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第四十二話 第一階層『巨人の庭』
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闘技場の中央で、岩石の巨人がゆっくりと立ち上がった。
その体躯は周囲の観客席の最上段にまで達するほど巨大だ。胸で明滅する赤い宝石が、まるで邪悪な心臓のようにドクン、ドクンと禍々しい光を放っている。
その全身から放たれる圧力は純粋な質量と魔力の塊。生命体ではないが故の、感情のない絶対的な破壊の意志だけがそこにあった。
「……へっ。面白え。相手にとって不足はねえな」
ガロウはその圧倒的な存在感を前にしても一歩も引かなかった。
獅子の戦士はただ不敵に笑い、ウォーハンマー『神砕』と大盾『不動』を構える。
俺とリリアナは観客席から固唾を飲んでその戦いを見守っていた。
先に動いたのはガロウだった。
「オオオラァッ!」
雄叫びと共に地面を蹴る。
その巨体はまるで突進する装甲車のように、岩石のゴーレムへと肉薄した。
そして、渾身の力を込めたウォーハンマーをその岩の脚めがけて叩きつけた。
ゴォン!という山が崩れるかのような轟音が闘技場に響き渡った。
だが、信じられないことにゴーレムの脚には傷一つついていなかった。
それどころか、ガロウの『神砕』の方が甲高い音を立てて弾き返された。
「なっ!?」
ガロウの顔に初めて驚愕の色が浮かぶ。
その一瞬の隙をゴーレムは見逃さなかった。
巨大な岩の腕が無慈悲に振り下ろされる。それはもはや攻撃というより天災だった。
「ぐっ……!」
ガロウは咄嗟に大盾『不動』を構え、その一撃を受け止める。
凄まじい衝撃。闘技場の石畳が放射状に砕け散り、ガロウの巨体ですらその場に深くめり込んだ。
彼の膝がミシリと悲鳴を上げる。
「……硬えなんてもんじゃねえぞ、こいつ……」
ガロウは歯を食いしばりながら呻いた。
力押しだけでは勝てない。彼は瞬時にそれを悟った。
ただの脳筋ではない。彼は戦況を冷静に分析し、即座に戦術を切り替えた。
ガロウは防御に徹し始めた。
ゴーレムの単調だが破壊的な攻撃を大盾で受け、あるいは受け流す。
彼はただ耐えているのではなかった。
ゴーレムの攻撃を巧みに誘導し、その巨体を闘技場の中で少しずつ移動させている。
何かを狙っている。
「……あいつ、ただの盾役じゃねえな」
俺は観客席から呟いた。
ガロウの戦い方は粗暴に見えて、その実、非常にクレバーだった。
彼はこの闘技場の地形を利用しようとしている。
ゴーレ-ムの攻撃はますます激しくなる。
ガロウの大盾には少しずつ亀裂が走り始めていた。彼の体も衝撃を殺しきれず、あちこちから血が滲んでいる。
「ガロウ様……!」
リリアナが思わず杖を握りしめる。
彼女が支援魔法を放とうとした、その時だった。
「……手を出すな」
俺が静かに彼女を制した。
「これはあいつの戦いだ。俺たちは信じて見届けるしかねえ」
リリアナは唇を噛み締め、それでも杖を下ろした。
そして、その時は来た。
ガロウはゴーレムを闘技場の壁際まで巧みに誘導していた。
ゴーレムが最後の一撃とばかりに両腕を大きく振りかぶる。
最大の攻撃は、最大の隙を生む。
「……今だ!」
ガロウはその攻撃を避けるのではなく、あえて懐へと踏み込んだ。
そして大盾を捨て、ウォーハンマーを両手で握りしめる。
彼の全身から赤い闘気が爆発的に噴き上がった。
「獣王の鉄槌ィィィッ!!」
彼の最大の破壊スキル。
全ての力をただ一点に集中させる必殺の一撃。
その狙いはゴーレムの攻撃ではない。
ゴーレムの足元。その真下の石畳。
轟音。
ガロウの一撃は神々の力で守られた石畳を粉々に砕き割った。
足場を失ったゴーレムの巨体が大きくバランスを崩す。
そしてガロウは、その崩れた体勢のがら空きになった胸元へと残った全ての力を込めて跳躍した。
目標はただ一点。
禍々しく光る赤い宝石の核。
「これで、終わりだァァァッ!!」
ウォーハンマーが赤い宝石に直撃した。
パリン、という闘技場の轟音の中ではあまりに小さな、しかし決定的な破壊音。
宝石は蜘蛛の巣のような亀裂が入ったかと思うと、次の瞬間、木っ端微塵に砕け散った。
光を失ったゴーレムはその動きを完全に停止した。
そして、ガラガラと音を立てながらただの岩の塊へと崩れ落ちていく。
静寂。
後に残されたのは崩れた岩の山と、その前で片膝をつき荒い呼吸を繰り返す一人の獣人の戦士だけだった。
ガロウの体は満身創痍だった。だが、その顔には困難な試練を乗り越えた者だけが浮かべられる満足げな笑みが浮かんでいた。
『力の試練、達成を認める』
どこからともなく荘厳な声が響き渡った。
そして、闘技場の中央に突き出ていた石柱が淡い光を放ち始めた。
俺とリリアナは観客席から駆け下り、ガロウの元へと駆け寄った。
「……見事だったぞ、ガロウ」
俺が言うと、彼はニヤリと笑った。
「へへっ。まあな。この俺にかかればこんなもんよ」
その強がりが彼らしかった。
俺は初めてこの相棒の本当の強さを理解した気がした。
彼が持つのはただの破壊力ではない。仲間を守り、仲間への道を切り開くための揺るぎない覚悟。
それこそが彼の力の根源なのだ。
最初の試練は突破した。
だが、俺たちの挑戦はまだ始まったばかりだ。
残るは二つの試練。そして、この階層の番人。
俺たちは崩れ落ちたゴーレムの残骸を後にし、次なる試練の場を探すべく再び広大な庭園へと足を踏み出した。
その体躯は周囲の観客席の最上段にまで達するほど巨大だ。胸で明滅する赤い宝石が、まるで邪悪な心臓のようにドクン、ドクンと禍々しい光を放っている。
その全身から放たれる圧力は純粋な質量と魔力の塊。生命体ではないが故の、感情のない絶対的な破壊の意志だけがそこにあった。
「……へっ。面白え。相手にとって不足はねえな」
ガロウはその圧倒的な存在感を前にしても一歩も引かなかった。
獅子の戦士はただ不敵に笑い、ウォーハンマー『神砕』と大盾『不動』を構える。
俺とリリアナは観客席から固唾を飲んでその戦いを見守っていた。
先に動いたのはガロウだった。
「オオオラァッ!」
雄叫びと共に地面を蹴る。
その巨体はまるで突進する装甲車のように、岩石のゴーレムへと肉薄した。
そして、渾身の力を込めたウォーハンマーをその岩の脚めがけて叩きつけた。
ゴォン!という山が崩れるかのような轟音が闘技場に響き渡った。
だが、信じられないことにゴーレムの脚には傷一つついていなかった。
それどころか、ガロウの『神砕』の方が甲高い音を立てて弾き返された。
「なっ!?」
ガロウの顔に初めて驚愕の色が浮かぶ。
その一瞬の隙をゴーレムは見逃さなかった。
巨大な岩の腕が無慈悲に振り下ろされる。それはもはや攻撃というより天災だった。
「ぐっ……!」
ガロウは咄嗟に大盾『不動』を構え、その一撃を受け止める。
凄まじい衝撃。闘技場の石畳が放射状に砕け散り、ガロウの巨体ですらその場に深くめり込んだ。
彼の膝がミシリと悲鳴を上げる。
「……硬えなんてもんじゃねえぞ、こいつ……」
ガロウは歯を食いしばりながら呻いた。
力押しだけでは勝てない。彼は瞬時にそれを悟った。
ただの脳筋ではない。彼は戦況を冷静に分析し、即座に戦術を切り替えた。
ガロウは防御に徹し始めた。
ゴーレムの単調だが破壊的な攻撃を大盾で受け、あるいは受け流す。
彼はただ耐えているのではなかった。
ゴーレムの攻撃を巧みに誘導し、その巨体を闘技場の中で少しずつ移動させている。
何かを狙っている。
「……あいつ、ただの盾役じゃねえな」
俺は観客席から呟いた。
ガロウの戦い方は粗暴に見えて、その実、非常にクレバーだった。
彼はこの闘技場の地形を利用しようとしている。
ゴーレ-ムの攻撃はますます激しくなる。
ガロウの大盾には少しずつ亀裂が走り始めていた。彼の体も衝撃を殺しきれず、あちこちから血が滲んでいる。
「ガロウ様……!」
リリアナが思わず杖を握りしめる。
彼女が支援魔法を放とうとした、その時だった。
「……手を出すな」
俺が静かに彼女を制した。
「これはあいつの戦いだ。俺たちは信じて見届けるしかねえ」
リリアナは唇を噛み締め、それでも杖を下ろした。
そして、その時は来た。
ガロウはゴーレムを闘技場の壁際まで巧みに誘導していた。
ゴーレムが最後の一撃とばかりに両腕を大きく振りかぶる。
最大の攻撃は、最大の隙を生む。
「……今だ!」
ガロウはその攻撃を避けるのではなく、あえて懐へと踏み込んだ。
そして大盾を捨て、ウォーハンマーを両手で握りしめる。
彼の全身から赤い闘気が爆発的に噴き上がった。
「獣王の鉄槌ィィィッ!!」
彼の最大の破壊スキル。
全ての力をただ一点に集中させる必殺の一撃。
その狙いはゴーレムの攻撃ではない。
ゴーレムの足元。その真下の石畳。
轟音。
ガロウの一撃は神々の力で守られた石畳を粉々に砕き割った。
足場を失ったゴーレムの巨体が大きくバランスを崩す。
そしてガロウは、その崩れた体勢のがら空きになった胸元へと残った全ての力を込めて跳躍した。
目標はただ一点。
禍々しく光る赤い宝石の核。
「これで、終わりだァァァッ!!」
ウォーハンマーが赤い宝石に直撃した。
パリン、という闘技場の轟音の中ではあまりに小さな、しかし決定的な破壊音。
宝石は蜘蛛の巣のような亀裂が入ったかと思うと、次の瞬間、木っ端微塵に砕け散った。
光を失ったゴーレムはその動きを完全に停止した。
そして、ガラガラと音を立てながらただの岩の塊へと崩れ落ちていく。
静寂。
後に残されたのは崩れた岩の山と、その前で片膝をつき荒い呼吸を繰り返す一人の獣人の戦士だけだった。
ガロウの体は満身創痍だった。だが、その顔には困難な試練を乗り越えた者だけが浮かべられる満足げな笑みが浮かんでいた。
『力の試練、達成を認める』
どこからともなく荘厳な声が響き渡った。
そして、闘技場の中央に突き出ていた石柱が淡い光を放ち始めた。
俺とリリアナは観客席から駆け下り、ガロウの元へと駆け寄った。
「……見事だったぞ、ガロウ」
俺が言うと、彼はニヤリと笑った。
「へへっ。まあな。この俺にかかればこんなもんよ」
その強がりが彼らしかった。
俺は初めてこの相棒の本当の強さを理解した気がした。
彼が持つのはただの破壊力ではない。仲間を守り、仲間への道を切り開くための揺るぎない覚悟。
それこそが彼の力の根源なのだ。
最初の試練は突破した。
だが、俺たちの挑戦はまだ始まったばかりだ。
残るは二つの試練。そして、この階層の番人。
俺たちは崩れ落ちたゴーレムの残骸を後にし、次なる試練の場を探すべく再び広大な庭園へと足を踏み出した。
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