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第四十三話 階層の番人、タイタン
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『力の試練』を突破した俺たちは、再び広大な『巨人の庭』の探索を再開した。
ガロウの消耗は激しかったが、リリアナの治癒魔法と俺たちが持ち込んだ最高級のポーションによって、彼の傷は驚異的な速さで回復していった。
「……次はリリアナの番だな」
ガロウが、新調したばかりで早くも傷だらけになったウォーハンマーを肩に担ぎながら言った。
「ええ。『知恵の試練』。一体、どんな謎が待っているのか……」
リリアナは緊張した面持ちで世界樹の杖を握りしめる。
俺たちは再び三位一体となって、サイクロプスの闊歩する庭園を進んだ。
『力の試練』の場と同じように、俺の感覚がこの庭園の自然とは異質な魔力の流れを捉えた。
俺たちはその流れを辿って進んでいく。
やがて俺たちの目の前に現れたのは、巨大な滝だった。
天上の偽りの太陽の光を受けて水飛沫が虹色に輝いている。その壮大な光景は、神話の一場面を切り取ったかのようだった。
そして、その滝壺の中央。水面に浮かぶようにして、一つの巨大な蓮の花が咲いていた。
その花は水晶で作られているかのように透き通り、中心部から柔らかな青い光を放っている。
「……ここです」
リリアナが確信に満ちた声で言った。
「精霊たちが囁いています。あの水晶の蓮こそが、『知恵の試練』への入り口だと」
俺とガロウはリリアナの護衛に徹する。
彼女は一人静かに水辺へと近づき、その冷たい水に足を踏み入れた。
彼女が水晶の蓮に手を触れた、その瞬間。
青い光が彼女の体を優しく包み込んだ。
そして次の瞬間、リリアナの姿は俺たちの目の前から掻き消えるように消えていた。
「おい、リリアナ!?」
ガロウが慌てて声を上げる。
だが、俺は冷静だった。
「心配するな。試練の空間に転移しただけだ。彼女を信じて待つしかない」
俺たちは滝壺のほとりで、固唾を飲んでリリアナの帰りを待った。
どれくらいの時間が経っただろうか。
十分か、あるいは一時間か。時間の感覚がこの異質な空間では曖昧になっていた。
そして、突然。
水晶の蓮が再び眩い光を放った。
光が収まると、そこにはリリアナが立っていた。
その顔には深い疲労の色が浮かんでいたが、瞳の奥には確かな達成感と、そして以前よりもさらに深まった知性の輝きがあった。
『知恵の試練、達成を認める』
再び荘厳な声が響き渡る。
滝の裏側。これまで固い岩壁だった場所が音もなく開き、新たな道が現れた。
「……リリアナ、無事か」
「はい。少し頭を使いすぎただけです」
彼女はふわりと微笑んだ。
試練の内容を尋ねたが、彼女は首を振るだけだった。それは挑む者だけが知ることを許された神々の秘密なのだろう。
残る試練はあと一つ。『速さの試練』。
俺の出番だ。
滝の裏側に現れた洞窟を進むと、俺たちは風が吹き荒れる巨大な渓谷に出た。
谷底は見えず、対岸までは数百メートルはあろうかという断崖絶壁。
そして、その二つの崖の間にはか細い一本の鎖の橋だけが架かっていた。
橋の中央には石碑が立っている。
そこにはこう刻まれていた。
『神々の息吹を駆け抜け、瞬きよりも速く、その神速を示せ』
「……なるほどな」
俺は不敵に笑った。
この吹き荒れる暴風の中、この不安定な橋を、超人的な速さで渡りきれというわけか。
落ちれば奈落の底。風に煽られれば岩壁に叩きつけられる。
まさに速さと正確さを試す究極の試練。
俺はガロウとリリアナに言った。
「先に行って待っていてくれ。すぐに追いつく」
俺は一歩、鎖の橋へと足を踏み入れた。
凄まじい風圧が俺の体を襲う。立っていることすら困難だ。
だが、俺の心は凪いでいた。
風の流れを読む。空気の抵抗を最小限に抑える。
そして、闘気を足の裏に集中させ、鎖に吸い付くように重心を安定させる。
俺は息を吸った。
そして、吐いた。
次の瞬間、俺の姿はそこから消えていた。
俺は走ってはいなかった。
跳んでいた。
暴風のわずかな隙間を縫い、鎖の上をまるで飛び石のように一瞬で駆け抜けていく。
それはもはや人間の動きではなかった。
風そのものになったかのような神速の移動。
『速さの試-練、達成を認める』
俺が対岸にたどり着いたのと荘厳な声が響いたのは、ほぼ同時だった。
三つの試練は突破された。
俺たちが渓谷を抜けると、目の前にこの階層で最も巨大な神殿のような建造物がそびえ立っていた。
その神殿の扉は、ゆっくりと俺たちを招き入れるかのように開かれていく。
扉の先は広大な玉座の間だった。
そして、その玉座にそいつは座っていた。
エンシェント・タイタン。
この第一階層の番人。
その体はサイクロプスよりもさらに巨大で、山そのものが人の形を取ったかのようだった。全身は風化した岩石のような皮膚で覆われ、その顔には目はなく、ただ巨大な口だけが開いている。
その全身から放たれる威圧感は、神々の怒りそのものだった。
『……試練を乗り越えし定命の者どもよ』
タイタンが地響きのような声で言った。
『我が名はガイア・ポロス。この庭園を守る神々の番人。汝らの覚悟、その身を以て我に示してみせよ』
タイタンがゆっくりと立ち上がる。
天井に頭がつきそうなほどの巨躯。その拳は攻城兵器よりも巨大だ。
そして、これまで彼を包んでいた魔法結界が霧のように掻き消えていくのが見えた。
俺の全身が歓喜に打ち震えた。
スキル【闘神】がこれ以上ないほど活性化していく。
こいつはリッチ・ロードをも上回る、正真正銘の神話級。
「ガロウ!」
「おう!」
「リリアナ!」
「はい!」
俺たちは言葉を交わさずとも互いの役割を理解していた。
ガロウが不動の大盾を構え、タイタンの前に立ちはだかる。
リリアナが世界樹の杖を掲げ、雷の精霊を呼び出す詠唱を開始する。
そして俺は、その巨体を見上げ、ただ獰猛に笑った。
「ようやく会えたな、番人さんよ」
神々の墓場、第一階層。
その最終決戦の火蓋が今、切って落とされた。
俺たちの神々への挑戦が、ここから始まる。
ガロウの消耗は激しかったが、リリアナの治癒魔法と俺たちが持ち込んだ最高級のポーションによって、彼の傷は驚異的な速さで回復していった。
「……次はリリアナの番だな」
ガロウが、新調したばかりで早くも傷だらけになったウォーハンマーを肩に担ぎながら言った。
「ええ。『知恵の試練』。一体、どんな謎が待っているのか……」
リリアナは緊張した面持ちで世界樹の杖を握りしめる。
俺たちは再び三位一体となって、サイクロプスの闊歩する庭園を進んだ。
『力の試練』の場と同じように、俺の感覚がこの庭園の自然とは異質な魔力の流れを捉えた。
俺たちはその流れを辿って進んでいく。
やがて俺たちの目の前に現れたのは、巨大な滝だった。
天上の偽りの太陽の光を受けて水飛沫が虹色に輝いている。その壮大な光景は、神話の一場面を切り取ったかのようだった。
そして、その滝壺の中央。水面に浮かぶようにして、一つの巨大な蓮の花が咲いていた。
その花は水晶で作られているかのように透き通り、中心部から柔らかな青い光を放っている。
「……ここです」
リリアナが確信に満ちた声で言った。
「精霊たちが囁いています。あの水晶の蓮こそが、『知恵の試練』への入り口だと」
俺とガロウはリリアナの護衛に徹する。
彼女は一人静かに水辺へと近づき、その冷たい水に足を踏み入れた。
彼女が水晶の蓮に手を触れた、その瞬間。
青い光が彼女の体を優しく包み込んだ。
そして次の瞬間、リリアナの姿は俺たちの目の前から掻き消えるように消えていた。
「おい、リリアナ!?」
ガロウが慌てて声を上げる。
だが、俺は冷静だった。
「心配するな。試練の空間に転移しただけだ。彼女を信じて待つしかない」
俺たちは滝壺のほとりで、固唾を飲んでリリアナの帰りを待った。
どれくらいの時間が経っただろうか。
十分か、あるいは一時間か。時間の感覚がこの異質な空間では曖昧になっていた。
そして、突然。
水晶の蓮が再び眩い光を放った。
光が収まると、そこにはリリアナが立っていた。
その顔には深い疲労の色が浮かんでいたが、瞳の奥には確かな達成感と、そして以前よりもさらに深まった知性の輝きがあった。
『知恵の試練、達成を認める』
再び荘厳な声が響き渡る。
滝の裏側。これまで固い岩壁だった場所が音もなく開き、新たな道が現れた。
「……リリアナ、無事か」
「はい。少し頭を使いすぎただけです」
彼女はふわりと微笑んだ。
試練の内容を尋ねたが、彼女は首を振るだけだった。それは挑む者だけが知ることを許された神々の秘密なのだろう。
残る試練はあと一つ。『速さの試練』。
俺の出番だ。
滝の裏側に現れた洞窟を進むと、俺たちは風が吹き荒れる巨大な渓谷に出た。
谷底は見えず、対岸までは数百メートルはあろうかという断崖絶壁。
そして、その二つの崖の間にはか細い一本の鎖の橋だけが架かっていた。
橋の中央には石碑が立っている。
そこにはこう刻まれていた。
『神々の息吹を駆け抜け、瞬きよりも速く、その神速を示せ』
「……なるほどな」
俺は不敵に笑った。
この吹き荒れる暴風の中、この不安定な橋を、超人的な速さで渡りきれというわけか。
落ちれば奈落の底。風に煽られれば岩壁に叩きつけられる。
まさに速さと正確さを試す究極の試練。
俺はガロウとリリアナに言った。
「先に行って待っていてくれ。すぐに追いつく」
俺は一歩、鎖の橋へと足を踏み入れた。
凄まじい風圧が俺の体を襲う。立っていることすら困難だ。
だが、俺の心は凪いでいた。
風の流れを読む。空気の抵抗を最小限に抑える。
そして、闘気を足の裏に集中させ、鎖に吸い付くように重心を安定させる。
俺は息を吸った。
そして、吐いた。
次の瞬間、俺の姿はそこから消えていた。
俺は走ってはいなかった。
跳んでいた。
暴風のわずかな隙間を縫い、鎖の上をまるで飛び石のように一瞬で駆け抜けていく。
それはもはや人間の動きではなかった。
風そのものになったかのような神速の移動。
『速さの試-練、達成を認める』
俺が対岸にたどり着いたのと荘厳な声が響いたのは、ほぼ同時だった。
三つの試練は突破された。
俺たちが渓谷を抜けると、目の前にこの階層で最も巨大な神殿のような建造物がそびえ立っていた。
その神殿の扉は、ゆっくりと俺たちを招き入れるかのように開かれていく。
扉の先は広大な玉座の間だった。
そして、その玉座にそいつは座っていた。
エンシェント・タイタン。
この第一階層の番人。
その体はサイクロプスよりもさらに巨大で、山そのものが人の形を取ったかのようだった。全身は風化した岩石のような皮膚で覆われ、その顔には目はなく、ただ巨大な口だけが開いている。
その全身から放たれる威圧感は、神々の怒りそのものだった。
『……試練を乗り越えし定命の者どもよ』
タイタンが地響きのような声で言った。
『我が名はガイア・ポロス。この庭園を守る神々の番人。汝らの覚悟、その身を以て我に示してみせよ』
タイタンがゆっくりと立ち上がる。
天井に頭がつきそうなほどの巨躯。その拳は攻城兵器よりも巨大だ。
そして、これまで彼を包んでいた魔法結界が霧のように掻き消えていくのが見えた。
俺の全身が歓喜に打ち震えた。
スキル【闘神】がこれ以上ないほど活性化していく。
こいつはリッチ・ロードをも上回る、正真正銘の神話級。
「ガロウ!」
「おう!」
「リリアナ!」
「はい!」
俺たちは言葉を交わさずとも互いの役割を理解していた。
ガロウが不動の大盾を構え、タイタンの前に立ちはだかる。
リリアナが世界樹の杖を掲げ、雷の精霊を呼び出す詠唱を開始する。
そして俺は、その巨体を見上げ、ただ獰猛に笑った。
「ようやく会えたな、番人さんよ」
神々の墓場、第一階層。
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