死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第二十七話 スケルトンナイト

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螺旋状の階段は坑道のさらに奥深くへと続いていた。
瘴気は粘性を帯び始め、まるで水の中を進んでいるかのような圧迫感があった。リリアナが灯す光も、この濃密な闇の中では心許なく揺らめいている。

長い階段を下りきると、俺たちは広大な空間に出た。
そこは自然の洞窟ではなかった。人の手によって切り拓かれた巨大な地下広間だ。天井は高く、何本もの太い石柱がそれを支えている。かつては鉱石の採掘拠点か何かだったのだろう。

だが今、その場所を支配していたのは生者ではなかった。
広間の中央。
一体の巨大な骸骨騎士が、同じく骨と化した軍馬に跨り、静かに鎮座していた。
その身に纏うのは、錆びてはいるが明らかに上質なプレートアーマー。左手には紋章の刻まれた大盾を、そして右手には人の背丈ほどもある長大なランスを構えている。
その空っぽの眼窩からは、憎悪と冷気そのもののような青い鬼火が揺らめいていた。

スケルトンナイト。
アンデッドの中でも、特に強力な指揮官クラスの個体だ。

そして、その周囲を固めるように、完全武装したスケルトン兵士が二十体ほど整然と隊列を組んでいた。彼らは上層で遭遇した雑魚どもとは違う。装備も統一され、その立ち姿には一切の無駄がない。
彼らは一体の強力な意志によって統率された、死者の軍勢だった。

「……おいおい、マジかよ」
ガロウがウォーハンマーを握りしめながら呻いた。
「こいつら、ただのアンデッドじゃねえ。軍隊だ」

スケルトンナイトの眼窩の鬼火が、俺たちを捉えた。
カチャリ、とナイトがランスの切っ先をこちらに向ける。
それが開戦の合図だった。

スケルトン兵士たちが一糸乱れぬ動きで前進を開始した。盾を構え、剣を抜き、隙間のない壁となってこちらへ迫ってくる。
烏合の衆とは全く違う。そこには明確な戦術があった。

「ガロウ、正面を頼む!」
「言われるまでもねえ!」
ガロウが雄叫びを上げ、突進してきたスケルトン兵士たちの壁に正面から激突した。
轟音と共に数体のスケルトンが弾き飛ばされる。だが、後続の兵士が即座にその穴を埋め、ガロウの巨体を押し留めようとする。
巧みな連携。ガロウのパワーをもってしても、簡単には突破できない。

「風の縛めよ!」
リリアナが兵士たちの足元を狙って魔法を放つ。
だが、スケルトンナイトがランスを一度地面に打ち付けた。
カァン、という甲高い音と共に、ナイトから放たれた負の波動がリリアナの魔法をかき消した。

「魔法障壁!? なんてこと……!」
リリアナが驚愕の声を上げる。
あのナイトはただの指揮官ではない。魔術的な防御能力をも備えている。

厄介な相手だ。
兵士たちを放置すればガロウとリリアナが消耗する。かといって、兵士たちを相手にしていては、中央に鎮座するナイト本体に攻撃が届かない。

俺は決断した。
「俺が頭を叩く」
「ジン!? 無茶だ! あの壁をどうやって……」
ガロウの制止を聞かず、俺は地面を蹴った。

目標はただ一点、中央のスケルトンナイトのみ。
俺はスケルトンの壁のわずかな隙間を縫うようにして、その内側へと切り込もうとする。
だが、奴らの動きはあまりに正確だった。
俺の動きに合わせ、盾の壁が自在に変形する。まるで巨大な一つの生き物のように。
俺の進路はことごとく塞がれてしまった。

「ちっ……」
俺は一旦距離を取り、戦況を見極める。
この統率された動きを崩さない限り、ナイトには届かない。
そして、この軍勢を操っているのは間違いなくあのナイト自身だ。

「ガロウ!」
俺は叫んだ。
「一点突破だ! 道を開けろ!」
「……へっ、そういうことなら任せとけ!」

ガロウの全身の筋肉が爆発的に膨れ上がった。
彼は盾を捨て、両手で巨大なウォーハンマーを握りしめる。
「獣王の咆哮ォォォッ!!」

ガロウのスキルが発動した。
獣の闘気を纏ったウォーハンマーが、横薙ぎに振り抜かれる。
それはもはやただの一撃ではなかった。
地形すら変えるほどの破壊の奔流。

ドゴォォォォン!!!
スケルトン兵士たちの盾の壁が、その一点だけ粉々に砕け散った。
数体の兵士が原型を留めないほどに破壊される。
完璧だった壁に、わずかだが確かな亀裂が生じた。

「リリアナ!」
「はい! 大地の檻よ!」
リリアナの魔法がガロウの開けた穴の両脇に殺到する。
地面から岩の壁が突き出し、穴を塞ごうとするスケルトンたちの動きを物理的に封じた。

ほんの数秒。
だが、俺にとっては十分すぎる時間だった。
俺は開かれたその道を、一陣の風となって駆け抜けた。

目の前にスケルトンナイトの巨躯が迫る。
ナイトは俺の接近に気づき、その長大なランスを突き出してきた。
死の突撃。音速を超える一撃だ。

俺はそのランスを避けない。
真正面から、その切っ先を右手で掴んだ。
バチバチッ、と負の魔力が俺の腕を焼く。だが、構うものか。

俺はランスを掴んだまま、その勢いを利用して駆け上がった。
そして馬上のナイトの懐へと飛び込む。

「キ……!?」
スケルトンナイトが初めて焦りのような気配を見せた。
だが、もう遅い。
俺は、その鎧の胸当てのど真ん中に左の拳を叩き込んでいた。

「砕けろ」
俺の闘気を込めた一撃が、分厚いプレートアーマーを紙のように貫通した。
そして、その奥にある肋骨を砕き、さらに奥で燃え盛る魂の火を直接握り潰す。

ブチッ、という生々しい感触。
スケルトンナイトの眼窩で燃えていた青い鬼火が、ふっと掻き消えた。

指揮官を失った軍勢は、もはやただの骸骨の集まりだった。
残っていたスケルトン兵士たちは一斉にその動きを止め、やがてガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。

静寂が広間に戻った。
俺は骨の馬から崩れ落ちるナイトの鎧を蹴り飛ばし、地面に着地した。
腕には火傷のような痛みが残っている。だが、それすらも心地よかった。

「……ははっ、マジでやりやがった」
ガロウがウォーハンマーを肩に担ぎ、呆れたように笑っている。
「お見事です、ジン様!」
リリアナも安堵の表情で駆け寄ってきた。

中層の最初の関門。
俺たちは完璧な連携でそれを突破した。
だが、俺たちの誰もが理解していた。
これはまだ序の口に過ぎない。

この坑道の深淵には、スケルトンナイトなど比較にならないほどの、本物の「絶望の影」が眠っている。
その気配がさらに濃くなって、俺たちを奥へと誘っていた。

俺たちは崩れ落ちた骨の山を乗り越え、さらに続く闇の中へと足を踏み入れた。
次なる死闘の予感に、俺の魂は静かに、しかし激しく燃え上がっていた。
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