クラスごと異世界転移したら、俺だけジョブが『魔王』だったんだが? ~虐めてきた勇者(笑)ども、今からお前らを支配してやろうか~

夏見ナイ

文字の大きさ
6 / 100

第6話 最初の眷属

しおりを挟む
玉座に座ったまま、俺は目の前に浮かぶステータスウィンドウを眺めていた。桁外れの能力値と、規格外のスキル。これが今の俺の全てだ。復讐を果たすための、唯一にして最強の武器。

城に灯った紫色の炎が、静かに揺らめいている。広すぎる玉座の間には、相変わらず俺一人。だが、もう孤独は感じなかった。むしろ、この静寂が心地よい。誰の目も、誰の声も、ここには届かない。俺だけの聖域。俺だけの城だ。

「……まずは、試してみるか」

俺は呟き、ユニークスキル【万魔の支配者】に意識を集中した。すると、ウィンドウの詳細項目が展開される。

【魔物創造】
【絶対服従】
【支配領域】
【スキル吸収】

ずらりと並んだ項目の中から、俺は迷わず【魔物創造】を選択した。復讐には軍隊が必要だ。俺の命令一つで、死をも恐れず敵に襲いかかる駒が。

『創造する魔物のイメージを思い描いてください』

頭の中に、機械的な音声が響く。イメージ、か。ならば、まずは最も基本的なものからだ。ゲームや小説ではお馴染みの、最弱モンスター。

俺は、ゼリー状の不定形生物を思い浮かべた。

『魔物名:スライム。創造に必要なMP:10。創造しますか?』

MP10。俺の最大MPは10000。まさに雀の涙ほどのコストだ。

「創造する」

俺がそう命じると、玉座の前の空間が淡く光った。俺の体から魔力が僅かに吸い取られる感覚。光の中に、魔素と呼ばれる粒子が集まっていくのが見えた。粒子は結合し、形を変え、やがてプルンとした水色の塊となって床に落ちた。

直径30センチほどの、半透明のゲル状生物。紛れもなく、スライムだ。
生まれたばかりのスライムは、しばらくその場で震えていたが、やがて俺の存在に気づくと、ゆっくりとこちらに近づいてきた。そして、俺の足元まで来ると、体をぺたりと床につけ、まるで平伏するかのように動きを止めた。

これが、絶対服従。
俺が命令するまでもなく、このスライムは俺が絶対的な主であることを理解している。

俺は玉座から立ち上がり、スライムの前に屈み込んだ。指先で、そのひんやりとした体にそっと触れてみる。スライムは心地よさそうに、僅かに身じろぎした。

こいつは、俺を裏切らない。
俺を侮蔑しない。
俺を見捨てない。

ただ、俺のために存在する。

胸の奥から、じんわりと温かいものが込み上げてくるのを感じた。それは、俺が生まれてから今まで、一度も感じたことのない感情だった。誰かに絶対的に肯定されるという感覚。必要とされるという感覚。

「……お前が、俺の最初の眷属だ」

俺の言葉に、スライムが嬉しそうにプルプルと震えた。

満たされる。心が、乾いた大地が水を吸い込むように、満たされていく。
そうだ、俺は王なのだ。魔王なのだ。ならば、傅く者がいて当然。忠誠を捧げる者がいて当然なのだ。

だが、スライム一体では何も始まらない。偵察くらいには使えるかもしれないが、戦力としては心許ない。俺は再び【魔物創造】のスキルを発動させた。

次にイメージしたのは、より兵士らしい魔物。緑色の肌、尖った耳、そして錆びた剣を握る、小柄な人型の魔物。

『魔物名:ゴブリン。創造に必要なMP:50。創造しますか?』

スライムの5倍のコスト。だが、それでも今の俺にとっては些細な消費だ。

「10体、創造する」
『ゴブリン10体を創造します。消費MP:500』

先ほどよりも強い光が、玉座の間に満ちる。俺の体から、ごっそりと魔力が抜けていくのが分かった。光が収まると、そこには10体のゴブリンが立っていた。身長は1メートルほど。筋張った体に、みすぼらしい腰布を巻いている。その手には、スキルが自動で生成したのか、粗末な棍棒や錆びた短剣が握られていた。

彼らは一様に、狡猾で残忍そうな顔つきをしている。だが、その目に俺の姿を捉えた瞬間、表情が一変した。恐怖と、そしてそれ以上に強い畏怖と敬愛。

ゴブリンたちは、誰に命じられるでもなく、一斉にその場に膝をついた。そして、深く頭を垂れる。

「……」

俺は何も言わず、彼らを見下ろした。玉座に戻り、再び深く腰掛ける。
この光景だ。俺が心のどこかで、ずっと求めていた光景。
俺の前に、傅く者たちがいる。俺の言葉を、ただ待っている。

「顔を上げろ」

低い声で命じると、ゴブリンたちは一斉に顔を上げた。その目は、忠実な犬のように真っ直ぐに俺を見つめていた。

「お前たちは、今日から俺の兵士だ。俺の手足となり、俺の敵を滅ぼすための、最初の剣となる」

グルル、とゴブリンたちが喉を鳴らす。それは同意の証か、あるいは戦意の発露か。

「我が名はレオン。お前たちの王だ。この名を心に刻め」

影山蓮という名前は捨てた。この世界で、俺は魔王レオンとして生きる。
ゴブリンたちは、俺の言葉を理解したようだった。彼らは再び頭を下げ、ある者は胸に拳を当て、忠誠のポーズを示した。

俺は満足して頷いた。
スライムが一体、ゴブリンが十体。これが、俺の魔王軍の始まり。今はまだ、吹けば飛ぶようなちっぽけな戦力だ。だが、これからだ。これからいくらでも増やせる。

俺はステータス画面を再び開き、【支配領域】の項目を選択した。すると、魔王城の立体的なマップが表示される。まだほとんどの区画が黒く塗りつぶされているが、玉座の間を中心とした一部の機能は使えるようだった。

『支配領域内の魔物は、主の魔力を受けて緩やかに成長します』
『支配領域内に罠を設置できます』
『支配領域内の環境を改変できます』

便利な機能だ。まるで、自分だけの箱庭を作るような感覚。
まずは、この城の安全を確保し、軍備を整えるのが先決だろう。

俺は、ゴブリンたちの中から、一際体格の良い個体を指差した。

「お前。お前をこの部隊のリーダーとする。仲間を率いて、この城の1階を探索しろ。何か見つけたら、すぐに俺に報告するんだ。いいな」

指名されたゴブリンは、驚いたように目を見開いた後、歓喜に体を震わせた。そして、他のゴブリンたちに向かって、ギャアギャアと何かを叫ぶ。おそらく、俺の命令を伝えているのだろう。

リーダーのゴブリンが俺に向かって深々と一礼すると、他の9体を引き連れて玉座の間から出ていった。その足音は統率が取れているとは言いがたいが、確かな目的を持って動いている。俺の、最初の兵士たち。

玉座の間に残ったのは、俺と、足元にいるスライムだけになった。
俺はそいつを手のひらに乗せてみた。ひんやりとして、心地よい重み。

こいつらは、俺が創った生命だ。俺だけの、忠実な眷属。
赤城。高坂。鈴木。白石。
そして、俺を笑ったクラスの全員。

待っていろ。
お前たちが、手に入れた力に浮かれている間に、俺は本当の軍隊を創り上げる。
お前たちが、偽りの正義を振りかざして英雄ごっこをしている間に、俺は本当の王となる。

そして、お前たちの前に再び姿を現す時。
その時は、お前たちが俺の前に膝をつく番だ。

俺は手のひらのスライムをそっと撫でた。
復讐の炎が、より一層、静かに、そして激しく燃え盛るのを感じていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...