曲がり角でぶつかった少女に回復魔法を使ったら不治の病と盲目なのを治してしまってめちゃくちゃ懐かれてた

夏見ナイ

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第89話 祝福の口付け

ベールがゆっくりと持ち上げられていく。
その薄いレースの向こう側から現れたのは、俺が世界で一番愛する人の顔だった。

息を呑んだ。
彼女は、そのあまりにも美しい空色の瞳を幸せの涙でいっぱいに潤ませていた。
その頬はほんのりと上気している。
そして、その桜色の唇は喜びと少しばかりの緊張で微かに震えていた。
そのあまりにも神々しく、そしてあまりにも愛おしい表情。
俺は、永遠にこの瞬間が続けばいいと心からそう思った。

大司教の穏やかな声が静寂を破った。
「新郎よ、汝の妻に誓いの口付けを」

その言葉に、会場中の全ての視線が再び俺たち二人に注がれる。
俺は少しだけ、ごくりと喉を鳴らした。
そして彼女の華奢な肩にそっと両手を置いた。
彼女もまた、俺の腕にその小さな手を優しく添えてきた。

俺はゆっくりと顔を近づけていった。
彼女もまたそれに応えるように、そっとその長い睫毛を伏せた。
至近距離で見る彼女の顔。
その完璧な造形。
透き通るように白い肌。
そして、これから俺のものになる、その柔らかな唇。

世界中の全ての音が消え去った。
聞こえるのは、お互いの早鐘のように高鳴る鼓動の音だけ。

そして、俺たちの唇はゆっくりと、そしてごく自然に重なり合った。

それは初めての口付けだった。
これまでの頬への可愛らしいキスや、パーティーでの情熱的なキスとは全く違う。
どこまでも優しく、どこまでも神聖で、そしてどこまでも甘い、誓いの口付け。

その信じられないほど柔らかな感触。
彼女の甘い香り。
その全てが俺の全身を駆け巡っていく。
俺たちの魂がこの瞬間、完全に一つに溶け合っていくのが分かった。

長い、長い一瞬。
永遠にも感じられたその時間が過ぎていく。
俺たちがゆっくりと唇を離した、その瞬間だった。

ぱああっ、と。
大聖聖堂の高い天井から、眩いばかりの黄金色の光がまるでシャワーのように俺たち二人の上に降り注いできたのだ。

「おお…!」
参列者たちからどよめきが起こる。
それはただの光ではなかった。
温かく、優しく、そしてどこまでも神聖な祝福の光。
俺の【聖なる癒やしの手】の光とよく似ていた。
だが、それは俺が放ったものではない。
まるで天に坐す神が、俺たち二人の結婚を心から祝福し、その奇跡の力を顕現させたかのようだった。

光は俺たち二人を優しく包み込んだ。
その光の中で、俺たちはもう一度どちらからともなく見つめ合った。
そして、ふわりと最高の笑顔で微笑み合った。
もう言葉は必要なかった。
俺たちは今この瞬間、名実ともに夫婦になったのだ。

やがて光がゆっくりと収まっていく。
その奇跡的な光景の余韻の中で。
大司教が感動に震える声で高らかに宣言した。
「ここに、ユキ・アスカワ、ルナリア・アスカワ、二人の新たなる門出を祝福する! 皆の者、盛大な拍手を!」

その言葉を皮切りに。
しんと静まり返っていた大聖堂は、割れんばかりの爆発的な拍手と歓声に包まれた。
わあああああああ!
おめでとう!
万歳!
その祝福の嵐の中で。
俺は、隣に立つ俺の妻となった愛しい女性の手を強く、強く握りしめた。
彼女もまた、涙で濡れた最高の笑顔で俺の手を握り返してきた。

俺たちの人生で最も輝かしい一日。
そのクライマックスは、神さえも祝福する奇跡的な光の中で完璧な形で幕を閉じた。
いや、違う。
これは終わりではない。
これから始まるのだ。
俺とルナの、夫婦としての永遠に続く甘い物語が。
俺は鳴り止まない祝福の拍手の中で、隣に立つ俺の妻のそのあまりにも美しい横顔を、目に焼き付けるようにじっと見つめていた。
この幸せを絶対に手放さない。
そう心に固く、固く誓いながら。
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