死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

文字の大きさ
44 / 71

第四十三話 階層の番人、タイタン

しおりを挟む
『力の試練』を突破した俺たちは、再び広大な『巨人の庭』の探索を再開した。
ガロウの消耗は激しかったが、リリアナの治癒魔法と俺たちが持ち込んだ最高級のポーションによって、彼の傷は驚異的な速さで回復していった。

「……次はリリアナの番だな」
ガロウが、新調したばかりで早くも傷だらけになったウォーハンマーを肩に担ぎながら言った。
「ええ。『知恵の試練』。一体、どんな謎が待っているのか……」
リリアナは緊張した面持ちで世界樹の杖を握りしめる。

俺たちは再び三位一体となって、サイクロプスの闊歩する庭園を進んだ。
『力の試練』の場と同じように、俺の感覚がこの庭園の自然とは異質な魔力の流れを捉えた。
俺たちはその流れを辿って進んでいく。

やがて俺たちの目の前に現れたのは、巨大な滝だった。
天上の偽りの太陽の光を受けて水飛沫が虹色に輝いている。その壮大な光景は、神話の一場面を切り取ったかのようだった。
そして、その滝壺の中央。水面に浮かぶようにして、一つの巨大な蓮の花が咲いていた。
その花は水晶で作られているかのように透き通り、中心部から柔らかな青い光を放っている。

「……ここです」
リリアナが確信に満ちた声で言った。
「精霊たちが囁いています。あの水晶の蓮こそが、『知恵の試練』への入り口だと」

俺とガロウはリリアナの護衛に徹する。
彼女は一人静かに水辺へと近づき、その冷たい水に足を踏み入れた。
彼女が水晶の蓮に手を触れた、その瞬間。
青い光が彼女の体を優しく包み込んだ。
そして次の瞬間、リリアナの姿は俺たちの目の前から掻き消えるように消えていた。

「おい、リリアナ!?」
ガロウが慌てて声を上げる。
だが、俺は冷静だった。
「心配するな。試練の空間に転移しただけだ。彼女を信じて待つしかない」

俺たちは滝壺のほとりで、固唾を飲んでリリアナの帰りを待った。
どれくらいの時間が経っただろうか。
十分か、あるいは一時間か。時間の感覚がこの異質な空間では曖昧になっていた。

そして、突然。
水晶の蓮が再び眩い光を放った。
光が収まると、そこにはリリアナが立っていた。
その顔には深い疲労の色が浮かんでいたが、瞳の奥には確かな達成感と、そして以前よりもさらに深まった知性の輝きがあった。

『知恵の試練、達成を認める』
再び荘厳な声が響き渡る。
滝の裏側。これまで固い岩壁だった場所が音もなく開き、新たな道が現れた。

「……リリアナ、無事か」
「はい。少し頭を使いすぎただけです」
彼女はふわりと微笑んだ。
試練の内容を尋ねたが、彼女は首を振るだけだった。それは挑む者だけが知ることを許された神々の秘密なのだろう。

残る試練はあと一つ。『速さの試練』。
俺の出番だ。
滝の裏側に現れた洞窟を進むと、俺たちは風が吹き荒れる巨大な渓谷に出た。
谷底は見えず、対岸までは数百メートルはあろうかという断崖絶壁。
そして、その二つの崖の間にはか細い一本の鎖の橋だけが架かっていた。

橋の中央には石碑が立っている。
そこにはこう刻まれていた。
『神々の息吹を駆け抜け、瞬きよりも速く、その神速を示せ』

「……なるほどな」
俺は不敵に笑った。
この吹き荒れる暴風の中、この不安定な橋を、超人的な速さで渡りきれというわけか。
落ちれば奈落の底。風に煽られれば岩壁に叩きつけられる。
まさに速さと正確さを試す究極の試練。

俺はガロウとリリアナに言った。
「先に行って待っていてくれ。すぐに追いつく」

俺は一歩、鎖の橋へと足を踏み入れた。
凄まじい風圧が俺の体を襲う。立っていることすら困難だ。
だが、俺の心は凪いでいた。
風の流れを読む。空気の抵抗を最小限に抑える。
そして、闘気を足の裏に集中させ、鎖に吸い付くように重心を安定させる。

俺は息を吸った。
そして、吐いた。
次の瞬間、俺の姿はそこから消えていた。

俺は走ってはいなかった。
跳んでいた。
暴風のわずかな隙間を縫い、鎖の上をまるで飛び石のように一瞬で駆け抜けていく。
それはもはや人間の動きではなかった。
風そのものになったかのような神速の移動。

『速さの試-練、達成を認める』

俺が対岸にたどり着いたのと荘厳な声が響いたのは、ほぼ同時だった。

三つの試練は突破された。
俺たちが渓谷を抜けると、目の前にこの階層で最も巨大な神殿のような建造物がそびえ立っていた。
その神殿の扉は、ゆっくりと俺たちを招き入れるかのように開かれていく。

扉の先は広大な玉座の間だった。
そして、その玉座にそいつは座っていた。

エンシェント・タイタン。
この第一階層の番人。
その体はサイクロプスよりもさらに巨大で、山そのものが人の形を取ったかのようだった。全身は風化した岩石のような皮膚で覆われ、その顔には目はなく、ただ巨大な口だけが開いている。
その全身から放たれる威圧感は、神々の怒りそのものだった。

『……試練を乗り越えし定命の者どもよ』
タイタンが地響きのような声で言った。
『我が名はガイア・ポロス。この庭園を守る神々の番人。汝らの覚悟、その身を以て我に示してみせよ』

タイタンがゆっくりと立ち上がる。
天井に頭がつきそうなほどの巨躯。その拳は攻城兵器よりも巨大だ。
そして、これまで彼を包んでいた魔法結界が霧のように掻き消えていくのが見えた。

俺の全身が歓喜に打ち震えた。
スキル【闘神】がこれ以上ないほど活性化していく。
こいつはリッチ・ロードをも上回る、正真正銘の神話級。

「ガロウ!」
「おう!」
「リリアナ!」
「はい!」

俺たちは言葉を交わさずとも互いの役割を理解していた。
ガロウが不動の大盾を構え、タイタンの前に立ちはだかる。
リリアナが世界樹の杖を掲げ、雷の精霊を呼び出す詠唱を開始する。

そして俺は、その巨体を見上げ、ただ獰猛に笑った。
「ようやく会えたな、番人さんよ」

神々の墓場、第一階層。
その最終決戦の火蓋が今、切って落とされた。
俺たちの神々への挑戦が、ここから始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...