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第87話 父と歩むバージンロード
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王都大聖堂は荘厳な静寂に包まれていた。
天井の高いドームには美しいステンドグラスが嵌め込まれ、そこから差し込む光は床の大理石に七色の幻想的な模様を描き出している。
祭壇の前には純白の祭服を身に纏った大司教が静かにその時を待っていた。
参列席は、この国と近隣諸国の全ての要人たちで埋め尽くされている。
その最前列の中央には、国王アルベイン陛下が穏やかな笑みを浮かべて座っていた。
俺は、その祭壇の前で一人、固唾を飲んで立っていた。
背筋は緊張で鋼のように硬直している。
だが、俺の心は不思議なほど穏やかだった。
先ほど、彼女の女神のような姿を見てから。
俺の心の中の全ての雑念は消え去っていた。
俺の全ての意識は、ただ一点。
これからこの場所に現れるであろう、たった一人の愛する女性にだけ注がれていた。
やがてパイプオルガンが、厳かでしかしどこまでも美しい婚礼の曲を奏で始めた。
会場中の全ての視線が、大聖堂の後方に立つ巨大な扉へと一斉に注がれる。
俺もまた、そちらをじっと見つめた。
ギィィ、と。
重厚な音を立てて、その巨大な扉がゆっくりと内側へと開かれていく。
扉の向こうから、眩いばかりの光が差し込んできた。
そして、その光の中に二つの人影が浮かび上がった。
一人は、アルフォンス公爵。
彼は父親としての最も格式の高い深紅の礼服に身を包んでいた。
その顔は涙で濡れていたが、その瞳には娘を送り出す父親としての誇りと、そして深い愛情が満ち溢れていた。
そして、その父親の腕にそっとエスコートされるように寄り添う、もう一人の人影。
純白の天使の羽衣を纏った、俺の花嫁。
ルナだった。
彼女は顔に繊細なレースのベールを下ろし、その表情を窺い知ることはできない。
だが、その凛とした佇まいだけで。
彼女が今どれほどの決意と、そして幸福感を胸に抱いているかが痛いほど伝わってきた。
二人はゆっくりと、一歩また一歩と深紅のバージンロードを俺が待つ祭壇へと進んでくる。
その歩みはあまりにも優雅で、そして神々しかった。
参列者たちは皆、息を呑んでそのあまりにも美しい光景に見入っている。
誰もが、この歴史的な瞬間の証人となれたことを心から感謝しているかのようだった。
俺は、ただ真っ直ぐに彼女だけを見つめていた。
彼女が一歩近づくたびに。
俺の心臓は大きく、そして力強く脈打った。
長い長いバージンロード。
その道のりは、まるで彼女が生まれてから今日この日までの人生そのものを表しているかのようだった。
光を知らなかった孤独な少女時代。
そして俺と出会い、初めて色鮮やかな世界を知ったあの日。
共に笑い、時には涙した学園での甘い日々。
その全ての時間が、今、この一歩一歩に凝縮されている。
やがて二人は、俺が待つ祭壇の目の前まで辿り着いた。
アルフォンス公爵はそこでぴたりと足を止めた。
そして、俺の目を真っ直ぐに見つめてきた。
その瞳には昨夜、俺に全てを託した父親としての確かな信頼の光が宿っていた。
彼は何も言わなかった。
ただ静かに、ルナの小さな手を自分の腕からそっと解いた。
そしてその手を、俺の差し伸べられた手へとゆっくりと重ねた。
その手が重なった瞬間。
父親から未来の夫へ。
かけがえのない宝物が確かに受け継がれた。
そのあまりにも重く、そしてあまりにも温かい感触。
俺は、その手を決して離さないと心に誓い、力強く握りしめた。
アルフォンス公爵は俺に一度だけ力強く頷き返した。
「…頼んだぞ、息子よ」
そう囁くのが聞こえた。
そして彼は静かに一歩下がり、自分の席へと戻っていった。
その大きな背中は、少しだけ寂しそうに震えているように見えた。
今、俺の隣には彼女がいる。
ベールの向こう側で彼女が俺を見上げているのが分かった。
その瞳が幸せの涙で潤んでいるのが痛いほど伝わってきた。
俺たちは二人でゆっくりと祭壇の前に進み出た。
そして大司教の厳かな声が、大聖堂に響き渡る。
「これより、神とここに集いし全ての証人の前において、ユキ・アスカワとルナリア・フォン・シルフィードの婚姻の儀を執り行う」
俺たちの永遠を誓う物語が、今まさにそのクライマックスを迎えようとしていた。
俺は隣に立つ愛しい花嫁の小さな手を、もう一度強く、強く握りしめた。
その温もりだけが、俺の世界の全てだった。
天井の高いドームには美しいステンドグラスが嵌め込まれ、そこから差し込む光は床の大理石に七色の幻想的な模様を描き出している。
祭壇の前には純白の祭服を身に纏った大司教が静かにその時を待っていた。
参列席は、この国と近隣諸国の全ての要人たちで埋め尽くされている。
その最前列の中央には、国王アルベイン陛下が穏やかな笑みを浮かべて座っていた。
俺は、その祭壇の前で一人、固唾を飲んで立っていた。
背筋は緊張で鋼のように硬直している。
だが、俺の心は不思議なほど穏やかだった。
先ほど、彼女の女神のような姿を見てから。
俺の心の中の全ての雑念は消え去っていた。
俺の全ての意識は、ただ一点。
これからこの場所に現れるであろう、たった一人の愛する女性にだけ注がれていた。
やがてパイプオルガンが、厳かでしかしどこまでも美しい婚礼の曲を奏で始めた。
会場中の全ての視線が、大聖堂の後方に立つ巨大な扉へと一斉に注がれる。
俺もまた、そちらをじっと見つめた。
ギィィ、と。
重厚な音を立てて、その巨大な扉がゆっくりと内側へと開かれていく。
扉の向こうから、眩いばかりの光が差し込んできた。
そして、その光の中に二つの人影が浮かび上がった。
一人は、アルフォンス公爵。
彼は父親としての最も格式の高い深紅の礼服に身を包んでいた。
その顔は涙で濡れていたが、その瞳には娘を送り出す父親としての誇りと、そして深い愛情が満ち溢れていた。
そして、その父親の腕にそっとエスコートされるように寄り添う、もう一人の人影。
純白の天使の羽衣を纏った、俺の花嫁。
ルナだった。
彼女は顔に繊細なレースのベールを下ろし、その表情を窺い知ることはできない。
だが、その凛とした佇まいだけで。
彼女が今どれほどの決意と、そして幸福感を胸に抱いているかが痛いほど伝わってきた。
二人はゆっくりと、一歩また一歩と深紅のバージンロードを俺が待つ祭壇へと進んでくる。
その歩みはあまりにも優雅で、そして神々しかった。
参列者たちは皆、息を呑んでそのあまりにも美しい光景に見入っている。
誰もが、この歴史的な瞬間の証人となれたことを心から感謝しているかのようだった。
俺は、ただ真っ直ぐに彼女だけを見つめていた。
彼女が一歩近づくたびに。
俺の心臓は大きく、そして力強く脈打った。
長い長いバージンロード。
その道のりは、まるで彼女が生まれてから今日この日までの人生そのものを表しているかのようだった。
光を知らなかった孤独な少女時代。
そして俺と出会い、初めて色鮮やかな世界を知ったあの日。
共に笑い、時には涙した学園での甘い日々。
その全ての時間が、今、この一歩一歩に凝縮されている。
やがて二人は、俺が待つ祭壇の目の前まで辿り着いた。
アルフォンス公爵はそこでぴたりと足を止めた。
そして、俺の目を真っ直ぐに見つめてきた。
その瞳には昨夜、俺に全てを託した父親としての確かな信頼の光が宿っていた。
彼は何も言わなかった。
ただ静かに、ルナの小さな手を自分の腕からそっと解いた。
そしてその手を、俺の差し伸べられた手へとゆっくりと重ねた。
その手が重なった瞬間。
父親から未来の夫へ。
かけがえのない宝物が確かに受け継がれた。
そのあまりにも重く、そしてあまりにも温かい感触。
俺は、その手を決して離さないと心に誓い、力強く握りしめた。
アルフォンス公爵は俺に一度だけ力強く頷き返した。
「…頼んだぞ、息子よ」
そう囁くのが聞こえた。
そして彼は静かに一歩下がり、自分の席へと戻っていった。
その大きな背中は、少しだけ寂しそうに震えているように見えた。
今、俺の隣には彼女がいる。
ベールの向こう側で彼女が俺を見上げているのが分かった。
その瞳が幸せの涙で潤んでいるのが痛いほど伝わってきた。
俺たちは二人でゆっくりと祭壇の前に進み出た。
そして大司教の厳かな声が、大聖堂に響き渡る。
「これより、神とここに集いし全ての証人の前において、ユキ・アスカワとルナリア・フォン・シルフィードの婚姻の儀を執り行う」
俺たちの永遠を誓う物語が、今まさにそのクライマックスを迎えようとしていた。
俺は隣に立つ愛しい花嫁の小さな手を、もう一度強く、強く握りしめた。
その温もりだけが、俺の世界の全てだった。
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