無能と罵られ追放された落ちこぼれ魔術師、実は世界で唯一【言語魔法】を使える最強賢者だった〜古代魔法と失われた知識で成り上がり見返してやる!~

夏見ナイ

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第48話:ドワーフの街訪問、古代技術との関連

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「忘れられた谷」の隠れ砦の奥深くで、「星詠みの民」が遺した強力な「遺物」――おそらく王国の宰相が狙う「星の鍵」――が封印されている可能性を知ったリオたちだったが、その最深部へ進む前に、彼らは一つの重要な課題に直面していた。それは、アストライオスのエネルギー問題の解決と、彼を「静寂の森」の「月の泉」まで安全に移動させる手段の確保だ。

「『星降りの夜』の儀式まで、もう二ヶ月半を切っているわ……」

リリアナは、研究室に戻り、焦りの色を浮かべていた。

「アストライオスを祠まで運ぶには、やはり飛行能力が不可欠よ。リオさんの【レビテーション・フライト】の習得が間に合えばいいけれど……あの巨体を長時間浮かせ続けるのは、相当な魔力と制御技術が必要になるでしょう」
「【マテリアル・クリエイト】で、何か移動用の道具を作れないだろうか?」グレイが提案した。「例えば、巨大な車輪とか、あるいは……空を飛ぶための翼のようなものを、アストライオスに取り付けるとか」
「それも考えましたが……」リオは首を横に振った。「アストライオスの巨体を支え、動かすほどの強度と機能を持つものを【マテリアル・クリエイト】で作るには、俺の今の力ではまだ不十分です。それに、エネルギー源の問題も解決していません」

アストライオスのエネルギー充填には、「星見の水晶」を使い、「星降りの夜」に特定の聖地で儀式を行う必要がある。その聖地の一つが「静寂の森」の「月の泉」だが、そこにアストライオスを運べなければ、儀式自体が行えない。まさに、鶏が先か卵が先か、という状況だった。

「何か、別の方法が必要ね……。古代の技術に、何かヒントがないかしら……」

リリアナは、再び膨大な文献の海に分け入っていった。数日後、彼女はある一つの可能性を見つけ出した。

「これを見て!」彼女は興奮した様子で、一枚の古びた羊皮紙をリオとグレイの前に広げた。「これは、古代ドワーフの技術に関する記述よ。彼らは、山をくり抜き、巨大な地下都市を築き上げ、現代では失われた様々な機械や装置を作り出していたというわ」
「ドワーフの技術……?」
「ええ。特に注目すべきは、彼らが『地脈エネルギー』と呼ばれる、大地に流れる自然のエネルギーを利用する技術を持っていたことよ。もしかしたら、アストライオスのエネルギー源や、移動手段に関して、何かヒントが得られるかもしれないわ」

古代ドワーフ。彼らは、エルフとは異なる方向性で、高度な文明を築いていたとされる伝説の種族だ。頑固で職人気質、そして並外れた鍛冶技術と機械工学の知識を持っていたと伝えられている。

「ドワーフの都市なら、フロンティアから南西に数週間ほど行った先の、巨大な火山帯の地下深くに、『ドゥル=アダール』という伝説の都市があったと聞いたことがある」グレイが、自身の情報網から得た知識を付け加えた。「だが、その場所は非常に危険で、生きているドワーフがいるかどうかも定かではない。ほとんどおとぎ話のようなものだと思っていたが……」
「でも、もし本当に存在して、彼らの技術が残っているとしたら……!」リリアナの目は期待に輝いていた。

リオもまた、その可能性に興味を惹かれた。ドワーフの「地脈エネルギー」利用技術。それは、アストライオスの星辰エネルギーとは異なるアプローチだが、あるいは代替エネルギー源となるかもしれない。そして、彼らの機械工学の知識は、アストライオスの移動手段を開発する上で、大きな助けになるかもしれない。

「行ってみましょう。『ドゥル=アダール』へ」リオは決断した。「『忘れられた谷』の最深部へ進む前に、アストライオスの問題を少しでも解決しておきたい。それに、ドワーフの古代技術も、俺たちの力になるはずです」
「賛成よ!」
「……まあ、他に有効な手がなさそうならな」

グレイも、渋々ながら同意した。

こうして、三人の新たな目的地は、伝説のドワーフ都市「ドゥル=アダール」に決まった。彼らは再び旅の準備を整え、フロンティアの南西門から、灼熱の火山帯を目指して出発した。

火山帯への道のりは、これまでのどの旅よりも過酷だった。空気は乾燥し、硫黄の匂いが立ち込め、地面からは時折、熱い蒸気が噴き出している。魔物も、炎や熱に耐性を持つ、凶暴な種類のものが多い。

しかし、リオたちの連携は、もはや熟練の域に達しつつあった。グレイの剣が炎を纏うトカゲ「フレイムリザード」を切り裂き、リリアナの精霊魔法が火山性のガスを中和し、リオの【プロテクト・ウォール】が噴石から仲間を守る。リオ自身も、【レビテーション】で溶岩流を飛び越えたり、【マテリアル・クリエイト】で耐熱性の足場を作ったりと、習得した古代魔法を積極的に活用し、困難な状況を打開していった。

数週間後、彼らはついに、巨大な活火山の麓にたどり着いた。その山腹には、まるで巨大な口のように、黒々とした洞窟の入り口が開いていた。そこから、ドワーフたちが好むという、鍛冶の槌音と、地底の熱気が微かに感じられる。

「ここが……『ドゥル=アダール』の入り口……!」

リリアナが、期待と緊張の入り混じった声で言った。

三人が洞窟の中へと進むと、そこには広大な地下空間が広がっていた。壁には、ドワーフ特有の角張った幾何学模様が刻まれ、通路の脇には、地熱を利用したと思われるランプが点々と灯り、薄暗いながらも視界を確保している。そして、奥からは、よりはっきりと、規則的な金属音と、大勢のドワーフたちの話し声が聞こえてきた。

「……生きているドワーフが、本当にいたとはな」

グレイも、少し驚いた様子だった。

やがて三人は、巨大な地下都市の中央広場のような場所へとたどり着いた。そこでは、屈強な体つきをしたドワーフたちが、額に汗して鍛冶作業に励んだり、鉱石を運んだり、あるいは酒場で豪快に酒を酌み交わしたりしていた。彼らは皆、頑固そうで、しかしどこか誇り高い雰囲気を漂わせている。

突然現れた人間とエルフの姿に、ドワーフたちは一斉に作業の手を止め、警戒と好奇の入り混じった視線を向けてきた。

「何奴だ! 人間とエルフが、ドワーフの都に何の用だ!」

ひときわ体格が良く、立派な髭を蓄えたドワーフ――おそらく、この都市の長か、それに近い立場なのだろう――が、低い声で威嚇するように尋ねてきた。その手には、巨大な戦斧が握られている。

「我々は、リオ・アシュトン、リリアナ・エルウッド、グレイ・ウォーカーと申します」リオが代表して、丁寧に挨拶した。「伝説のドワーフ都市『ドゥル=アダール』を訪ね、皆様の古代の技術と知識について、お伺いしたいことがあって参りました」
「ふん、古代の技術だと? 我らがドワーフの技は、そうやすやすと他所者に見せるものではないわ!」

ドワーフの長は、腕を組み、頑なな態度を崩さない。周囲のドワーフたちも、敵意を込めて三人を睨みつけている。

「どうか、お願いします!」リリアナが前に進み出た。「私たちは、世界を脅かすかもしれない災厄に立ち向かうため、失われた古代の力を必要としているのです! 特に、地脈エネルギーの利用技術や、高度な機械工学について、お知恵を拝借できないでしょうか?」
「災厄だと? 馬鹿馬鹿しい! 我らがドゥル=アダールは、いかなる災厄にも屈せぬ! 人間やエルフの助けなど、必要ないわ!」

ドワーフの長は、リリアナの言葉を一蹴した。彼らは、他の種族に対して強い不信感を抱いているようだ。

(困ったな……。これでは、話を聞いてもらえそうにない……)

リオがどうしたものかと考えていると、グレイが静かに一歩前に出た。そして、腰のロングソードを抜き放ち、その切っ先を、近くにあった巨大な鉄の塊――おそらく鍛冶の失敗作だろう――に向けた。

「……言葉でダメなら、力で示すまでだ」

グレイはそう言うと、一瞬で鉄塊との間合いを詰め、ロングソードを閃かせた。その剣筋は、まるで稲妻のように鋭く、そして正確だった。

キィィィン!

甲高い金属音と共に、巨大な鉄塊が、まるでバターのように綺麗に両断されたのだ! その断面は、鏡のように滑らかで、一切の歪みもない。それは、グレイの剣技がいかに卓越しているかを、雄弁に物語っていた。

ドワーフたちは、その光景に息を呑み、唖然としている。彼らは鍛冶の民であり、金属の扱いや、剣の切れ味には誰よりも詳しい。グレイの一撃が、尋常なものではないことを、即座に理解したのだ。

「……ほう。なかなかの腕前だな、人間」ドワーフの長が、初めてグレイを認めるといった表情を見せた。「だが、それだけで我らが心を開くとでも思ったか?」
「いや」グレイは剣を鞘に納めながら言った。「これは挨拶代わりだ。俺たちは、お前たちと争うつもりはない。だが、必要な情報が得られないのなら……力ずくで奪うことも辞さない。その覚悟がある、ということだ」

グレイの言葉は脅しだったが、その瞳には本気の光が宿っていた。彼は、仲間たちのために、そして目的を達成するためなら、非情な手段も厭わない覚悟を示したのだ。

ドワーフの長は、しばらくの間、グレイを睨みつけていたが、やがて、ふっと肩の力を抜いた。

「……ふん。面白い。気に入ったぞ、その生意気な人間。そして、その度胸もな」

彼は、意外にも豪快に笑った。

「よかろう。お前たちの話を聞いてやる。ただし、我らがドワーフの技術を教えるかどうかは、お前たちの『誠意』と『価値』次第だ。まずは、客として、我らが都を見ていくがいい」

ドワーフの長の態度は軟化したが、まだ警戒を解いたわけではない。彼らは、リオたちが本当に信用に値するのか、そして、彼らが求める知識を与える価値があるのかを、見極めようとしているのだ。

こうして、リオたちは、伝説のドワーフ都市「ドゥル=アダール」への滞在を許された。そこには、現代では失われた、驚くべき古代技術が息づいているに違いない。そして、それはアストライオスの問題解決や、来るべき災厄への備えにとって、大きな転換点となる可能性を秘めていた。

しかし、ドワーフたちは頑固で誇り高い種族だ。彼らの信頼を得て、協力を取り付けるのは、容易なことではないだろう。リオたちの新たな試練が、この灼熱の地下都市で始まろうとしていた。
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