死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第十七話 空の王者、ワイバーン

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「捕縛しろ! 抵抗するなら斬り捨てても構わん!」
衛兵隊長の怒声が、夜の広場に響き渡った。
十数本の槍の穂先が、俺とガロウに向けられる。完全に包囲されていた。

だが、ガロウは不敵に笑っていた。
「やれやれ、話の通じねえ連中だ。おいジン、準備はいいか?」
「何の準備だ」
「決まってるだろ。鬼ごっこだよ!」

その言葉が合図だった。
ガロウの巨体が、砲弾のように躍り出た。
「邪魔だ、どきやがれぇ!」

彼は衛兵の列の一点に突っ込み、その圧倒的な質量で包囲網を粉砕した。
衛兵たちが悲鳴を上げて吹き飛ぶ。だが、ガロウは巧みに力を加減していた。彼らは骨を折られることなく、ただ遠くへ弾き飛ばされただけだ。

包囲に穴が開く。
「行くぞ!」
ガロウの声に、俺は無言で続いた。

「追え! 逃がすな!」
背後から怒声が飛んでくる。
俺は振り返り、追ってくる衛兵たちの足元めがけて、地面に突き刺していた鉄剣を蹴り飛ばした。
剣は高速で回転しながら飛び、衛兵たちの足元の石畳を砕く。彼らはバランスを崩し、将棋倒しになった。

「カッカッカッ! やるじゃねえか、相棒!」
前を走るガロウが、豪快に笑う。
相棒。その言葉の響きは、悪くなかった。

俺たちは夜の街を疾走した。
行く手を塞ごうとする衛兵たちを、ガロウがパワーで蹴散らし、俺が技でいなしていく。
人を殺さずに戦うのは、ある意味で殺すよりも面倒だ。だが、今の俺たちにとっては、それすらも楽しい余興だった。

やがて、俺たちは街の外壁までたどり着いた。
高くそびえる石の壁。城門は固く閉ざされている。
「さて、どうする」
俺が問うと、ガロウはニヤリと笑った。

「壁があるなら、壊せばいい」
彼はそう言うと、壁に向かって渾身の拳を叩き込んだ。
ドゴォォォン!!!
城壁が、まるで豆腐のように砕け散る。巨大な穴が開き、その向こうに街の外の闇が見えた。

「……お前、本当に人間か」
「獣人だ。さあ、行くぞ!」
俺たちは、自分たちで作った出口から、あっさりと街を脱出した。
背後で、衛兵たちの絶望的な叫び声が聞こえた気がした。

街から少し離れた森の中で、俺たちはリリアナたちと合流した。
彼女たちは、俺たちが逃げるのを見て、先に街を出て待っていてくれたらしい。

「ジン様! ガロウ様も! ご無事で……」
リリアナが駆け寄ってくる。その手には、治癒魔法の淡い光が灯っていた。
「大した怪我じゃねえよ。それより、嬢ちゃんこそ無事だったか」
ガロウは、リリアナの頭を大きな手でわしわしと撫でた。

リリアナの魔法で、俺とガロウの傷は見る見るうちに塞がっていった。
騎士たちは、傷だらけにもかかわらず陽気に笑うガロウと、崩れた城壁を遠目に見て、言葉を失っている。

その夜、俺たちは森の中で野営した。
焚き火を囲み、ガロウが改めて口を開いた。
「さて、話の続きだ。ジン、俺と一緒に来い。俺は、この大陸で最強の傭兵団を作るのが夢でな。そのためには、お前みたいな最高の相棒が必要なんだ」

「傭兵団?」
「ああ。力だけじゃねえ。どんな依頼でも完璧にこなせる、最強のプロフェッショナル集団だ。面白そうだろ?」

確かに、面白そうだ。
傭兵になれば、戦いの機会はいくらでもあるだろう。ギルドのように、ランクに縛られることもない。
何より、この男となら、退屈はしなさそうだ。

俺は、焚き火の炎を見つめながら答えた。
「……強い奴と戦えるなら、どこでもいい」
それが、俺の承諾の言葉だった。

「決まりだな!」
ガロウは満面の笑みで、俺の背中を力強く叩いた。
「ようこそ、『闘神旅団』へ!」
「……なんだその名前は」
「今考えた。お前を見てたら、浮かんだんだ。悪い名前じゃねえだろ?」

俺はため息をついた。
だが、その名前を否定する気にはなれなかった。

「あの、よろしければ、私もご一緒させていただけませんでしょうか」
リリアナが、おずおずと手を上げた。
ガロウは意外そうな顔で彼女を見る。
「嬢ちゃんがか? 俺たちの旅は、お嬢様にはちと厳しいぜ?」

「覚悟の上です」
リリアナは、真っ直ぐな瞳で俺たちを見た。
「ジン様とガロウ様の戦いを、私はこの目で見届けたい。そして、私のこの力が、少しでもお二人の助けになるのなら……」

俺はリリアナの顔を見た。
彼女の魔法は、確かに有用だ。俺とガロウの破壊力を、さらに効果的にするだろう。
戦力として、申し分ない。

「好きにしろ」
俺が言うと、リリアナの顔がぱっと輝いた。

こうして、俺、ガロウ、そしてリリアナという、奇妙なパーティが誕生した。
騎士二人は、リリアナの護衛として、当然のように同行することになった。

翌朝、俺たちは王都アルカディアを目指して、再び歩き始めた。
「王都に行きゃあ、もっとデカい仕事がゴロゴロしてるはずだ」
ガロウが、腕を組みながら言う。
「だが、今の俺たちは実績のねえただの流れ者だ。まずはギルドで名前を売る必要があんな」

「ギルドに登録するのか」
「ああ。Dランクからのスタートじゃ、大した依頼も受けられねえ。さっさとCランクくらいにはなっておかねえとな」

Cランクへの昇格。
そのためには、相応の難易度の依頼をこなす必要がある。

「ちょうどいい依頼があるぜ」
ガロウは懐から、一枚の古い羊皮紙を取り出した。
それは、彼が宿場町で手に入れた高額依頼の情報だった。

「次の街の近くの山に、ワイバーンが巣食ってるらしい。そいつを討伐すりゃあ、Cランク昇格は確実だ」

ワイバーン。
空を舞う、翼を持つ竜種。ドラゴンよりは格下だが、その戦闘能力はオークジェネラルを遥かに凌ぐと言われる、空の王者。

その言葉を聞いた瞬間、俺の全身の血が、再び沸騰した。
ようやく出会える。
ゴブリンでも、オークでも、オーガでもない。
本物の、魔物。

「……いいだろう」
俺の口元に、獰猛な笑みが浮かぶ。
「そのワイバーンとやら、俺が叩き落としてやる」

俺たちの最初の共同作業。
そして、Cランクへの昇格試験。
新たな戦いの舞台は、もう目の前だった。
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