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第九十五話 創生の光
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邪神は、その存在の全てを懸けた最後の一撃を放った。
混沌の体そのものが一点に凝縮され、全てを無に帰す漆黒のエネルギーの奔流となって私に殺到する。
それはもはや魔法でも物理攻撃でもない。
世界そのものの「死」という概念の具現だった。
だが、その絶対的な破壊を前にして。
私は、ただ静かに立っていた。
そして、その右手をゆっくりと前に差し出す。
私の手のひらから放たれる虹色の光。
それは邪神の黒い奔流に比べれば、あまりにもか細く、そして儚い光だった。
だが。
黒と虹色が衝突した瞬間。
起こったのは爆発ではなかった。
融合。
私の創生の光は、邪神の破壊の力を打ち消すのではなかった。
ただ静かにそれを受け入れ、そして優しく包み込んでいったのだ。
「―――キシャ……?」
邪神の意識から困惑の声が漏れる。
彼の憎しみも飢餓も、そして数万年の孤独も。
その全ての負の感情が、私の温かい光の中でゆっくりと溶かされていく。
それはまるで、凍てついた大地に春の陽光が降り注ぐかのように。
あるいは、乾ききった砂漠に恵みの雨が降るかのように。
邪神は生まれて初めて、その魂に触れられたのだ。
破壊でも封印でもなく。
ただ、純粋な「愛」という感情に。
彼のおぞましい混沌の体は、その形を失っていく。
黒い泥は清らかな水へと変わり。
無数の触手は美しい光の粒子となって霧散していく。
その中心にあった憎悪に満ちた赤い一つ目は、ゆっくりとその輝きを失い、穏やかな眠りへと就こうとしていた。
彼は戦っていたのではない。
ただ寂しかったのだ。
ただ誰かに、その存在を認めてほしかったのだ。
数万年というあまりにも永い孤独の中で。
私は理解した。
そして、赦した。
「……もう、大丈夫」
私は消えゆく彼の意識に向かって、静かに語りかけた。
「もう、あなたは一人ではないから」
その言葉を最後に。
邪神の存在は完全にこの世界から掻き消えた。
後に残されたのは、きらきらと舞う美しい光の粒子だけ。
その粒子は遺跡の天井の穴から空へと舞い上がっていく。
そして血のように赤く染まっていた空を、元の美しい青色へと塗り替えていった。
空に走っていた黒い裂け目も癒えていく。
世界を覆っていた邪悪な瘴気も浄化されていく。
私の創生の光は邪神を消し去っただけでなく、彼がこの世界に与えた全ての傷跡を完全に修復してしまったのだ。
粉々に砕け-散ったはずの天空城さえも、その光の中で元の美しい姿を取り戻していく。
全てが終わった。
本当に、全てが。
そのあまりにも神々しい光景を。
意識を取り戻したレオンとゼノヴィアは、ただ呆然と見つめていた。
彼らの目の前に立っている虹色の後光を背負った私。
その姿はもはや彼らが知る聖女アリアではなかった。
それはまさしく、この世界を救った女神そのものだった。
「……アリア……?」
レオンが信じられないというように、私の名前を呼んだ。
私はゆっくりと彼らに向き直った。
そして、穏やかに微笑んだ。
体から放たれていた虹色の光が、ゆっくりと収束していく。
女神の神々しさは消え失せ、私は元のただのアリアへと戻った。
だが、その代償は大きかった。
全身から力が抜けていく。
世界の理を書き換えるという奇跡。
それは私の生命力そのものを燃焼させて成り立ったのだ。
私の体はふらりと傾いだ。
「アリア!」
レオンとゼノヴィアが慌てて駆け寄ってくる。
だが、私の視線は彼らには向いていなかった。
私の瞳はただ一点。
祭壇の上に静かに横たわる、愛する人の姿だけを捉えていた。
全ては終わった。
世界は救われた。
けれど。
私の世界はまだ終わったまま。
この腕の中に彼が戻ってこない限り。
私の物語は決してハッピーエンドでは終わらない。
私はふらつく足で再び祭壇へと歩み寄った。
そして、その冷たい彼の亡骸をもう一度その腕に抱きしめた。
私の戦いはまだ終わっていない。
本当の奇跡は、これから起こすのだ。
混沌の体そのものが一点に凝縮され、全てを無に帰す漆黒のエネルギーの奔流となって私に殺到する。
それはもはや魔法でも物理攻撃でもない。
世界そのものの「死」という概念の具現だった。
だが、その絶対的な破壊を前にして。
私は、ただ静かに立っていた。
そして、その右手をゆっくりと前に差し出す。
私の手のひらから放たれる虹色の光。
それは邪神の黒い奔流に比べれば、あまりにもか細く、そして儚い光だった。
だが。
黒と虹色が衝突した瞬間。
起こったのは爆発ではなかった。
融合。
私の創生の光は、邪神の破壊の力を打ち消すのではなかった。
ただ静かにそれを受け入れ、そして優しく包み込んでいったのだ。
「―――キシャ……?」
邪神の意識から困惑の声が漏れる。
彼の憎しみも飢餓も、そして数万年の孤独も。
その全ての負の感情が、私の温かい光の中でゆっくりと溶かされていく。
それはまるで、凍てついた大地に春の陽光が降り注ぐかのように。
あるいは、乾ききった砂漠に恵みの雨が降るかのように。
邪神は生まれて初めて、その魂に触れられたのだ。
破壊でも封印でもなく。
ただ、純粋な「愛」という感情に。
彼のおぞましい混沌の体は、その形を失っていく。
黒い泥は清らかな水へと変わり。
無数の触手は美しい光の粒子となって霧散していく。
その中心にあった憎悪に満ちた赤い一つ目は、ゆっくりとその輝きを失い、穏やかな眠りへと就こうとしていた。
彼は戦っていたのではない。
ただ寂しかったのだ。
ただ誰かに、その存在を認めてほしかったのだ。
数万年というあまりにも永い孤独の中で。
私は理解した。
そして、赦した。
「……もう、大丈夫」
私は消えゆく彼の意識に向かって、静かに語りかけた。
「もう、あなたは一人ではないから」
その言葉を最後に。
邪神の存在は完全にこの世界から掻き消えた。
後に残されたのは、きらきらと舞う美しい光の粒子だけ。
その粒子は遺跡の天井の穴から空へと舞い上がっていく。
そして血のように赤く染まっていた空を、元の美しい青色へと塗り替えていった。
空に走っていた黒い裂け目も癒えていく。
世界を覆っていた邪悪な瘴気も浄化されていく。
私の創生の光は邪神を消し去っただけでなく、彼がこの世界に与えた全ての傷跡を完全に修復してしまったのだ。
粉々に砕け-散ったはずの天空城さえも、その光の中で元の美しい姿を取り戻していく。
全てが終わった。
本当に、全てが。
そのあまりにも神々しい光景を。
意識を取り戻したレオンとゼノヴィアは、ただ呆然と見つめていた。
彼らの目の前に立っている虹色の後光を背負った私。
その姿はもはや彼らが知る聖女アリアではなかった。
それはまさしく、この世界を救った女神そのものだった。
「……アリア……?」
レオンが信じられないというように、私の名前を呼んだ。
私はゆっくりと彼らに向き直った。
そして、穏やかに微笑んだ。
体から放たれていた虹色の光が、ゆっくりと収束していく。
女神の神々しさは消え失せ、私は元のただのアリアへと戻った。
だが、その代償は大きかった。
全身から力が抜けていく。
世界の理を書き換えるという奇跡。
それは私の生命力そのものを燃焼させて成り立ったのだ。
私の体はふらりと傾いだ。
「アリア!」
レオンとゼノヴィアが慌てて駆け寄ってくる。
だが、私の視線は彼らには向いていなかった。
私の瞳はただ一点。
祭壇の上に静かに横たわる、愛する人の姿だけを捉えていた。
全ては終わった。
世界は救われた。
けれど。
私の世界はまだ終わったまま。
この腕の中に彼が戻ってこない限り。
私の物語は決してハッピーエンドでは終わらない。
私はふらつく足で再び祭壇へと歩み寄った。
そして、その冷たい彼の亡骸をもう一度その腕に抱きしめた。
私の戦いはまだ終わっていない。
本当の奇跡は、これから起こすのだ。
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