死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第四十一話 神々の墓場・入口

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扉の向こうに広がっていたのは、洞窟ではなかった。
それは一つの完成された世界だった。
どこまでも青い空。柔らかな光を放つ偽りの太陽。そして、人の背丈ほどもある巨大な草花が咲き乱れる果てしない庭園。
雲を突き刺すかのようにそびえ立つ巨木は、その一本一本が王城よりも高く、神話の時代に迷い込んだかのような錯覚を覚えた。

第一階層『巨人の庭』。
その名に偽りはなかった。

「……おいおい、マジかよ。ダンジョンの中に空があるぜ」
ガロウが呆気に取られた顔で天を仰いだ。彼の巨躯ですら、この庭園の中ではまるで子供のように小さく見える。
「なんて魔力……。この空間そのものが一つの巨大な魔法で構築されています」
リリアナも世界樹の杖を握りしめ、その壮大すぎる光景に言葉を失っていた。

俺の視線は別のものに釘付けになっていた。
その庭園を悠然と闊歩する巨大な影。
サイクロプス。単眼の巨人だ。
その身長は三十メートルを超え、手には武器として巨木を一本軽々と握っている。
一体だけではない。視界に入るだけで五体、六体といる。

その一体一体が放つプレッシャーはワイバーンに匹敵した。
つまりこの庭園は、Bランク級のボスモンスターが雑魚敵のようにうろついている異常な空間なのだ。

「……はっ」
俺の口から乾いた笑いが漏れた。
恐怖など一欠片も感じない。
あるのは最高の狩場を前にした、狩人の純粋な歓喜だけだった。
ようやく俺の魂が求めていた場所にたどり着いたのだ。

「おい、ジン! まさか、あいつらに突っ込む気じゃねえだろうな!」
俺の目に宿る光を見て、ガロウが慌てて声をかける。
「なぜだ。最高の獲物が目の前にいる」
「馬鹿野郎! 一体倒すだけでこっちもタダじゃ済まねえ! あんなのが何体もいやがるんだぞ!」

「ガロウ様の言う通りです、ジン様」
リリアナが冷静な声で俺を制した。
「私たちの目的は、この階層の番人であるエンシェント・タイタンを倒すこと。そのためにはまず三つの試練をクリアしなければなりません。サイクロプスとの戦闘は極力避けるべきです」

俺は舌打ちをした。
正論だ。感情のままに突っ込めば、番人にたどり着く前に俺たちはここで消耗し尽くしてしまうだろう。
敗北を知った俺は、その程度の理性を働かせることができた。

「……分かった。まずは試練の場所を探す」
俺がそう言うと、二人は安堵したように息を吐いた。

俺たちは行動を開始した。
巨大な草むらを隠れ蓑に、巨木や岩の陰を縫うようにして慎重に進む。
サイクロプスの視界はそれほど広くない。だが、その聴覚と嗅覚は鋭敏だった。俺たちは足音を殺し、気配を完全に消し去る必要があった。

ドシン……ドシン……。
地面を揺るがす巨人の足音。
その度に俺たちは身を伏せ、息を殺した。
一度、俺たちのすぐ側をサイクロプスが通り過ぎたことがあった。その巨大な足が地面を踏みしめるだけで、衝撃波が俺たちの体を打ち据える。
リリアナが恐怖に顔を青ざめさせていた。俺は無言で彼女の肩を軽く叩いた。大丈夫だ、と目で合図する。

この広大な庭園で、目印もないまま試練の場所を探すのは困難を極めた。
だが、俺たちにはそれぞれの武器があった。

「……こっちだ。風が微かに囁いている」
リリアナが世界樹の杖を掲げ、精霊の声に耳を澄ませる。彼女の案内で、俺たちは魔力の流れが不自然な場所へと導かれていった。

「待て。この先に獣の匂いがする。それも、とんでもねえデカブツのな」
ガロウが獣人ならではの鋭い嗅覚で危険を事前に察知する。彼の警告で、俺たちは何度かサイクロプスとの遭遇を回避することができた。

そして俺は、俺の感覚の全てを研ぎ澄ませていた。
空気の振動、地面の微かな揺れ、そしてこの空間に満ちる神聖な気配の中に混じる、わずかな異物の気配。
試練の場は、この庭園の自然とは異なる人工的な魔力を持っているはずだ。

三つの力が一つになり、俺たちは巨大な迷宮を着実に進んでいく。
数時間が経過しただろうか。
俺は足を止めた。

「……見つけた」
俺の視線の先。
鬱蒼とした巨木の森を抜けた先に、開けた円形の広場があった。
その広場は明らかに人の手、あるいは神の手によって作られたものだった。
地面には古代の闘技場のような石畳が敷き詰められ、その周囲を観客席のような階段が取り囲んでいる。

そして、その闘技場の中央。
天を突くほどの巨大な石柱が一本、地面から突き出ていた。
その表面には古代神聖文字が刻まれている。

リリアナがその文字を震える声で読み上げた。
「『汝、神々の前でその力を示せ。万物を砕く剛勇を持つ者にのみ、道は開かれん』……間違いありません。ここが『力の試練』の場です」

俺たちは闘技場の中へと足を踏み入れた。
空気が変わった。
これまでの神聖な気配に、血と闘争の匂いが混じり始める。

「どうやら、ここで何かと戦わなきゃならねえらしいな」
ガロウがウォーハンマーと大盾を構え直し、獰猛な笑みを浮かべた。
彼の役目だ。この試練は彼が乗り越えるべき壁。

俺とリリアナは観客席へと上がり、戦いを見守る準備をした。
ガロウが闘技場の中央に一人、仁王立ちになる。
彼が石柱に手を触れた、その瞬間だった。

ゴゴゴゴゴゴ……。
闘技場全体が激しく揺れ始めた。
石畳の中央部分が巨大な円を描くように沈み込み、その下から何かがせり上がってくる。

それは岩だった。
だが、ただの岩ではない。
それは岩でできた巨大な人型のゴーレムだった。
その体躯はサイクロプスに匹敵する。だが、その全身から放たれる圧力はサイクロプスとは比較にならないほど硬質で、そして重かった。
ゴーレムの胸部には巨大な赤い宝石が埋め込まれており、まるで心臓のように禍々しい光を明滅させている。

「……へっ。面白え。相手にとって不足はねえな」
ガロウはその圧倒的な存在感を前にしても一歩も引かなかった。
獅子の戦士はただ不敵に笑い、その巨大な敵と真正面から向き合う。

神々の試練。
その最初の戦いの火蓋が今、切って落とされた。
俺は固唾を飲んで相棒の戦いを見守った。
これは彼の戦いだ。俺はただ信じるしかない。
ガロウの力を。その覚悟を。
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