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第43話 優勝とご褒美の膝枕
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決勝戦の舞台は、異様なほどの熱気に包まれていた。
コロシアムの観客席はもはや立ち見客で溢れかえっている。誰もがこれから始まる頂上決戦の行方を見守ろうと、固唾を飲んでいた。
俺たちの対戦相手は、三年生の選抜チーム「チーム・タイタン」。
去年の優勝チームであり、今年も圧倒的な実力で勝ち上がってきた、学園最強の呼び声高い王者だ。
リーダーは次期騎士団長候補と噂される、エリオット・フォン・アークライト先輩。筋骨隆々とした体躯に巨大な戦斧を携えた、まさに「タイタン」の名にふさわしい猛者である。
彼をサポートするのは、広範囲の氷結魔法を得意とする女魔術師と、相手の動きを的確に封じる罠を仕掛けるレンジャー。隙のない完璧な布陣だった。
「いよいよ、最後だな」
試合開始直前、俺は隣に立つ二人に声をかけた。
「ええ。相手にとって不足はなし、ですわね」
クラリスは不敵な笑みを浮かべている。その瞳には強者と戦えることへの喜びが燃え盛っていた。
「ユウキ、クラリス。最後まで力を合わせて頑張りましょう」
ルナは静かに、しかし力強く言った。その顔には一切の迷いがない。
俺たちは互いの顔を見合わせ、小さく、しかし強く頷き合った。
「決勝戦、始め!」
審判の合図と共に空気が震えた。
動いたのはエリオット先輩だった。
彼は雄叫びを上げると、一直線にこちらへと突進してきた。その速度はこれまでのどの対戦相手よりも速く、そして重い。
「させませんわ!」
クラリスが牽制のために無数の火球を放つ。
だが、エリオット先輩はそれを巨大な戦斧の一振りで全て薙ぎ払ってしまった。
「そんな豆鉄砲が俺に通用するか!」
その圧倒的なパワーにクラリスが怯んだ、その一瞬。
エリオット先輩の背後から無数の氷の矢が飛来し、俺たちを囲むように地面に突き刺さった。女魔術師の魔法だ。
「【アイシクル・プリズン】!」
氷の矢は瞬時に巨大な氷の壁へと成長し、俺たち三人を完全に閉じ込めてしまった。
それと同時に、レンジャーが仕掛けていた罠が発動し、俺たちの足元から魔力を吸い取る光の陣が出現する。
「なっ…!?」
「しまった、連携か!」
攻撃、妨害、そして足止め。三位一体の完璧な奇襲攻撃だった。
「終わりだ!」
氷の牢獄の中で、エリオット先輩が戦斧を天に掲げる。
その刃に凄まじい魔力が収束していく。
あれは彼の必殺技。岩山さえも両断するという一撃必殺の【ガイア・クラッシャー】。
こんな狭い空間で放たれたら逃げ場はない。ルナの防御結界ごと、俺たちは叩き潰されるだろう。
絶体絶命。
誰もがそう思った、その時だった。
俺は静かに、そして素早く二人に指示を出した。
「クラリス! 俺の真後ろに! ルナ! 全魔力を防御に集中してくれ!」
二人は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに俺の意図を察し寸分の狂いもなく動いた。
俺は防御結界を展開するルナの前に立つと、両手を迫りくるエリオット先輩へと向けた。
俺の体にありったけの聖なる力が集まってくる。
「【ガイア・クラッシャー】!」
エリオット先輩の戦斧が振り下ろされた。
凄まじい衝撃波が氷の牢獄を揺るがす。
だが、その刃がルナの結界に届くことはなかった。
なぜなら、その直撃コースの経路上に、黄金色のあまりにも濃密な光の壁が出現していたからだ。
それは俺が放った純粋な回復魔力の塊。
傷や病を癒やす聖なる力。
その力は本来、何かを破壊することなどできない。
だが、その力が常軌を逸した密度で一点に集中した時、それはこの世のどんな攻撃をも受け止め、霧散させる最強の「盾」と化すのだ。
轟音と共に、エリオTット先輩の必殺技が俺の光の壁に激突する。
破壊の力と治癒の力。
相反する二つの力がぶつかり合い、空間が歪むほどのエネルギーを生み出す。
コロシアム全体が激しく揺れた。
やがて光と衝撃が収まった時、そこには信じられない光景が広がっていた。
エリオット先輩の戦斧は、その刃が半ばから砕け散り、彼は膝をついて呆然と自分の得物を見つめている。
そして俺たちは傷一つなく、その場に立っていた。
「…嘘だろ…」
誰かがそう呟いた。
王者の絶対的な一撃が、戦闘能力皆無のはずのヒーラーによって完璧に防がれたのだ。
勝機は今しかない。
俺は背後にいたクラリスに叫んだ。
「今だ、クラリス! やれ!」
「ええ!」
クラリスは俺の背後から飛び出すと、ありったけの魔力を込めた最大火力の炎をエリオット先輩へと叩き込んだ。
「喰らいなさい! 【フレア・ストーム】!」
灼熱の嵐がエリオット先輩を飲み込む。
勝負は決した。
「しょ、勝者! チーム・セラフィム! 優勝!」
審判の震える声での宣言。
一瞬の静寂の後、コロシアムはこの日一番の割れんばかりの大歓声に包まれた。
俺たちは学園最強の座を手に入れたのだ。
◇
表彰式が終わり控室に戻った俺たちは、三日間の戦いの疲労と優勝した達成感でぐったりと椅子に座り込んでいた。
「やったな、俺たち」
俺がそう言うと、クラリスとルナが顔を見合わせて微笑んだ。
「ええ。最高の気分ですわ」
「全て、ユウキとクラリスのおかげですわね」
そんな、お互いをねぎらい合う温かい時間が流れる。
その時、ふとルナが俺の隣にやってきた。
そして少しだけ恥ずかしそうに、自分の膝をぽんぽんと軽く叩いた。
「…?」
俺が不思議そうな顔で彼女を見ると、彼女は頬を染めながら小さな声で言った。
「お疲れ様でした、ユウキ。…ご褒美、です」
ご褒美。膝枕。
その二つの単語が俺の頭の中で結びついた瞬間、俺の顔はカッと熱くなった。
周りにはまだ他の生徒たちもいる。
そんな場所で膝枕なんて。
だが、彼女の瞳は真剣だった。
今日の最大の功労者である俺をどうしても労いたい。その純粋な気持ちがひしひしと伝わってくる。
その健気な申し出を、俺には断ることなどできなかった。
俺は覚悟を決めた。
そして、おずおずと彼女の膝に自分の頭を乗せた。
ふわり、と。
信じられないほどの柔らかさと温かさ。
そして彼女の甘い花の香りが俺の鼻腔をくすぐる。
それはどんな高級な枕よりも、比較にならないほど心地よい感触だった。
ルナは少しだけ緊張した手つきで、俺の髪を優しくそっと撫で始めた。
その指の感触があまりにも気持ちよくて、俺の意識はゆっくりと蕩けていく。
三日間の疲労が嘘のように溶けていくのを感じた。
その光景を控室にいた他の生徒たちが固唾を飲んで見守っていた。
クラリスはまたしてもハンカチで口元を押さえ、感動に打ち震えている。
他の男子生徒たちは嫉妬を通り越して、もはや拝むような目つきでこちらを見ていた。
俺はもう、周りのことなどどうでもよくなっていた。
ただこの天国のような心地よさに身を委ねていた。
ルナの膝の上で、俺はいつの間にか穏やかな寝息を立て始めていた。
その寝顔はきっと、子供のように無防備で安心しきっていたに違いない。
優勝の喜びと最高の「ご褒美」。
俺の学園生活は、また一つ忘れられない甘い思い出で彩られたのだった。
コロシアムの観客席はもはや立ち見客で溢れかえっている。誰もがこれから始まる頂上決戦の行方を見守ろうと、固唾を飲んでいた。
俺たちの対戦相手は、三年生の選抜チーム「チーム・タイタン」。
去年の優勝チームであり、今年も圧倒的な実力で勝ち上がってきた、学園最強の呼び声高い王者だ。
リーダーは次期騎士団長候補と噂される、エリオット・フォン・アークライト先輩。筋骨隆々とした体躯に巨大な戦斧を携えた、まさに「タイタン」の名にふさわしい猛者である。
彼をサポートするのは、広範囲の氷結魔法を得意とする女魔術師と、相手の動きを的確に封じる罠を仕掛けるレンジャー。隙のない完璧な布陣だった。
「いよいよ、最後だな」
試合開始直前、俺は隣に立つ二人に声をかけた。
「ええ。相手にとって不足はなし、ですわね」
クラリスは不敵な笑みを浮かべている。その瞳には強者と戦えることへの喜びが燃え盛っていた。
「ユウキ、クラリス。最後まで力を合わせて頑張りましょう」
ルナは静かに、しかし力強く言った。その顔には一切の迷いがない。
俺たちは互いの顔を見合わせ、小さく、しかし強く頷き合った。
「決勝戦、始め!」
審判の合図と共に空気が震えた。
動いたのはエリオット先輩だった。
彼は雄叫びを上げると、一直線にこちらへと突進してきた。その速度はこれまでのどの対戦相手よりも速く、そして重い。
「させませんわ!」
クラリスが牽制のために無数の火球を放つ。
だが、エリオット先輩はそれを巨大な戦斧の一振りで全て薙ぎ払ってしまった。
「そんな豆鉄砲が俺に通用するか!」
その圧倒的なパワーにクラリスが怯んだ、その一瞬。
エリオット先輩の背後から無数の氷の矢が飛来し、俺たちを囲むように地面に突き刺さった。女魔術師の魔法だ。
「【アイシクル・プリズン】!」
氷の矢は瞬時に巨大な氷の壁へと成長し、俺たち三人を完全に閉じ込めてしまった。
それと同時に、レンジャーが仕掛けていた罠が発動し、俺たちの足元から魔力を吸い取る光の陣が出現する。
「なっ…!?」
「しまった、連携か!」
攻撃、妨害、そして足止め。三位一体の完璧な奇襲攻撃だった。
「終わりだ!」
氷の牢獄の中で、エリオット先輩が戦斧を天に掲げる。
その刃に凄まじい魔力が収束していく。
あれは彼の必殺技。岩山さえも両断するという一撃必殺の【ガイア・クラッシャー】。
こんな狭い空間で放たれたら逃げ場はない。ルナの防御結界ごと、俺たちは叩き潰されるだろう。
絶体絶命。
誰もがそう思った、その時だった。
俺は静かに、そして素早く二人に指示を出した。
「クラリス! 俺の真後ろに! ルナ! 全魔力を防御に集中してくれ!」
二人は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに俺の意図を察し寸分の狂いもなく動いた。
俺は防御結界を展開するルナの前に立つと、両手を迫りくるエリオット先輩へと向けた。
俺の体にありったけの聖なる力が集まってくる。
「【ガイア・クラッシャー】!」
エリオット先輩の戦斧が振り下ろされた。
凄まじい衝撃波が氷の牢獄を揺るがす。
だが、その刃がルナの結界に届くことはなかった。
なぜなら、その直撃コースの経路上に、黄金色のあまりにも濃密な光の壁が出現していたからだ。
それは俺が放った純粋な回復魔力の塊。
傷や病を癒やす聖なる力。
その力は本来、何かを破壊することなどできない。
だが、その力が常軌を逸した密度で一点に集中した時、それはこの世のどんな攻撃をも受け止め、霧散させる最強の「盾」と化すのだ。
轟音と共に、エリオTット先輩の必殺技が俺の光の壁に激突する。
破壊の力と治癒の力。
相反する二つの力がぶつかり合い、空間が歪むほどのエネルギーを生み出す。
コロシアム全体が激しく揺れた。
やがて光と衝撃が収まった時、そこには信じられない光景が広がっていた。
エリオット先輩の戦斧は、その刃が半ばから砕け散り、彼は膝をついて呆然と自分の得物を見つめている。
そして俺たちは傷一つなく、その場に立っていた。
「…嘘だろ…」
誰かがそう呟いた。
王者の絶対的な一撃が、戦闘能力皆無のはずのヒーラーによって完璧に防がれたのだ。
勝機は今しかない。
俺は背後にいたクラリスに叫んだ。
「今だ、クラリス! やれ!」
「ええ!」
クラリスは俺の背後から飛び出すと、ありったけの魔力を込めた最大火力の炎をエリオット先輩へと叩き込んだ。
「喰らいなさい! 【フレア・ストーム】!」
灼熱の嵐がエリオット先輩を飲み込む。
勝負は決した。
「しょ、勝者! チーム・セラフィム! 優勝!」
審判の震える声での宣言。
一瞬の静寂の後、コロシアムはこの日一番の割れんばかりの大歓声に包まれた。
俺たちは学園最強の座を手に入れたのだ。
◇
表彰式が終わり控室に戻った俺たちは、三日間の戦いの疲労と優勝した達成感でぐったりと椅子に座り込んでいた。
「やったな、俺たち」
俺がそう言うと、クラリスとルナが顔を見合わせて微笑んだ。
「ええ。最高の気分ですわ」
「全て、ユウキとクラリスのおかげですわね」
そんな、お互いをねぎらい合う温かい時間が流れる。
その時、ふとルナが俺の隣にやってきた。
そして少しだけ恥ずかしそうに、自分の膝をぽんぽんと軽く叩いた。
「…?」
俺が不思議そうな顔で彼女を見ると、彼女は頬を染めながら小さな声で言った。
「お疲れ様でした、ユウキ。…ご褒美、です」
ご褒美。膝枕。
その二つの単語が俺の頭の中で結びついた瞬間、俺の顔はカッと熱くなった。
周りにはまだ他の生徒たちもいる。
そんな場所で膝枕なんて。
だが、彼女の瞳は真剣だった。
今日の最大の功労者である俺をどうしても労いたい。その純粋な気持ちがひしひしと伝わってくる。
その健気な申し出を、俺には断ることなどできなかった。
俺は覚悟を決めた。
そして、おずおずと彼女の膝に自分の頭を乗せた。
ふわり、と。
信じられないほどの柔らかさと温かさ。
そして彼女の甘い花の香りが俺の鼻腔をくすぐる。
それはどんな高級な枕よりも、比較にならないほど心地よい感触だった。
ルナは少しだけ緊張した手つきで、俺の髪を優しくそっと撫で始めた。
その指の感触があまりにも気持ちよくて、俺の意識はゆっくりと蕩けていく。
三日間の疲労が嘘のように溶けていくのを感じた。
その光景を控室にいた他の生徒たちが固唾を飲んで見守っていた。
クラリスはまたしてもハンカチで口元を押さえ、感動に打ち震えている。
他の男子生徒たちは嫉妬を通り越して、もはや拝むような目つきでこちらを見ていた。
俺はもう、周りのことなどどうでもよくなっていた。
ただこの天国のような心地よさに身を委ねていた。
ルナの膝の上で、俺はいつの間にか穏やかな寝息を立て始めていた。
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