お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ

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第79話:帝国騎士団、出陣

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夜が明け、帝都エルミリアは荘厳な朝を迎えた。
しかし、その空気はいつもの穏やかなものではなく、出陣前の静かな、しかし熱を帯びた緊張感に満ちていた。
皇城の正門前広場には、帝国が誇る精鋭騎士団五千が、一糸乱れぬ隊列を組んで集結していた。磨き上げられた鎧が朝陽を反射し、無数の鋼鉄の光がきらめいている。掲げられた帝国の軍旗が風を受けて誇らしげにはためいていた。

やがて城門がゆっくりと開かれ、二つの人影が姿を現した。
先頭に立つのは、黒銀の鎧に身を包み、愛馬に跨るアシュレイ。その姿はまさしく戦の神そのものだった。
そして、その半歩後ろに純白の軽鎧をまとい、白い軍馬に乗ったリリアーナが続いていた。彼女の表情には緊張の色はあったが、恐怖はなかった。ただ、隣に立つアシュレイを信じ、共に戦うという揺るぎない決意だけが、そのヘーゼル色の瞳に宿っていた。

騎士たちの間にどよめきが走った。
聖女様が、我々と共にご出陣なさるのか。
その事実は彼らに驚きと、そして何よりも大きな勇気を与えた。
我々は神の祝福と共にある。この戦は必ずや勝利に終わるのだと。

アシュレイは集結した騎士団を見渡し、その愛剣『氷皇』を抜き放った。
「聞け、帝国の勇者たちよ!」
その声は魔法によって増幅され、広場の隅々にまで響き渡る。
「我らがこれから赴くは、大陸の平和を脅かす邪悪の根源! 闇の教団の本拠地である!」
騎士たちの顔が引き締まる。
「奴らは我らが聖女を狙い、この帝国を、そして世界を闇に沈めようと企む許されざる逆賊である!」
アシュレイの剣の切っ先がリリアーナを示した。
「だが、見よ! 聖女は我らと共にある! 彼女の光は我らの道を照らし、我らの刃に勝利を約束する!」
その言葉に、騎士たちの胸が熱くなる。

「恐れるな! 怯むな!」
アシュレイの声が雷鳴のように轟いた。
「我らの後ろには帝都の民がいる! 我らが守るべき未来がある! そして、我らの隣には聖女がいる!」
彼は剣を天に突き上げた。
「帝国騎士団、出陣! 敵を殲滅し、帝国に栄光をもたらせ!」

「「「うおおおおおおおっ!!!」」」

地鳴りのような雄叫びが、帝都の空を揺るがした。
五千の騎士たちの士気は、今や最高潮に達していた。

その様子を城壁の上や沿道から、帝都中の民が見守っていた。
彼らは自分たちの皇子と聖女が、自分たちの平和のために今旅立とうとしていることを知っていた。
最初は不安げな表情を浮かべていた人々も、騎士団のその圧倒的な士気と二人の英雄の凛とした姿を見て、その不安を希望へと変えていった。

やがて誰からともなく祈りの歌が始まった。
それは帝国に古くから伝わる、戦士の無事と勝利を祈る歌。
一人の老婆の小さな歌声が隣の若者へ、そのまた隣の子供へと伝わり、やがてそれは帝都全体を包み込む荘厳な大合唱となった。

リリアーナは、その歌声に胸が熱くなるのを感じた。
自分は、この人々を守るために戦うのだ。
アシュレイと共に。

アシュレイはリリアーナに一度だけ視線を送り、静かに頷いた。
そして前を向き、馬の腹を軽く蹴る。
帝国騎士団は民衆の祈りの歌に見送られながら、ゆっくりと動き始めた。
その目的地は、闇の教団が巣食う本拠地『忘れられた渓谷』。

鋼鉄の隊列は朝日を浴びて黄金色に輝きながら、帝都の門をくぐり抜けていく。
それは、絶望の闇を打ち払うための希望の光の進軍だった。
大陸の運命を懸けた最後の戦いが、今始まった。
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