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第67話 エピローグ① 元の世界に戻る選択肢と、この世界に残る選択
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心地よい、鳥のさえずりで、俺は目を覚ました。
頬を撫でる、柔らかな風。暖かな、陽の光。そして、懐かしい、土と、緑の香り。
俺は、ゆっくりと、瞼を開けた。
目に飛び込んできたのは、どこまでも広がる、青い空と、穏やかに揺れる、草原の景色だった。
「……ここは……」
身体を起こすと、自分が、大きな、樫の木の下で、眠っていたことに気づいた。
傍らには、ルナと、フレア、そして、アレスも、同じように、眠っていたが、俺が起きたことに気づき、次々と、目を覚ました。
「……カイト! 生きてるか!」
「海斗さん……! よかった……!」
「……どうやら、成功したようだな、カイト」
俺たちは、互いの顔を見合わせ、そして、自分たちが創り上げた、新しい世界の、その、息吹を、感じていた。
もう、どこにも、世界の歪みも、バグの気配もない。
ただ、清らかで、力強い、生命のエネルギーが、満ち溢れている。
俺たちの、戦いは、終わったのだ。
「……終わったんだな。本当に……」
俺は、大の字になって、草原に、寝転がった。
追放されてから、ずっと、張り詰めていた、心の糸が、ようやく、解けていくのを感じる。
もう、何かに、追われることもない。
誰かと、戦う必要も、ない。
ただ、この、平和な世界で、生きていけば、いい。
その、当たり前のことが、信じられないほど、幸せに、感じられた。
俺たちが、しばらく、その、穏やかな時間を、噛みしめていた、その時。
俺の、目の前の空間に、ふわり、と、小さな、光の球が、現れた。
それは、デミウルゴスの、魂の、残滓だった。
『……やあ、カイト』
その声は、もはや、神のそれではなく、ただの、穏やかな、少年の声だった。
『君たちが、創り上げた、新しい世界。とても、素敵だね。僕が、創った、どの世界よりも、温かくて、優しくて、そして、美しい』
「……デミウルゴス」
『……僕の、役目は、もう、終わった。この、小さな、意識も、もうすぐ、この世界の、理の中に、還って、消えるだろう。でも、その前に、最後に、君に、一つだけ、贈り物を、したくてね』
彼が、そう言うと、光の球の、隣に。
小さな、時空の、亀裂が、生まれた。
それは、まるで、小さな、黒い、ゲートのようだった。
そして、その、ゲートの向こう側に、俺は、見慣れた、光景を、見た。
蛍光灯の、白い光。
無機質な、オフィスの、デスク。
そして、そこに、突っ伏して、眠っている、一人の、疲れ果てた、サラリーマンの姿。
それは、この世界に、来る前の、俺、自身だった。
「……これは……」
『君の、元の世界へと、続く、道だよ』
デミウルゴスは、言った。
『君は、この世界を、救った。その、最大の、功労者だ。だから、君には、選ぶ、権利がある。全てを、終わらせて、元の、平和な、日常に、帰る、という、選択肢を』
その、あまりにも、突然の、提案に、俺は、言葉を失った。
元の、世界に、帰る。
ブラック企業で、過労死寸前だった、あの、日常。
でも、そこには、家族がいて、友人がいる。
ゲームも、漫画も、ネットもある。
何より、命の、危険のない、平和な、世界。
帰りたいと、思わなかった、と言えば、嘘になる。
俺の、心の、揺らぎを、感じ取ったのか。
隣にいた、ルナと、フレアの、表情が、曇った。
「……カイト……」
「……帰るのか……? 俺たちを、置いて……?」
二人の、悲しそうな声が、俺の、胸に、突き刺さる。
彼女たちは、決して、俺を、引き止めようとは、しないだろう。
それが、俺の、幸せに繋がるのなら、と、きっと、涙を堪えて、俺を、送り出してくれるに、違いない。
だからこそ、俺は、選ばなければならない。
自分の、本当の、気持ちを。
俺は、静かに、立ち上がった。
そして、元の世界へと続く、ゲートを、真っ直ぐに、見つめた。
懐かしい、匂いがする。
だが、もう、俺の、心は、少しも、揺らがなかった。
俺は、振り返り、不安そうに、俺を見つめる、ルナと、フレアの、両手を、強く、握った。
そして、デミウルゴスに、はっきりと、告げた。
「……ありがとう、デミウルゴス。その、気持ちは、嬉しい。だが、俺は、帰らない」
「俺の、帰る場所は、もう、ここ(・・)だからだ」
俺の、答えに、ルナとフレアの瞳が、驚きに、見開かれ、そして、次の瞬間、大粒の、涙が、溢れ出した。
「海斗さん……!」
「カイト……! ばかやろう……!」
二人は、俺の胸に、飛び込んできた。
俺は、その、かけがえのない、二人の身体を、強く、強く、抱きしめた。
もう、この、温もりを、手放すことなど、考えられない。
『……そう。君なら、そう、言うと、思っていたよ』
デミウルゴスの、光の球が、満足そうに、微笑んだように、見えた。
『……さようなら、カイト。そして、ありがとう。僕の、最後の、そして、最高の、友達』
その言葉を、最後に、光の球は、静かに、消えていった。
元の世界へと続く、ゲートもまた、その役目を終え、閉じていく。
俺の、過去への道は、完全に、断たれた。
だが、俺の心には、一片の、後悔も、なかった。
俺が、生きる場所は、ここだ。
この、俺たちが、創り上げた、新しい世界。
そして、この、かけがえのない、仲間たちと、共に。
俺は、俺を、抱きしめる、二人の、温もりを、感じながら。
どこまでも、広がる、青い空を、見上げていた。
俺の、本当の人生は、今、ここから、始まるのだ。
そう、確信しながら。
頬を撫でる、柔らかな風。暖かな、陽の光。そして、懐かしい、土と、緑の香り。
俺は、ゆっくりと、瞼を開けた。
目に飛び込んできたのは、どこまでも広がる、青い空と、穏やかに揺れる、草原の景色だった。
「……ここは……」
身体を起こすと、自分が、大きな、樫の木の下で、眠っていたことに気づいた。
傍らには、ルナと、フレア、そして、アレスも、同じように、眠っていたが、俺が起きたことに気づき、次々と、目を覚ました。
「……カイト! 生きてるか!」
「海斗さん……! よかった……!」
「……どうやら、成功したようだな、カイト」
俺たちは、互いの顔を見合わせ、そして、自分たちが創り上げた、新しい世界の、その、息吹を、感じていた。
もう、どこにも、世界の歪みも、バグの気配もない。
ただ、清らかで、力強い、生命のエネルギーが、満ち溢れている。
俺たちの、戦いは、終わったのだ。
「……終わったんだな。本当に……」
俺は、大の字になって、草原に、寝転がった。
追放されてから、ずっと、張り詰めていた、心の糸が、ようやく、解けていくのを感じる。
もう、何かに、追われることもない。
誰かと、戦う必要も、ない。
ただ、この、平和な世界で、生きていけば、いい。
その、当たり前のことが、信じられないほど、幸せに、感じられた。
俺たちが、しばらく、その、穏やかな時間を、噛みしめていた、その時。
俺の、目の前の空間に、ふわり、と、小さな、光の球が、現れた。
それは、デミウルゴスの、魂の、残滓だった。
『……やあ、カイト』
その声は、もはや、神のそれではなく、ただの、穏やかな、少年の声だった。
『君たちが、創り上げた、新しい世界。とても、素敵だね。僕が、創った、どの世界よりも、温かくて、優しくて、そして、美しい』
「……デミウルゴス」
『……僕の、役目は、もう、終わった。この、小さな、意識も、もうすぐ、この世界の、理の中に、還って、消えるだろう。でも、その前に、最後に、君に、一つだけ、贈り物を、したくてね』
彼が、そう言うと、光の球の、隣に。
小さな、時空の、亀裂が、生まれた。
それは、まるで、小さな、黒い、ゲートのようだった。
そして、その、ゲートの向こう側に、俺は、見慣れた、光景を、見た。
蛍光灯の、白い光。
無機質な、オフィスの、デスク。
そして、そこに、突っ伏して、眠っている、一人の、疲れ果てた、サラリーマンの姿。
それは、この世界に、来る前の、俺、自身だった。
「……これは……」
『君の、元の世界へと、続く、道だよ』
デミウルゴスは、言った。
『君は、この世界を、救った。その、最大の、功労者だ。だから、君には、選ぶ、権利がある。全てを、終わらせて、元の、平和な、日常に、帰る、という、選択肢を』
その、あまりにも、突然の、提案に、俺は、言葉を失った。
元の、世界に、帰る。
ブラック企業で、過労死寸前だった、あの、日常。
でも、そこには、家族がいて、友人がいる。
ゲームも、漫画も、ネットもある。
何より、命の、危険のない、平和な、世界。
帰りたいと、思わなかった、と言えば、嘘になる。
俺の、心の、揺らぎを、感じ取ったのか。
隣にいた、ルナと、フレアの、表情が、曇った。
「……カイト……」
「……帰るのか……? 俺たちを、置いて……?」
二人の、悲しそうな声が、俺の、胸に、突き刺さる。
彼女たちは、決して、俺を、引き止めようとは、しないだろう。
それが、俺の、幸せに繋がるのなら、と、きっと、涙を堪えて、俺を、送り出してくれるに、違いない。
だからこそ、俺は、選ばなければならない。
自分の、本当の、気持ちを。
俺は、静かに、立ち上がった。
そして、元の世界へと続く、ゲートを、真っ直ぐに、見つめた。
懐かしい、匂いがする。
だが、もう、俺の、心は、少しも、揺らがなかった。
俺は、振り返り、不安そうに、俺を見つめる、ルナと、フレアの、両手を、強く、握った。
そして、デミウルゴスに、はっきりと、告げた。
「……ありがとう、デミウルゴス。その、気持ちは、嬉しい。だが、俺は、帰らない」
「俺の、帰る場所は、もう、ここ(・・)だからだ」
俺の、答えに、ルナとフレアの瞳が、驚きに、見開かれ、そして、次の瞬間、大粒の、涙が、溢れ出した。
「海斗さん……!」
「カイト……! ばかやろう……!」
二人は、俺の胸に、飛び込んできた。
俺は、その、かけがえのない、二人の身体を、強く、強く、抱きしめた。
もう、この、温もりを、手放すことなど、考えられない。
『……そう。君なら、そう、言うと、思っていたよ』
デミウルゴスの、光の球が、満足そうに、微笑んだように、見えた。
『……さようなら、カイト。そして、ありがとう。僕の、最後の、そして、最高の、友達』
その言葉を、最後に、光の球は、静かに、消えていった。
元の世界へと続く、ゲートもまた、その役目を終え、閉じていく。
俺の、過去への道は、完全に、断たれた。
だが、俺の心には、一片の、後悔も、なかった。
俺が、生きる場所は、ここだ。
この、俺たちが、創り上げた、新しい世界。
そして、この、かけがえのない、仲間たちと、共に。
俺は、俺を、抱きしめる、二人の、温もりを、感じながら。
どこまでも、広がる、青い空を、見上げていた。
俺の、本当の人生は、今、ここから、始まるのだ。
そう、確信しながら。
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