11 / 60
第十一話 工房と最初の依頼
しおりを挟む
ガルダ公国の城の一角。
そこは、長年使われていなかったであろう、古い武器庫だった。
高い天井、だだっ広い石造りの空間。壁際には、錆びついた槍や、刃こぼれした剣が申し訳程度に立てかけられている。だが、リゼットがカケルのために用意した「工房」は、そんなガラクタを全て撤去し、真新しい設備が運び込まれていた。
部屋の中央には、巨大な石炭炉と、それに接続された大型の鞴(ふいご)。その隣には、分厚い鋼鉄で作られた金床(アンビル)がどっしりと鎮座している。壁際には、様々なサイズのハンマーやヤスリ、ノギスやマイクロメータといった工具類が整然と並べられていた。まだ数は少ないが、どれも手入れの行き届いた一級品だ。
「……ほう」
カケルは、思わず感嘆の声を漏らした。
町工場で使っていたような、電動の工作機械はない。だが、ここにはモノ作りの原点とも言える、信頼性の高い手動の道具が揃っていた。この世界では、これが最高水準の設備なのだろう。
何より、この広さだ。旋盤もフライス盤も、溶接機だって置ける。やろうと思えば、巨大な蒸気機械すらここで組み上げられるだろう。
「どうですかな、カケル殿。お気に召しましたか?」
リゼットが、少し得意げな顔で尋ねてくる。
「ああ、悪くない。いや、上出来すぎるくらいだ」
カケルは素直に認めた。彼の口から出た率直な賞賛に、リゼ-ットは嬉しそうに微笑む。
「まだ最低限の設備ですが、必要なものがあればリストをください。我が国の総力を挙げて、貴方の望むものを取り寄せましょう。貴方の『仕事』に、不足があってはなりませんから」
「……分かった」
カケルは頷き、工房の中をゆっくりと歩き回った。指先で、金床の冷たい感触を確かめる。ハンマーを手に取り、その重心とバランスを確認する。一つ一つの道具が、彼の職人としての魂を呼び覚ましていくようだった。
ここでなら、やれる。
自分の技術を、この世界の素材と融合させ、まだ誰も見たことのないものを創り出すことができる。
失われた手足を取り戻した時とはまた違う、純粋な創造への渇望が、彼の胸を満たしていった。
数日間、カケルは工房に籠りきりになった。
まずは、道具の整備とリストアップだ。ガルダの工具は質が良いが、カケルの基準からすれば、まだ改良の余地があった。ハンマーの柄を削って自分の手に馴染むように調整し、ヤスリの目立てをやり直す。
そして、膨大な量の要求リストを書き上げた。高純度の鉄鋼、銅、錫、そしてミスリルやオリハルコンといった、この世界特有の金属のインゴット。各種魔物の素材。精密な歯車を切り出すためのホブ盤の設計図。高出力の蒸気機関の概略図。
そのリストを見たリゼットの側近である財務官は、あまりの要求の多さと予算額に卒倒しかけたという。だが、リゼットは「構いません。全て手配しなさい」と、二つ返事で承認した。彼女のカケルに対する信頼と期待は、それほどまでに絶大なものだった。
そんなある日の午後、カケルが炉の火力を調整していると、工房の扉が静かに開いた。リゼットだった。だが、彼女は一人ではなかった。その後ろに、怯えたように隠れる人影がある。
カケルは、いぶかしげに眉をひそめた。
「リゼット様。それに……」
リゼットの後ろから、そっと顔を覗かせたのは、一人の少女だった。尖った耳、細くしなやかな肢体。森の木漏れ日のような、淡い金色の髪。彼女が人間ではないことは、一目で分かった。エルフだ。
だが、その表情は、彼女の種族が持つ神秘的なイメージとは程遠かった。瞳には深い絶望の色が浮かび、生気が感じられない。そして、彼女の左肩から先は、袖が空しく揺れているだけだった。
「カケル殿。ご紹介します。彼女はティリア。私の、大切な友人です」
リゼットは、悲しげな声で言った。
「ティリアは、かつて森で暮らすエルフの、最高の弓使いでした。しかし、一年ほど前、ソレイユの不法な森林伐採に抗議した際、彼らとの争いで……その左腕を」
ティリアは、リゼットの言葉にびくりと肩を震わせ、俯いてしまった。空になった袖を、残った右手でぎゅっと握りしめている。弓使いにとって、弓を支える腕を失うことは、死にも等しい絶望だろう。
「……それで、俺にどうしろと?」
カケルは、ティリアの姿にかつての自分を重ねながら、無感情を装って尋ねた。
リゼットは、意を決したようにカケルを真っ直ぐに見つめた。
「貴方のその力で、この子を救ってはいただけないでしょうか。彼女に、もう一度弓を引くための腕を……与えてはいただけませんか」
その言葉に、ティリアはハッと顔を上げた。そして、カケルの金属の腕と脚を見て、その顔を嫌悪に歪ませた。
「……嫌」
か細い、しかし、はっきりとした拒絶の声だった。
「そんな、鉄の塊なんて……気味が悪い。冷たくて、死んだ金属。そんなもの、腕なんかじゃない……!」
彼女の瞳には、カケルに対する明確な侮蔑と、生理的な嫌悪が浮かんでいた。エルフは、自然と生命を愛する種族。人工物、特に無機質な金属を忌み嫌う性質があるのだという。
「ティリア!」
リゼットが咎めるように名を呼ぶが、ティリアは頑なに首を横に振るだけだった。
工房に、気まずい沈黙が流れた。
カケルは、ティリアの言葉を黙って聞いていた。
鉄の塊。気味が悪い。腕じゃない。
それは、かつて彼自身が、筋電義手に対して抱いた感情と全く同じだった。失った手足の代わりなど、ありはしない。どんな精巧な機械も、本物の温かさやしなやかさには敵わない。
その絶望は、痛いほど分かる。
だが。
「……気に入らねえな」
カケルは、誰に言うでもなく、低く呟いた。
その言葉は、ティリアに向けられたものではなかった。彼女をそんな目に遭わせた理不尽な運命と、絶望に屈して、可能性から目を逸らしている彼女の弱さに対して向けられたものだった。
カケルは、炉の火を落とすと、ティリアの前にゆっくりと歩み寄った。ティリアは怯えたように後ずさる。
「おい、エルフ」
カケルは、自分の金属の右腕を、彼女の目の前に突き出した。
「お前の言う通りだ。これは、鉄の塊だ。冷たくて、血も通っちゃいねえ」
彼は、その金属の指を、ゆっくりと握り、開いて見せた。
「だがな、これはただの鉄の塊じゃねえ。俺の技術と、知識と、そして『生きる』という意志の塊だ。これがあるから、俺は今、ここに自分の足で立っていられる。自分の手で、モノを創り出せる」
ティリアは、カケルの真剣な眼差しに、気圧されたように黙り込んだ。
「お前の絶望は、お前のものだ。俺がとやかく言う筋合いはねえ。だがな」
カケルは、ティリアの空っぽの左袖に視線を移した。
「腕を失った弓使いが、どれだけ惨めか。どれだけ悔しいか。それくらいは、想像がつく」
彼は、再びティリアの目を見た。
「俺が、お前に新しい腕を作ってやる」
それは、同情や憐憫から出た言葉ではなかった。目の前に「欠損」という解決すべき課題がある。そして、自分にはそれを解決する「技術」がある。ならば、やる。
ただそれだけの、純粋な職人としての矜持だった。
「それがただの鉄の塊になるか、お前の本当の腕になるか。それは、俺の技術とお前の意志次第だ。出来上がったものを見て、使うか使わねえかは、お前が決めろ。捨てるってんなら、それでも構わん」
カケルの言葉には、一片の甘えもなかった。だが、その厳しさの中に、ティリアは今まで感じたことのない、揺るぎない「信頼性」のようなものを感じ取っていた。
ティリアは、何も答えられなかった。ただ、俯いて、小さく震えている。
リゼットは、そんな二人のやり取りを、息を詰めて見守っていた。そして、カケルがティリアの心に小さな風穴を開けたことを感じ取り、深く、深く頭を下げた。
「……ありがとうございます、カケル殿。全て、貴方にお任せします」
カケルは、それ以上何も言わなかった。
「おい、こっちへ来い」
彼はティリアを手招きし、作業台の前に立たせた。そして、ノギスを手に取り、彼女の左肩にそっと触れる。
「ひゃっ!?」
ティリアが、驚きと羞恥に小さな悲鳴を上げた。金属の指先の冷たさが、肌に直接伝わったのだ。
「動くな。正確なデータが取れねえだろうが」
カケルは意に介さず、淡々と計測を始めた。肩の形状、残された筋肉の付き方、骨格の構造。そして、彼は指先で慎重に、神経の末端がどこに集中しているかを探っていく。その手つきは、驚くほど繊細で、正確無比だった。
ティリアは、最初は身を硬くしていたが、カケルのあまりに真剣で、一切の邪念を感じさせない職人の眼差しに、次第に体の力を抜いていった。
カケルの脳内では、ティリアの身体データが三次元モデルとして再構築されていく。そして、そこに、新たな義手の設計図が、猛烈な勢いで組み上がっていった。
それは、ただの人間の腕の模倣ではない。
エルフの驚異的な視力と反射神経に追従できる、超軽量・高強度のフレーム構造。
弓を引く力と、矢を放つ瞬間の衝撃を最適に制御するための、複合素材を用いた人工筋肉。
そして、彼女の意志を寸分の狂いもなく伝達するための、魔石を動力源とした神経接続インターフェイス。
それは、もはや義手というより、弓を射るためだけに最適化された、究極の『兵装』だった。
「……はっ。面白くなってきたじゃねえか」
カケルの口元に、久しぶりに、心からの笑みが浮かんだ。
特任技師長としての、最初の仕事。それは、一人のエルフの絶望を、最高の技術で打ち砕くことだった。
そこは、長年使われていなかったであろう、古い武器庫だった。
高い天井、だだっ広い石造りの空間。壁際には、錆びついた槍や、刃こぼれした剣が申し訳程度に立てかけられている。だが、リゼットがカケルのために用意した「工房」は、そんなガラクタを全て撤去し、真新しい設備が運び込まれていた。
部屋の中央には、巨大な石炭炉と、それに接続された大型の鞴(ふいご)。その隣には、分厚い鋼鉄で作られた金床(アンビル)がどっしりと鎮座している。壁際には、様々なサイズのハンマーやヤスリ、ノギスやマイクロメータといった工具類が整然と並べられていた。まだ数は少ないが、どれも手入れの行き届いた一級品だ。
「……ほう」
カケルは、思わず感嘆の声を漏らした。
町工場で使っていたような、電動の工作機械はない。だが、ここにはモノ作りの原点とも言える、信頼性の高い手動の道具が揃っていた。この世界では、これが最高水準の設備なのだろう。
何より、この広さだ。旋盤もフライス盤も、溶接機だって置ける。やろうと思えば、巨大な蒸気機械すらここで組み上げられるだろう。
「どうですかな、カケル殿。お気に召しましたか?」
リゼットが、少し得意げな顔で尋ねてくる。
「ああ、悪くない。いや、上出来すぎるくらいだ」
カケルは素直に認めた。彼の口から出た率直な賞賛に、リゼ-ットは嬉しそうに微笑む。
「まだ最低限の設備ですが、必要なものがあればリストをください。我が国の総力を挙げて、貴方の望むものを取り寄せましょう。貴方の『仕事』に、不足があってはなりませんから」
「……分かった」
カケルは頷き、工房の中をゆっくりと歩き回った。指先で、金床の冷たい感触を確かめる。ハンマーを手に取り、その重心とバランスを確認する。一つ一つの道具が、彼の職人としての魂を呼び覚ましていくようだった。
ここでなら、やれる。
自分の技術を、この世界の素材と融合させ、まだ誰も見たことのないものを創り出すことができる。
失われた手足を取り戻した時とはまた違う、純粋な創造への渇望が、彼の胸を満たしていった。
数日間、カケルは工房に籠りきりになった。
まずは、道具の整備とリストアップだ。ガルダの工具は質が良いが、カケルの基準からすれば、まだ改良の余地があった。ハンマーの柄を削って自分の手に馴染むように調整し、ヤスリの目立てをやり直す。
そして、膨大な量の要求リストを書き上げた。高純度の鉄鋼、銅、錫、そしてミスリルやオリハルコンといった、この世界特有の金属のインゴット。各種魔物の素材。精密な歯車を切り出すためのホブ盤の設計図。高出力の蒸気機関の概略図。
そのリストを見たリゼットの側近である財務官は、あまりの要求の多さと予算額に卒倒しかけたという。だが、リゼットは「構いません。全て手配しなさい」と、二つ返事で承認した。彼女のカケルに対する信頼と期待は、それほどまでに絶大なものだった。
そんなある日の午後、カケルが炉の火力を調整していると、工房の扉が静かに開いた。リゼットだった。だが、彼女は一人ではなかった。その後ろに、怯えたように隠れる人影がある。
カケルは、いぶかしげに眉をひそめた。
「リゼット様。それに……」
リゼットの後ろから、そっと顔を覗かせたのは、一人の少女だった。尖った耳、細くしなやかな肢体。森の木漏れ日のような、淡い金色の髪。彼女が人間ではないことは、一目で分かった。エルフだ。
だが、その表情は、彼女の種族が持つ神秘的なイメージとは程遠かった。瞳には深い絶望の色が浮かび、生気が感じられない。そして、彼女の左肩から先は、袖が空しく揺れているだけだった。
「カケル殿。ご紹介します。彼女はティリア。私の、大切な友人です」
リゼットは、悲しげな声で言った。
「ティリアは、かつて森で暮らすエルフの、最高の弓使いでした。しかし、一年ほど前、ソレイユの不法な森林伐採に抗議した際、彼らとの争いで……その左腕を」
ティリアは、リゼットの言葉にびくりと肩を震わせ、俯いてしまった。空になった袖を、残った右手でぎゅっと握りしめている。弓使いにとって、弓を支える腕を失うことは、死にも等しい絶望だろう。
「……それで、俺にどうしろと?」
カケルは、ティリアの姿にかつての自分を重ねながら、無感情を装って尋ねた。
リゼットは、意を決したようにカケルを真っ直ぐに見つめた。
「貴方のその力で、この子を救ってはいただけないでしょうか。彼女に、もう一度弓を引くための腕を……与えてはいただけませんか」
その言葉に、ティリアはハッと顔を上げた。そして、カケルの金属の腕と脚を見て、その顔を嫌悪に歪ませた。
「……嫌」
か細い、しかし、はっきりとした拒絶の声だった。
「そんな、鉄の塊なんて……気味が悪い。冷たくて、死んだ金属。そんなもの、腕なんかじゃない……!」
彼女の瞳には、カケルに対する明確な侮蔑と、生理的な嫌悪が浮かんでいた。エルフは、自然と生命を愛する種族。人工物、特に無機質な金属を忌み嫌う性質があるのだという。
「ティリア!」
リゼットが咎めるように名を呼ぶが、ティリアは頑なに首を横に振るだけだった。
工房に、気まずい沈黙が流れた。
カケルは、ティリアの言葉を黙って聞いていた。
鉄の塊。気味が悪い。腕じゃない。
それは、かつて彼自身が、筋電義手に対して抱いた感情と全く同じだった。失った手足の代わりなど、ありはしない。どんな精巧な機械も、本物の温かさやしなやかさには敵わない。
その絶望は、痛いほど分かる。
だが。
「……気に入らねえな」
カケルは、誰に言うでもなく、低く呟いた。
その言葉は、ティリアに向けられたものではなかった。彼女をそんな目に遭わせた理不尽な運命と、絶望に屈して、可能性から目を逸らしている彼女の弱さに対して向けられたものだった。
カケルは、炉の火を落とすと、ティリアの前にゆっくりと歩み寄った。ティリアは怯えたように後ずさる。
「おい、エルフ」
カケルは、自分の金属の右腕を、彼女の目の前に突き出した。
「お前の言う通りだ。これは、鉄の塊だ。冷たくて、血も通っちゃいねえ」
彼は、その金属の指を、ゆっくりと握り、開いて見せた。
「だがな、これはただの鉄の塊じゃねえ。俺の技術と、知識と、そして『生きる』という意志の塊だ。これがあるから、俺は今、ここに自分の足で立っていられる。自分の手で、モノを創り出せる」
ティリアは、カケルの真剣な眼差しに、気圧されたように黙り込んだ。
「お前の絶望は、お前のものだ。俺がとやかく言う筋合いはねえ。だがな」
カケルは、ティリアの空っぽの左袖に視線を移した。
「腕を失った弓使いが、どれだけ惨めか。どれだけ悔しいか。それくらいは、想像がつく」
彼は、再びティリアの目を見た。
「俺が、お前に新しい腕を作ってやる」
それは、同情や憐憫から出た言葉ではなかった。目の前に「欠損」という解決すべき課題がある。そして、自分にはそれを解決する「技術」がある。ならば、やる。
ただそれだけの、純粋な職人としての矜持だった。
「それがただの鉄の塊になるか、お前の本当の腕になるか。それは、俺の技術とお前の意志次第だ。出来上がったものを見て、使うか使わねえかは、お前が決めろ。捨てるってんなら、それでも構わん」
カケルの言葉には、一片の甘えもなかった。だが、その厳しさの中に、ティリアは今まで感じたことのない、揺るぎない「信頼性」のようなものを感じ取っていた。
ティリアは、何も答えられなかった。ただ、俯いて、小さく震えている。
リゼットは、そんな二人のやり取りを、息を詰めて見守っていた。そして、カケルがティリアの心に小さな風穴を開けたことを感じ取り、深く、深く頭を下げた。
「……ありがとうございます、カケル殿。全て、貴方にお任せします」
カケルは、それ以上何も言わなかった。
「おい、こっちへ来い」
彼はティリアを手招きし、作業台の前に立たせた。そして、ノギスを手に取り、彼女の左肩にそっと触れる。
「ひゃっ!?」
ティリアが、驚きと羞恥に小さな悲鳴を上げた。金属の指先の冷たさが、肌に直接伝わったのだ。
「動くな。正確なデータが取れねえだろうが」
カケルは意に介さず、淡々と計測を始めた。肩の形状、残された筋肉の付き方、骨格の構造。そして、彼は指先で慎重に、神経の末端がどこに集中しているかを探っていく。その手つきは、驚くほど繊細で、正確無比だった。
ティリアは、最初は身を硬くしていたが、カケルのあまりに真剣で、一切の邪念を感じさせない職人の眼差しに、次第に体の力を抜いていった。
カケルの脳内では、ティリアの身体データが三次元モデルとして再構築されていく。そして、そこに、新たな義手の設計図が、猛烈な勢いで組み上がっていった。
それは、ただの人間の腕の模倣ではない。
エルフの驚異的な視力と反射神経に追従できる、超軽量・高強度のフレーム構造。
弓を引く力と、矢を放つ瞬間の衝撃を最適に制御するための、複合素材を用いた人工筋肉。
そして、彼女の意志を寸分の狂いもなく伝達するための、魔石を動力源とした神経接続インターフェイス。
それは、もはや義手というより、弓を射るためだけに最適化された、究極の『兵装』だった。
「……はっ。面白くなってきたじゃねえか」
カケルの口元に、久しぶりに、心からの笑みが浮かんだ。
特任技師長としての、最初の仕事。それは、一人のエルフの絶望を、最高の技術で打ち砕くことだった。
20
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる