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第二章:失われた知識と王国の影
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第31話:誘拐未遂の波紋と次なる遺跡への道
リオの誘拐未遂事件は、フロンティアで活動する彼ら三人に大きな衝撃と、そして差し迫った危機感を植え付けた。バルカスの卑劣な手段、そしてその背後にちらつく王国の宰相の影。もはや、これは単なる個人的な恨みや嫉妬の問題ではなく、リオの持つ力――ひいては古代魔法そのものを巡る、巨大な陰謀の一部である可能性が高い。
「……まさか、宰相まで関わっている可能性があるなんて……」
リリアナの研究室に戻り、改めて状況を整理する中で、彼女は青ざめた顔で呟いた。宰相は、アークライト王国において国王に次ぐ権力を持つとされる人物だ。彼が古代魔法に興味を持ち、その力を手に入れようとしているとしたら、それは国家レベルでの陰謀となり得る。
「奴らが本気でリオの力を狙っているなら、今回の失敗で諦めるはずがない。次はもっと巧妙に、あるいはもっと強引な手段で来るだろう」
グレイは、厳しい表情で警告した。誘拐犯たちが口封じされる可能性があったということは、計画が失敗した場合の隠蔽工作も用意されていたということだ。敵は、手段を選ばない。
「俺が……狙われている……」
リオは、改めてその事実の重みを噛み締めていた。これまでは、辺境で自由に力を探求できると考えていたが、もはやそんな甘い状況ではない。彼の存在そのものが、危険を引き寄せてしまっているのだ。
「どうすれば……。フロンティアから逃げるべきでしょうか?」
リオは弱音にも似た言葉を漏らした。しかし、すぐに首を横に振る。
「いや……逃げても、おそらく追ってくるでしょう。それに、俺たちにはやるべきことがある。アストライオスを目覚めさせ、災厄に備えなければ……」
「そうよ、リオさん」リリアナが力強く頷いた。「逃げるのではなく、立ち向かうしかないわ。そのためにも、私たちはもっと強くならなければ。そして、敵の動きを把握し、先手を打つ必要もある」
「そのためには、やはり情報と力だ」グレイが続けた。「敵の狙いが古代魔法にあるのなら、我々もさらに古代の知識と力を得る必要がある。そして、身を守るための、あるいは……いざという時に移動するための手段もな」
グレイの言葉は、アストライオスの移動という課題にも繋がっていた。あの巨体を秘密裏に動かすには、通常の手段では不可能だ。もし、古代魔法に飛行や転移といった能力があれば……。
リオは、巫女から受けた啓示の中で感じた「飛行」の感覚――【レビテーション・フライト】――を思い出した。そして、もう一つ、気になっていた魔法があった。
(【マテリアル・クリエイト】……物質生成……。もし、これが本当にゼロから物質を作り出せる魔法なら……?)
その応用範囲は計り知れない。武器や防具の作成、拠点の構築、あるいは……アストライオスのエネルギー問題を解決する鍵にすらなるかもしれない。
「……新しい古代魔法の手がかりを、もっと積極的に探すべきかもしれません」リオは言った。「啓示によれば、物質を作り出す魔法や、空を飛ぶ魔法が存在する可能性があります。それらを習得できれば、状況を大きく変えられるかもしれない」
「物質生成に飛行ですって!?」リリアナは目を輝かせた。「そんな魔法が本当に……! 古代魔法の可能性は、私たちの想像を遥かに超えているのね……!」
「飛行能力があれば、アストライオスの移動問題も解決に近づくな。物質生成とやらは、よく分からんが……武器や防具を自在に作れるなら、確かに大きなアドバンテージになるだろう」
グレイも、その可能性に興味を示したようだった。
「問題は、どうやってその魔法を見つけ出すか、ね」リリアナが現実的な課題を口にした。「『星詠みの民』の書物には、まだそれらしき記述は見つかっていないわ。他の古代遺跡を探すしかないかもしれない」
「王国の調査隊も、他の遺跡を嗅ぎ回っている。彼らよりも先に、重要な遺跡を見つけ出す必要があるな」
三人の目標は明確になった。バルカスや王国の監視を警戒しつつ、新たな古代魔法(特に飛行と物質生成)の手がかりを求めて、他の古代遺跡を探索する。
「心当たりは、あるんですか?」リオが尋ねる。
「そうね……」リリアナは地図を広げ、考え込んだ。「『忘れられた祠』で得た情報や、これまでの文献調査から考えると……フロンティアから南へ数日行った先にある、広大な地下迷宮……『賢者の迷宮』と呼ばれる遺跡が怪しいかもしれないわ」
「『賢者の迷宮』……?」
「ええ。非常に古い時代の遺跡で、内部構造は複雑怪奇、強力な魔物や罠も多いとされ、踏破した者はいないと言われているわ。でも、その最深部には、古代の『賢者』が遺した膨大な知識や、強力なアーティファクトが眠っているという伝説があるの。もしかしたら、そこに新たな古代魔法の手がかりがあるかもしれない」
「賢者の迷宮……。危険な場所だとは聞いているがな」グレイは腕を組んだ。「だが、それだけの価値があるかもしれん」
「行きましょう。危険は承知の上です。そこで力を得られれば、三ヶ月後の儀式にも、そして王国の脅威にも、より有利に立ち向かえるはずです」
リオは決意を込めて言った。彼の目には、もはや迷いはなかった。
***
「賢者の迷宮」への出発に向けて、三人はこれまで以上に慎重な準備を進めた。リオの誘拐未遂事件があったばかりであり、バルカスや王国の監視の目が光っている可能性が高いからだ。
リオはギルドでの依頼を調整し、数日間フロンティアを離れることを不自然に思われないように工作した。表向きは「少し遠方への薬草採集依頼」ということにしておく。
装備も、改めて見直し、強化した。リオは模擬戦を通じて、自身の防御と回避能力の限界を感じていたため、なけなしの金をはたいて、より軽量で動きやすいミスリル製のチェインメイルを購入した。これはリリアナが学者ギルドのつてで特別に手に入れてくれたもので、防御力は革鎧よりも格段に高い。グレイは自身の剣の手入れを入念に行い、予備の武器として投げナイフをいくつか補充した。リリアナは、解析を進めていた古代の杖の扱いに少しずつ慣れてきており、防御や補助だけでなく、限定的ながら攻撃にも使えるように練習していた。
出発前夜、リオはリリアナの研究室で、最後の準備をしていた。ふと、机の上に置かれた「星見の水晶」に目をやる。それは相変わらず静かな光を放っていた。
(巫女様……俺たちは、進むべき道を見つけました。どうか、見守っていてください)
心の中でそう祈りながら、リオは水晶にそっと触れた。すると、再び微かなイメージが頭の中に流れ込んできた。それは、複雑な迷宮の光景と、そして……何かを力強く「形作る」ような感覚だった。
(……これは……【マテリアル・クリエイト】のヒント……? 迷宮の中に、この魔法の手がかりがあるということか……?)
啓示は、彼らの進む道が間違っていないことを示唆しているかのようだった。
翌早朝、三人は人目を忍ぶようにしてフロンティアを出発した。目指すは南、伝説の「賢者の迷宮」。そこには、失われた古代の知識と、彼らの未来を切り拓くための新たな力が眠っているはずだ。しかし、同時に、未知の危険と、そして彼らを追う悪意の影もまた、すぐそこまで迫っているのかもしれない。
リオたちの新たな挑戦が、今、始まろうとしていた。バルカスへの最初の反撃は成功したが、それは本当の戦いの始まりに過ぎなかったのだ。
リオの誘拐未遂事件は、フロンティアで活動する彼ら三人に大きな衝撃と、そして差し迫った危機感を植え付けた。バルカスの卑劣な手段、そしてその背後にちらつく王国の宰相の影。もはや、これは単なる個人的な恨みや嫉妬の問題ではなく、リオの持つ力――ひいては古代魔法そのものを巡る、巨大な陰謀の一部である可能性が高い。
「……まさか、宰相まで関わっている可能性があるなんて……」
リリアナの研究室に戻り、改めて状況を整理する中で、彼女は青ざめた顔で呟いた。宰相は、アークライト王国において国王に次ぐ権力を持つとされる人物だ。彼が古代魔法に興味を持ち、その力を手に入れようとしているとしたら、それは国家レベルでの陰謀となり得る。
「奴らが本気でリオの力を狙っているなら、今回の失敗で諦めるはずがない。次はもっと巧妙に、あるいはもっと強引な手段で来るだろう」
グレイは、厳しい表情で警告した。誘拐犯たちが口封じされる可能性があったということは、計画が失敗した場合の隠蔽工作も用意されていたということだ。敵は、手段を選ばない。
「俺が……狙われている……」
リオは、改めてその事実の重みを噛み締めていた。これまでは、辺境で自由に力を探求できると考えていたが、もはやそんな甘い状況ではない。彼の存在そのものが、危険を引き寄せてしまっているのだ。
「どうすれば……。フロンティアから逃げるべきでしょうか?」
リオは弱音にも似た言葉を漏らした。しかし、すぐに首を横に振る。
「いや……逃げても、おそらく追ってくるでしょう。それに、俺たちにはやるべきことがある。アストライオスを目覚めさせ、災厄に備えなければ……」
「そうよ、リオさん」リリアナが力強く頷いた。「逃げるのではなく、立ち向かうしかないわ。そのためにも、私たちはもっと強くならなければ。そして、敵の動きを把握し、先手を打つ必要もある」
「そのためには、やはり情報と力だ」グレイが続けた。「敵の狙いが古代魔法にあるのなら、我々もさらに古代の知識と力を得る必要がある。そして、身を守るための、あるいは……いざという時に移動するための手段もな」
グレイの言葉は、アストライオスの移動という課題にも繋がっていた。あの巨体を秘密裏に動かすには、通常の手段では不可能だ。もし、古代魔法に飛行や転移といった能力があれば……。
リオは、巫女から受けた啓示の中で感じた「飛行」の感覚――【レビテーション・フライト】――を思い出した。そして、もう一つ、気になっていた魔法があった。
(【マテリアル・クリエイト】……物質生成……。もし、これが本当にゼロから物質を作り出せる魔法なら……?)
その応用範囲は計り知れない。武器や防具の作成、拠点の構築、あるいは……アストライオスのエネルギー問題を解決する鍵にすらなるかもしれない。
「……新しい古代魔法の手がかりを、もっと積極的に探すべきかもしれません」リオは言った。「啓示によれば、物質を作り出す魔法や、空を飛ぶ魔法が存在する可能性があります。それらを習得できれば、状況を大きく変えられるかもしれない」
「物質生成に飛行ですって!?」リリアナは目を輝かせた。「そんな魔法が本当に……! 古代魔法の可能性は、私たちの想像を遥かに超えているのね……!」
「飛行能力があれば、アストライオスの移動問題も解決に近づくな。物質生成とやらは、よく分からんが……武器や防具を自在に作れるなら、確かに大きなアドバンテージになるだろう」
グレイも、その可能性に興味を示したようだった。
「問題は、どうやってその魔法を見つけ出すか、ね」リリアナが現実的な課題を口にした。「『星詠みの民』の書物には、まだそれらしき記述は見つかっていないわ。他の古代遺跡を探すしかないかもしれない」
「王国の調査隊も、他の遺跡を嗅ぎ回っている。彼らよりも先に、重要な遺跡を見つけ出す必要があるな」
三人の目標は明確になった。バルカスや王国の監視を警戒しつつ、新たな古代魔法(特に飛行と物質生成)の手がかりを求めて、他の古代遺跡を探索する。
「心当たりは、あるんですか?」リオが尋ねる。
「そうね……」リリアナは地図を広げ、考え込んだ。「『忘れられた祠』で得た情報や、これまでの文献調査から考えると……フロンティアから南へ数日行った先にある、広大な地下迷宮……『賢者の迷宮』と呼ばれる遺跡が怪しいかもしれないわ」
「『賢者の迷宮』……?」
「ええ。非常に古い時代の遺跡で、内部構造は複雑怪奇、強力な魔物や罠も多いとされ、踏破した者はいないと言われているわ。でも、その最深部には、古代の『賢者』が遺した膨大な知識や、強力なアーティファクトが眠っているという伝説があるの。もしかしたら、そこに新たな古代魔法の手がかりがあるかもしれない」
「賢者の迷宮……。危険な場所だとは聞いているがな」グレイは腕を組んだ。「だが、それだけの価値があるかもしれん」
「行きましょう。危険は承知の上です。そこで力を得られれば、三ヶ月後の儀式にも、そして王国の脅威にも、より有利に立ち向かえるはずです」
リオは決意を込めて言った。彼の目には、もはや迷いはなかった。
***
「賢者の迷宮」への出発に向けて、三人はこれまで以上に慎重な準備を進めた。リオの誘拐未遂事件があったばかりであり、バルカスや王国の監視の目が光っている可能性が高いからだ。
リオはギルドでの依頼を調整し、数日間フロンティアを離れることを不自然に思われないように工作した。表向きは「少し遠方への薬草採集依頼」ということにしておく。
装備も、改めて見直し、強化した。リオは模擬戦を通じて、自身の防御と回避能力の限界を感じていたため、なけなしの金をはたいて、より軽量で動きやすいミスリル製のチェインメイルを購入した。これはリリアナが学者ギルドのつてで特別に手に入れてくれたもので、防御力は革鎧よりも格段に高い。グレイは自身の剣の手入れを入念に行い、予備の武器として投げナイフをいくつか補充した。リリアナは、解析を進めていた古代の杖の扱いに少しずつ慣れてきており、防御や補助だけでなく、限定的ながら攻撃にも使えるように練習していた。
出発前夜、リオはリリアナの研究室で、最後の準備をしていた。ふと、机の上に置かれた「星見の水晶」に目をやる。それは相変わらず静かな光を放っていた。
(巫女様……俺たちは、進むべき道を見つけました。どうか、見守っていてください)
心の中でそう祈りながら、リオは水晶にそっと触れた。すると、再び微かなイメージが頭の中に流れ込んできた。それは、複雑な迷宮の光景と、そして……何かを力強く「形作る」ような感覚だった。
(……これは……【マテリアル・クリエイト】のヒント……? 迷宮の中に、この魔法の手がかりがあるということか……?)
啓示は、彼らの進む道が間違っていないことを示唆しているかのようだった。
翌早朝、三人は人目を忍ぶようにしてフロンティアを出発した。目指すは南、伝説の「賢者の迷宮」。そこには、失われた古代の知識と、彼らの未来を切り拓くための新たな力が眠っているはずだ。しかし、同時に、未知の危険と、そして彼らを追う悪意の影もまた、すぐそこまで迫っているのかもしれない。
リオたちの新たな挑戦が、今、始まろうとしていた。バルカスへの最初の反撃は成功したが、それは本当の戦いの始まりに過ぎなかったのだ。
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