死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第十二話 護衛依頼

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「礼なら、あのデカブツに言え。少しだけ、楽しませてくれたんでな」

俺の言葉が、死体と血の匂いが漂う森の広場に静かに響いた。
エルフの少女リリアナと、生き残った二人の騎士は、まるで理解不能な言語を聞いたかのように、呆然と俺を見ている。
彼らの常識では、目の前の男が発した言葉の意味を処理しきれないのだろう。

やがて、年長の騎士の方が我に返り、震える声で口を開いた。
「あ、貴殿は……一体……?」
その問いには、俺を助けてくれた英雄と見るべきか、それとも魔物以上の災厄と見るべきか、判断に迷う響きがあった。

俺は答えずに、踵を返した。
もうここに用はない。この森のさらに奥深くへ進み、オーガリーダー以上の獲物を探すだけだ。

「お、お待ちください!」
今度は騎士が、必死の形相で俺の前に回り込み、行く手を塞いだ。
その体はボロボロで、鎧はへこみ、顔には血が滲んでいる。だが、その目には主を守らんとする強い意志が宿っていた。

「……何の用だ」
俺は苛立ちを隠さずに問う。

騎士は深々と頭を下げた。
「このご恩、言葉もございません。私は王都騎士団に所属する者。こちらはリリアナ様。我々はリリアナ様を王都までお連れする任の途中でございました」

「そうか。ご苦労なことだ」
俺の関心は、彼らの身の上話にはない。
早くどけ、という無言の圧力をかける。

だが騎士は、俺の冷たい態度にも怯まなかった。
「ご覧の通り、我々は護衛の半数を失い、馬車も破壊されました。このままでは、リリアナ様を安全に王都までお送りすることはできません。そこで、不躾ながら貴殿にお願いがございます」

騎士は顔を上げ、俺の目を真っ直ぐに見据えた。
「どうか、我々を王都まで護衛していただけないでしょうか。報酬は、望むだけお支払いいたします。金貨百枚、いや二百枚でも!」
金貨二百枚。それは、駆け出しの冒険者が一生かかっても稼げないような大金だ。

だが、俺の心は一ミリも動かなかった。
金で買えるものなど、たかが知れている。
「断る」

俺の即答に、騎士の顔が絶望に染まった。
「な、なぜ……金が足りぬと申されるなら……」
「金に興味はない。それと、俺は子守が趣味ではないんでな」

俺は騎士の横をすり抜け、再び歩き出そうとした。
その時、ずっと黙っていたリリアナが口を開いた。
「……王都には、大陸最強と謳われる『聖騎士団』がいます」

その言葉に、俺の足がぴたりと止まった。

リリアナは続ける。その声には、必死さが滲んでいた。
「ギルドに所属するSランクの冒険者の方々も、何人かいらっしゃると聞いております。彼らの中には、ドラゴンすら単独で討伐するほどの強者もいるとか」

聖騎士団。Sランク冒険者。ドラゴンスレイヤー。
その単語の一つ一つが、俺の乾いた魂に染み渡っていく。
バルガスが言っていた「本物」が、その王都とやらにいるのか。

俺はゆっくりと振り返った。
リリアナと、騎士たちの顔に、わずかな希望の色が浮かぶ。
俺の興味が、金ではなく「強者」にあると気づいたのだろう。

「……王都まで、ここからどのくらいだ」
俺が問うと、騎士が慌てて答えた。
「この森を抜ければ、街道に出ます。そこから馬車があれば三日ですが、徒歩ですと十日はかかるかと……」

十日か。
少し遠いが、この魔境を闇雲に彷徨うよりは、目的地があった方がいい。
それに、王都までの道中、新たな獲物に出会える可能性もある。

俺は短く息を吐いた。
「……いいだろう。引き受けてやる」

「ほ、本当ですか!」
騎士たちの顔が、ぱっと明るくなる。
リリアナも、安堵したように小さく胸を撫で下ろした。

「ただし、勘違いするな」
俺は彼らに釘を刺す。
「俺がお前たちに同行するのは、王都にいる強い奴に興味があるからだ。それ以上でも、それ以下でもない。お前たちの護衛は、そのついでだと思え」

「は、はい! 承知しております!」
騎士は力強く頷いた。
彼らにとっては、俺の動機が何であれ、この絶望的な状況を打破できるのなら構わないのだろう。

「それと、俺の戦いに口を出すな。足手まといになるようなら、その場で置いていく。いいな」
「もちろんです!」

こうして、奇妙な契約が成立した。
俺たちは、ひとまずこの場を離れることにした。血の匂いは、さらなる魔物を呼び寄せる可能性がある。

騎士たちは仲間たちの亡骸を丁重に埋葬し、馬車から最低限の荷物を取り出した。
リリアナは、終始悲しそうな顔でその様子を見守っていた。

準備が終わり、俺たちは再び歩き始めた。
俺が先頭に立ち、その後ろを騎士二人がリリアナを囲むようにして続く。
奇妙な一行だった。

リリアナが、おずおずと俺の隣に並んだ。
「あの……先ほどは、失礼いたしました。あなた様のお名前を、まだお聞きしておりませんでした」

「ジンだ」
「ジン様、ですね。私はリリアナ・シルフィードと申します。以後、お見知りおきを」
彼女は再び、優雅に一礼した。

俺は答えず、前を向いたまま歩き続ける。
リリアナは、そんな俺の横顔を、興味深そうに、そして少しだけ怯えたように見つめていた。
彼女の翡翠色の瞳には、感謝と、畏怖と、そして未知の生物に対するような好奇心が入り混じって映っていた。

これから始まる十日間の旅。
それが退屈なものになるか、それとも俺の渇きを少しでも潤すものになるか。
それは、道中にどれだけの強敵が現れるかにかかっている。

俺は、まだ見ぬ獲物の気配を探りながら、魔境のさらに奥深くへと足を踏み入れた。
王都への道は、まだ始まったばかりだ。
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