死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第四話 冒険者ギルド

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ウッドビルを出てから三日が経った。
道中は退屈そのものだった。時折現れるゴブリンや牙を剥く野犬は、俺にとって障害にすらならない。一瞥で殺意を削ぎ、一歩で距離を詰め、一撃で沈める。作業でしかなかった。

もちろんスキル【闘神】が発動することはない。
格上どころか、対等な相手にすら出会えない。新たな世界への期待は、早くも苛立ちに変わりつつあった。

陽が傾き始めた頃、ようやく地平線の先に巨大な壁が見えてきた。
あれがスタートニア。この辺りでは最も大きな街だと、隊商の商人から聞いていた。

近づくにつれ、その規模の大きさに圧倒される。
ウッドビルがすっぽり入ってしまいそうな高い城壁。その上を、武装した衛兵が行き来している。俺のいた村には、門番すらいなかったというのに。

城門で簡単な身分確認を済ませ、俺は初めて「街」というものに足を踏み入れた。
そこは混沌と活気に満ちていた。
石畳の道を行き交う、数えきれないほどの人々。屈強な鎧を纏った戦士。ローブを羽織った魔術師。そして、俺と同じ人族だけでなく、耳の長いエルフや小柄なドワーフ、獣の耳や尻尾を持つ獣人族の姿もあった。

道端の露店からは香ばしい匂いが漂い、鍛冶屋からはけたたましい槌の音が響いてくる。
全てが新鮮で、全てが刺激的だ。だが俺の心は少しも動かない。俺の興味は、ただ一つ。

俺は道行く人に場所を尋ね、目的地へと足を向けた。
街の中央広場に面した、一際大きな二階建ての建物。入口には、交差した剣と盾をかたどった看板が掲げられている。

「冒険者ギルド」

ここが、俺の新たな戦いの始まりの場所だ。
俺は躊躇なく、重い木の扉を押し開けた。

途端に、むっとするような熱気が俺を包んだ。
酒と汗の匂い。怒号と笑い声が入り混じった喧騒。壁際には巨大な依頼ボードが設置され、数人の冒険者が熱心に紙を眺めている。奥のカウンターでは、ギルドの職員らしき女性たちが忙しなく働いていた。

俺は建物の中を見渡す。
いる。そこかしこに、歴戦の雰囲気を纏った者たちがいる。
誰もが腰に剣を下げ、あるいは背に大斧を担いでいる。その目つきは、村の猟師たちとは明らかに違う。死線を潜り抜けてきた者だけが持つ、鋭い光だ。

いい。それでこそだ。
俺の口元が、自然と吊り上がる。
この中に、俺と戦える奴はいるだろうか。

俺はカウンターの一つへ向かった。
対応してくれたのは、栗色の髪をポニーテールにした快活そうな女性職員だった。
「こんにちは。何か御用でしょうか」

「登録したい」
俺が短く告げると、彼女はにこやかに頷いた。
「冒険者登録ですね。こちらへどうぞ」

彼女は慣れた手つきで書類とペンを用意する。
「冒険者にはFからSまでのランクがあります。最初は全員Fランクからのスタートになりますが、依頼をこなして貢献度を溜めればランクアップできますよ。実力があれば、すぐに上へ行けます」

名前や年齢、出身地などを記入していく。出身地はウッドビル村と正直に書いた。
「実戦経験はありますか?」
「少しだけな」
グレートボアのことは伏せておいた。面倒なことになりそうだったからだ。

一通りの手続きが終わり、彼女は一枚の銅板を俺に差し出した。
「これがあなたのギルドカードです。身分証にもなりますから、失くさないでくださいね」

俺が銅板を受け取った、その時だった。
「おいおい、なんだこのガキは。冒険者ごっこでもしに来たのか?」
横から、酒臭い息と共に下卑た声がかけられた。

見れば、ガラの悪い三人組の男が、にやにやと笑いながら俺を見下ろしている。
リーダー格らしい男の腰には、使い古されたロングソード。ランクはDか、せいぜいCといったところだろう。

「辺境の村出身だぁ? そんな田舎者が、この街でやっていけると思ってんのか?」
男たちがゲラゲラと笑う。受付の彼女は「やめてください」と困った顔をしているが、男たちは聞く耳を持たない。

ギルド内の他の冒険者たちも、こちらに視線を向けている。
そのほとんどが、面白がっているだけの野次馬の目だ。

「まあ、いいぜ。俺たちがこの世界の厳しさってやつを、その細い体に教えてやるよ」
リーダー格の男が、俺の胸を指で突いた。

俺は黙って、その男を見据える。
弱い。弱すぎる。
戦う価値もない。虫けら同然だ。
だが、売られた喧嘩を買わないほど、俺は大人しくない。

俺は静かに息を吐いた。
「いいだろう。教えてもらおうか」

「ハッ、威勢だけはいいじゃねえか!」
男は挑発に乗った俺を見て、勝ち誇ったように笑った。
そして、腰の剣に手をかける。

「待て、ギルド内での私闘は禁止だ!」
受付嬢が慌てて制止するが、男はそれを無視して剣を抜き放った。
「うるせえ! これは教育的指導だ!」

男が大上段から剣を振りかぶる。
その動きは、俺の目にはあまりに遅く、稚拙に見えた。隙だらけだ。殺すだけなら、百通り以上の方法が思い浮かぶ。

だが、俺は動かない。
剣が俺の脳天に振り下ろされる、その寸前。
俺は初めて動いた。

最小限の動きで半身になり、剣を紙一重でかわす。
そして、振り抜かれた男の腕を、下から軽く掬い上げた。
大神流柔術「水面撫で」。

「なっ!?」
男の体は、自身の振り下ろした力と、俺が加えた僅かな力によって均衡を失った。
美しい放物線を描き、宙を舞う。そして、頭から床に叩きつけられた。

ゴシャッ!
鈍い音と、男の短い悲鳴。
残りの二人が、何が起きたか理解できず呆然としている。

「なんだと、てめえ!」
一人が我に返り、殴りかかってくる。
俺はその拳を左手で軽く受け流し、相手の体の軸をずらす。同時に、空いた右手で男の顎を軽く押し上げた。

男の体は、綺麗に一回転して床に転がった。
最後の一人は、恐怖に顔を引きつらせ、腰を抜かしてへたり込む。

一連の動きは、ほんの数秒。
あれだけ騒がしかったギルドが、水を打ったように静まり返っていた。
誰もが信じられないものを見る目で、俺と床に転がる男たちを見ていた。

俺は興味を失い、男たちに背を向けた。
その時、カウンターの奥から、重々しい声が響いた。

「そこまでだ」

現れたのは、熊のように屈強な体躯を持つ、壮年の男だった。
白髪混じりの髪を短く刈り込み、顔にはいくつもの古い傷跡が刻まれている。その眼光は、そこらの冒険者とは比較にならないほど鋭い。

男は床に転がるチンピラたちを一瞥し、ため息をついた。
「こいつらを医務室へ運べ。それと、一週間の依頼受注禁止だ」
その一言で、周囲の冒険者たちが慌てて動き出す。

男は俺の前に立つと、値踏みするように全身を眺めた。
「見事な体捌きだ。あんなど素人相手では、実力の半分も見えんがな」

「あんたは?」
俺が問うと、男はニヤリと笑った。
「俺はここのギルドマスター、バルガスだ。元Sランク冒険者、と言えば通りがいいか」

元Sランク。
その言葉に、俺の血がわずかに沸き立った。
こいつは、今まで会った誰よりも強い。

「お前、名は?」
「ジンだ」
「そうか、ジン。お前の実力は分かった。ギルドカードは正式に発行しよう。だが、一つだけ忠告しておく」

バルガスは、俺の目を真っ直ぐに見据えて言った。
「この世界は広い。お前より強い奴など、いくらでもいる。その若すぎる力に溺れるな。でなければ、いずれ足元を掬われて死ぬぞ」

それは、経験に裏打ちされた重い言葉だった。
俺はバルガスの目を睨み返す。

「それこそが、俺の望むところだ」

俺の答えを聞き、バルガスは一瞬虚を突かれた顔をした。
そして次の瞬間、腹の底から豪快に笑い出した。

「カッカッカッ! 面白い! 気に入ったぞ、小僧!」
バルガスは俺の肩を、岩のような手でバンバンと叩いた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。お前の活躍、期待しているぞ」

こうして、俺の冒険者としての一日目は終わった。
面倒な輩に絡まれたが、悪いことばかりではない。
この街には、少なくとも俺の闘争心を少しだけ刺激する男が一人いる。

俺は依頼ボードへと向かった。
まずは手っ取り早く金を稼ぎ、宿を確保する。そして、この街の腕利きどもがどんな依頼を受けているのか、じっくりと見させてもらうとしよう。
俺の戦いは、まだ始まったばかりだ。
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