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第二十八話 坑道の罠
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スケルトンナイトとその軍勢を打ち破った俺たちは、再び坑道の探索を再開した。
広間を抜けると道は再び狭く、複雑な迷路のように入り組んでいた。かつての鉱夫たちが掘り進めた坑道が、無数に交差しているのだ。
「ちっ、まるで蟻の巣だな。こりゃあ下手に進むと迷うぜ」
ガロウが壁に刻まれた古い印を頼りに、慎重に進む。
「待ってください。この先の空気、少しよどんでいます」
リリアナが杖を掲げて警告を発した。
彼女の言う通りだった。
次の角を曲がった瞬間、俺たちの足元の床が音もなく崩落した。
巧妙に隠された落とし穴の罠だ。
「うおっ!?」
先頭を歩いていたガロウが、バランスを崩して穴へと落ちていく。
俺は咄嗟にその腕を掴み、リリアナは風の魔法でガロウの巨体をわずかに浮かせて落下速度を殺した。
俺たちはなんとか三人とも穴の縁に踏みとどまることができた。
穴の底は鋭く尖った杭が何本も突き出す、即死の罠だった。
「……あぶねえ。ジン、リリアナ、助かったぜ」
ガロウが冷や汗を拭いながら礼を言う。
「罠か。ただの魔物の巣ではないということか」
俺は穴の底を睨みつけながら呟いた。
この坑道には明確な悪意と知性を持った何者かが潜んでいる。スケルトンナイトですら、そいつに操られていた駒の一つに過ぎないのかもしれない。
俺たちはより一層警戒を強めて進んだ。
ここから先は罠の連続だった。
壁から毒矢が飛び出し、天井が崩れ落ち、足元からは拘束する鎖が伸びてくる。
それらの罠はどれも巧妙で殺意に満ちていた。
だが、俺たちの前ではそれらの罠はことごとく無力化された。
俺の超人的な感覚が罠の気配を事前に察知する。
ガロウの頑強な肉体と盾が物理的な罠を強引に突破する。
リリアナの精霊魔法が魔術的な罠を解呪し、あるいは無力化する。
俺たち三人の能力は、奇跡的なほどに噛み合っていた。
「へへっ、どんな罠が来ようと、俺たちにかかればただの障害物だな!」
ガロウが壁から飛び出してきた巨大な刃をウォーハンマーで粉砕しながら豪快に笑う。
その言葉通り、俺たちは一切のダメージを受けることなく罠地帯を突き進んでいた。
やがて俺たちは再び開けた空間に出た。
そこはスケルトンナイトがいた広間よりもさらに広く、ドーム状の天井を持つ巨大な空洞だった。
そして、その空間を支配していたのは物理的な罠ではなかった。
空洞に足を踏み入れた瞬間、ぞわりと全身の肌が粟立った。
冷たい視線。無数の怨念に満ちた視線が、四方八方から俺たちに突き刺さる。
「……何だ、こいつらは……」
ガロウが警戒の声を上げる。
リリアナの光に照らし出されたのは、半透明の人影だった。
壁や天井、地面から、無数の霊体がまるで染み出すように姿を現していたのだ。
レイス。
肉体を失い、怨念だけでこの世に留まる強力なアンデッド。
物理的な攻撃がほとんど通じず、精神に直接干渉してくる厄介な敵だ。
「キシャアアアアア……」
無数のレイスが耳障りな金切り声を上げながら、俺たちに殺到してきた。
ガロウがウォーハンマーを振るうが、その攻撃は手応えなく霊体をすり抜けてしまう。
「くそっ、やっぱり物理攻撃は効かねえか!」
「聖なる光よ!」
リリアナが浄化の光を放つ。
光を浴びた数体のレイスは苦悶の叫び声を上げて霧散した。
だが、数が多すぎる。彼女の魔力だけでは全てを浄化しきる前に消耗してしまうだろう。
レイスたちは俺たちの精神を直接攻撃してきた。
頭の中に絶望や恐怖、憎悪といった負の感情が濁流のように流れ込んでくる。
常人なら数秒で発狂してしまうほどの精神攻撃だ。
「ぐっ……頭が……!」
ガロウが頭を抱えて膝をついた。リリアナも顔を青ざめさせている。
このままでは危険だ。
だが、俺にはその精神攻撃が全く効いていなかった。
俺の精神は前世から続く、ただ一つの渇望によって焼き固められている。
戦い以外の感情が入り込む隙間など、どこにもない。
俺は頭の中に響く怨嗟の声を、ただの雑音として聞き流していた。
「……うるさい」
俺は静かに闘気を練り上げた。
物理攻撃が効かないなら、別の方法で殴ればいい。
俺は右拳に闘気を集中させる。
それは純粋な生命エネルギーの塊。アンデッドのような負の存在にとっては、聖なる光以上に致命的な毒となる。
俺は目の前に迫っていたレイスの顔面めがけて、その闘気の拳を叩き込んだ。
実体がないはずのレイスに、確かな手応えがあった。
「ギシャアアアアアッ!?」
断末魔の悲鳴と共に、レイスはまるで爆発したかのように四散した。
俺は次々とレイスを殴り飛ばしていく。
俺の闘気は奴らの霊体を直接破壊する。
俺の存在そのものが、この場のアンデッドにとって天敵となっていた。
「ジン……すげえな、お前」
ガロウが俺の戦いを見て呆然と呟く。
「ジン様……」
リリアナもまた、信じられないものを見る目で俺を見つめていた。
俺が半数ほどのレイスを屠ったところで、奴らの動きが変わった。
残ったレイスたちが一斉に合体し始めたのだ。
無数の霊体が渦を巻き、一つの巨大な影を形成していく。
やがて俺たちの目の前に現れたのは、黒いローブを纏った巨大な骸骨のような姿だった。その手には魂を刈り取るという大鎌が握られている。
デュラハン。
レイスの上位種であり、死を司る存在。
その威圧感はスケルトンナイトの比ではなかった。
「……ようやく、まともなのが出てきたか」
俺の口元に笑みが浮かぶ。
スキル【闘神】はまだ発動しない。だが、こいつなら少しは楽しませてくれるかもしれない。
デュラハンは、その空っぽの眼窩で俺を捉えると、ゆっくりと大鎌を振り上げた。
その一振りは空間そのものを歪ませるほどの、禍々しい魔力を秘めていた。
「来るぞ!」
ガロウが再び盾を構える。
リリアナが防御魔法の詠唱を開始する。
そして俺は、その死の一撃を迎え撃つべく一歩前に出た。
中層の戦いは、まだ終わらない。
この坑道の闇は、俺たちが思っているよりもずっと深い。
広間を抜けると道は再び狭く、複雑な迷路のように入り組んでいた。かつての鉱夫たちが掘り進めた坑道が、無数に交差しているのだ。
「ちっ、まるで蟻の巣だな。こりゃあ下手に進むと迷うぜ」
ガロウが壁に刻まれた古い印を頼りに、慎重に進む。
「待ってください。この先の空気、少しよどんでいます」
リリアナが杖を掲げて警告を発した。
彼女の言う通りだった。
次の角を曲がった瞬間、俺たちの足元の床が音もなく崩落した。
巧妙に隠された落とし穴の罠だ。
「うおっ!?」
先頭を歩いていたガロウが、バランスを崩して穴へと落ちていく。
俺は咄嗟にその腕を掴み、リリアナは風の魔法でガロウの巨体をわずかに浮かせて落下速度を殺した。
俺たちはなんとか三人とも穴の縁に踏みとどまることができた。
穴の底は鋭く尖った杭が何本も突き出す、即死の罠だった。
「……あぶねえ。ジン、リリアナ、助かったぜ」
ガロウが冷や汗を拭いながら礼を言う。
「罠か。ただの魔物の巣ではないということか」
俺は穴の底を睨みつけながら呟いた。
この坑道には明確な悪意と知性を持った何者かが潜んでいる。スケルトンナイトですら、そいつに操られていた駒の一つに過ぎないのかもしれない。
俺たちはより一層警戒を強めて進んだ。
ここから先は罠の連続だった。
壁から毒矢が飛び出し、天井が崩れ落ち、足元からは拘束する鎖が伸びてくる。
それらの罠はどれも巧妙で殺意に満ちていた。
だが、俺たちの前ではそれらの罠はことごとく無力化された。
俺の超人的な感覚が罠の気配を事前に察知する。
ガロウの頑強な肉体と盾が物理的な罠を強引に突破する。
リリアナの精霊魔法が魔術的な罠を解呪し、あるいは無力化する。
俺たち三人の能力は、奇跡的なほどに噛み合っていた。
「へへっ、どんな罠が来ようと、俺たちにかかればただの障害物だな!」
ガロウが壁から飛び出してきた巨大な刃をウォーハンマーで粉砕しながら豪快に笑う。
その言葉通り、俺たちは一切のダメージを受けることなく罠地帯を突き進んでいた。
やがて俺たちは再び開けた空間に出た。
そこはスケルトンナイトがいた広間よりもさらに広く、ドーム状の天井を持つ巨大な空洞だった。
そして、その空間を支配していたのは物理的な罠ではなかった。
空洞に足を踏み入れた瞬間、ぞわりと全身の肌が粟立った。
冷たい視線。無数の怨念に満ちた視線が、四方八方から俺たちに突き刺さる。
「……何だ、こいつらは……」
ガロウが警戒の声を上げる。
リリアナの光に照らし出されたのは、半透明の人影だった。
壁や天井、地面から、無数の霊体がまるで染み出すように姿を現していたのだ。
レイス。
肉体を失い、怨念だけでこの世に留まる強力なアンデッド。
物理的な攻撃がほとんど通じず、精神に直接干渉してくる厄介な敵だ。
「キシャアアアアア……」
無数のレイスが耳障りな金切り声を上げながら、俺たちに殺到してきた。
ガロウがウォーハンマーを振るうが、その攻撃は手応えなく霊体をすり抜けてしまう。
「くそっ、やっぱり物理攻撃は効かねえか!」
「聖なる光よ!」
リリアナが浄化の光を放つ。
光を浴びた数体のレイスは苦悶の叫び声を上げて霧散した。
だが、数が多すぎる。彼女の魔力だけでは全てを浄化しきる前に消耗してしまうだろう。
レイスたちは俺たちの精神を直接攻撃してきた。
頭の中に絶望や恐怖、憎悪といった負の感情が濁流のように流れ込んでくる。
常人なら数秒で発狂してしまうほどの精神攻撃だ。
「ぐっ……頭が……!」
ガロウが頭を抱えて膝をついた。リリアナも顔を青ざめさせている。
このままでは危険だ。
だが、俺にはその精神攻撃が全く効いていなかった。
俺の精神は前世から続く、ただ一つの渇望によって焼き固められている。
戦い以外の感情が入り込む隙間など、どこにもない。
俺は頭の中に響く怨嗟の声を、ただの雑音として聞き流していた。
「……うるさい」
俺は静かに闘気を練り上げた。
物理攻撃が効かないなら、別の方法で殴ればいい。
俺は右拳に闘気を集中させる。
それは純粋な生命エネルギーの塊。アンデッドのような負の存在にとっては、聖なる光以上に致命的な毒となる。
俺は目の前に迫っていたレイスの顔面めがけて、その闘気の拳を叩き込んだ。
実体がないはずのレイスに、確かな手応えがあった。
「ギシャアアアアアッ!?」
断末魔の悲鳴と共に、レイスはまるで爆発したかのように四散した。
俺は次々とレイスを殴り飛ばしていく。
俺の闘気は奴らの霊体を直接破壊する。
俺の存在そのものが、この場のアンデッドにとって天敵となっていた。
「ジン……すげえな、お前」
ガロウが俺の戦いを見て呆然と呟く。
「ジン様……」
リリアナもまた、信じられないものを見る目で俺を見つめていた。
俺が半数ほどのレイスを屠ったところで、奴らの動きが変わった。
残ったレイスたちが一斉に合体し始めたのだ。
無数の霊体が渦を巻き、一つの巨大な影を形成していく。
やがて俺たちの目の前に現れたのは、黒いローブを纏った巨大な骸骨のような姿だった。その手には魂を刈り取るという大鎌が握られている。
デュラハン。
レイスの上位種であり、死を司る存在。
その威圧感はスケルトンナイトの比ではなかった。
「……ようやく、まともなのが出てきたか」
俺の口元に笑みが浮かぶ。
スキル【闘神】はまだ発動しない。だが、こいつなら少しは楽しませてくれるかもしれない。
デュラハンは、その空っぽの眼窩で俺を捉えると、ゆっくりと大鎌を振り上げた。
その一振りは空間そのものを歪ませるほどの、禍々しい魔力を秘めていた。
「来るぞ!」
ガロウが再び盾を構える。
リリアナが防御魔法の詠唱を開始する。
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