死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第三十一話 黄昏の教団

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ネビュロスの真の力が解放され、玉座の間を満たす魔力はもはや暴風と化していた。
壁に埋め込まれた骸骨たちがカタカタと震え、瘴気は渦を巻いてリッチの体へと吸い込まれていく。
その様は、まさしく死を統べる王。

「刮目せよ、矮小なる生者ども。これぞ我が究極魔法『ネクロポリス・アビス』!」
ネビュロスが杖を高く掲げると、広間全体に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
紫色の光が俺たちを飲み込もうとする。

「まずい! あれは空間ごと死の世界に変える禁呪だ!」
リリアナが文献で得た知識なのだろう、絶望的な声を上げた。
「完成すれば、私たちは魂ごと喰われる!」

「完成させる前にぶっ壊せばいいだけだろ!」
ガロウが傷ついた体を引きずるようにして立ち上がり、ウォーハンマーを構える。
だが、魔法陣からは無数の亡霊の腕が伸び、俺たちの足に絡みついて動きを封じてきた。

絶体絶命。
だが、俺の心は不思議なほどに静かだった。
【闘神】の第二段階。全身に力が満ち溢れ、思考は氷のように冴え渡る。
ネビュロスの動き、魔力の流れ、魔法陣の弱点。その全てが俺の目にはっきりと見えていた。

「ガロウ、リリアナ」
俺は静かに二人の名を呼んだ。
「俺に三秒だけ時間をくれ」

その言葉に理屈はなかった。
だが、二人は俺の目に宿る絶対的な確信を見て、無言で頷いた。
「……へっ、三秒だな。任せとけ!」
「信じています、ジン様!」

ガロウが最後の力を振り絞って吠えた。
「獣王、最後の咆哮ォォォッ!!」
彼は自らを盾とし、魔法陣から溢れ出す亡霊たちの猛攻を一身に受け止める。
リリアナも残った魔力の全てを防御結界に注ぎ込み、ガロウを援護した。

彼らが命を賭して稼いでくれた、わずかな時間。
俺は動いた。
目標は魔法陣の中心で詠唱を続けるネビュロスではない。
その頭上。この広間で唯一魔力が集中していない一点。天井のシャンデリアのように吊るされた巨大な鍾乳石。

俺は壁を蹴り、天井へと駆け上がった。
そして、その鍾乳石の根元にありったけの闘気を込めた拳を叩き込む。
「落ちろ」

ゴゴゴゴゴ……という地響きと共に、数トンはあろうかという巨大な岩塊が魔法陣の中心めがけて落下していく。
「なっ!? 馬鹿な、そこは……!」
ネビュロスが初めて焦りの声を上げた。
そこは彼の魔法の、唯一の死角だったのだ。

彼は詠唱を中断し、咄嗟に転移魔法で逃れようとする。
だが、俺はそれすらも読んでいた。
俺は落下する鍾乳石から飛び降り、ネビュロスの転移先であろう空間へと先回りするように拳を突き出していた。

「――そこだ」

俺の拳が、空間から現れたネビュロスの顔面を完璧に捉えた。
ゴシャッ、という鈍い音。
不死の王の頭蓋が、俺の一撃で無惨に砕け散る。

魔法の詠唱が途切れ、巨大な魔法陣が光を失って消えていく。
ガロウとリリアナを縛っていた亡霊たちも霧のように掻き消えた。
そして、落下してきた巨大な鍾乳石が頭を失ったネビュロスの体を、玉座ごと完全に押し潰した。

轟音と静寂。
嵐が過ぎ去った。
広間には砕けた岩塊と、そこからわずかに覗く黒いローブの切れ端だけが残されていた。

俺は静かに着地した。
【闘神】のスキル効果が切れ、凄まじい疲労感が全身を襲う。
だが、その疲労感すらも勝利の証として心地よかった。

「……は、ははっ。マジかよ、おい……」
ガロウがその場にへたり込み、乾いた笑いを漏らした。
「勝ちました……私たちが、リッチ・ロードに……」
リリアナもまた、信じられないといった表情で涙を浮かべていた。

俺たちは勝ったのだ。
騎士団の精鋭すら退けた不死の王に。
この『闘神旅団』はBランクパーティでありながら、Aランク、あるいはそれ以上の脅威を打ち破る力がある。
その事実が確かな自信となって、俺たちの胸に刻まれた。

俺は砕けた岩塊へと近づいた。
ネビュロスの体は完全に破壊されたが、その魔力の源となっていたであろう杖だけが奇跡的に無傷で残っていた。
先端の紫色の宝石は、まだ妖しい光を放っている。

俺がその杖を拾い上げた、その時だった。
宝石が突如として激しく明滅を始めた。
そして、ネビュロスの声が俺の脳内に直接響いてきた。

『……ククク、見事だ、人の子よ。この私を滅するとはな。だが、勘違いするな。我が死は終わりではない。始まりに過ぎぬ』
それは死の間際に遺した残留思念だった。

『我は黄昏の教団が誇る七司祭が一人。最弱に過ぎん。我らの目的は旧神の復活。この坑道での儀式は、そのためのほんの布石……。貴様らは、いずれ知ることになるだろう。本当の絶望というものを……』

その言葉を最後に、宝石の光は完全に消え、ただの石ころになった。
七司祭。旧神の復活。
俺たちはとてつもなく厄介で、そして巨大な敵に目をつけられてしまったらしい。

だが、俺の心に恐怖はなかった。
むしろ歓喜に打ち震えていた。
最弱であれか。
ならば、残りの六人、そしてその先にいるであろう旧神とやらは一体どれほどの強さなのだろう。
俺の渇きを、ようやく潤してくれる相手かもしれない。

俺たちは満身創痍の体を引きずりながら、坑道からの帰路についた。
祭壇はネビュロスが死んだことでその力を失い、ただの石の塊に戻っていた。
坑道を覆っていた瘴気も、嘘のように晴れ渡っている。

王都へ帰還した俺たちを待っていたのは、王からの最大限の賛辞とギルドからの破格の報酬だった。
『嘆きの坑道』を攻略した英雄。
『闘神旅団』の名はもはや王都の誰もが知る、伝説の始まりとして語られることになった。

だが、俺たちの戦いはまだ終わらない。
黄昏の教団という新たな敵。
そして、この世界のどこかに眠る、まだ見ぬ強者たち。

俺は王城のバルコニーから、広大な王都の夜景を見下ろしていた。
隣にはガロウとリリアナがいる。
俺たちはもはやただの寄せ集めではない。
死線を共に乗り越えた本物の仲間だ。

「さて、次はどいつを殴りに行くかな」
俺の呟きに、ガロウが獰猛に笑った。
「面白い奴なら、誰でも歓迎だぜ」
「お二人とも、少しは休息を取ってください!」
リリアナの呆れたような、しかし嬉しそうな声が夜の風に溶けていった。

俺たちの旅はまだ始まったばかりだ。
この先にどれほどの死闘が待っていようとも、俺たちは進む。
俺自身の渇きを癒すため。
そして、このかけがえのない仲間たちと共に、最強の伝説を築き上げるために。
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