Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第48話 仲間の意味

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金色の光が、地下祭壇の禍々しい空気を浄化するように、優しく広がっていった。アレンの全身から溢れ出した生命エネルギーが、冷たくなったカイの亡骸へと注ぎ込まれていく。ソフィアは、息をすることも忘れ、目の前で起きている神の御業をただ見守っていた。

光の中で、カイの体に奇跡が起きていた。
ザルガスの短剣によって穿たれた胸の傷が、跡形もなく塞がっていく。失われた血液が、再び彼の血管を満たし、青白くなっていた肌に温かい血の気が戻ってくる。止まっていた心臓が、ゆっくりと、しかし力強く鼓動を再開した。

やがて、金色の光が収束し、アレンの体へと戻っていく。彼は膨大な魔力と精神力を消耗し、額には玉のような汗を浮かべていた。だが、その目は安堵の色に満ちている。
ソフィアが恐る恐るカイの胸に耳を当てると、そこからは確かに、力強い心音が聞こえてきた。

「……生きて、いる……」
彼女の声は、感動で震えていた。

「ん……」
その時、カイの瞼が微かに動き、うめき声と共にゆっくりと開かれた。
彼の金色の瞳が、最初に映したのは、心配そうに自分を覗き込むアレンとソフィアの顔だった。

「……ここは……?」
カイの声は、ひどく掠れていた。
「俺は……あの男に……」

「ああ、やられたな。あんた、一度死んだんだぜ」
ソフィアが、ぶっきらぼうな口調で、しかしその目には涙を浮かべながら言った。

「死んだ……?なら、ここは……」
「地獄じゃない。現実だ」
アレンが、カイの肩を支えながら、静かに言った。
「おかえり、カイ」

カイは、混乱した頭で状況を理解しようとした。自分が呪いの刃に貫かれ、意識を失ったこと。そして今、こうして再び目を覚ましていること。その間に何があったのかは分からないが、このヒーラーが、また何か常識外れの奇跡を起こしたことだけは、直感的に理解できた。

彼はゆっくりと体を起こした。傷の痛みも、呪いの気配も、体から完全に消え去っている。それどころか、以前よりも力がみなぎっているような感覚さえあった。
だが、彼の心は晴れなかった。
仇を前にして、冷静さを失い、無様に返り討ちに遭った。仲間を危険に晒し、挙句の果てに命まで救われた。その事実が、彼のプライドを深く傷つけていた。

「……すまない」
カイは、誰に言うでもなく、地面に向かって呟いた。
「俺のせいで……」

その言葉を聞いたアレンは、何も言わなかった。彼は静かに立ち上がると、祭壇の中央へと歩いていった。そして、ザルガスが消えた場所に落ちていた、漆黒の短剣を拾い上げた。

「これを持って、どうするつもりだった?」
アレンは、カイに背を向けたまま、静かに問いかけた。
「あの男を殺し、そして、あんたも死ぬつもりだった。違うか?」

「……!」
カイは、図星を突かれて言葉に詰まった。

「復讐を否定はしない」
アレンは、ゆっくりと振り返った。その目は、これまでにないほど真剣だった。
「あんたが一族を奪われた憎しみは、あんただけのものだ。俺たちが、それを安易に語ることはできない。だがな、カイ」

彼は、一歩、また一歩とカイに近づいてくる。

「そのために死ぬな」

その言葉は、命令でも、説教でもなかった。ただ、魂からの、切実な願いだった。

「お前がいなくなったら、俺たちが悲しい」

アレンは、カイの前に立つと、その肩を強く掴んだ。
「あんたはもう、一人じゃない。俺たちの仲間だ。仲間っていうのはな、互いの背中を預け、互いの傷を癒し、そして、互いのために生きるもんだ。死ぬためじゃない」

その言葉は、カイの心の最も深い場所に、温かい光のように染み渡っていった。
一族を失って以来、彼は復讐のためだけに生きてきた。自分の命など、どうでもいいと思っていた。だが、今、目の前の男は、自分の命が失われることを、本気で悲しんでくれている。
ソフィアも、黙って隣で頷いていた。その瞳は、アレンと同じ思いを語っていた。

カイの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
それは、彼が一族を失って以来、初めて流す涙だった。
孤独だった。ずっと、一人で戦ってきた。だが、いつの間にか、自分にはこんなにも自分のことを思ってくれる仲間ができていた。

「……俺は……」
カイは、嗚咽を堪えながら、言葉を絞り出した。
「俺は、また……同じ過ちを繰り返すかもしれない……。また、復讐心に囚われて、冷静さを失うかもしれない……。それでも……」

「ああ、構わないさ」
アレンは、優しく微笑んだ。
「あんたが暴走したら、今度は俺たちが止めてやる。何度でもな。それが、仲間ってもんだろ?」

ソフィアも、カイの背中をバンと強く叩いた。
「そうだぜ。一人で抱え込むな、この馬鹿猫!あんたの背中は、俺たちが守ってやる!」

その不器用な、しかし心からの励ましに、カイはついに顔を覆って泣き崩れた。
それは、彼の心が、長い復讐の呪縛から、ほんの少しだけ解放された瞬間だった。
彼は、本当の意味での『仲間』の意味を、この時、初めて知ったのかもしれない。

しばらくして、落ち着きを取り戻したカイは、涙を拭って立ち上がった。その顔には、もう迷いの色はなかった。
「……アレン、ソフィア。ありがとう。そして……すまなかった」
彼は、二人に向かって、深く頭を下げた。

「頭を上げろ。仲間同士で、そんな水臭い挨拶はなしだ」
アレンはそう言うと、ザルガスが使っていた呪いの短剣を、祭壇の中央にある瘴気の源へと突き立てた。短剣は、邪悪なエネルギーを吸い尽くすかのように、祭壇の力を中和させ始めた。

「さあ、帰ろう。俺たちのやるべきことは、まだたくさんある」

アレンの言葉に、ソフィアとカイは、力強く頷いた。
三人は、互いの肩を支え合うようにして、光の差す神殿の入り口へと歩き始めた。
彼らの絆は、仲間の『死』という最大の試練を乗り越え、もはや何者にも壊すことのできない、強靭なものへと変わっていた。
【黎明の翼】は、今、本当の意味で一つのパーティになったのだ。
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