無能と罵られ追放された落ちこぼれ魔術師、実は世界で唯一【言語魔法】を使える最強賢者だった〜古代魔法と失われた知識で成り上がり見返してやる!~

夏見ナイ

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第22話:アストライオスの力と課題

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主従の契約が結ばれ、古代の巨人ゴーレム、アストライオスは静かにその場に佇んでいた。目の前に片膝をついたままの巨大な姿は、圧倒的な力強さと同時に、リオの命令を待つ忠実なしもべとしての側面も見せている。リオはまだ興奮と緊張の余韻から抜け出せずにいたが、すぐに現実的な問題に意識を向けた。

「アストライオス……立て」

リオは、試しに最初の命令を与えてみた。【言語魔法】を介さず、普通の言葉で。

『……了解……主(アルジ)よ』

アストライオスの意思が、再びリオの頭の中に響く。そして、ゴゴゴ……という重々しい音と共に、巨大な石の体がゆっくりと立ち上がった。その動作は滑らかで、力強い。

「言葉で……本当に動くのね……」

リリアナが感嘆の声を漏らす。彼女は目を輝かせながらアストライオスの全身を観察し、その構造や材質についてぶつぶつと呟いている。完全に研究者のモードに入ってしまっているようだ。

「歩けるか? 少し、動いてみてくれ」

リオはさらに指示を出した。

『……機能……正常……。歩行……可能……』

アストライオスは応えると、広間の中をゆっくりと歩き始めた。その巨体に似合わず、足取りは驚くほど静かで、安定している。床の石畳を無駄に傷つけることもない。古代の技術力の高さをまざまざと見せつけられた。

「すごいな……。これほどの巨体を、これほど精密に制御できるとは」

グレイも、感嘆と警戒が入り混じった表情でアストライオスの動きを見守っている。

「アストライオス、何か攻撃能力は備わっているのか?」

リオは最も気になる点の一つを尋ねてみた。

『……両腕部……エネルギー兵装……搭載……。ただし……現在……エネルギー……最低レベル……。戦闘……不可……』
「エネルギー兵装? エネルギーが最低レベル……?」

リオは聞き返した。石碑には、星の力を宿すとあったが、それがエネルギー源なのだろうか。

『……星辰(セイシン)エネルギー……動力源……。長期間……非稼働……エネルギー……枯渇……。再充填……必要……』
「星辰エネルギー……。やはり、星の力が関係しているのね!」リリアナが興奮して割って入った。「再充填はどうすれば? 星の光を浴びればいいのかしら?」
『……特定……条件下……星光……照射……あるいは……星見の水晶……接続……エネルギー……供給……可能……』

星見の水晶。リオとリリアナは顔を見合わせた。以前の小さな遺跡で見つけた、あの青い水晶のことだろうか?

「あの水晶が、アストライオスのエネルギー源になる可能性がある、ということか……」

リオは驚いた。あの時はただの綺麗な石だと思っていたが、とんでもないお宝だったのかもしれない。

「でも、あの水晶は今、私の研究室に……。それに、接続方法も分からないわ」
「それに、『特定の条件下での星光照射』というのも気になるな。いつでも充電できるわけではない、ということだろう」

グレイが冷静に付け加えた。

どうやら、アストライオスは起動こそできたものの、現状ではその真価を発揮できない状態らしい。エネルギー問題は、今後の大きな課題となりそうだ。

「分かった、アストライオス。エネルギーの件は、これから調べていくことにしよう。今は、戦闘能力がない状態で無理に動かすのは危険だ。ひとまず、ここで待機していてくれ」
『……了解……。主の……帰還……待つ……』

リオはアストライオスに停止の真言『レクイエム・サイレンス』を唱えた。アストライオスの青い瞳の輝きがゆっくりと失われ、再び静かな石像へと戻っていく。その巨体は、再び深い眠りについたかのようだった。

「ふぅ……。とてつもないものを起こしてしまったな……」

リオは安堵と同時に、大きな責任を背負ったことを実感していた。

「しかし、大きな収穫だ」グレイが言った。「こいつが完全な状態になれば、相当な戦力になるだろう。問題は、どうやってそれを成し遂げるか、そして……こいつの存在をどう隠すかだ」
「そうね……。こんな巨大なゴーレムのことが知られれば、大騒ぎになるわ。王都や、他の国にも……。悪用しようとする者も必ず現れる」

リリアナも同意する。アストライオスの存在は、現時点では絶対に秘密にしておく必要があった。

「幸い、この場所は森の奥深くで、ゴブリンたちもいなくなった。封印の扉も、俺が『クゥイエス』と唱えない限りは開かないはずです。当面は、アストライオスをここに隠しておくのが最善でしょう」

リオは提案した。

「それが現実的だろうな」グレイも頷いた。「だが、いつまでも隠しておけるものでもない。いずれ、こいつを運用する方法と、そのための拠点が必要になる」
「拠点……。そうね、フロンティアは自由だけど、人目も多いわ。もっと安全で、アストライオスを置けるような場所……」

リリアナは考え込む。

「まあ、それは追々考えていくしかないか」グレイは話を打ち切った。「今は、無事に依頼を終え、この情報を持ち帰ることが先決だ。ギルドには……ゴーレムのことは伏せておくんだろう?」
「はい。ゴブリンを討伐し、そのねぐらが古代遺跡の一部だったことを発見した、とだけ報告します。封印やゴーレムのことは、我々だけの秘密にしましょう」

リオは改めて二人に確認した。リリアナもグレイも、異論はないようだった。

三人はアストライオスが眠る広間を後にし、封印の扉を閉じた。ゴブリンの集落跡には、戦闘の痕跡と、彼らが残したわずかな生活用品だけが残されていた。

フロンティアへの帰り道、三人の間には以前とは違う、確かな連帯感が生まれていた。共に危険を乗り越え、重大な秘密を共有したことで、彼らは単なる一時的な協力者から、運命共同体のような存在へと変わりつつあったのだ。

「それにしても、リオさんの【言語魔法】、本当にすごいわね。ゴーレムと直接対話できるなんて……」

リリアナは、まだ興奮冷めやらぬ様子で言った。

「古代魔法を使えるだけでも驚きなのに、言葉でゴーレムまで従えるとは……。お前、本当にただの元宮廷魔術師なのか?」

グレイも、半ば呆れたような、しかし明らかに以前とは違う、興味と多少の敬意を含んだ視線をリオに向けている。

「はは……自分でも、まだよく分かっていないんです。この力が、どこまで通用するのか……」

リオは苦笑いを浮かべた。自分の持つ力の特異性を、改めて実感していた。

「だが、その力は、使い方次第で良くも悪くもなる。忘れるなよ」

グレイは釘を刺すように言った。その言葉は、リオの心に再び重く響いた。

フロンティアの街に戻ると、日はすでに西に傾いていた。ギルドでの報告は、リオが説明した通り、ゴブリン討伐の成功と、遺跡の一部発見という内容に留めた。サラは三人の無事を喜び、F級へのランクアップを約束してくれた。リオはようやくG級を脱し、F級冒険者となったのだ。ささやかな一歩だが、確実な前進だった。

リリアナの研究室で、三人は今後のことを改めて話し合った。

「まずは、アストライオスのエネルギー問題を解決しないとね。『星見の水晶』の解析と、『特定の条件下での星光照射』について調べる必要があるわ」
「周辺地域の調査も進めたいですね。『星詠みの民』の他の遺跡や、『静寂の森』、『賢者の石』の手がかりが見つかるかもしれません」
「焦りは禁物だ」グレイが諌めた。「我々の実力はまだ十分ではない。下手に動けば、また厄介な連中に目をつけられる可能性もある。まずは、フロンティア周辺で地道に力をつけ、情報を集めるべきだ」

グレイの意見はもっともだった。リオもリリアナも、逸る気持ちを抑え、同意した。

「分かりました。しばらくは、フロンティアで冒険者としての活動を続けながら、情報収集と訓練に励みます」
「私も、研究室で文献調査を進めるわ。『星詠みの民』や古代魔法に関する、何か新しい情報が見つかるかもしれない」
「俺も、しばらくはこの街にいる。何かあれば、声をかけろ」

グレイはそう言って、研究室を後にした。彼の言葉はぶっきらぼうだったが、そこには「仲間」としての意識が芽生え始めているように感じられた。

リオとリリアナは、顔を見合わせて微笑んだ。アストライオスという強力な存在を得たが、同時に多くの課題も見つかった。しかし、一人ではない。信頼できる仲間と共に、一歩ずつ進んでいけばいい。

(周辺地域の調査……か。まずは、フロンティアの近くにある他の遺跡や、古い伝承が残る場所から調べてみるのがいいかもしれないな)

リオは、新たな目標に向けて思考を巡らせ始めた。彼の冒険は、まだ始まったばかり。広大な世界には、解き明かすべき謎と、乗り越えるべき困難が、無数に待ち受けているのだから。
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