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第十八話 三人の連携
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宿場町を出て二日。俺たちの目の前に、天を突き刺すような険しい山がそびえ立っていた。
岩肌は剥き出しで、木々の生え方もまばら。山頂付近には常に暗雲が渦巻いている。ここが、空の王者ワイバーンの縄張りだ。
「……なるほど。こりゃあ、並の冒険者が寄り付かねえわけだ」
ガロウが、巨大な岩山を見上げながら感心したように呟いた。
その空気は、嘆きの森とはまた違う、絶対的な捕食者が支配する領域特有の緊張感に満ちていた。
「作戦を立てるぞ」
ガロウが、地面に簡単な地図を描きながら言った。
「ワイバーンは空を飛ぶ。地上からじゃ、まともに攻撃が届かねえ。まずは奴を地上に引きずり下ろす必要がある」
「リリアナ、お前の魔法で奴の翼を封じることはできるか?」
「やってみます。風の精霊の力を借りれば、あるいは……」
彼らが真剣に話し合っているのを横目に、俺は一人、山を登り始めていた。
作戦? そんなものは不要だ。
敵がいるなら、行って殴る。ただそれだけだ。
「あっ、ジン様! お待ちください!」
リリアナの慌てた声が背後から飛んでくる。
ガロウが、やれやれといった顔で俺の前に回り込んだ。
「おいおい、相棒。気持ちは分かるが、ちっとは落ち着け。相手は空飛ぶトカゲだぜ。真正面から突っ込んでどうにかなる相手じゃねえ」
「やってみなければ分からん」
「その通りだがな。だが、せっかく仲間がいるんだ。利用できるもんは、何でも利用しねえと損だろ?」
ガロウはニヤリと笑った。
「お前のその無茶苦茶な突破力は、最高の切り札だ。だからこそ、最高の場面で使わせてもらうぜ」
その言葉には、妙な説得力があった。
俺は小さく舌打ちをしながらも、足を止めた。
仲間と戦う。そのやり方に、まだ俺は慣れていなかった。
ガロウの立てた作戦は、シンプルだった。
まず、俺とガロウが囮となってワイバーンの巣の近くまで進み、奴の注意を引きつける。
ワイバーンが地上に降りてきたところを、リリアナが魔法で動きを封じ、その隙に俺たちが総攻撃を仕掛ける。
俺たちは、険しい山道を登り始めた。
標高が上がるにつれ、風は強くなり、空気は冷たくなる。
やがて、巨大な獣の骨や、食い散らかされた魔物の死骸が散見されるようになった。ワイバーンの巣が近い証拠だ。
山頂付近の、切り立った断崖絶壁。
その中腹に、巨大な洞穴が開いていた。あれが巣だろう。
俺とガロウが洞穴に近づいた、その時だった。
「キシャアアアアアッ!」
天を引き裂くような、甲高い咆哮。
巣穴の闇から、巨大な影が飛び出してきた。
全長は十メートルを超える。全身は硬質な青い鱗で覆われ、蝙蝠のような巨大な翼が、風を孕んで轟々と音を立てる。鋭い鉤爪のついた脚、そして鞭のようにしなる長い尻尾。
その頭は爬虫類そのもので、爛々と輝く黄金の瞳が、俺たち侵入者を明確な敵意をもって捉えていた。
ワイバーン。
その姿は、まさしく空の王者と呼ぶにふさわしい威厳と、圧倒的なプレッシャーを放っていた。
オークジェネラルやオーガリーダーが、子供のように見える。
俺の全身が、歓喜に打ち震えた。
間違いない。こいつは、「格上」だ。
【スキル【闘神】の発動条件を認識。スキルを発動します】
待望の感覚が、全身を駆け巡る。
力が、闘志が、体の奥底から無限に湧き上がってくる。
「ハッ……最高だ!」
「おいおい、嬉しそうにしてる場合かよ!」
ガロウが、巨大な鉄盾を構えながら叫ぶ。それは、彼が宿場町で新調した特注品だった。
ワイバーンは、俺たちの上空を旋回すると、その巨大な口を開いた。
口内に、灼熱の光が収束していく。
「ブレスが来るぞ!」
次の瞬間、一直線の炎の奔流が、俺たちめがけて放たれた。
森の木々を一瞬で炭に変えるほどの、超高温の熱線。
「オオオラァッ!」
ガロウが俺の前に躍り出た。
特注の大盾を構え、そのブレスを真正面から受け止める。
ゴオオオオオッ!
盾に描かれた魔法陣が輝き、炎の直撃に耐える。だが、その威力は凄まじく、ガロウの巨体ですらジリジリと後退させられた。
「今だ、リリアナ!」
ガロウが叫ぶ。
少し離れた岩陰から、リリアナの凛とした詠唱が響き渡った。
「風の枷よ、その翼を捕らえよ!」
詠唱に応え、ワイバーンの周囲の大気が渦を巻いた。
見えない風の鎖が、ワイバーンの巨大な翼に絡みつき、その動きを阻害する。
「キシャア!?」
ワイバーンが、バランスを崩して高度を下げた。
完璧なタイミング。
「ジン!」
ガロウの声と同時に、俺は地面を蹴っていた。
高度を下げたワイバーンめがけて、砲弾のように跳躍する。
ワイバーンは、迫り来る俺に気づき、その長い尻尾を鞭のようにしならせた。
音速を超える一撃。だが、今の俺には、その動きがはっきりと見えた。
俺は空中で身を捻り、尻尾を紙一重でかわす。
そして、ワイバーンの背中に着地した。
硬い鱗の感触が、足の裏に伝わる。
「もらった!」
俺はワイバーンの背中を駆け上がり、その首筋めがけて渾身の拳を叩き込んだ。
ドゴォッ!
確かな手応え。だが、硬すぎる。鱗が衝撃を吸収し、致命傷には至らない。
「グルオオオ!」
ワイバーンは苦痛に身悶えし、暴れ狂う。
俺は振り落とされまいと、その鱗に必死にしがみついた。
その時、地上から再びリリアナの声が響いた。
「大地の檻よ、その足を戒めよ!」
ワイバーンが着地した地面から、無数の岩の槍が突き出し、その両足に食い込んだ。
動きを封じられたワイバーンが、苦悶の咆哮を上げる。
「ナイスだ、リリアナ!」
地上では、ガロウがワイバーンの注意を引きつけるように、盾を叩いて挑発していた。
完璧な連携だった。
ガロウが盾となり、リリアナが動きを封じ、俺が切り込む。
俺は初めて、仲間と戦うことの面白さを、その高揚感を味わっていた。
一人では届かない領域に、三人なら届く。
その感覚が、俺をさらに強くする。
「終わりだ、トカゲ野郎!」
俺はワイバーンの首筋から、翼の付け根へと移動する。
そこは、飛行の要。鱗も比較的薄いはずだ。
俺は両拳を固め、その一点に、ありったけの力を込めた連撃を叩き込み始めた。
一撃、二撃、三撃。
叩き込むたびに、硬い鱗に亀裂が走り、緑色の血が噴き出す。
「キシャアアアアアアアッ!」
ワイバーンの断末魔のような悲鳴が、山々に木霊した。
だが、空の王者は、まだ死んではいなかった。
最後の力を振り絞り、その巨体を大きく捻る。
俺は、その予期せぬ動きに体勢を崩し、振り落とされてしまった。
空中に放り出される、無防備な体。
ワイバーンは、その好機を見逃さなかった。
口を開き、俺めがけて至近距離からブレスを放とうとする。
万事休す。
誰もがそう思った、その瞬間。
「させっかよォ!」
ガロウの巨体が、地面を蹴って跳躍した。
そして、空中で俺とワイバーンの間に割り込み、その大盾でブレスを受け止めた。
轟音と閃光。
俺は、ガロウの背中に守られる形で、地面に着地した。
初めての、本格的なパーティ戦闘。
その戦いは、まだ始まったばかりだった。
岩肌は剥き出しで、木々の生え方もまばら。山頂付近には常に暗雲が渦巻いている。ここが、空の王者ワイバーンの縄張りだ。
「……なるほど。こりゃあ、並の冒険者が寄り付かねえわけだ」
ガロウが、巨大な岩山を見上げながら感心したように呟いた。
その空気は、嘆きの森とはまた違う、絶対的な捕食者が支配する領域特有の緊張感に満ちていた。
「作戦を立てるぞ」
ガロウが、地面に簡単な地図を描きながら言った。
「ワイバーンは空を飛ぶ。地上からじゃ、まともに攻撃が届かねえ。まずは奴を地上に引きずり下ろす必要がある」
「リリアナ、お前の魔法で奴の翼を封じることはできるか?」
「やってみます。風の精霊の力を借りれば、あるいは……」
彼らが真剣に話し合っているのを横目に、俺は一人、山を登り始めていた。
作戦? そんなものは不要だ。
敵がいるなら、行って殴る。ただそれだけだ。
「あっ、ジン様! お待ちください!」
リリアナの慌てた声が背後から飛んでくる。
ガロウが、やれやれといった顔で俺の前に回り込んだ。
「おいおい、相棒。気持ちは分かるが、ちっとは落ち着け。相手は空飛ぶトカゲだぜ。真正面から突っ込んでどうにかなる相手じゃねえ」
「やってみなければ分からん」
「その通りだがな。だが、せっかく仲間がいるんだ。利用できるもんは、何でも利用しねえと損だろ?」
ガロウはニヤリと笑った。
「お前のその無茶苦茶な突破力は、最高の切り札だ。だからこそ、最高の場面で使わせてもらうぜ」
その言葉には、妙な説得力があった。
俺は小さく舌打ちをしながらも、足を止めた。
仲間と戦う。そのやり方に、まだ俺は慣れていなかった。
ガロウの立てた作戦は、シンプルだった。
まず、俺とガロウが囮となってワイバーンの巣の近くまで進み、奴の注意を引きつける。
ワイバーンが地上に降りてきたところを、リリアナが魔法で動きを封じ、その隙に俺たちが総攻撃を仕掛ける。
俺たちは、険しい山道を登り始めた。
標高が上がるにつれ、風は強くなり、空気は冷たくなる。
やがて、巨大な獣の骨や、食い散らかされた魔物の死骸が散見されるようになった。ワイバーンの巣が近い証拠だ。
山頂付近の、切り立った断崖絶壁。
その中腹に、巨大な洞穴が開いていた。あれが巣だろう。
俺とガロウが洞穴に近づいた、その時だった。
「キシャアアアアアッ!」
天を引き裂くような、甲高い咆哮。
巣穴の闇から、巨大な影が飛び出してきた。
全長は十メートルを超える。全身は硬質な青い鱗で覆われ、蝙蝠のような巨大な翼が、風を孕んで轟々と音を立てる。鋭い鉤爪のついた脚、そして鞭のようにしなる長い尻尾。
その頭は爬虫類そのもので、爛々と輝く黄金の瞳が、俺たち侵入者を明確な敵意をもって捉えていた。
ワイバーン。
その姿は、まさしく空の王者と呼ぶにふさわしい威厳と、圧倒的なプレッシャーを放っていた。
オークジェネラルやオーガリーダーが、子供のように見える。
俺の全身が、歓喜に打ち震えた。
間違いない。こいつは、「格上」だ。
【スキル【闘神】の発動条件を認識。スキルを発動します】
待望の感覚が、全身を駆け巡る。
力が、闘志が、体の奥底から無限に湧き上がってくる。
「ハッ……最高だ!」
「おいおい、嬉しそうにしてる場合かよ!」
ガロウが、巨大な鉄盾を構えながら叫ぶ。それは、彼が宿場町で新調した特注品だった。
ワイバーンは、俺たちの上空を旋回すると、その巨大な口を開いた。
口内に、灼熱の光が収束していく。
「ブレスが来るぞ!」
次の瞬間、一直線の炎の奔流が、俺たちめがけて放たれた。
森の木々を一瞬で炭に変えるほどの、超高温の熱線。
「オオオラァッ!」
ガロウが俺の前に躍り出た。
特注の大盾を構え、そのブレスを真正面から受け止める。
ゴオオオオオッ!
盾に描かれた魔法陣が輝き、炎の直撃に耐える。だが、その威力は凄まじく、ガロウの巨体ですらジリジリと後退させられた。
「今だ、リリアナ!」
ガロウが叫ぶ。
少し離れた岩陰から、リリアナの凛とした詠唱が響き渡った。
「風の枷よ、その翼を捕らえよ!」
詠唱に応え、ワイバーンの周囲の大気が渦を巻いた。
見えない風の鎖が、ワイバーンの巨大な翼に絡みつき、その動きを阻害する。
「キシャア!?」
ワイバーンが、バランスを崩して高度を下げた。
完璧なタイミング。
「ジン!」
ガロウの声と同時に、俺は地面を蹴っていた。
高度を下げたワイバーンめがけて、砲弾のように跳躍する。
ワイバーンは、迫り来る俺に気づき、その長い尻尾を鞭のようにしならせた。
音速を超える一撃。だが、今の俺には、その動きがはっきりと見えた。
俺は空中で身を捻り、尻尾を紙一重でかわす。
そして、ワイバーンの背中に着地した。
硬い鱗の感触が、足の裏に伝わる。
「もらった!」
俺はワイバーンの背中を駆け上がり、その首筋めがけて渾身の拳を叩き込んだ。
ドゴォッ!
確かな手応え。だが、硬すぎる。鱗が衝撃を吸収し、致命傷には至らない。
「グルオオオ!」
ワイバーンは苦痛に身悶えし、暴れ狂う。
俺は振り落とされまいと、その鱗に必死にしがみついた。
その時、地上から再びリリアナの声が響いた。
「大地の檻よ、その足を戒めよ!」
ワイバーンが着地した地面から、無数の岩の槍が突き出し、その両足に食い込んだ。
動きを封じられたワイバーンが、苦悶の咆哮を上げる。
「ナイスだ、リリアナ!」
地上では、ガロウがワイバーンの注意を引きつけるように、盾を叩いて挑発していた。
完璧な連携だった。
ガロウが盾となり、リリアナが動きを封じ、俺が切り込む。
俺は初めて、仲間と戦うことの面白さを、その高揚感を味わっていた。
一人では届かない領域に、三人なら届く。
その感覚が、俺をさらに強くする。
「終わりだ、トカゲ野郎!」
俺はワイバーンの首筋から、翼の付け根へと移動する。
そこは、飛行の要。鱗も比較的薄いはずだ。
俺は両拳を固め、その一点に、ありったけの力を込めた連撃を叩き込み始めた。
一撃、二撃、三撃。
叩き込むたびに、硬い鱗に亀裂が走り、緑色の血が噴き出す。
「キシャアアアアアアアッ!」
ワイバーンの断末魔のような悲鳴が、山々に木霊した。
だが、空の王者は、まだ死んではいなかった。
最後の力を振り絞り、その巨体を大きく捻る。
俺は、その予期せぬ動きに体勢を崩し、振り落とされてしまった。
空中に放り出される、無防備な体。
ワイバーンは、その好機を見逃さなかった。
口を開き、俺めがけて至近距離からブレスを放とうとする。
万事休す。
誰もがそう思った、その瞬間。
「させっかよォ!」
ガロウの巨体が、地面を蹴って跳躍した。
そして、空中で俺とワイバーンの間に割り込み、その大盾でブレスを受け止めた。
轟音と閃光。
俺は、ガロウの背中に守られる形で、地面に着地した。
初めての、本格的なパーティ戦闘。
その戦いは、まだ始まったばかりだった。
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