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第36話:公爵様の鉄壁ガード
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扉の外から聞こえたノックの音は、控えめでありながら、確かな存在感を放っていた。
私の決意を、見透かされているかのようなタイミング。
私は乱れのない足取りで扉へと向かい、ゆっくりとそれを開いた。
そこに立っていたのは、やはり、アシュレイ様だった。
彼は王宮へ向かうための正装に身を包んでいた。銀糸で縁取られた紺色の軍服は、彼の均整の取れた身体の線を完璧に引き立て、その威厳と美しさを一層際立たせている。
彼は、私の顔を見るなり、その紫の瞳をわずかに細めた。
「……何か、あったのか」
その声は、私の心の奥底まで見通すように、静かで、そして鋭かった。
私はもう、動揺を隠すために俯いたりはしなかった。
「アシュレイ様。ちょうど、お話したいことがございました」
私はそう言うと、一歩下がって彼を部屋の中へと招き入れた。彼は私の落ち着いた態度に少しだけ驚いたようだったが、何も言わずに部屋へと入ってくる。
私は扉を閉めると、彼に向き直り、先ほどから握りしめていた手紙を、両手でそっと差し出した。
「実家から、手紙が」
私のその言葉に、アシュレイ様の表情がすっと険しくなった。彼は手紙を受け取ると、そのあまりにも身勝手で、傲慢な文面に、ゆっくりと目を通し始めた。
部屋の中に、重い沈黙が落ちる。聞こえるのは、羊皮紙が彼の指先で擦れる、かすかな音だけ。
読み終えた彼は、何も言わなかった。
ただ、その瞳の奥で、静かで、しかし底知れないほどの冷たい怒りの炎が燃え上がっていくのが、私には痛いほど分かった。部屋の温度が、数度下がったかのような錯覚さえ覚える。
けれど、その怒りは、決して私に向けられたものではなかった。
「……それで」
彼は、私を傷つけないように、できる限り穏やかな声色を保とうとしながら、尋ねた。
「君は、どうしたい? この手紙に書かれている通り、エルフィールド家に戻りたいと、思うか」
その問いは、私の意思を最大限に尊重しようとする、彼の優しさの表れだった。
私は、静かに、そしてきっぱりと首を横に振った。
「いいえ」
その一言に、私の全ての決意を込めた。
「私はもう、あの家には戻りません。私の居場所は、ここです。アシュレイ様のお傍です」
私は、彼の目をまっすぐに見つめ返した。その瞳には、もう一片の迷いもなかった。
私のその答えを聞いて、アシュレイ様の顔に浮かんでいた険しい表情が、ふっと和らいだ。そして、まるで愛おしい宝物でも見るかのように、その紫の瞳が、深い優しさの色に染まっていく。
「……そうか」
彼は、心から安堵したように、そう呟いた。
「君がそう決めたのなら、それが正しい。君の心こそが、何よりも優先されるべきものだ」
彼はそう言うと、私の頬にそっと手を伸ばし、親指で優しく撫でた。その温かい感触が、私の決意をさらに強く、確かなものにしてくれる。
そして、彼は、私の手から離れていた手紙へと、再び視線を落とした。
その瞳に宿っていたのは、もはや怒りというよりも、汚らわしいものでも見るかのような、絶対零度の侮蔑だった。
「……許しがたい」
彼が、低い声で呟いた。
「君の心を、君のこれまでの人生を、なんだと思っているのか。彼らは、君を物としてしか見ていない。都合の良い時にだけ手元に置き、不要になれば捨て、また価値が出れば拾おうとする。……そんなことが、許されていいはずがない」
彼は、ゆっくりと、しかし確かな力で、その手紙を持ち上げた。
「こんな紙切れは、君の未来には必要ない」
その言葉と共に、彼は、手にした手紙を、両手で引き裂いた。
びり、という乾いた音が、静まり返った部屋に響き渡る。
彼は、一度だけでは飽き足らず、さらにそれを半分に、また半分にと、細かく、丁寧に破っていく。まるで、私の心を縛り付けていた最後の呪いを、一枚一枚、丁寧に祓ってくれているかのようだった。
破られた羊皮紙の欠片が、ひらひらと、白い蝶のように床へと舞い落ちていく。
それは、私の過去との、完全な決別の儀式だった。
全てを破り終えた彼は、その紙屑を、まるでゴミでも捨てるかのように、近くにあった暖炉の中へと投げ入れた。
「これで、終わりだ」
彼は、私に向き直ると、どこまでも優しい声で言った。
「君を縛るものは、もう何もない」
その言葉に、私の目から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。それは、悲しみや怒りの涙ではない。長年背負ってきた重い荷物を、ようやく下ろすことができた、安堵と解放の涙だった。
私は、その涙を隠そうともせず、彼に向かって、心からの笑顔を向けた。
「……ありがとうございます、アシュレイ様」
彼は、その笑顔を見て、満足そうに頷いた。
そして、床に落ちた紙片を指さし、セバスチャンを呼ぶためのベルを鳴らしながら、静かに、しかし絶対的な権力者の声で告げた。
「エルフィールド伯爵家には、私から正式に返答しておこう」
彼は、私の涙をそっと指で拭いながら、その続きを、私にだけ聞こえるように囁いた。
「『リナリ-アの居場所は、ここアイゼンベルク公爵邸だ。彼女の意思は、私の意思でもある。二度と、我々に関わるな』と」
その言葉は、何よりも心強い、愛の誓いだった。
私の最後の呪縛は、完全に解き放たれた。
もう、何も怖くはない。
私は、アシュレイ様の手を、今度は自分から、ぎゅっと握りしめた。
さあ、行こう。
王宮へ。
私たちの、未来を掴むために。
私の心は、かつてないほどに、晴れやかで、そして力強く、前を向いていた。
私の決意を、見透かされているかのようなタイミング。
私は乱れのない足取りで扉へと向かい、ゆっくりとそれを開いた。
そこに立っていたのは、やはり、アシュレイ様だった。
彼は王宮へ向かうための正装に身を包んでいた。銀糸で縁取られた紺色の軍服は、彼の均整の取れた身体の線を完璧に引き立て、その威厳と美しさを一層際立たせている。
彼は、私の顔を見るなり、その紫の瞳をわずかに細めた。
「……何か、あったのか」
その声は、私の心の奥底まで見通すように、静かで、そして鋭かった。
私はもう、動揺を隠すために俯いたりはしなかった。
「アシュレイ様。ちょうど、お話したいことがございました」
私はそう言うと、一歩下がって彼を部屋の中へと招き入れた。彼は私の落ち着いた態度に少しだけ驚いたようだったが、何も言わずに部屋へと入ってくる。
私は扉を閉めると、彼に向き直り、先ほどから握りしめていた手紙を、両手でそっと差し出した。
「実家から、手紙が」
私のその言葉に、アシュレイ様の表情がすっと険しくなった。彼は手紙を受け取ると、そのあまりにも身勝手で、傲慢な文面に、ゆっくりと目を通し始めた。
部屋の中に、重い沈黙が落ちる。聞こえるのは、羊皮紙が彼の指先で擦れる、かすかな音だけ。
読み終えた彼は、何も言わなかった。
ただ、その瞳の奥で、静かで、しかし底知れないほどの冷たい怒りの炎が燃え上がっていくのが、私には痛いほど分かった。部屋の温度が、数度下がったかのような錯覚さえ覚える。
けれど、その怒りは、決して私に向けられたものではなかった。
「……それで」
彼は、私を傷つけないように、できる限り穏やかな声色を保とうとしながら、尋ねた。
「君は、どうしたい? この手紙に書かれている通り、エルフィールド家に戻りたいと、思うか」
その問いは、私の意思を最大限に尊重しようとする、彼の優しさの表れだった。
私は、静かに、そしてきっぱりと首を横に振った。
「いいえ」
その一言に、私の全ての決意を込めた。
「私はもう、あの家には戻りません。私の居場所は、ここです。アシュレイ様のお傍です」
私は、彼の目をまっすぐに見つめ返した。その瞳には、もう一片の迷いもなかった。
私のその答えを聞いて、アシュレイ様の顔に浮かんでいた険しい表情が、ふっと和らいだ。そして、まるで愛おしい宝物でも見るかのように、その紫の瞳が、深い優しさの色に染まっていく。
「……そうか」
彼は、心から安堵したように、そう呟いた。
「君がそう決めたのなら、それが正しい。君の心こそが、何よりも優先されるべきものだ」
彼はそう言うと、私の頬にそっと手を伸ばし、親指で優しく撫でた。その温かい感触が、私の決意をさらに強く、確かなものにしてくれる。
そして、彼は、私の手から離れていた手紙へと、再び視線を落とした。
その瞳に宿っていたのは、もはや怒りというよりも、汚らわしいものでも見るかのような、絶対零度の侮蔑だった。
「……許しがたい」
彼が、低い声で呟いた。
「君の心を、君のこれまでの人生を、なんだと思っているのか。彼らは、君を物としてしか見ていない。都合の良い時にだけ手元に置き、不要になれば捨て、また価値が出れば拾おうとする。……そんなことが、許されていいはずがない」
彼は、ゆっくりと、しかし確かな力で、その手紙を持ち上げた。
「こんな紙切れは、君の未来には必要ない」
その言葉と共に、彼は、手にした手紙を、両手で引き裂いた。
びり、という乾いた音が、静まり返った部屋に響き渡る。
彼は、一度だけでは飽き足らず、さらにそれを半分に、また半分にと、細かく、丁寧に破っていく。まるで、私の心を縛り付けていた最後の呪いを、一枚一枚、丁寧に祓ってくれているかのようだった。
破られた羊皮紙の欠片が、ひらひらと、白い蝶のように床へと舞い落ちていく。
それは、私の過去との、完全な決別の儀式だった。
全てを破り終えた彼は、その紙屑を、まるでゴミでも捨てるかのように、近くにあった暖炉の中へと投げ入れた。
「これで、終わりだ」
彼は、私に向き直ると、どこまでも優しい声で言った。
「君を縛るものは、もう何もない」
その言葉に、私の目から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。それは、悲しみや怒りの涙ではない。長年背負ってきた重い荷物を、ようやく下ろすことができた、安堵と解放の涙だった。
私は、その涙を隠そうともせず、彼に向かって、心からの笑顔を向けた。
「……ありがとうございます、アシュレイ様」
彼は、その笑顔を見て、満足そうに頷いた。
そして、床に落ちた紙片を指さし、セバスチャンを呼ぶためのベルを鳴らしながら、静かに、しかし絶対的な権力者の声で告げた。
「エルフィールド伯爵家には、私から正式に返答しておこう」
彼は、私の涙をそっと指で拭いながら、その続きを、私にだけ聞こえるように囁いた。
「『リナリ-アの居場所は、ここアイゼンベルク公爵邸だ。彼女の意思は、私の意思でもある。二度と、我々に関わるな』と」
その言葉は、何よりも心強い、愛の誓いだった。
私の最後の呪縛は、完全に解き放たれた。
もう、何も怖くはない。
私は、アシュレイ様の手を、今度は自分から、ぎゅっと握りしめた。
さあ、行こう。
王宮へ。
私たちの、未来を掴むために。
私の心は、かつてないほどに、晴れやかで、そして力強く、前を向いていた。
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