死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第四十話 いざ、神々の墓場へ

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暗闇が俺たちを歓迎した。
一歩足を踏み入れただけで、背後の世界との繋がりが完全に断たれたのが分かった。冷たく神聖で、そして生命の存在を許さないかのような空気が肺を満たす。

リリアナが掲げた杖の光だけが、俺たちの唯一の道標だった。
光に照らし出されたのは、人の手によるものではない、自然が作り出したままの巨大な洞窟。だが、その壁や天井はまるで磨き上げられた黒曜石のように滑らかで、不気味な光沢を放っていた。

「……何の音もしねえな」
ガロウが声を潜めて呟いた。
その通りだった。風の音も、水の滴る音も、生き物の気配も一切ない。完全な無音。それはかえって俺たちの警戒心を最大限に引き上げた。

道はまっすぐに奥へと続いていた。
他に選択肢はなく、俺たちはその一本道を進み始めた。
コツ、コツ、という俺たちの足音だけが異様なほど大きく響き渡る。

十分ほど歩いただろうか。
俺は違和感に気づいた。
景色が全く変わらない。
同じような壁、同じような天井。まるで同じ場所をぐるぐると回っているようだ。

「おい、どうなってる」
ガロウも異変に気づき、足を止めた。
「無限回廊……。魔術的な罠です。私たちは同じ空間をループさせられています」
リリアナが杖を強く握りしめ、険しい表情で答えた。

「なら、ぶっ壊して進むまでだ!」
ガロウがウォーハンマー『神砕』を振りかぶった。
そして、渾身の力で目の前の壁を殴りつける。
轟音。
だが、壁には傷一つついていなかった。それどころか、ガロウの一撃は虚しくすり抜け、彼の体勢を大きく崩した。

「物理的な干渉を受け付けない空間……! 神の力で守られています!」
「ちっ、厄介な!」
俺は別の方法を試した。
闘気を足に集中させ、この空間の限界を超える速度で駆け抜ける。
景色が凄まじい速さで後ろへと流れていく。だが、どれだけ走っても出口は見えない。
そして、ふと足を止めると、俺はガロウとリリアナがいる元の場所に戻っていた。

力も速さも通用しない。
まさに神々が仕掛けた理不尽な罠。
これが神々の墓場の洗礼か。

俺たちが打開策を見つけられずにいると、リリアナが静かに目を閉じた。
彼女は世界樹の杖を地面に突き立て、その意識を深く、深く沈めていく。
精霊との対話。この空間に満ちる微かな魔力の流れを読み解こうとしているのだ。

しばらくの沈黙。
やがて、リリアナの額に玉の汗が浮かび始めた。
「……分かりました」
彼女はゆっくりと目を開けた。
「この回廊は試練です。『信仰』を試す最初の門」

「信仰?」
ガロウが訝しげに眉をひそめる。
「はい。この道は、己が最も強く信じるものの名を呼び、疑うことなくただまっすぐに前へ進む者にのみ、真の道を開く、と……精霊が教えてくれました」

己が信じるもの。
それはあまりに漠然とした問いだった。
だが、俺たちの心に迷いはなかった。

ガロウが一歩前に出た。
その顔にはいつものような獰猛さではなく、穏やかでしかし揺るぎない覚悟が浮かんでいた。
「俺が信じるのは『仲間』だ。この二人と共にどんな困難も乗り越えられる。俺はそう信じてる!」
彼はその信念を大声で宣言した。

次にリリアナが前に出た。
その翡翠色の瞳には、聖女のような清らかな光が宿っていた。
「私が信じるのは『真理』です。どんな謎もどんな絶望も、知識と知恵をもってすれば必ず解き明かすことができる。私はそう信じています!」

そして、最後に俺の番だった。
俺が信じるもの。
それは前世から、そしてこの世界に来てからも、ただの一つも変わらない。

「俺が信じるのは『己の拳』だ」
俺は静かに、しかし力強く言った。
「この拳はどんな壁も砕き、どんな敵も打ち破る。俺の最強への道を切り開く唯一絶対の力。俺はこの拳だけを信じる」

三つの誓い。
三つの揺るぎない信念。
俺たちがそれぞれの覚悟を口にした瞬間、目の前の空間が陽炎のように揺らめいた。

そして、景色が変わった。
これまで俺たちを惑わせていた無限回廊は消え失せ、その先には巨大な石の扉がそびえ立っていた。
最初の試練を俺たちは突破したのだ。

扉は高さ二十メートルはあろうかという一枚岩でできていた。
その表面には俺たちの知らない古代神聖文字がびっしりと刻まれている。

リリアナがその文字をゆっくりと読み解いていく。
「……『これより先、巨人の庭。神々の戯れに挑む覚悟なき者は、ここで引き返すが賢明なり』……と、書かれています」

扉には鍵穴も取っ手もない。
ただ、中央に三つの掌の形をした窪みがあるだけだった。
これもまた試練。
俺たちの結束を試す最後の関門。

俺たちは顔を見合わせた。
そして無言で頷き合う。
俺とガロウとリリアナは、同時にその窪みに自らの手を置いた。

その瞬間。
ゴゴゴゴゴ……という地響きと共に、巨大な石の扉がゆっくりと内側へと開かれていく。
扉の隙間から、これまでとは全く違う眩い光と生命の匂いが溢れ出してきた。

やがて扉は完全に開かれた。
そして、俺たちは目の前に広がる光景に言葉を失った。

そこは洞窟ではなかった。
果てしなく広がる広大な空間。
天井にはどこまでも青い空が広がり、柔らかな光を放つ太陽のようなものが浮かんでいる。
地面には人の背丈ほどもある巨大な草花が生い茂り、見たこともない巨木が天に向かって伸びていた。
まるで神話の世界に迷い込んだかのようだった。

第一階層『巨人の庭』。

そして俺たちの視線は、その庭園をゆっくりと闊歩する巨大な影に釘付けになった。
山のように巨大な、一体の巨人。サイクロプスだ。
その身長は三十メートルは下らないだろう。一本の巨木をまるで杖のように突きながら悠然と歩いている。
その一体一体が、ワイバーンに匹敵するほどの圧倒的なプレッシャーを放っていた。

「……はっ」
俺の口から乾いた笑いが漏れた。
恐怖など微塵もない。
あるのはただ純粋な、最高の獲物を前にした狩人の歓喜だけだった。

「……始まったな」

俺の呟きが広大な庭に静かに響き渡った。
神々の試練。
その最初のページが今、めくられたのだ。
俺たちの本当の戦いは、ここから始まる。
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