死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第十六話 共闘の申し出

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拮抗は、一瞬で崩れた。
俺の拳が、ガロウの力を真正面から打ち破る。
「ぐっ……おおおおっ!」
ガロウは歯を食いしばり、全身の筋肉を隆起させて抵抗する。だが、その巨体はゆっくりと、しかし確実に後退を始めた。

【闘神】によって増幅された俺の力は、もはや彼の膂力を凌駕していた。
「終わりか!」
俺は叫び、さらに力を込める。
ガロウの腕がミシミシと悲鳴を上げた。

だが、獣人の戦士は、それで折れるほど柔ではなかった。
「なめるなよ、人間がァッ!」
ガロウの目が、赤く爛々と輝く。獣としての本能が、理性を焼き尽くしていく。
彼は突き合わせていた拳を強引に引き、俺の胴体めがけて凄まじい勢いの蹴りを放ってきた。

俺は即座に拳を解き、その蹴りを腕で受け流す。
同時に、空いたもう片方の拳で、ガロウの顔面にカウンターを叩き込んだ。

互いの攻撃が、同時に互いを捉える。
凄まじい衝撃に、俺とガロウの体は同時に吹き飛んだ。

俺は数メートル後方で着地し、体勢を立て直す。口の端から、一筋の血が垂れた。
ガロウもまた、よろめきながらも地に足をつけていた。その顔は、俺の拳でさらに歪んでいる。だが、その目に宿る闘志の炎は、少しも衰えていなかった。

「ハッ……ハハハ! 最高だぜ、ジン!」
ガロウは血反吐を吐きながら、心底楽しそうに笑った。
「お前みたいな奴と、戦いたかったんだ!」

「お前もな」
俺もまた、笑みを返した。
痛みも、疲労も、全てが歓喜に変わっていく。
これだ。これこそが、俺の求める「死闘」の入り口だ。

俺たちは、再び同時に地面を蹴った。
もはや、小細工はない。技もない。
ただ、純粋な力と力の、魂と魂のぶつかり合い。

拳が肉を抉り、蹴りが骨を砕く。
俺の体術がガロウの防御をこじ開ければ、ガロウの獣性が俺の回避を上回る。
一進一退。互角の攻防。
広場の地面はクレーターだらけになり、俺たちの周りにはもはや誰も近づけない暴風が吹き荒れていた。

どれくらいの時間が経っただろうか。
俺もガロウも、全身が傷と血で赤く染まっていた。呼吸は荒く、立つことすらやっとなはずだった。
だが、俺たちの闘志は、衰えるどころか、ますます燃え上がっていた。

「……そろそろ、決めるか」
ガロウが、掠れた声で呟いた。
「ああ。次で、最後だ」
俺も、同意した。

俺たちはゆっくりと距離を取り、互いに最後の一撃を放つための構えを取る。
ガロウの全身に、残った全ての闘気が集約していく。その拳は、まるで小さな太陽のように、眩い光を放ち始めた。

俺もまた、全身の力を右拳に込める。
大神流古武術、最終奥義。その名を口にするまでもない。俺の全てを込めた、ただの正拳突きだ。

「行くぜ、ジン!」
「来い、ガロウ!」

二つの影が、再び激突した。
ガロウの渾身の一撃。
俺の全力の一撃。

世界から、音が消えた。
時間の流れが、極限まで引き伸ばされる。
スローモーションの中で、二つの拳が互いの急所へと吸い込まれていくのが見えた。

そして。
轟音と共に、世界が白く染まった。

どれほどの時が経ったのか。
やがて、舞い上がった土煙が晴れていく。
広場の中心には、二つの人影があった。

俺は、立っていた。
右腕は砕けんばかりに痛み、全身から力が抜けていく。
だが、確かに、この足で立っている。

俺の目の前で、ガロウの巨体が、ゆっくりと膝から崩れ落ちた。
そして、仰向けに倒れ、大の字になる。
その顔には、苦痛ではなく、満足しきった笑みが浮かんでいた。

「……ははっ。俺の、負けだ」

静寂。
勝負は、決した。
俺はふらつく足でガロウに近づき、その横に、同じように大の字になって倒れ込んだ。

スキル【闘神】の効果が切れ、凄まじい疲労感と痛みが全身を襲う。
だが、それ以上に、心地よい達成感が俺の心を包んでいた。

「……いい、戦いだった」
俺が呟くと、隣でガロウが笑った。
「ああ。最高の気分だ。こんなに楽しい喧嘩は、生まれて初めてだぜ」

俺たちは、しばらくの間、黙って夜空の星を眺めていた。
言葉はなかったが、互いの間には、戦いを通じて生まれた確かな絆のようなものが存在していた。

やがて、遠くから甲高い笛の音と、鎧のきしむ音が近づいてきた。
街の衛兵たちが、ようやくこの騒ぎに気づいたらしい。

ガロウが、ゆっくりと体を起こした。
「おい、ジン。俺は、お前が気に入った」
彼は、血と泥で汚れた顔で、にやりと笑った。
「俺と一緒に来い。お前となら、もっと面白い戦いができそうだ」

共闘の申し出。
俺は、その言葉を頭の中で反芻した。
一人で戦う。それが、俺のこれまでのスタイルだった。
だが、リリアナの魔法、そしてガロウとの死闘を経て、その考えは少しだけ変わりつつあった。

こいつとなら。
この、俺と互角に殴り合える男となら。
もっと高みへ行けるかもしれない。

俺が答えを返す前に、十数人の衛兵たちが、槍を構えて俺たちを取り囲んだ。
「何事だ! 貴様ら、この騒ぎを起こしたのはお前たちか!」
隊長らしき男が、怒声で問う。

ガロウは面倒くさそうに頭を掻いた。
「やれやれ、面倒なのが来ちまったな」
彼は立ち上がると、俺に手を差し伸べた。
「とりあえず、ずらかるぞ。話の続きは、後でゆっくりとだ」

俺は、その無骨で大きな手を取った。
その瞬間、俺の答えは、決まっていたのかもしれない。

「ああ」
俺は短く答え、ガロウの力強い腕に引かれて立ち上がった。
俺たちの新たな戦いは、どうやらここから始まるらしい。

その様子を、遠巻きに見ていたリリアナの顔に、安堵と、そしてほんの少しだけ複雑な感情が入り混じった笑みが浮かんでいたことを、俺はまだ知らなかった。
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