無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ

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第66話 新世界の誕生、四つの神の礎

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光が、消えた。
神々の権能が、創造主の意志が、この世界から、完全に、消え失せた。
後に残されたのは、崩壊寸前の、古い世界の、残骸。そして、新たな世界の管理者となった俺と、その傍らに立つ、三人の、かけがえのない仲間たち。
空間の至る所で、亀裂が走り、物理法則が、悲鳴を上げている。
このままでは、あと、数時間も持たない。

「……始めるぞ」
俺は、静かに、宣言した。
「俺たちの手で、この世界を、創り直す」
俺は、天に、両手を掲げた。
俺の魂と、完全に同期した【創造主の権能】が、その真の力を、解放する。
俺の脳内に、この世界の、全ての、根源的なソースコードが、展開された。あまりにも、膨大で、複雑な、神の設計図。
「まずは、この、崩壊しかけている古い世界を、一度、完全に、解体する。全ての物質を、全ての法則を、純粋な、情報のエネルギーへと、還元するんだ」
俺が、そう命じると、神域の、白亜の床が、黄金の柱が、光の粒子となって、霧散し始めた。
その光景は、やがて、地上へと広がり、山が、海が、大地が、その形を失い、膨大な、情報の光の奔流となって、俺の元へと、収束していく。
旧世界の、終わり。
それは、恐ろしく、そして、どこまでも、美しい、光景だった。

「アレス!」
俺は、叫んだ。
「そのエネルギーを、受け止め、新しい世界の、礎となる、土台を、築いてくれ!」
「ああ、任せろ!」
アレスが、一歩、前に出る。
彼の全身から、白銀の、神々しいオーラが、溢れ出した。それは、彼が、その身に引き受け続けてきた、世界の、全ての歪みと、悲しみの、エネルギー。
だが、それは、もはや、彼を蝕む、呪いではない。
新しい世界を、生み出すための、聖なる、力だ。
「――我が魂を、礎に、新たなる、大地よ、生まれよ!」
彼が、叫ぶと、光の奔流は、彼の元へと、吸い寄せられ、純粋で、安定した、巨大な、エネルギーの塊へと、姿を変えた。
新しい、世界の、キャンバスが、そこに、用意された。

「フレア!」
俺は、次に、彼女の名を、呼んだ。
「その、キャンバスに、新しい、世界の、骨格を、絆を、描き込め!」
「おうよ、相棒!」
フレアは、虹色に輝く『始まりの剣』を、高く、掲げた。
その剣には、連合軍、全ての、仲間たちの、想いが、宿っている。
「――この想いが、尽きぬ限り、俺たちの世界は、決して、壊れたりしねえ! 繋がれ、魂! 届け、絆! 『創世の理(ジェネシス・オーダー)』!」
彼女が、剣を、振り下ろすと、虹色の光の線が、無数の、幾何学模様を描きながら、エネルギーのキャンバスに、刻み込まれていく。
それは、新しい世界の、物理法則。
人々が、互いを、傷つけ合うのではなく、支え合い、認め合えるように。
その、フレアの、真っ直ぐな想いが、新しい世界の、最も、根源的な、ルールとなった。

そして、最後に。
「ルナ!」
俺は、愛する、巫女の名を、呼んだ。
「その、骨格に、生命(いのち)の、息吹を、吹き込んでくれ!」
「はい、海斗さん!」
ルナは、優しく、微笑むと、その手に、『精霊の涙』を、掲げた。
彼女の、慈愛に満ちた、魂の歌が、新しい世界に、響き渡る。
「――生まれなさい、愛しき、命たちよ。悲しみも、苦しみもない、この、祝福された、大地の上で。健やかに、朗らかに、その、輝きを、謳歌しなさい」
彼女の、聖なる魔力が、虹色の、法則の線に触れると、そこから、奇跡が、生まれた。
青い、海が、生まれ。
緑の、大地が、広がり。
白い、雲が、空を、流れる。
草木が、芽吹き、花が、咲き乱れ、そして、あらゆる、生命の、源となる、清らかな、風が、吹き抜けていった。

神の干渉も、致命的なバグもない、ただ、生命が、その、可能性のままに、自由に、生きることができる、新しい、世界。
その、誕生の瞬間を、俺たちは、目にしていた。

この、壮大な、世界の再構築は、数時間にも、及んだ。
全ての、創造が、終わった時。
俺たちは、四人とも、全ての力を、使い果たし、その場に、崩れ落ちるように、倒れ込んだ。
「……やった、な……」
フレアが、か細い声で、笑う。
「はい……。とても、美しい、世界が……生まれましたね……」
ルナの瞳から、一筋の、涙が、こぼれた。
「……ああ。これで、ようやく、本当の、夜明けが、来るな……」
アレスもまた、満足げに、微笑んでいた。

俺たちの、意識が、遠のいていく。
だが、その心は、これまでにないほどの、達成感と、安堵に、満たされていた。
俺たちの、長くて、無謀な、戦いは、終わったのだ。
俺は、仲間たちの、確かな、気配を、感じながら。
新しい、世界の、柔らかな、光の中で、深い、深い、眠りへと、落ちていった。
その先に、どんな、未来が、待っているのか。
それを、夢見ながら。
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