死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第三十六話 強さへの渇望、再び

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敗北の味は鉄錆のように俺の舌の上に残り続けた。
医務室を出てから数日間、俺は半ば自暴自棄になっていた。夜は訓練場で無意味に岩を砕き、昼は酒場で意味もなく酒を煽る。
ガロウもリリアナもそんな俺を心配し、何度も声をかけてくれた。だが、今の俺には彼らの優しさすらも、己の弱さを突きつけられるようで苛立たしかった。

「おい、ジン。いつまでそうしてるつもりだ」
その日も獅子の寝床亭の隅で一人酒を飲んでいた俺に、ガロウが声をかけてきた。その隣にはリリアナが心配そうな顔で立っている。
「放っておけ」
俺はグラスを呷りながら吐き捨てた。

ガロウは大きなため息をつくと、俺の隣にどかりと腰を下ろした。
「……負けたのが、そんなに悔しいか」
「当たり前だ」

「なら、どうするんだ。このまま腐っていくのか? それとも、もう一度あいつに挑むのか?」
ガロウの問いに、俺は答えられなかった。
挑む? どうやって。今の俺がどうすればあいつに勝てるというのか。
俺の技は通じなかった。俺の力も通じなかった。スキル【闘神】ですら奴の前では無力だった。

俺の心は暗い迷路の中を彷徨っていた。
強くなるための道筋が完全に見えなくなってしまったのだ。

そんな俺の様子を見て、リリアナが静かに口を開いた。
「……ジン様。もし今の状況を打破する方法を探しているのでしたら、一つだけ心当たりがあります」
その言葉に、俺は初めて顔を上げた。

「Sランク指定の未踏破ダンジョン……『神々の墓場』です」
その名を聞いた瞬間、ギルドの依頼ボードで見たあの禍々しい依頼書が脳裏をよぎった。

ガロウが目を見開いた。
「神々の墓場!? おいおい、リリアナ、正気かよ! あそこはギルドが設立されてから数百年、誰一人として最下層に到達した者がいないっていう伝説級の魔境だぜ! 入ったAランクパーティがいくつも消息を絶ってる!」

「存じています」
リリアナは静かに頷いた。
「ですが、伝説によればそのダンジョンの最下層には、神々が遺した武具や人の限界を超える力を与える秘宝が眠っていると言われています。そして、そこに巣食う魔物たちはどれも神話級の存在ばかりだと……」

神話級の魔物。神々が遺した秘宝。
その言葉は暗闇の中にいた俺にとって、一条の光のように思えた。
そうだ。俺に足りないのは圧倒的な経験と、そして今の俺の限界を超えるほどの死闘だ。
この生ぬるい王都でBランク依頼をこなしていても、俺は永遠にあいつの背中には追いつけない。

行くしかない。
その魔境に。
そこならば俺を叩き直し、新たな強さへと導いてくれる何かがきっとあるはずだ。

「……いいだろう。そこへ行く」
俺の即答に、ガロウとリリアナは息を呑んだ。
「ジン、本気か!?」
「ああ。今の俺にはそれしか道はない」

俺の目に宿る光を見て、ガロウはそれ以上何も言わなかった。
彼は俺が決意したことは誰にも止められないと知っていた。
彼は大きく息を吐くと、やがてニヤリと笑った。
「……へっ、面白え。伝説級の魔境、か。上等じゃねえか。お前がそこまで言うなら付き合ってやるよ。どうせ一人で行かせてもロクなことにならねえだろうしな」

「ガロウ様……」
「私も行きます」
リリアナもまた強い意志を込めて言った。
「ジン様が強さを求めるというのなら、私はそれを全力で支えます。それが私の役目ですから」

仲間たちの言葉が、荒んでいた俺の心に温かく染み渡った。
俺は一人ではなかった。
この敗北の淵から俺を引き上げてくれる仲間がここにいる。

「……すまない」
俺の口から自然と謝罪の言葉が漏れた。
この数日間、彼らにどれだけ心配をかけたことか。

ガロウは俺の頭を大きな手で乱暴にかき混ぜた。
「謝るんじゃねえよ、相棒。俺たちは仲間だろ」
リリアナも優しく微笑んだ。

俺の中で何かが吹っ切れた。
敗北の屈辱は消えない。仮面の剣士への憎しみも変わらない。
だが、その暗い感情に新たな光が差し込んだ。
仲間と共に再び強さを求める。
その道筋がはっきりと見えた。

俺たちは再び立ち上がった。
目標は神々の墓場。
それはこれまでのどんな戦いよりも過酷で、危険な冒険になるだろう。
生きて帰れる保証などどこにもない。

だが、俺たちの心に迷いはなかった。
俺たちはこの挑戦を乗り越え、必ずや新たな力を手に入れてみせる。
そして、いつか再びあの仮面の剣士の前に立つ。
その時こそ、俺が本当の意味で最強への一歩を踏み出す時だ。

俺たちの新たな渇望が伝説のダンジョンへと向かって、静かに、しかし激しく燃え上がっていた。
本当の戦いはここから始まる。
俺はまだ見ぬ魔境の深淵に思いを馳せ、静かに拳を握りしめた。
その心は敗北の絶望ではなく、再び見出した希望の光に満ちていた。
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