Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ

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第十五話 森の友と鋼の誓い

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悪性の魔晶が砕け散った後、洞窟を満たしていた邪悪な気配は嘘のように霧散した。残されたのは、ただの静かな地下空間だけだ。
俺は荒い息を整えながら、隣に立つシルフィに視線を向けた。彼女は呆然と、魔物が消え去った空間を見つめている。その翡翠色の瞳には、信じられないものを見たという驚きと、長年の重圧から解放された安堵の色が浮かんでいた。

「……終わったのか」
「ああ。穢れの根源は、もうない」

俺の言葉に、彼女はゆっくりとこちらに顔を向けた。その瞳から、俺を射抜くような鋭い光は完全に消え失せていた。
「……すまなかった。私は、お前を疑っていた」
シルフィは深く頭を下げた。その声は、微かに震えている。
「礼を言う、カイン。お前は、この森の恩人だ」

「気にするな。俺も、自分の興味で首を突っ込んだだけだ」
俺がそう言うと、彼女は静かに首を振った。
「いや、感謝させてくれ。私は……ずっと一人で、この穢れと戦ってきた。いつかこの森が、完全に穢れに飲み込まれてしまうのではないかと、そればかりを恐れていた」

その言葉には、彼女が背負ってきた永い孤独の重みが滲んでいた。かつて、人間たちの身勝手な開発によって住処を追われ、仲間たちとも離れ離れになったこと。この泉だけが、彼女にとって最後の聖域だったこと。彼女は、ぽつりぽつりと、自分のことを語ってくれた。

『カイン、この人、もう悲しい匂いはしません』
フェンが、俺の心にそっと話しかけてくる。その言葉通り、シルフィの纏う空気は、先ほどまでの張り詰めたものが嘘のように、穏やかになっていた。

俺たちは木の根の階段を上り、地上へと戻った。
そこで、俺たちは信じられない光景を目にする。
先ほどまで黒く枯れ果てていた土地に、柔らかな緑の若草が芽吹き始めていたのだ。穢れが消え、土地が本来の生命力を取り戻し始めている証拠だ。

「……ああ」

シルフィはその光景に息を呑み、そっと地面に膝をついた。その指先が、芽生えたばかりの若草に優しく触れる。彼女の白い頬を、一筋の涙が伝っていくのが見えた。
その姿を見て、俺は何も言えなかった。ただ静かに、彼女が永い孤独から解放された瞬間を見守っていた。

やがて顔を上げたシルフィは、涙の跡を隠そうともせず、俺に向かって微笑んだ。それは、氷の彫像に命が宿ったかのような、美しく、そして儚い笑顔だった。
「カイン。お前は、この森の友だ。これからは、いつでもこの泉を訪れるといい。歓迎しよう」
「……ああ。また来るよ」

俺の答えに、彼女は満足げに頷いた。
俺はシルフィとフェンに別れを告げ、フロンティアの街へと戻った。背後で、シルフィとフェンが楽しそうに戯れている気配を感じながら。
これで俺にも、この辺境の地に確かな繋がりができた。それは、金や装備とは違う、温かい宝物のような気がした。

街に戻った俺が向かった先は、バルドの工房だった。
工房の扉を開けると、いつもの槌音は聞こえず、代わりにバルドが満足げな顔で腕を組み、椅子に座っていた。その前には、真新しい武具が一式、並べられている。

「来たか、小僧。待っておったわ」
バルドはニヤリと笑い、俺を手招きした。
作業台の上に置かれていたのは、俺の革鎧に取り付けられたミスリルの胸当てと肩当て。そして、一本の新しいダガーだった。いずれも、鈍い銀色の輝きを放ち、一目でその質の高さが分かる。

「お前の注文通り、軽さと頑丈さを両立させておいた。そこらのCランク冒険者のフルプレートより、よほど防御力は高いはずだ。ダガーも、切れ味は保証する」
俺はそれらを手に取り、【神の眼】で鑑定した。

【アイテム名】ミスリル強化レザーアーマー
【ランク】C+
【状態】最良
【詳細】熟練の職人が軽量革鎧にミスリルの補強を施した特注品。物理防御力、魔法抵抗力が飛躍的に向上している。着用者の動きを阻害しないよう、緻密な設計がなされている。

【アイテム名】疾風のミスリルダガー
【ランク】C+
【状態】最良
【詳細】高純度のミスリルから打ち出されたダガー。驚異的な軽さと鋭さを誇り、使用者の魔力に反応して風の刃を生み出す。

どちらも、俺の予想を遥かに上回る逸品だった。
「……すごい。これだけのものを、数日で」
「ふん、ワシを誰だと思っておる。お前が持ってきたミスリルが、上質だっただけのことよ」

バルドはぶっきらぼうに言うが、その顔は自分の仕事に満足していることを隠せていない。
「礼を言う、バルド。これで、さらに奥へ進める」
「うむ。して、例の剣はどうする。精錬したミスリルは、まだ十分に余っておるぞ」

彼の視線が、俺が背負っている錆びついた大剣――ソウルイーターに向けられる。
「ああ。頼めるか?」
「もちろんだ。これほどの伝説級の武具に触れられる機会、職人として逃すわけにはいかんからな」

バルドの瞳が、職人のそれへと変わる。
俺はソウルイーターを彼に預けた。彼はそれをまるで恋人でも扱うかのように優しく受け取ると、その表面を食い入るように見つめ始めた。
「ふむ……。強力な呪詛だ。だが、聖なるミスリルの力を使えば、浄化は可能だろう。少し時間はかかる。十日ほど、待てるか?」
「ああ、構わない」

十日後、俺の手には、真の力を取り戻したSランクの魔剣が握られている。
その時、俺は一体どれほどの力を手にしているだろうか。
新たな防具、新たなダガー、そして新たな友。辺境の街で始まった俺の再出発は、着実に、しかし確かな速度で前へと進んでいる。

俺はバルドに礼を言い、工房を後にした。
ミスリルで強化された鎧は驚くほど軽く、体に馴染む。手にしたダガーは、まるで自分の体の一部になったかのようにしっくりときた。
これで、ダンジョンの中層エリアにも、本格的に挑戦できる。
俺の胸は、次なる冒険への期待で高鳴っていた。
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