無能と罵られ追放された落ちこぼれ魔術師、実は世界で唯一【言語魔法】を使える最強賢者だった〜古代魔法と失われた知識で成り上がり見返してやる!~

夏見ナイ

文字の大きさ
56 / 75

第56話:砂漠の旅路とオアシスの出会い

しおりを挟む
「竜顎山脈」と、そこに眠る可能性のある「賢者の石」。新たな目標を定め、リオ、リリアナ、グレイの三人は、再びフロンティアを後にした。目指すは、街の遥か西に広がる広大な砂漠地帯だ。そこは、灼熱の太陽と乾燥した風が支配する、生命にとっては過酷な土地。しかし、古代のロマンと危険が同居する、冒険者にとっては魅力的な場所でもあった。

旅の準備は、これまでのどの冒険よりも入念に行われた。砂漠での行動に必要な水、食料、日差しを避けるための特別なローブ、そして熱中症や脱水症状を防ぐための薬草など。リオは【マテリアル・クリエイト】で、軽量で保水性の高い水筒や、夜間の冷え込みを防ぐための特殊な断熱シートなどをいくつか作り出し、仲間たちを驚かせた。彼の古代魔法は、戦闘だけでなく、こういったサバイバルにおいても、徐々にその真価を発揮し始めていた。

砂漠への旅路は、フロンティア周辺の緑豊かな風景とは一変し、見渡す限りの砂と岩が続く、単調で過酷なものだった。昼間は肌を焦がすような日差しが照りつけ、夜は凍えるような寒さが襲ってくる。視界の開けた砂漠では、魔物の奇襲は少ないものの、巨大なサソリ型の魔物「デスストーカー」や、砂の中に潜んで獲物を待ち構える大蛇「サンドワーム」など、砂漠特有の危険な生物に遭遇することもあった。

しかし、三人の連携は、もはや阿吽の呼吸と言えるほどに成熟していた。グレイが的確な判断で危険を回避し、あるいは先陣を切って魔物を討伐する。リリアナは精霊魔法で砂嵐を鎮めたり、蜃気楼を見破ったりと、自然現象への対処に長けていた。そしてリオは、【言語魔法】で砂漠に住む小さな動物たち(トカゲやネズミなど)から情報を得て水場を探したり、【レビテーション】で流砂地帯を安全に渡ったり、【プロテクト・ウォール】で強烈な日差しを和らげたりと、その特殊な能力を駆使して仲間をサポートした。

「リオさん、あなたの魔法のおかげで、この砂漠の旅もずいぶん楽になっているわ。本当にありがとう」

ある日の野営中、リリアナが心からの感謝を込めて言った。

「いえ、俺こそ、二人のおかげでここまで来られています」

リオは謙遜しながらも、仲間からの信頼を感じ、胸が温かくなった。

数週間後、水も食料も残り少なくなってきた頃、彼らはついに、砂漠の中にぽつんと存在する、奇跡のようなオアシスへとたどり着いた。そこには、豊かな湧き水と、それを囲むようにして生い茂る椰子の木々、そして小さな集落があった。集落に住むのは、日に焼けた肌と、独特のターバンを巻いた、遊牧民風の人々だった。

「助かった……。これで、水と食料を補給できる……」

リオは安堵のため息をついた。

オアシスの住民たちは、最初は見慣れない旅人であるリオたちを警戒していたが、リオが【言語魔法】で彼らの言葉(これもまた古い方言だった)を理解し、友好的に接すると、徐々に心を開いてくれた。彼らは、砂漠で生きるための知恵や、この土地に伝わる古い伝説などを、リオたちに語って聞かせた。

その中で、リオたちの興味を強く引いたのは、「竜顎山脈」と「三月の伝説」に関する話だった。

「竜顎山脈は、我々砂漠の民にとっても、聖なる山であり、同時に畏怖すべき場所じゃ」オアシスの長老らしき老人が、皺だらけの顔で語った。「あそこには、古代の竜の魂が眠ると言われ、迂闊に近づく者には災いが訪れると……。そして、『三月の夜』には、山脈の奥深くにある『星見の祭壇』で、空の神々が特別な儀式を行うと伝えられておる。その時、祭壇には、星々のかけらが降り注ぐとか……」
「星見の祭壇……星々のかけら……!」

リリアナは、その言葉に目を見開いた。それは、彼女が探していた「忘れられた祭壇」と、「賢者の石」のヒントに繋がるかもしれない。

「長老様、その『星見の祭壇』の場所を、ご存じではないでしょうか?」リオが尋ねる。
「……ふむ。あそこは、我々でも滅多に近づかぬ禁断の場所じゃ。道も険しく、魔物も多い。お前たちのような若者が、興味本位で行くような場所ではないぞ」

長老は、リオたちの真意を探るように、鋭い視線を向けた。

リオは、自分たちが「賢者の石」を探していること、そしてそれが世界の危機を救うために必要かもしれないことを、正直に、しかし言葉を選びながら説明した。彼の真摯な言葉と、仲間たちの覚悟に、長老はしばらく黙って考え込んでいたが、やがて、一つの決断を下したようだった。

「……よかろう。お前たちの目が、ただの冒険者のそれではないことは分かった。そして、もしお前たちの言葉が真実なら……我々砂漠の民も、世界の危機を座視するわけにはいくまい」

長老はそう言うと、一人の若い女性を呼んだ。彼女は、日に焼けた健康的な肌と、黒曜石のように輝く大きな瞳を持つ、凛とした雰囲気の女性だった。

「この者は、ライラ。我が孫娘であり、このオアシスで最も勇敢で、砂漠の地理にも詳しい者だ。彼女に、お前たちを『星見の祭壇』まで案内させよう。ただし、その先で何が起ころうと、我々は関知せぬ。全ては、お前たちの運命次第だ」
「ライラと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」

ライラと名乗った女性は、リオたちに深々と頭を下げた。その瞳には、砂漠の民特有の強さと、どこか謎めいた輝きが宿っている。

こうして、リオたちは、思いがけず新たな協力者を得ることになった。ライラの案内があれば、「竜顎山脈」の奥深くにあるという「星見の祭壇」への道のりも、少しは安全になるだろう。

オアシスで数日間休息を取り、水と食料を十分に補給した後、リオ、リリアナ、グレイ、そして新たに加わったライラの四人は、「星見の祭壇」を目指して出発した。

ライラは、まさに砂漠の申し子だった。彼女は、風の向きや砂の模様、そして動物たちの微かな気配から、正確に進むべき道を見つけ出し、危険な場所を巧みに避けていく。彼女の案内のおかげで、一行は予想以上にスムーズに「竜顎山脈」の麓へと近づいていった。

道中、リオはライラと話す機会が増えた。彼女は、見た目よりもずっと物知りで、砂漠の歴史や伝説、そして「星詠みの民」に関する断片的な知識も持っていた。

「私の祖母は、昔、『星詠みの民』の末裔と交流があったと聞いています。彼らは、星々の言葉を理解し、未来を予知する力を持っていたとか……。そして、彼らは、世界に散らばる『星のかけら』――強大な力を秘めた遺物――を集め、守っていたと……」
「星のかけら……。それが、『賢者の石』のことなのでしょうか?」
「分かりません。でも、もしそうなら、それはきっと、この砂漠のどこかに隠されているはずです。『竜顎山脈』の『星見の祭壇』は、そのための重要な手がかりとなる場所なのかもしれませんね」

ライラの言葉は、リオたちの期待をさらに高めた。

やがて、一行の目の前に、天を突くようにそびえ立つ、巨大な「竜顎山脈」の威容が姿を現した。その名の通り、まるで巨大な竜の顎のように、鋭く尖った岩山が幾重にも連なっている。そして、その山脈の奥深く、最も高い峰の頂上付近に、何らかの人工的な建造物らしきものが、陽光を反射して微かにきらめいているのが見えた。

「あれが……『星見の祭壇』……!」

ライラが、畏敬の念を込めて指差した。

しかし、祭壇へ至る道は、険しい岩壁と、深い谷によって阻まれている。そして、その周辺には、これまでに遭遇したどの魔物よりも強力な、古代の守護獣のような気配が漂っていた。

「……どうやら、ここから先は、本当の試練のようだな」

グレイが、ロングソードの柄を握りしめ、呟いた。

「賢者の石」への道は、すぐそこまで迫っている。しかし、それを手に入れるためには、古代の竜が遺した試練と、強力な守護者を乗り越えなければならない。リオたちの新たな戦いが、この灼熱の砂漠と、天空に最も近い場所で、始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。 しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。 リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。 一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。 これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。

地味スキル? いいえ、『法則操作』です。 ~落ちこぼれ探索者が現代科学でダンジョンをハックする話~

夏見ナイ
ファンタジー
ダンジョンが出現して10年。元物理学徒の神崎譲(かんざきゆずる)は、『状態保存』『現象観測』という地味スキルしか持てず、落ちこぼれ探索者として燻っていた。ある日、パーティーに見捨てられ死に瀕した彼は、土壇場でスキルの真髄――物理法則への限定的干渉力――に覚醒する。「時間停止もエネルギー固定も可能…これは『法則操作』だ!」譲は忘れかけた科学知識を総動員し、地味スキルを最強の武器へと昇華させる。状態保存で敵の攻撃を無効化し、現象観測で弱点を精密分析、化学知識で即席兵器を生成!常識外れの科学的ダンジョン攻略で、世界の法則(ルール)すらハックする!落ちこぼれからの知"的"成り上がり譚、ここに開幕!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...