の城のように、崩れ去ったのだ。
僕たち、『反王権連合』の勝利。
そして、その中心にいた、僕と、ゴードン、ミモリさんの名は、このETOの世界の、救世主として、英雄として、サーバー中に、永遠に、語り継がれることになるだろう。
僕たちの、長い、長い戦いは、ついに、終わりを告げたのだ。
――はず、だった。
仲間たちとの、勝利の祝宴も、一段落し、僕が、一人、静かに、アヴァロンの残骸を、見つめていた、その時。
僕の、脳裏に、あの、ガイアの声が、再び、響き渡った。
それは、以前のような、穏やかなものではなかった。
明確な、焦りと、警告を、含んだ、緊迫した、声だった。
『……探求者、リク。聞こえますか』
(ガイア……? どうしたんだ)
『……事態は、最悪の、方向へと、進んでいます』
ガイアの、その言葉に、僕の、心臓が、冷たく、跳ねた。
『彼は、死んだのでは、ありませんでした。肉体という、枷を、失っただけ』
『彼は、その、強靭な、精神力と、執着だけで、私ですら、容易に、触れることのできない、あの場所へと、到達してしまった』
ガイアが、言っていた、言葉が、僕の脳裏に、蘇る。
『――彼は、この世界の、もっと根源的な、深層のシステムへと、アクセスしようとしています』
「まさか……!」
僕は、戦慄した。
カイザーの、死は、本当の、終わりでは、なかった。
それは、彼が、プレイヤーという、存在を、超越するための、最後の、プロセスだったのだ。
彼は、肉体を、失ったが、その、歪んだ、意識は、データとなり、ガイアの言う、「深層システム」へと、アクセスすることに、成功してしまった。
彼は、もはや、プレイヤーではない。
この、世界の、理そのものに、寄生する、悪性の「バグ」。
あるいは、「ウイルス」のような、存在へと、変貌を遂げてしまったのだ。
『……聞こえます。彼の、思考が』
ガイアの声が、恐怖に、震えていた。
『彼は、この世界の、全てを、破壊し、そして、自らの、理想とする、ただ一つの、法則だけの、世界へと、再構築しようとしています。始まりの、場所から。全てを、ゼロに、戻すために』
世界の、危機は、去ってはいなかった。
それどころか、それは、これまでとは、比較にならない、新たな、そして、より深刻な形で、今まさに、始まろうとしていた。
王は、死んだ。
そして、代わりに、神を、僭称する、悪魔が、生まれようとしている。
僕の、本当の、最後の戦いは、まだ、終わってはいなかったのだ。
僕は、勝利の歓声に沸く、仲間たちに、背を向け、アヴァロンの、残骸が突き刺さる、クレーターの、深淵を、静かに、見つめた。
その、闇の、さらに奥底から、この世界、全ての、終わりを告げる、不気味な、胎動が、聞こえてくるような、気がした。
後に残されたのは、アヴァロンの巨大な残骸が突き刺さる、広大なクレーターと、僕たち三人の、荒い息遣いだけ。
風が、瓦礫の山を吹き抜け、ひゅう、と、物悲しい音を立てた。まるで、一つの時代の終わりを、弔うかのような、挽歌だった。
「……終わったんだな。本当に」
ゴードンが、天を仰ぎ、ぽつりと呟いた。彼の巨体は、無数の傷で覆われ、満身創痍だったが、その表情には、戦いを終えた戦士だけが浮かべることのできる、深い安堵の色が浮かんでいた。
「はい……。終わりましたね」
ミモリさんの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。それは、恐怖から解放された安堵の涙であり、この壮絶な戦いで散っていった、多くの仲間たちへの、祈りの涙でもあった。
僕もまた、胸に、ぽっかりと、大きな穴が空いたような、奇妙な喪失感を、感じていた。
憎むべき、敵だった。だが、同時に、彼ほど、僕の知的好奇心を、刺激し、僕を、成長させてくれた存在も、いなかった。
カイザーという、絶対的な「壁」があったからこそ、僕は、仲間と出会い、自らの知識の、新たな可能性を、切り拓くことができたのだ。
――さらばだ、カイザー。
僕の、最初で、最後の、好敵手(ライバル)。
僕は、心の中で、静かに、彼に、別れを告げた。
その時だった。
僕たちの、視界の上部に、そして、おそらくは、このETOにログインしている、全てのプレイヤーの視界に、金色の縁取りが施された、巨大なテロップが、流れ始めた。
【サーバーアナウンス】
《絶対王権》のギルドマスター『カイザー』の死亡、及び、ギルド本拠地《アヴァロン》の完全崩壊を確認しました。
その、アナウンスが、引き金となった。
エリュシオン・テラの、各地で、戦いの趨勢を、固唾を飲んで見守っていた、全てのプレイヤーたちの間で、爆発的な、歓声が、巻き起こったのだ。
「うおおおおお! やった! 本当に、やりやがった!」
「絶対王権が、崩壊したぞ!」
「『反王権連合』の、勝利だ!」
僕たちがいた、クレーターの周囲にも、後方で待機していた、連合軍の仲間たちが、雄叫びを上げながら、駆け寄ってきた。
彼らは、僕たち三人を、見つけると、その場の勢いで、僕たちを、何度も、何度も、胴上げした。
「リク! お前が、俺たちの、英雄だ!」
「ゴードン! ミモリ! よく、やってくれた!」
バルカンも、その、皺だらけの顔を、くしゃくしゃにしながら、僕たちの肩を、力強く叩いた。
「見事じゃった、リク殿。あんたは、本当に、この世界を、変えてみせたわい」
勝利の、歓喜。
仲間たちの、笑顔。
僕の胸を、温かい、達成感が、満たしていく。
僕たちの、戦いは、確かに、報われたのだ。
この日を境に、《絶対王権》という、巨大なギルドは、その実体を、完全に、失った。
王を失い、本拠地を失った、残存メンバーたちは、完全に、戦意を喪失した。
ある者は、その場に崩れ落ち、ただ、呆然とし。
ある者は、静かに、このゲームから、ログアウトしていった。
かつて、このサーバーに、絶対的な恐怖と、支配を、もたらした、巨大な帝国は、あまりにも、あっけなく、砂の城のように、崩れ去ったのだ。
僕たち、『反王権連合』の勝利。
そして、その中心にいた、僕と、ゴードン、ミモリさんの名は、このETOの世界の、救世主として、英雄として、サーバー中に、永遠に、語り継がれることになるだろう。
僕たちの、長い、長い戦いは、ついに、終わりを告げたのだ。
――はず、だった。
仲間たちとの、勝利の祝宴も、一段落し、僕が、一人、静かに、アヴァロンの残骸を、見つめていた、その時。
僕の、脳裏に、あの、ガイアの声が、再び、響き渡った。
それは、以前のような、穏やかなものではなかった。
明確な、焦りと、警告を、含んだ、緊迫した、声だった。
『……探求者、リク。聞こえますか』
(ガイア……? どうしたんだ)
『……事態は、最悪の、方向へと、進んでいます』
ガイアの、その言葉に、僕の、心臓が、冷たく、跳ねた。
『彼は、死んだのでは、ありませんでした。肉体という、枷を、失っただけ』
『彼は、その、強靭な、精神力と、執着だけで、私ですら、容易に、触れることのできない、あの場所へと、到達してしまった』
ガイアが、言っていた、言葉が、僕の脳裏に、蘇る。
『――彼は、この世界の、もっと根源的な、深層のシステムへと、アクセスしようとしています』
「まさか……!」
僕は、戦慄した。
カイザーの、死は、本当の、終わりでは、なかった。
それは、彼が、プレイヤーという、存在を、超越するための、最後の、プロセスだったのだ。
彼は、肉体を、失ったが、その、歪んだ、意識は、データとなり、ガイアの言う、「深層システム」へと、アクセスすることに、成功してしまった。
彼は、もはや、プレイヤーではない。
この、世界の、理そのものに、寄生する、悪性の「バグ」。
あるいは、「ウイルス」のような、存在へと、変貌を遂げてしまったのだ。
『……聞こえます。彼の、思考が』
ガイアの声が、恐怖に、震えていた。
『彼は、この世界の、全てを、破壊し、そして、自らの、理想とする、ただ一つの、法則だけの、世界へと、再構築しようとしています。始まりの、場所から。全てを、ゼロに、戻すために』
世界の、危機は、去ってはいなかった。
それどころか、それは、これまでとは、比較にならない、新たな、そして、より深刻な形で、今まさに、始まろうとしていた。
王は、死んだ。
そして、代わりに、神を、僭称する、悪魔が、生まれようとしている。
僕の、本当の、最後の戦いは、まだ、終わってはいなかったのだ。
僕は、勝利の歓声に沸く、仲間たちに、背を向け、アヴァロンの、残骸が突き刺さる、クレーターの、深淵を、静かに、見つめた。
その、闇の、さらに奥底から、この世界、全ての、終わりを告げる、不気味な、胎動が、聞こえてくるような、気がした。
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